年頭所感 - 全国信用組合中央協会

平成27年1月
年
頭
所
感
一般社団法人
会
全国信用組合中央協会
長
渡
邉
武
謹んで新年のお慶びを申し上げます。
平成27年の初春を迎えるにあたり、会員信用組合をはじめ関係各位には、旧
年中に賜りましたご支援・ご協力に対し、厚く御礼を申し上げます。
昨年は、夏に天候不順が続き集中豪雨などによる風水害や土砂災害が多数発生
し、広島市をはじめ全国各地で甚大な被害が発生いたしました。また秋には、御
嶽山の噴火や長野県神城断層地震など大きな自然災害が相次ぎました。
被災された皆様に対し、心からお見舞いを申し上げますとともに、早期の復旧・
復興を心よりお祈り申し上げます。
ここで、年頭にあたり、信用組合を取り巻く環境について申し述べたいと存じ
ます。
まず、「経済環境等について」でございます。
わが国経済を振り返りますと、昨年の7月~9月期の実質国内総生産(GDP)
は、大方の予想を大きく下回り、年率換算の改定値では1.9%減となりました。
また、日銀による10月のサプライズ追加緩和を受け、円安・株高が一段と加
速いたしましたが、円安の進展に伴い、負の側面も顕在化しております。
特に、地方経済にはアベノミクスの効果が十分に行きわたっておらず、中小企
業・小規模事業者は、円安に伴う原材料費の高騰による収益悪化の懸念もあり、
依然として景気回復を実感するには至っていない状況にあります。
こうした状況の中で、昨年末に発足いたしました第3次安倍内閣は「アベノミ
クス」を加速させるとのことでございますが、景気回復の果実を大企業や投資家
だけでなく、中小企業・小規模事業者をはじめ、国内経済全体に及ぶべく、国内
- 1 -
での投資増を促すような税負担の見直しなど、きめ細かな環境整備を期待するも
のでございます。
次に、
「地方再生と小規模事業者への支援について」でございます。
昨年5月に、民間有識者でつくる日本創成会議が指摘した少子・高齢化や人口
移動と一極集中に歯止めがかからず、将来に消滅する可能性がある自治体を指す
「消滅可能性都市」が話題を呼びました。
人口減少と少子高齢化は、すでに地方に行くほど進行しており、このままでは、
地方はますます疲弊してしまいます。各地域の特性、独自の資源を活かした持続
的な成長モデル確立が都市以上に急がれる状況にあります。
昨年6月に施行されました「小規模企業振興基本法」に基づきまして、10月
には、小規模企業振興に関する計画的な推進を図るため「小規模企業振興基本計
画」が定められました。本計画のなかでは、10の重点施策が定められ、金融機
関には、
「既存の支援機関や中小企業診断士、税理士、公認会計士、弁護士、民間
コンサルティング会社などの支援機関等と連携しながら、小規模企業を支援して
いくことが求められる。」とされております。信用組合の主要な取引先であり、地
域の経済や雇用を支える存在としての小規模企業の存在が、改めて見直され、小
規模企業にスポットを当てた新たな施策が強化されているところであります。
信用組合といたしましても、様々な外部機関・外部専門家と連携を図りながら、
地域経済の活性化の一助となるよう創業支援や事業承継、経営改善、再生支援な
どの分野を強化し、地域の小規模事業者等への支援に積極的に取り組んで参らな
ければなりません。
三つ目は、「信用組合の将来ビジョンの策定について」でございます。
本会では、昨年のしんくみ経営戦略会議において「10年後を見据えた信用組
合経営」をテーマとして経営基盤の活性化に向けて取り組むべき課題や、将来の
あるべき姿について協議を行ったところであります。これらを踏まえて、本会企
画委員会において「10年後を見据えた信用組合の目指すべき姿、ビジネスモデ
ル」の策定を検討しているところでございます。将来の社会・経済環境の変化を
踏まえた、この「信用組合のビジョン」を参考として、信用組合業界が一丸とな
- 2 -
ってその実現にまい進する必要があると考えております。
最後に、信用組合は、厳しい経営環境のなかで様々な経営課題を抱えておりま
す。当面の主な経営課題として、2点申し上げます。
1点目は、余資の運用効率の向上とリスク管理でございます。
貸出金収益が減少していることから、余資の運用でこれをカバーしようとする
傾向が強まってきております。低金利が長期化している現状ですが、大胆な金融
緩和による金利リスクや期間リスクも高まっております。また、仕組債等の運用
による為替リスクや信用リスクが高まってくる可能性もございます。余資の運用
効率の向上とともに、運用資金の適切なリスク管理を行い、万が一にも健全性を
損なうことがないよう万全を期していただく必要があります。
2点目は、本部態勢の強化について、でございます。
信用組合は、業績向上のため営業店に要員を重点配置しており、本部は可能な
限り少人数で対応されているものと思われます。その一方で、
「FATCAやOE
CDの自動情報交換条約への対応」、「改正大口信用供与規制の施行」、「犯罪収益
移転防止法の改正(本人確認の厳格化)」、
「マイナンバー制度への対応(税及び社
会保障の分野での個人番号の利用)」など、対応すべき課題が山積しております。
このため、それぞれの信用組合においては、本部機能の強化や人材の育成に取り
組んでいかねばなりません。加えて、こうした政策的な課題への対応を支援する
ために、本会、全信組連、地区協会等が適切に役割を分担しつつ、信用組合の本
部業務を補完していく必要があると考えております。
以上、年頭にあたり信用組合をめぐる当面の課題等について申し述べましたが、
この他にも私ども信用組合業界は、様々な課題を抱えております。今後、こうし
た課題を克服していくためには、会員信用組合と中央団体が協力して取り組んで
いくことが必要不可欠でありますので、さらなるご支援・ご協力をお願い申し上
げます。
最後に、本年が皆様方にとりましてより良い年となりますよう祈念いたしまし
て、新年のご挨拶といたします。
以
- 3 -
上