第 203 回雑誌会 (Sep. 25, 2014) (1) 鳥取県の砂丘における土壌生成 Ⅱ 砂丘土壌中の粘土鉱物について 飯村 康二,本名 俊正,山本 定博,岡崎 宏樹,沖田 智,川上 健太郎 ペドロジスト 45(2), 84-93 (2001). レビュー:奥 尭史 非固結岩屑土の砂丘未熟土として分類される砂丘地の土壌は,飛砂が堆積することで形成され る。その一方で,砂防林の植生や灌漑などによって砂丘が固定された場合,砂丘地において未熟 な土壌形成も考えられる。既往の研究より,マツ植生下では,粒子の細粒化と粘土鉱物の生成が 報告されている。しかしながら,砂丘の土壌生成に関する情報は限られている。そこで本研究で は,河口に形成された鳥取県の 3 つの砂丘地(千代川河口東部の鳥取砂丘,天神川河口西部の北 条砂丘,および日野川河口西部の弓浜砂丘)を対象として,各砂丘の未熟土に含まれる粘土鉱物 を解析し,各砂丘地の土壌生成について検討した。試料は,11 地点(鳥取砂丘 3 地点,北条砂丘 6 地点,弓浜砂丘 2 地点)の表層ならびに下層から採取した。DCB-酸性シュウ酸塩逐次処理によ る非晶質粘土鉱物の溶出成分量の測定,粉末 X 線回折(XRD)および示差熱分析による結晶質鉱 物の同定を行った。 DCB-酸性シュウ酸塩逐次処理によって鳥取砂丘,北条砂丘,および弓浜砂丘の砂丘砂から Fe, Al,Si の溶出が確認され,検出された Fe,Al,Si の含有率は,土壌中における酸化物量のおよそ 10%~20%であった。また,XRD 分析の結果から,鳥取砂丘,北条砂丘,および弓浜砂丘のマツ 植生下の表層土から,雲母粘土鉱物と緑泥石が主要な鉱物として同定され,その他には,バーミ キュライト,カオリナイト,ギブサイト,およびスメクタイトも同定された。さらに,鳥取砂丘 の下層土においても,各砂丘のマツ植生下の表層土と同様の鉱物が同定された。これらの表層と 下層における鉱物は,砂丘砂を運ぶ千代川上流に分布する三郡変成岩由来の粘土鉱物が千代川に よって輸送され,堆積していると考えられた。弓浜砂丘の下層土においても,鳥取砂丘のマツ植 生下の表層土と比較して,少量であるが同様の粘土鉱物が同定された。このことから,日野川上 流に分布する三郡変成岩が小規模に分布し,日野川によって輸送され堆積していると考えられた。 その一方で,北条砂丘におけるマツ植生下の下層土および畑地からは,XRD 分析によって,珪酸, 酸化鉄,および酸化アルミニウム等の結晶性粘土鉱物が少量検出されるのみであった。これは, 砂丘砂を供給する天神川上流に変成岩類が分布しないためであると推定され,マツ植生下での粘 土鉱物生成が考えられる。以上の結果から,各砂丘の土壌は河川からの土砂供給およびマツ植生 下での粘土鉱物生成によって生成されているとわかった。 (2) し尿処理汚泥の有機高分子凝集剤処理における凝集剤の吸着と凝集汚泥の脱水 性 五十嵐 千秋,佐藤 広昭,鈴木 英友 化学工学論文集 12(6), 694-700 (1986). レビュー:吉田 在秀 近年,下水道やし尿処理施設等の普及に伴い,有機性汚泥の発生量が増大している。そこで, 汚泥処理プロセスにおいて必要コストを削減するために,効果的に汚泥の脱水を行うことが望ま れている。有機高分子凝集剤(ポリマ)は,脱水ケーキ含水率の低下や脱水用助剤として用いら れている。しかしながら,発生する有機性汚泥を対象とした,汚泥の凝集および脱水性に関する 研究例は少ない。そこで本研究では,し尿処理汚泥を対象として,数種類のポリマを用いた吸着試 験ならびに凝集脱水試験を実施し, ポリマの吸着挙動が凝集汚泥の脱水性に及ぼす影響を検討し た。試料は,余剰活性汚泥と硫酸ばん土による凝集沈殿汚泥の混合物であるし尿処理汚泥とした。 また,凝集剤として, ポリジメチルアミノエチルメタクリレート系カチオンポリマとアニオン性 のポリアクリルアミド部分加水分解物のポリマを用いた。なお,吸着試験の測定項目は,飽和吸 着量(Xw*) ,飽和荷電量(Xc*)とした。凝集脱水試験の測定項目は,フロック径(Df) ,重力ろ 過速度(v) ,脱水ケーキ含水比(M) ,およびコロイド荷電量(CC)とした。 吸着試験においてポリマの分子量と各測定項目の関係を比較した結果,低分子量のポリマでは, Xw*とXc*は20時間程度で一定となったが,分子量の増加に伴いXw*とXc*は低下した。凝集脱水 試験において高分子量のカチオンポリマを単独添加したところ,CCがゼロの領域から正の領域に 変化するポリマ添加率(ブレーク点)で,汚泥の脱水性が最良となった。その一方で,低分子量 のカチオンポリマを一定量添加した後,高分子量のアニオンポリマを添加したところ,分離液中 においてアニオンポリマが残留し,アニオンポリマのブレーク点で,汚泥の脱水性が最良となっ た。また,高分子量のカチオンポリマの単独添加と比較して,CCは負となり,Dfとvはそれぞれ 増大し,Mは低下した。以上のことから,カチオンポリマを添加後に,アニオンポリマをブレー ク点まで添加することで,高分子量のカチオンポリマの単独添加と比較して,し尿処理汚泥の凝 集性は向上することが明らかとなった。
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