国際経済論Ⅰ リカード・モデル(1) ~比較優位と貿易パターン~ 国際経済論Ⅰ 国際相対価格と貿易利益 + 1)国際相対価格 p工 p <閉鎖経済時の相対価格 農 * p工 p 農 のとき 農産品を輸出し、工業品を輸入することによって 貿易利益が発生 + 2)国際相対価格 p工 p >閉鎖経済時の相対価格 農 * p工 p 農 のとき 工業品を輸出し、農産品を輸入することによって 貿易利益が発生 国際経済論Ⅰ 相対価格の違う二国による貿易 <閉鎖経済時> p A国 閉鎖経済時の相対価格 p工 p 農 A 工 p工 p p 農 農 A A国 工業品を輸出、 農産品を輸入 することによって 貿易利益を得る と仮定 A国は工業品が B国は農産品が 相対的に安価 A <自由貿易時> B + B国 閉鎖経済時の相対価格 p工 p工 p工 p p p 農 農 農 国際相対 価格 工業品を輸出 農産品を輸出 p工 p 農 B B B国 農産品を輸出、 工業品を輸入 することによって 貿易利益を得る 国際経済論Ⅰ 労働投入係数の違いと 閉鎖経済時の相対価格の違い(1) 工業品の労働投入係数 a L工 閉鎖経済時の工業品の相対価格= 農産品の労働投入係数 a L農 1) a L工 a L農 農産品 L a L農 が低い 工業品の労働投入係数が低い(生産性が高い) 農産品の労働投入係数が高い(生産性が低い) 農産品に比べて工業品を相対的に多く生産する ことが可能 p工 工業品の相対価格 は安価に p農 生産可能性曲線 a L工 a L農 L a L工 工業品 国際経済論Ⅰ 労働投入係数の違いと 閉鎖経済時の相対価格の違い(2) 工業品の労働投入係数 a L工 閉鎖経済時の工業品の相対価格= 農産品の労働投入係数 a L農 2) a L工 a L農 工業品の労働投入係数が高い(生産性が低い) 農産品の労働投入係数が低い(生産性が高い) が高い 工業品に比べて農産品を相対的に多く生産する ことが可能 農産品 L a L農 p工 工業品の相対価格 は高価に p農 生産可能性曲線 L a L工 a L工 a L農 工業品 国際経済論Ⅰ 比較生産費 完全競争市場において 財価格=賃金×労働投入係数=単位生産費 比較生産費:両財の単位生産費の比率 工業品の単位生産費 工業品の比較生産費= 農産品の単位生産費 賃金 工業品の労働投入係数 = 賃金 農産品の労働投入係数 = 工業品の労働投入係数 農産品の労働投入係数 =閉鎖経済時の工業品の相対価格 国際経済論Ⅰ 比較優位 ある財の比較生産費が相手国に比べて安い場合、 その財について比較優位を持っているという! 工業品の生産に比較優位を持つ 相手国に比べて工業品の比較生産費が低い 工業品の相対価格 p工 p農 相手国に比べて安い が a L工 a L農 が相手国に比べて低い ⇒相対的な工業の生産性が 相手国に比べて高い 国際経済論Ⅰ 比較優位の原理 A国が工業品、B国が農産品に比較優位を持つ A 閉鎖経済時の相対価格を比較すると A 自由貿易時には + p工 p工 p p 農 農 p工 p工 p工 p p p 農 農 農 国際相対価格 B B A国とB国はそれぞれ比較優位を持つ工業品と 農産品を輸出することによって共に貿易利益を得る 比較優位の原理 両国がそれぞれ比較優位を持つ財を輸出しあうことに よって、両国ともに貿易利益を得ることができる 国際経済論Ⅰ 比較優位の原理(図示) 農産品 農産品 A国(閉鎖経済) B A:閉鎖経済時の 消費点=生産点 LA a LA農 p工 A p農 y農A x農A B y農 B x農 B:閉鎖経済時の 消費点=生産点 B p工 p 農 A L A a LA工 A B a a L工 L工 p工 A B p a a L農 L農 農 B B 工業品 工業品 A A y工 x工 p工 p 農 A L a LB農 B国(閉鎖経済) B B y工 x工 LB a LB工 A国は工業品、B国は農産品に 比較優位を持つ 国際経済論Ⅰ 比較優位の原理(図示) A国 B国 C:自由貿易時の生産点 農産品 D:自由貿易時の消費点 農産品 B+ B+ 工業品の輸出量= y工 x工 B+ 農産品の輸入量= x農 B+ E y農 E:自由貿易時の生産点 F:自由貿易時の消費点 B+ B+ 農産品の輸出量= y農 x農 工業品の輸入量= x工B+ 農産品に 完全特化 B+ x農 A+ x農 D A + p工 p 農 国際 相対 価格 F B p工 p 農 C A+ y工 工業品に 完全特化 国際 相対 価格 工業品 工業品 A+ x工 + B+ x工 国際経済論Ⅰ 比較優位の原理(図示) 農産品 農産品 貿易利益 B+ y農 E 貿易利益 農産品に 完全特化 B+ x農 A+ x農 D A + p工 p 農 国際 相対 価格 F B p 工 p 農 C A+ y工 工業品に 完全特化 国際 相対 価格 工業品 工業品 A+ x工 + B+ x工 比較優位の原理(国際分業の利益) 両国が比較優位を持つ財に完全特化して輸出しあうことによって 両国とも購買可能領域が拡大し、より高い効用を得ることができる 国際経済論Ⅰ 比較優位(数値例) A・B両国における工業品と農産品の労働投入係数 A A a 1 , a A国 L工 L農 2 B B a 2 , a B国 L工 L農 1 a LA工 a LA農 a LB工 より、A国は工業品、B国は農産品に 1 2 B 2 a L農 比較優位を持つ A国が工業品に完全特化・輸出、B国が農産品に完全 特化・輸出することによって貿易利益が発生 国際経済論Ⅰ 貿易利益の発生原因 両国の労働投入係数 A A a 1 , a A国 L工 L農 2 B B a 2 , a B国 L工 L農 1 農産品の生産が1単位減少すると 工業品の生産が1単位減少すると 工業品の生産は2単位増加 農産品の生産は2単位増加 A国が農産品を、B国が工業品の生産を1単位減少させることに よって、世界全体の農産品と工業品の生産は1単位ずつ増加する。 比較優位を元にした国際分業によって世界経済 全体の生産量が増加する ⇒ 貿易利益の源泉 国際経済論Ⅰ 比較優位と絶対優位 工業品の 労働投入係数 A国 B国 A a L工 B a L工 農産品の 労働投入係数 A a L農 B a L農 比較優位 a LA工 a LB工 B となる(A国の工業品の比較生産費がB国よりも低い) A a L農 a L農 とき、A国は工業品にB国は農産品に比較優位を持つ 国際経済論Ⅰ 比較優位と絶対優位 絶対優位 A a L工 B a L工 のとき A国は工業品について絶対優位を持つ 工業品について絶対優位を持つ ⇒工業の労働投入係数が相手国に比べて低い ⇒同量の工業製品を相手国より少ない労働量で生産する ことが可能 ⇒工業の生産性が相手国よりも高い 国際経済論Ⅰ 比較優位と絶対優位の違い 工業品の 農産品の 労働投入係数 労働投入係数 A国 a LA工 比較生産費 a LA農 比 較 B国 a LB工 比較優位 比較生産費 a LB農 工業品の 農産品の 労働投入係数 労働投入係数 A国 a LA工 a LA農 B国 比 較 比 較 a LB工 a LB農 絶対優位 比較生産費を両国間で比較 産業毎に労働投入係数を 比較 国際経済論Ⅰ 比較優位と絶対優位の関係 A国が工業品に比較優位を持つ条件 A国内における a LA工 a LB工 B国内における B 農産品と工業品の 農産品と工業品の A 労働投入係数の比率 a L農 a L農 労働投入係数の比率 A国とB国の工業品の 労働投入係数の比率 工業品に関する A国の絶対優位の程度 (値が小さいほど 絶対優位の程度は高い) a LA工 a LB工 a LA農 A国とB国の農産品の B a L農 労働投入係数の比率 農産品に関する A国の絶対優位の程度 (値が大きいほど 絶対優位の程度は低い) 農産品と比べて工業品の方が絶対優位の程度が高いとき A国は工業品に比較優位を持つ 国際経済論Ⅰ 比較優位と絶対優位の関係 工業品の 農産品の 労働投入係数 労働投入係数 A国 a LA工 比較生産費 a LA農 比 較 B国 a LB工 比較生産費 工業品の 農産品の 労働投入係数 労働投入係数 A国 B国 a LB農 比較優位 産業間の比較生産費を 両国間で比較 a LA農 a LA工 絶対 優位 a LB工 比較 絶対 優位 a LB農 (絶対優位で考える)比較優位 両国間の絶対優位の程度を 産業間を比較 国際経済論Ⅰ 比較優位と絶対優位(ケース1) 工業品の 労働投入係数 農産品の 労働投入係数 A国 1 2 B国 2 1 1 A国における 工業品の比較生産費 2 B国における 2 工業品の比較生産費 A国は 工業品に 絶対優位 B国は 農産品に 絶対優位 A国は工業品、 B国は農産品に 比較優位 国際経済論Ⅰ 比較優位と絶対優位(ケース2) 工業品の 労働投入係数 農産品の 労働投入係数 A国 1 2 B国 6 3 1 A国における 工業品の比較生産費 2 B国における 2 工業品の比較生産費 A国は工業品に A国は農産品に 絶対優位 絶対優位 A国は工業品、 B国は農産品に (A国の労働投入係数はB国の1/6 (A国の労働投入係数はB国の2/3 比較優位 =A国の方が6倍生産性が高い) =A国の方が1.5倍生産性が高い) A国の絶対優位の程度(生産性格差)は工業品の方が高いため、 A国は工業品に比較優位を持つ。 (B国の絶対劣位の程度は農業品の方が低いため、B国は農産品に比較優位を持つ。) 国際経済論Ⅰ 貿易利益の確認 両国の労働投入係数 A A a 1 , a A国 L工 L農 2 B B a 6 , a B国 L工 L農 3 農産品の生産が1単位減少すると 工業品の生産が1単位減少すると 工業品の生産は2単位増加 農産品の生産は2単位増加 A国が農産品を、B国が工業品の生産を1単位減少させることに よって、世界全体の農産品と工業品の生産は1単位ずつ増加する。
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