力学Ⅰ 力学の基本法則 手を放すとどのように物体は落ちていくのか? 手を放すとなぜ物体は落ちるのか? → 運動学 → 力学 力・・・物体の運動を変化させる原因となる作用(働き) 力の法則によって決まっている ⇒ 後で詳しく見る 3つの力学の基本法則からは導きだせない。 (→以下の説明は,力についてある程度知っていることを前提とする) 物体の運動を決める3つの基本法則 法則・・・実験と考察によって突きとめた経験的事実 数学の定理や公式のように証明できるものではない 自然現象と必ず対応している → 自然を見て理解できる ① 多くの法則の中からいくつかの基本法則を選ぶ。 ② その基本法則を組み合わせる 運動は, ⇒ 他の全ての法則が導き出せる 3つの力学の基本法則 + 力の法則 Ⅰ.慣性の法則 で完全に決定できる。 (合力…物体に働く力の和) 物体に作用する合力 F が F 0 のとき, 物体は 静止しつづける か,等速直線運動 をつづける。 (v 0) ( v 一定 ) v F 0 F 0 v 一定 または ※ 力が作用しなくなると,静止するという考えは間違い! v F 0 止まる( v 0 ) ※ 力が作用しないとき, 「静止しつづけるか,等速直線運動をつづける」よ うに見える観測者(座標系)を前提とする。 =静止している観測者 13 ・・・ 慣性系(慣性座標系) 力学Ⅰ 問1 物体に作用していた力が,ある時刻( t 0 とする)から突然すべて作用 しなくなった。その後,物体はどのような運動をするか。 t 0 のときの速度 v で等速直線運動(等速度運動)を続ける。 問2 自動車が東向きに等速直線運動している。車内で自動車に対して静止し ている運転手に作用している力の和は,ゼロか,ゼロでないか? 等速直線運動している場合,運転手に作用する力の和はゼロである Ⅱ.運動の法則 質量 m [kg]の物体が,合力 F (t ) を受けながら運動しているとき, 運動方程式: ma (t ) F (t ) が成り立つ。 v a (t ) は物体に生じた加速度 m F (t ) a (t ) 加速度 a (t ) の向きと,合力 F (t ) の向きは,常に同じである(重要!) 練習① 力の単位を[kg] ,[m],[s]を用いて表せ。 F ma より,[力の単位]=[kg]×[m/s2]=[kg・m/s2] この力の単位を, [N] (ニュートン)と呼ぶ。 [N]=[kg・m/s2] 練 習 ② m 3.0 [ kg ] の 物 体 に , a 6.0 [ m/s2 ] の 加 速 度 が 生 じ た 。 作用させた力の大きさ F は? F ma 3.0 [kg] 6.0 [m/s 2 ] 3.0 6.0 [kg m/s 2 ] 18 [ N ] a m F 14 力学Ⅰ 練習③ 北向きに走行している 1200[kg]の自動車がある。時刻 t 0 での速さ は v0 5[m/s]であった。時刻 t 0 にアクセルを踏むと,0[s]と 4[s]のあいだ,自動車には北向きに 7200[N]の一定の力が作用した。 a)自動車に生じた加速度 a の大きさ a と向きを求めよ。 大きさ: a F 7200 [N] m 1200 [kg] 7200 [kg m/s 2 ] 1200 [kg] 6 [ m/s2 ] 向き:北向き b) 0[s]と 4[s]のあいだの速度の変化 v を計算し,時刻 t 4[s]での 速度 v1 を数値で求めよ。北向きを正の向きとする。 速度の変化は, v a t 6 [ m/s 2 ] ( 4 [s] 0 [s] ) 24 [ m/s] v1 v0 v 5[m/s]+24[m/s]=29[m/s] 練習④ m 3.0[kg]の物体に, F (6.0,-9.0) [N]の力を作用させた。物 体に生じる加速度 a を求めよ。 F 1 (6.0,-9.0)[N]=(2.0,-3.0)[m/s2] a m 3.0 [kg] Ⅲ.作用・反作用の法則 2つの物体 A と B が力を及ぼしあっているとき, A が B に力 FAB を作用すると,必ず B は A にその力と同じ大きさで 逆向きの力 FBA FAB を作用させる。 この「作用・反作用の法則」は,どんな種類の力にも成り立つ FBA FAB この2個の粒子を1つの物体だと 考えると, A B と は打ち 消しあっていなければならない。 ※「作用・反作用の法則」は,力のつり合い関係ではない!(間違えやすい) 練習⑤ 右図のように,手で床を大きさ 7.0[N] の力 F で垂直に押した。床が手に作用させる力 f を作図し,その大きさを求めよ。 f F 15 力学Ⅰ 大きさ: f F 7.0 [ N ] 練習⑥ (a) 地球から月に作用する重力(引力)の (b) 物体 A から物体 B に作用す 反作用の力を描け。 る力の反作用の力を描け。 地球 月 B A 練習⑦ 滑らかな(摩擦がない)水平な床の上に物体 A と物 a 体 B を接触させて置く。物体 A を水平右向きに一定の大 A B mA mB きさ F0 の力で押し続けると,全体に大きさ a の加速度が 生じた。A が B を押す力の大きさを TB ,B が A を押す力 F0 の大きさを TA とする。 (1) TB と TA の関係を式で答えよ。 TB = TA (2) 物体 A と物体 B について,それぞれ運動方程式を立てよ。 物体 A: m A a F0 TA ・・・① 物体 B: mB a TB ・・・② (3) 力の大きさ F0 を, mA , mB , a で表せ。 TB = TA ∴ なので,①と②より mA a F0 mB a F0 (mA mB )a 作用反作用の法則の意義 現実の大きさがある物体は,たくさんの粒子が集まってできている。 (粒子=原子,分子 を考えればよい) 外から力 F を作用させなくても,物体の内部で粒子同士は 力を及ぼしあっている。 (だから塊になっている) 粒子同士に働く力が,もし,打ち消しあっていなければどうなる? → 外から力 F を作用させなくても,加速度 a が生じることになる。 現実には起こらない。「慣性の法則」や「運動の法則」が成り立つ。 粒子同士に働いている力は,物体内部で互いに打ち消しあっている! 16
© Copyright 2025 ExpyDoc