IPCC と UNFCCC COP20

IPCC と UNFCCC COP20
<個人的ノート>
2014年12月25日
平石 尹彦
Taka Hiraishi
<[email protected]>
気候変動に関する政府間パネル
(IPCC)
(Intergovernmental Panel on Climate Change)
<www.ipcc.ch/>
• 1998年に、世界気象機関(WMO)と国連環境計画
(UNEP)により設置。その加盟国は、 WMO 及び UNEP
の加盟国 (195か国)。
• IPCCは、査読文献を総括し、アセスメント報告書、特別
報告書、方法論報告書、及び技術的報告書を作成す
る。これらの報告書は、課題ごとの最新の科学を反映
し、専門家でない人々が理解できるようなものとして
作成される。IPCCは、自ら研究はしないし、政策勧告
を行うことはない。
• IPCC の報告書作成のプロセスには、広範な科学的な
意見を反映するため、2次にわたる査読のステップが
含まれている。IPCCは、政策的に意義のある活動を目
指しているが、政策を規定することはない。
2
IPCC機構図:
小規模な事務局
がジュネーブにあ
るほか、 4か国に
技術支援ユニット
(TSU) が置かれて
いる。
(スイス)
(米国)
(ドイツ)
(日本)
3
IPCC Writing and Review Process
IPCCの報告書
は、国際的に
選任された著
者のグループ
により作成さ
れ、最終的に
は、IPCC総会
(政府代表)に
より採択され
る。
作成プロセス
には、2段階の
ほぼ公開の査
読のステップ
があるため、
広範な専門家
及び政府の意
見が反映され
る。)
IPCC
4
First Assessment Report (1990) (FAR)
第1次アセスメント報告書:国連温暖化条約締約
の2年前。
Second Assessment Report (1995) (SAR)
第2次アセスメント報告書: 京都議定
書締結の2年前。
Third Assessment Report (2001) (TAR) 第3次アセスメント報告書: 各国が京都議
定書の批准を検討している時期に出され
た。
Fourth Assessment Report (2007) (AR4) 第4次アセスメント報告書: 2013年以降
の国際合意の検討の時期に出された。
WG‐I WG‐II WG‐III Synthesis
IPCC
5
将来の温度上昇の予測
<IPCC AR5 WG‐I 報告書>
‐ 将来の温度上昇の予測は、将来の
排出量に関する前提条件(RCPs)
ごとに行われる。(世紀末温度上昇
は、(1986‐2005年対比で、0.3‐1.7
度から 2.6‐4.8 度など)
‐ 将来の全球平均温度の上昇は、
CO2の累積排出量に関連すること
が報告されている。(これによれば、
将来の温度上昇を 2度に抑えるた
めには、炭酸ガスの累積排出t量を
3.000 Gt までとする必要があるが、
これまで、すでに、1890Gtが排出
済みであり、現在のペースでは、今
後30年程度でこの量に到達してし
まう。)
6
UNFCCC の背景
• 1992年の「気候変動に関する国連枠組条約」
(UNFCCC)の交渉の背景の南北対立(発展途上国は
温暖化の責任は先進国にあり、被害者。経済開発は
権利)は、「Common But Differentiated
Responsibilities」という言葉によく示されている。
• 1997年のCOP3で採択された京都議定書(Kyoto
Protocol)では、条約の付属書 ‐ I 国(Annex‐I Parties。
先進国)のみについての削減義務(1990年に比して
2008年‐2012年に△5%)を合意。(米国は批准せず。)
• 発展途上国(Non‐Annex I Parties (G‐77&Chinaグルー
プ))の中にも、「新興国」(BASIC)、後発発展途上国
(LDC)、島嶼国(AOSIS)、産油国など、多様な国々があ
り、意見は必ずしも同一ではない。
7
京都議定書と国際的コミットメント
• 1997年12月第3回締約国会議(COP3、京都)で採択。
• 付属書‐ I 国が全体として 5%削減することを目標。(1990
年と2008‐2012年の対比)
• 発効にはUNFCCC締約国55カ国、付属書‐ I 国の1990年
のCO2排出量の55%の国の批准が必要。ロシア(17.4%)
の批准により、2005年2月16日に発効。米(36.1%)は署
名はしたが、批准しなかった。
• 184カ国(世界のCO2排出量の44%強にあたっていた。)
が批准。
• 付属書 ‐ I 国の削減達成のために、他の付属書‐I 国の削
減量の取引(Emission Trading)、及び共同事業実施
(Joint Implementation)並びに非付属書 ‐ I 国における削
減量を活用すること(Clean Development Mechanism)が
認められている。
8
最近の動き
•
2020年までの京都議定書の第2次約束期間の後の、国際的な温暖化制
度を2015年(UNFCCC COP21,於 パリ)までに合意すべく交渉が進められて
いる。2015年早期に各国がそれぞれの目標を提案し、協議が行われる予
定。
•
国連気候変動サミット(2014年9月23日)
– 議長サマリーでは、「2度目標」の再確認はしたものの、具体的対策について
は、総論にとどまっている。
•
米中温暖化対策合意(2014年11月11日)
– 米が2005年対比2025年までに26‐28% 削減との目標を発表、中国が2030年
までにピークアウトする、という目標を発表した。(今後の温暖化交渉に良い
影響を与えることが期待されるが、削減目標自体は不十分という見方もある。
ヨーロッパの「2030年までに1990年対比で40%削減」とこの米中の対策を含め
ても3度付近までの温度上昇が起こるのではないかとする最近の研究報告も
ある。)
•
COP20(2014年12月、於 リマ)では、COP21までのプロセスを規定した
“Lima Call for Climate Action”(温暖化対策に関するリマからの呼びかけ)
を採択。
9
Lima Call for Climate Action
COP20 の 決議(L‐14)
• 2015年5月までに、すべての加盟国に適用される将来枠
組み( a negotiating text for a protocol, another legal instrument or an agreed outcome with legal force under the Convention applicable to all Parties )の交渉テキストを
作成すべく、努力する。
• 前文の最終項で、現状の対策では、2度目標の達成が困
難であることに懸念を表していることに留意すべき。
• COP21よりずっと以前に(可能な加盟国は、2015年3月まで
に) INDC (intended nationally determined contribution towards achieving the objective of the Convention as set out in its Article 2)の情報を提出する。10月1日までに提出
されたものは、11月1日までに作成されるSynthesis Report
に含められる。なお、INDCの内容は、同決議の添付文書
(“Elements”)に案として、列記されている。
10
日本が「先進国」であり続けるために
• 日本は、戦後の荒廃、1960‐70年代の「公害大
国」を経験し、克服してきたが、これらは、多くの
発展途上国から敬意をもって受け止められてい
る。
• 日本のGHG排出は世界の4%弱なのだから、日
本がいくら努力しても意味はない、というような
姿勢ではなく、日本の努力が他の国の努力を引
き出す動機づけとできるように努力することが、
「先進国」としてあり続ける条件なのではないか?
11