iPS細胞を用いた角膜再生治療法の開発(PDF:382KB)

再生医療実現拠点ネットワークプログラム キックオフシンポジウム
iPS細胞を用いた角膜再生治療法の開発
~再生医療の実現化ハイウェイ(課題B) ~
【概要】
難治性の角膜疾患の治療には、ドナー角膜を用いた角膜移植法が現在の治療法
ですが、全世界的なドナー不足の問題や拒絶反応の問題を抱えています。これらの
問題を解決するために、iPS細胞を用いた新しい角膜再生治療法の開発に取り組ん
でいます。
(目的) ヒトiPS細胞から角膜上皮および角膜内皮細胞シートを作製します。
【代表研究者】
大阪大学
大学院医学系研究科
教授 西田 幸二
(研究概要) ヒトiPS細胞から移植可能なヒト培養重層上皮細胞シートの作製、また
同時に培養角膜内皮細胞の誘導を行いました。
(成果) ヒトiPS細胞から移植可能な培養上皮細胞シートの作製および機能的な角
膜内皮様細胞を作製することに成功しました。
ヒトiPS細胞から角膜内皮細胞への分化誘導
ヒトiPS細胞由来培養上皮細胞シートの作製と回収
上皮前駆細胞
K14(重層上皮細胞マーカー)
角膜内皮マーカーの発現
ヒトiPS細胞由来
誘導角膜内皮細胞
シート状に回収可能
ZO-1 (内皮マーカー)
重層化培養
Na+/K+ ATPase
(内皮マーカー)
Day2
高い上皮細胞純
度99.2%
分化
角膜内皮と同様にZO-1, Na+/K+ ATPaseを発現
図1.ヒトiPS細胞から分化誘導した重層上皮細胞と細胞シート
図2.ヒトiPS細胞から分化誘導した角膜内皮様細胞
ヒトiPS細胞を分化誘導することにより、高純度の重層上皮細胞を
得ることに成功しました。得られた細胞シートほぼ全て(99%以上)
が重層上皮細胞でした。さらに重層化させることにより、シート状
に回収可能でした。
ヒトiPS細胞を分化誘導することにより、角膜内皮様の細胞群を
作製することに成功しました。作製した内皮細胞は角膜内皮と
同様の細胞形状を示し、角膜内皮と同様の遺伝子を発現を示
していました。
【今後の展望について】
目標 自家iPS細胞由来上皮細胞シート移植のFirst in Man 臨床研究の開始
角膜
上皮
大阪大学
未来医療開発部
CPC
大阪大学医学部
附属病院
大阪大学医学部附属病院
中央手術室
大阪大学
患者から組織採取
iPS細胞
移送
外来
組織からiPS細胞
iPS細胞から
角膜上皮細胞シート製造
細胞シート移植
H28~
目標 他家培養角膜内皮細胞移植のFirst in Man 臨床研究の開始(細胞注入療法)
角膜
内皮
未来医療開発部
CPC
大阪大学
大阪大学
医学部附属
病院
外来
大阪大学
iPS細胞研究中核拠点
大阪大学医学部附属病院
中央手術室
iPS細胞
移送
HLAホモドナー由来再生
医療用iPS細胞ストック
iPS細胞から角膜内皮細胞製造
細胞懸濁液を注入 H28~
図3.角膜上皮再生治療
角膜上皮は拒絶反応が強い
組織であるために、患者さん
自身のiPS細胞を用いた自家
の角膜上皮再生治療法を開
発します。自家のiPS細胞より
角膜上皮細胞シートを製造し、
移植することで、拒絶反応の
無い治療ができると考えてい
ます。H28年度内での臨床試
験の開始を目指しています。
図4.角膜内皮再生治療
角膜内皮は比較的、免疫拒
絶が起きにくい組織であるた
め、他家HLAホモドナー由来
iPS細胞を用いた角膜内皮再
生治療法を開発します。HLA
ホモのiPS細胞より大量の角
膜内皮細胞を製造し、注入
移植が出来るので、多くの患
者さんに対して、安全な治療
ができると考えています。H28
年度内での臨床試験の開始
を目指しています。