大人の化学クラブ2013実施報告

大阪市立科学館研究報告 24, 157 - 158 (2014)
大人の化学クラブ 2013 実施報告
小 野
昌 弘
*
概 要
例 年 実 施 している「大 人 の化 学 ラブ」で、今 回 は、金 や黄 銅 など金 色 に輝 くものについて学 習 した。
本 稿 ではその中 で銅 板 に亜 鉛 をめっきし、その後 加 熱 することで黄 銅 を製 作 した。その内 容 について
報告する。
1.はじめに 
これまでの 大 人 の 化 学 クラブでは、金 をハロゲンが
溶存しているエタノールで溶 かし、乾 電 池 を使 って金メ
1)
2-2.手 順
①水酸化ナトリウム水溶液の調整
ッキを行 う実 験 を何 度 か行 ってきた 。今 回 は、この金
200ml のビーカーに水酸化ナトリウム 24gを量りとり、
メッキの実験と真鍮 を製 作 する実 験を行 い、主 にメッキ
水を加えて 100mlとする。その後、ガラス棒でかき混ぜ
に関 する話 題 や、金 属 の特 性 について解 説 する実 験
て、溶かす。
教室を開催した。当 館 では、初 めて行 った真 鍮の製 作
実験をここで紹介する。
②亜鉛粉末を溶かす (各人の作業)
亜鉛粉末2gをシャーレ(φ70×d15 ㎜)に入れる。そ
の後、メスシリンダーで水酸化ナトリウム水溶液を 15ml
加 えて、かき混 ぜる。電 気 コンロにそのシャーレを置 き、
火 力を3にして加 熱する。沸 騰に近くなると、水 酸 化ナ
トリウム水 溶 液 のミストが飛 び始 めるので、顔 を近 づけ
てミストを吸わないように注 意 が必要である。なお、この
作業で、亜鉛が完 全に溶けてなくなるわけではなく、か
なりの量が残る。
③亜鉛メッキ
図 1.印 刷 上 分 かりにくいが、左 端 の葉 の形 状 をしたものが
水 酸 化 ナトリウム水 溶 液 が 軽 く 沸 騰 したら、電 熱 器
黄 銅 になり、金 色 になっている。
の電 源を切り、ピンセットでシャーレの中 に銅 板を入れ
また、真 ん中 の板 は、左 から赤 色 の銅 板 、銀 色 の亜 鉛 めっ
る。加 熱は、銅 板の色 が銅 色から銀 色 になるまで液 中
きされた板 、右 端 が真 鍮 となった金 色 の銅 板 。右 端 のがび
につけておく(図 2)。両 面 が銀 色 になったら、500ml ビ
ょうも板 と同 じ順 番 で並 んでいる
ーカーに 入 れた 水 の 中 で軽 くゆすぐ 。さ らに 、水 道 の
流 水 できれ いに 洗 い、キムワイプ ( 紙 タオル ) で水 分 を
2.実験方 法
ぬぐう。
2-1.使 用 物
銅 板 、亜鉛 粉 末 、水 酸 化ナトリウム
 *
大 阪 市 立 科 学 館 /中 之 島 科 学 研 究 所
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④真鍮への変化
小野 昌弘
亜 鉛 Zn +4OH - → [Zn(OH) 4 ] 2
銅
[Zn(OH) 4 ] 2
-
+2e
-
-
+2e-
→ Zn +4OH -
亜 鉛 を水 酸 化 ナトリウムに溶 かすことで、テトラヒドロ
キソ亜 鉛 ( Ⅱ )酸 イオンを作 る。このイオンが亜 鉛 上 に
析出することでめっきされ、銀色になる。
その後 、電 熱 器 で加 熱 すると、亜 鉛 と銅 の反 応 によ
り、合金の真鍮ができ、金色になる。
亜鉛の融点は、約 420℃ であり、加熱することで、
薄 くめっきされている亜 鉛 が溶 け、銅 の表 面 に溶 け込
む。この混ざり具合で金色に見える。
図 2.シャーレ上 の銅 板
3.その他
・今回使用した銅板は、厚 さ 0.1 ㎜。楓の葉 形に切り
出したものを練習用にめっきした。その後、銅板にフ
リーで絵を描いてもらい、それをめっきした。
・また、h10×w40mm の銅板に油性マジックで文字な
どを書き、本 実 験 を行うと、マジックの部 分 だけ亜 鉛
がのらないためその部 分 が赤 色 の銅 のままになる。
ただし、めっきされた部 分 との色 の違 いが分かりにく
い場合がある。
4.参考文 献
図 3.電 熱 器 の上 の銅 板 。亜 鉛 がめっきされた後 の状 態 の
ものを、電 熱 器 で加 熱 すると表 面 が真 鍮 に変 化 する。
電熱 器の上に金 網 を敷 いて、③で亜 鉛 めっきをした
銅 を置 く(図 3)。電 熱 器 のスイッチを3にセットする。置
いていると次第に亜 鉛 メッキの銀 色が金 色 に変 化して
くる 。色 の 変 化 が 始 まった ら、銅 板 を 電 熱 器 か ら 下 ろ
す。
300ml ビーカーの中に入れた水で水 冷 すると、一気に
黄金色となり、真鍮が完 成 する。この場 合 、加 熱しすぎ
ると、黄銅の色が、茶 色 くなったり、焦 げたような色にな
り、きれいな金 色にならない。そのため、銀 色 が黄銅 色
~金 色 に 変 化 を 始 めた ら す ぐ 加 熱 を やめ 、水 に 浸 す
方が良い。
2-3.反 応
本実験での反応は以 下の通 りである。
亜 鉛と水酸化ナトリウムの反 応
Zn +4OH - → [Zn(OH) 4 ] 2- +2e
-
2H 2 O + 2e
-
→ 2OH - + H 2
銅 と 加 熱 した 、テト ラヒド ロキソ亜 鉛 (Ⅱ) 酸 イオンを
含む水溶液の反 応。
1)小 野 昌 弘 「大 人 の化 学 クラブ 2009 実 施 報 告 」
大 阪 市 立 科 学 館 研 究 報 告 第 20 号(2010)