生命システム原材料の起源と進化研究会 平成28年度第2回セミナー ゲノム合成手法と合成ゲノムを 起動するための我々のシナリオ 演者 板谷 光泰 博士 慶應義塾大学 先端生命科学研究所 教授 2016年 11月 9日(水) 午後 4 時30分 から 千葉工大 津田沼キャンパス 6号館1階 615教室 (講演要旨) 枯草菌を用いてゲノムを設計して完全合成する技術を提案、実践している。 微生物ゲノムは数百から数千の遺伝子を含む長鎖DNAで、生体分子としては 巨大分子である。この巨大高分子は溶液中では擦り切れやすく小さなDNAに 断片化してしまい、損傷の無いゲノムを細胞外に取り出して扱う技術は極めて 限られる。我々は2005年に枯草菌で完全ゲノムDNAを合成する技術を示し枯 草菌はゲノム合成の大役を果たせることを実証した。最初の合成ゲノムはラン 藻ゲノム(3.5 Mbp)が枯草菌ゲノム(4.2 Mbp)と連結したキメラ形態である。こ のキメラゲノム株は枯草菌の培地(LB)では問題なく生育するが、ラン藻の培地 (BG11)で生育することはなかった。我々は枯草菌で合成されるゲノムを再起 動させるためのいくつかのシナリオを持っており、本セミナーではそれらの取り 組みと最近の実施例を紹介したい。これらは前例が全くない取り組みなので試 行錯誤の貯まり場のような状況ではあるが、このステップがブレイクすれば、新 規ゲノムを設計し、完全合成して、研究、産業に有用な微生物株を構築する目 的に近づけると期待している。またそこに至る研究手法自体が微生物種の違 いの本質に迫る実験的手法であることも伝えたい。 問い合わせ先: 千葉工業大学 先進工学部 生命科学科 分子細胞進化学研究室 根本 直樹 047-478-0159 [email protected]
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