2015年度 第3回千葉工大フォーラム 生命システム原材料の起源と進化 光合成細菌とシアノバクテリア −原核光合成生物の比較研究から 考える光合成の初期進化− 演者 井上 和仁 博士 神奈川大学 理学部 生物科学科 教授 2015年 10月 16日(金) 午後 3 時半から 千葉工大 津田沼キャンパス 7号館4階 7403教室 (講演要旨) 原核光合成生物は真正細菌のクロロフレクサス(緑色滑走細菌)、クロロビウム(緑色硫黄細菌)、 プロテオバクテリア(紅色細菌)、フィルミクテス(ヘリオバクテリア)、シアノバクテリアの5つの門か ら見出される。また最近になって、アシドバクテリアに属するCandidatus Chloracidobacterium thermophilumが光合成能を持つことが報告され注目を集めている。光合成で光エネルギーの変 換は反応中心と呼ばれる膜タンパク質複合体で行われ、反応中心は系I(鉄硫黄)型と系II(キノン) 型に大別される。反応中心で電荷分離反応を担うスペシャルペアーは、いずれも、ポルフィリン環 の中心にMgを持つクロロフィルまたはバクテリオクロロフィルである。紅色細菌のゲノム中には系II 型反応中心と集光性色素複合体の構造遺伝子がpuh, puf, pucの3つのオペロンに別れて存在し、 これらはレギュロンを構成している。puhとpufの間にはバクテリオクロロフィルとカロテノイド合成遺 伝子が多数存在した光合成遺伝子クラスターと呼ばれる領域があり、酸素濃度等の生育環境に よって転写調節を受ける。ヘリオバクテリアのゲノムにも系I型反応中心の構造遺伝子とバクテリオ クロロフィルg合成遺伝子などが大きな光合成遺伝子クラスター(約36kb)を構成するが、紅色細菌 とはまったく様式が異なる。緑色硫黄細菌(系I型反応中心)と緑色滑走細菌(系II型反応中心)には 大きな光合成遺伝子クラスターはなく、数個の遺伝子からなるオペロンがゲノム中に散在している。 光化学系Iと系IIを持ち、水を分解して光合成を行うシアノバクテリアにも大きな光合成遺伝子クラス ターは見られない。二つの型の反応中心の出現やクロロフィル類合成系の進化に関して、これまで 様々な説が提唱されている。ゲノム中の光合成遺伝子の存在様式から光合成の進化過程につい て議論を深めたい。 問い合わせ先: 千葉工業大学 工学部 生命環境科学科 分子細胞進化学研究室 根本 直樹 047-478-0159 [email protected]
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