ミニテスト解答 - 航空宇宙工学分野

航空宇宙工学演習 III
第 1 回ミニテスト 解答例
2014 年 4 月 14 日
南部 陽介
[P1]
梁に加わる荷重 P の反作用は,その荷重を及ぼしている物体に加わっており,大きさが等しく向
きが逆で同一作用線上の力である.梁に加わる反力 Rv の反作用は,梁を固定している壁に加わっ
ており,大きさが等しく向きが逆で同一作用線上の力である.梁に加わる反力 MR の反作用は,梁
を固定している壁に加わっており,大きさが等しく向きが逆の偶力モーメントである.
ポイント
「荷重の反作用は反力」あるいは「反力の反作用は荷重」という解答が多く存在しました.この
解答に至った理由は,「作用・反作用の法則」と「力のつり合い条件」を混同しているためでしょ
う.作用・反作用の法則は,次のようなものです.
物体 A が物体 B に力を及ぼしているとき,同時に,物体 A は物体 B から同じ大きさで
向きが逆の力を同一作用線上に受ける.
ここで重要なことは,作用・反作用を論じるときには,必ず,物体が2つあるということです.今
回の問題で,荷重と反力は,ともに梁に加わっている力であるため,作用・反作用の関係にはあり
ません.
ここは最も基礎であり重要なところなので,もう少しつっこんで考えてみましょう.今回の問題
に関していえば,力のつり合い条件から反力 Rv を求めると −P となり,同じ大きさで向きが逆と
なります.そのため,反力 Rv と荷重 P が作用・反作用の関係にあると誤解したのだと思います.
しかし,両者は同一作用線上にはありませんね.反力 Rv と荷重 P が同じ大きさで向きが逆となっ
たのは,「力のつり合い条件」から得た結果です.常に成立する「作用・反作用の法則」とは異な
り,たまたまそうなっただけです.
仮定と結論が混同しないよう気を付けてください.
[P2]
固定モーメントは偶力によるモーメントであるため,任意の点において同一の値をとる.した
がって,C 点を基準としてもその値は変わらず,MR である.
1
[P3]
C 点を基準に各モーメントを計算すると,荷重 P のモーメントは −P l/2,反力 Rv のモーメン
トは −Rv l/2,固定モーメント MR のモーメントは MR となる.したがって,C 点を基準とした
力のモーメントの総和は
−
P l Rv l
−
+ MR
2
2
(1)
となる.なお,鉛直上向きを正とした.
梁に加わる力は反力 Rv と荷重 −P (ベクトル表記)なので,その合力は,
Rv − P
(2)
となる.
[P4]
いま,梁が静的な平衡状態にあるとするならば,梁に働く合力および力のモーメントの総和は零
と等しい.すなわち,
−
P l Rv l
−
+ MR = 0
2
2
Rv − P = 0
(3)
(4)
を得る.上式を Rv と MR について解くと,
Rv = P
(5)
MR = P l
(6)
を得る.
ポイント
記述を行う際には,以下の点に留意してください.
1. 理由をきちんと書く.「B」と書くのではなく,「A だから B」という形を取るようにしま
しょう.
2. 文章を記号から始めない.「P は...」ではなく,「荷重 P は...」と書く.
3. 導入した記号のすべてを説明する.問題にない記号を使うときは,必ず最初に定義を書く.
[P5]
固定モーメントは,偶力によるモーメントなので,それを作り出している力や作用線までの距離
を考える必要はない.
2
例えば,固定モーメント MR を距離 d だけ離れた偶力 F に分解したとする.両者の関係は
MR = F d
(7)
で与えられる.また,基準点に近い方の力と基準点との距離を h とおく.このとき,偶力のモーメ
ントはそれぞれ −F h と F (h + d) となり,その総和は F d となる.これは,MR に他ならない.
以上のように,任意の偶力に分解したとしても,力のモーメントの総和に変化はない.
ポイント
固定モーメントは混乱を招きやすいようなので,少し補足しておきます.いま,図 1 の (a) のよ
うに,ひとつの単純支持により固定されている梁の先端に荷重を加えたとします.当然,回転して
しまいます.では,図 1 の (b) のように,ふたつの単純支持で固定したらどうでしょうか.この場
合,梁は回転しません.
ここで,(c) 図のように,反力 R1 が作用している支持部に,反力 R2 と同じ大きさのふたつの力
を,それぞれ逆向きに作用させてみます.このふたつの力は,合力もモーメントも零となるので,
梁の状態には何も影響を与えないはずです.さて,(d) 図のように,仮想的に加えた力のうち,反
力 R2 と逆向きの力に着目すると,反力 R2 と偶力となっています.偶力のモーメントは,基準点
によらず一定の値を取るので,これをモーメントで置き換えます.さらに,残りの力を合力に置き
換えます.すると,(e) 図に示した通り,ふたつの単純支持で固定されている状態は,右側の支持
部に,いま置き換えた合力とモーメントが作用している状態と等価であることがわかります.材力
では,この合力を反力,モーメントを固定モーメントを呼んでいるわけです.
以上のように,ある場所に加わる力の組は,任意の場所に加わる,ある力と偶力のモーメントの
組に置き換えることができます.この名前のない定理は,便利ですので,覚えておくとよいと思い
ます.
[P6]
右側部分の系で考えているため,この系に属さない反力や固定モーメントを考慮する必要は
ない.
[P7]
左側部分の断面に働く内力および内力モーメントが,右側部分に働く内力および内力モーメント
の反作用である.
3
反力 R1
反力 R1
荷重
反力 R2
荷重
(b) 二か所単純支持した梁(回転しない)
(a) 一か所だけ単純支持した梁(回転する)
偶力のモーメントを作る
大きさが等しく向きが逆で
同一作用線上の 2 力
(c) 梁の状態に無影響な 2 力を仮想的に追加
モーメントに置き換える
合力に置き換える
(d) 等価変換
(e) b 図と等価な合力とモーメント
図1
固定モーメントの導出
4