2014年度 第5回千葉工大フォーラム 生命システム原材料の起源と進化 イントロンの起源をどう考えるか ー発見から現在までー 演者 郷 通子 博士 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 理事 2015年 1月 7日(水) 午後 3 時半から 千葉工大 津田沼キャンパス 7号館3階 7301教室 (講演要旨) ウサギのヘモグロビン遺伝子に、イントロンが存在することが発見(1977)されて以来、 イントロンの起源と役割についてさまざまな議論が続いてきた。イントロンの発見を報告 した論文には、「2つのイントロ ンの存在位置は、ヘモグロビンの立体構造と関わり無く、 ランダムに入った」とする内容が述べられている。筆者の一人は、ヘモグロビン遺伝子 のイントロンの存在箇所がヘモグロビンのモジュール境界に対応し ている事実を報告 し(1981)、同時にさらにもう1つのイントロンが存在することを予測した。その直後、予測 された位置にダイズのヘモグロビン遺伝子でイントロンが発見された(1981)。このよう に、モ ジュールの概念に基づいて、ヘモグロビンの祖先型遺伝子は少なくとも3つのイ ントロンを持つことを明らかにできた。モジュールとは、蛋白質立体構造上で連続した 10~30アミノ酸残基が作るコンパクトな部分 構造である。繊維状の蛋白質を除き、すべ ての蛋白質はモジュールに分割できる。多くの蛋白質について、モジュール境界とイン トロンとの密接な関係を明らかにしてきた。これらの結果から、イントロンの起源 は生 命の起源にまで遡るとする仮説を主張してきたが、激しい論争の中で論文が採択され 難い状況の下で年月を過ごした。 イントロン発見から37年が経過した現在、多くの生 物種のゲノム解析が急速に進み、多様 なイントロンが生物界に広く存在することが明 らかになってきた。特にグロビン遺伝子は、1980年代には限られた生物にしか存在し ないと思われていたが、現在では原核生物から真核生物まで広い範囲の生物種に 存 在することが明らかになり、新たにイントロンの起源を議論する舞台を提供している。本 講演では、イントロンの起源に関する知見をレビューすると同時に、原核生物から真核 生物まで広く存在し、塩基配列、 立体構造、機能、系統関係等が詳しく調べられている グロビン族に再び焦点をあてて、モジュールに基づくイントロンの起源について所見を 述べる。 問い合わせ先: 千葉工業大学 工学部 生命環境科学科 分子細胞進化学研究室 根本 直樹 047-478-0159 [email protected]
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