情報取引企業訪問

情報取引企業訪問
No.56
信和工業 株式会社
信和工業は 1969 年(昭 44)に
設立。福岡市博多区の JR 竹下駅近
く、御笠川沿いに本社および第1、
第2工場がある。電機や自動車メー
カー向けに、微小径シャフトやブラ
ンクなどを製造している。2007 年
(平19)
にはインドネシアに進出。
ジャ
カルタに工場(SI-HEART= シーハー
ト)
を設立。早くも現地生産品の品質、
納期、コストが日本の顧客を満足さ
せる高いレベルとなった。河村義則
社長には、中小企業の海外進出の数
少ない成功事例として講演の依頼も
ある。しかし、数あるアジアの国々
からインドネシアを選んだのは「単
なる金もうけが目的ではない」
(河村
社長)
。インドネシアに貢献したいと
いう思いがわきおこったからだ。
福岡市にある本社外観
企業の強み 戦中戦後の貧しい暮らしがバネに
義に志するとも不義に生きず—。河村義則社長の
人として国際貢献したいという志は、創業後約 40
座右の銘だ。河村社長は 1940 年生まれ。太平洋戦
年にして、インドネシアに進出する—ということで
争開戦の直前だ。子供の頃、アメリカ軍による博多
花開いた。
の大空襲も体験した。焼夷(しょうい)弾で焼け落
父親の会社を整理して新しく信和工業で出発した
ちる博多の街を目の当たりにしたそうだ。その「戦
時には「日本タングステンに助けていただいた」。
中戦後の貧しい暮らしがバネになった」と振り返る。
タングステン合金など特殊鋼材の加工で出発、技術
戦後の復興期から高度成長期にかけて東京の大学
力をアピールした。現在の主力商品は、
各種モーター
で青春時代を送った。福岡から上京し、同じ下宿で
シャフト加工品やブランク加工品、複合自動機加工
熱く夢を語り合った友人は、後に弁護士となり今で
品など。三菱電機や日本電産、日本タングステンが
も親交が続いている。河村社長も日本人として戦後
主要な得意先となっている。
の平和な国際社会に寄与したく「一度は外交官を志
した」こともある。
しかし父親の会社の経営が思わしくなく、博多に
帰って父親を支える道を選んだという。当時の日本
高い技術力と2国生産対応が強み
モーターシャフト加工は成熟産業ではあるが、多
マシニングセンターやNC研削盤などで加工するこ
方面の産業に関わる重要な部品だ。河村社長は「軸
とが多い。しかしシャフト加工となると転造盤や溝
は振れてはいけない。20 マイクロメートルという
切り加工機など専用機が必要となる。コストと品質
高い精度が求められる」と強調する。品質を保つた
の両面で専用機でないと対応できないからだ。その
めに多大な設備が必要となる。通常製造の現場では
ため「精度とコスト低減では他社の追従を許さない」
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BUSINESS SUPPORT FUKUOKA 2014.12
と自信を示す。さらに「価格が合わない製品はイン
ドネシア工場の製作で対応するという2国生産が強
みだ」という。
我が社の取引拡大事例
シャフト加工ライン
国内第3工場建設で生産力と物流力をさらにアップ
現在、糸島市に約1億円を投資して国内第3
るジャストインタイム体制をとる。敷地は 500
工場を建築中だ。この地を選んだのは一番の得
坪。物流倉庫は1階建て。建て床面積は 70-80 坪。
意先である三菱電機 FA 産業機器(福岡市西区)
2014 年中に完成させる。2- 3年以内に約 200
に近いから。第3工場はまず、物流拠点としての
坪の工場を建設する。専用機など製造用のライ
活用する。国内工場で生産した加工品の保管や
ンも導入して生産を始める計画だ。売り上げは
インドネシア工場(シーハート)からの輸入加工
国内3工場とインドネシア工場を合わせて 14 年
品を保管する。納期に合わせて得意先に納入す
5月期の 50%増の6億円に引き上げる。
河村義則社長メッセージ 「インドネシアの若者の成長が楽しみ」
ASEAN(東南アジア諸国連合)の人たちは、戦後の
復興支援を行った日本に信頼や尊敬の気持ちを抱いて
くれている。インドネシアの若者は、素直で勤勉な人
が多い。インドネシアの国と、そこに暮らす人たちの
役に立ちたいという気持ちがインドネシア進出につな
がった。今はインドネシアの若者の成長が楽しみだ。
華僑の影響力
が大きいインド
ネシアビジネス
インドネシア工場スタッフと—中央が河村義則 社長
で、華僑を介入させずにビジネスを進めていくのはやりにくい面も
ある。ほかにも、アンダーマネーや税関、インフラの不整備など国
際ビジネスをやるには問題は多い。しかし、インドネシアの若者を
世界市場で通用する企業人や技術者として育成し、インドネシアの
お孫さんに囲まれて—河村義則 社長
人たちによるインドネシアの企業経営を実現することが私の夢だ。
企業概要
企
代
所
T
F
業
表
在
E
A
名
者
地
L
X
お問い合わせ
信和工業 株式会社
代表取締役 河村 義則
福岡市博多区東那珂1丁目 13 の 58
092- 411- 4184
092- 431- 1650
情報取引推進課 TEL:092-622-6680
E メール
社 員 数
事業内容
[email protected]
45 人
業務用電動機電機接点、自動車産
業用機器製造
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