微分積分学演習第二Oクラス(12/19)

微分積分学演習第二 O クラス(12/19)
担当:柴田 将敬
極値
演習問題
演習問題 1. 次のように定義された R 上の関数 f について、停留点を全て求め、各停留点に
ついて、極大・極小となるか判定せよ。
(i): f (x) = x.
(ii): f (x) = x2 .
演習問題 2. f (x, y) = x2 + y 2 ,
(iii): f (x) = x3 .
g(x, y) = −x2 − y 2 ,
(iv): f (x) = x4 .
h(x, y) = x2 − y 2 について、極値
の判定法(p4 を参照)を適用せよ。
演習問題 3. f (x, y) = xy + 1/x + 1/y は (1, 1) で極小値 3 をとる。
演習問題 4. f (x, y) = e−x
2
−y 2
(2x2 + y 2 ) の停留点は (0, 0), (0, ±1), (±1, 0) で、(0, 0) で極
小値 0 をとり、(0, ±1) では極値をとらず、(±1, 0) では極大値 2/e を取る。
用語
簡単のため、f (x, y) は R2 上で定義された滑らかな実数値関数とする。1 変数関数のとき
も、多変数関数の時も用語は同様である。
停留点
fx (a, b) = fy (a, b) = 0 となる点 (a, b) を f の 停留点 と呼ぶ。
極大 点 (a, b) の近くの (x, y) に対して常に f (x, y) < f (a, b) が成り立つとき、f は点 (a, b)
で 極大 であるという。このときの (a, b) を 極大点、f (a, b) を 極大値 と呼ぶ。
極小 点 (a, b) の近くの (x, y) に対して常に f (x, y) > f (a, b) が成り立つとき、f は点 (a, b)
で 極小 であるという。このときの (a, b) を 極小点、f (a, b) を 極小値 と呼ぶ。
極値 f が (a, b) で極大または極小となっているとき、f は (a, b) で 極値をとる、という。こ
のときの値 f (a, b) を 極値 という。
注. (a, b) の近くで考えると (a, b) のみが 最大点(f が最大値をとる点)となっている。この
とき、(a, b) を極大点と呼ぶのである。極小にかんしても同様。与えられた関数の最大値や最
小値を求めるというのは、関数の性質を調べる上で重要な作業であるが、極大点や極小点は、
その候補となるのである。
注. 微分可能性や連続性がなくても、極大や極小は定義される。例えば、f (x, y) = |x| + |y|
1
は (0, 0) で極小となる。
{
1
f (x, y) =
0
if (x, y) = (0, 0),
if (x, y) ̸= (0, 0)
は (0, 0) で極大となる。
注. 極大や極小の定義で、
「<」や「>」を「≤」や「≥」に変更したものを 広義極大・広義極小
という。それに対して、上記の極大や極小を 狭義極大・狭義極小 ということもある。例えば


−x − 1
f (x) = 0


x−1
if x ≤ −1,
if − 1 < x < 1,
if x ≥ 1,
とすると、f は、−1 ≤ x ≤ 1 となるすべての x で広義極小となっている。狭義極小となる点
はない。さらに、−1 < x < 1 となる x では、広義極大にもなってしまう。
極値を探す上で、次の定理は重要である。
定理. f (x, y) は微分可能とする。f が (a, b) で極値を取るならば、fx (a, b) = fy (a, b) = 0 が
成り立つ。つまり (a, b) は停留点となる。
注. 上の定理の逆は成立しない、つまり、f (x, y) は微分可能で fx (a, b) = fy (a, b) = 0 が成
り立つからといって、(a, b) で極値をとるとは限らない。
極大・極小の判定(一変数の場合)
f (x) が C 2 級の時に、極値を探す方法を考える。まず、先ほどの定理より、極大点・極小
点は停留点なので、停留点が候補の全て であり、停留点についてのみ調べれば良い。
a が停留点とする。このとき、f ′ (a) = 0 に注意すると、Taylor の定理より、a の近くでは
f (x) − f (a) =
1 ′′
f (a)(x − a)2 + o((x − a)2 )
2
となる。f (x) と f (a) の大小関係を調べれば良いので、それは右辺の符号を調べることにな
る。f ′′ (a) > 0 の時は、x が a に十分近い時に右辺は正なので極小、、f ′′ (a) < 0 の時は、x
が a に十分近い時に右辺は負なので極大となることがわかる。f ′′ (a) = 0 の場合は、
f (x) − f (a) = o((x − a)2 )
となり、この 2 次近似では極大・極小は判定できず、別の解析が必要である。実際、f ′′ (a) = 0
の場合、極値を取ることも取らないこともある。
2
例. f (x) = x3 は x = 0 を停留点として持ち、f ′′ (0) = 0 である。x = 0 では極値をとらな
い。g(x) = x4 は x = 0 を停留点として持ち、f ′′ (0) = 0 である。x = 0 で極小となって
いる。
まとめておくと、
• 停留点(f ′ (a) = 0 となる a)を調べれば良い。
• f ′ (a) = 0, f ′′ (a) < 0 ならば、f は a で極大。
• f ′ (a) = 0, f ′′ (a) > 0 ならば、f は a で極小。
• f ′ (a) = 0, f ′′ (a) = 0 のときは、これだけでは判定できず、極値を取ることも取らな
いこともありうる。さらなる解析が必要。
となる。
多変数の Taylor の定理
多変数での Taylor の定理を書き下すのはいくぶん面倒であるが、1 変数の Taylor の定理
を用いれば、多変数の Taylor の定理を導くことが出来る。ここでは、その導き方を用いて、
2 変数関数の 2 次近似を求めてみる。
f (x, y) を (a, b) で Taylor 展開することを考える。(x, y) や (a, b) を固定し、F (t) =
f (t(x − a) + a, t(y − b) + b) とおく。F (0) = f (a, b), F (1) = f (x, y) となっている。F につ
いて、Taylor の定理より、
1
F (1) = F (0) + F ′ (0) + F ′′ (0) + 剰余項
2
となるが、連鎖律を用いて計算すると、
F ′ (0) = fx (a, b)(x − a) + fy (a, b)(y − b),
F ′′ (0) = fxx (a, b)(x − a)2 + 2fxy (a, b)(x − a)(y − b) + fyy (a, b)(y − b)2
となるので、きちんと導くためには剰余項も調べる必要があるが、(x, y) → (a, b) のとき、
f (x, y) = f (a, b)
+ fx (a, b)(x − a) + fy (a, b)(y − b)
fxx (a, b)(x − a)2 + 2fxy (a, b)(x − a)(y − b) + fyy (a, b)(y − b)2
2
2
2
+ o(|x − a| + |y − b| )
+
を得る。表記を分かりやすくするために、f ′ (a, b) = (fx (a, b), fy (a, b)) や Hesse 行列
(
)
fxx (a, b) fyx (a, b)
f (a, b) =
fxy (a, b) fyy (a, b)
′′
3
を用いると、
)
(
)
) ′′
1(
x−a
x−a
f (x, y) = f (a, b)+f (a, b)
+ x − a y − b f (a, b)
+o(|x−a|2 +|y−b|2 )
y−b
y−b
2
′
(
を得る。
注. f が C 2 級の時は偏微分の順序は関係ないので、Hesse 行列は対称行列となる。
極大・極小の判定(2 変数の場合)
f が C 2 級の時の判定法を考える。一変数の場合に述べたとおり、f が微分可能であるか
ら、停留点について調べれば良い。停留点 (a, b) について、先ほどの二次近似を用いると、
(
)
) ′′
1(
x−a
x − a y − b f (a, b)
f (x, y) − f (a, b) =
+ o(|x − a|2 + |y − b|2 )
y−b
2
であるから、二次関数
(
(
)
x−a
x − a y − b f (a, b)
y−b
)
′′
について調べれば良いが、この二次関数の性質は Hesse 行列 f ′′ (a, b) で決まるので、この
Hesse 行列を調べれば良いことになる。行列について調べる話なので、線形代数の範疇であ
る。ここでは、2 変数の場合の結果だけ述べる。
結果を述べる前に、典型例について考える。(0, 0) を停留点にもつ次の 3 つの関数を考
える。
f (x, y) = x2 + y 2 ,
g(x, y) = −x2 − y 2 ,
h(x, y) = x2 − y 2
すぐにわかるように、f は (0, 0) で極小、g は (0, 0) で極大となる。h は (0, 0) で極大でも極
小でもない。h は x 軸上で考えると (0, 0) で極小、y 軸上で考えると (0, 0) で極大となってい
るが、このように、ある方向に制限すると極大、別のある方向に制限すると極小となってい
る場合、(0, 0) は 鞍点 であるという。
線形代数の結果を用いると、Hesse 行列の情報から、極大・極小・鞍点となる場合を判定で
きる。Hesse 行列 f ′′ (a, b) の行列式を ∆(a, b) = fxx (a, b)fyy (a, b) − (fxy (a, b))2 とおくと、
結果は次のとおり。
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極値の判定法
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• f ′ (a, b) = (0, 0), ∆(a, b) > 0, fxx (a, b) > 0 ならば、f は (a, b) で極小。
• f ′ (a, b) = (0, 0), ∆(a, b) > 0, fxx (a, b) < 0 ならば、f は (a, b) で極大。
• f ′ (a, b) = (0, 0), ∆(a, b) < 0, ならば、(a, b) は f の鞍点であり、f は (a, b) では
極値をとらない。
✒
• f ′ (a, b) = (0, 0), ∆(a, b) = 0 のときは、Hesse 行列だけでは判定できない。
4
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