問題 1.1. 縦, 横, 高さが x, y, z の直方体内の質量 m の室対は基底エネルギー µ ¶ k2 1 1 1 E(x, y, z) = + + 8m x2 y2 z2 (k は物理定数) となる. 直方体の体積 V0 = xyz が一定であるとき, 基底エネ ルギーの最小値を求めよ. 解. x > 0, y > 0, z > 0 なので z = V0 /xy を E(x, y, z) に代入すると, µ ¶ k2 1 1 x2 y 2 F (x, y) := + + 8m x2 y2 V02 となる. 1/x2 > 0, 1/y 2 > 0, x2 y 2 /V02 であるから相加平均と相乗平均の関係 より, F (x, y) ≥ 3k 2 −2/3 V 8m 0 1/3 となり, 等号は 1/x2 = 1/y 2 = x2 y 2 /V02 のとき, すなわち, x = y = V0 の とき、またそのときに限り成立する. 従って E(x, y, z) の最小値は x = y = 1/3 z = V0 −2/3 のときの値 (3k 2 )V0 /8m である. 解. x > 0, y > 0, z > 0 なので z = V0 /xy を E(x, y, z) に代入すると, D = {(x, y) | x > 0, y > 0} を定義域とする関数 µ ¶ 1 1 x2 y 2 k2 F (x, y) := + + 8m x2 y2 V02 が得られる. ∂D = ∅, ∂(Dc ) = {(x, y) | x = 0, y ≥ 0} ∪ {(x, y) | y = 0, x ≥ 0} ∪ {∞} である. µ ¶ 1 xy 2 k2 − 3 + 2 = 0, 4m x V0 µ ¶ 2 k 1 x2 y Fy (x, y) = − 3 + 2 = 0, 4m y V0 Fx (x, y) = 1/3 を解くと, x > 0, y > 0 より x = y = V0 を得る. ¶ µ k2 y2 3 Fxx (x, y) = + 2 , 4m x4 V µ ¶ 0 k 2 xy , Fxy (x, y) = 2m V02 ¶ µ x2 k2 3 + , Fyy (x, y) = 4m y 4 V02 であるからヘッセ行列 H(x, y) は 2 ³ ´ y2 k 3 + 2 4 4m 2 x³ V´0 k 2m xy V02 k2 4m k2 2m ³ ³ 3 y4 xy V02 + ´ x2 V02 ´ 1/3 1/3 である. したがって (x, y) = (V0 , V0 ) におけるヘッセ行列は à ! −4/3 −4/3 k 2 V0 /m k 2 V0 /2m 1/3 1/3 H(V0 , V0 ) := −4/3 −4/3 k 2 V0 /2m k 2 V0 /m 1/3 1/3 −4/3 1/3 1/3 , V0 ) = (3/4)k 2 V0 /m > 0, tr H(V0 , V0 ) = 1/3 1/3 > 0 となる. 従って, (x, y) = (V0 , V0 ) は F (x, y) の極小点で −2/3 /8m となる. あり, 極小値は (3k 2 )V0 y < ∞ のとき limx→0 F (x, y) = ∞ であり, x < ∞ のとき limy→0 F (x, y) = ∞ である. x = r cos t, y = r sin t とおくと µ ¶ k2 1 1 r4 sin2 t cos2 t F (x, y) = + + 8m r2 cos2 t r2 sin2 t V02 となるので, det H(V0 −4/3 /m k 2 V0 であり, limr→∞ F (x, y) = limr→0 F (x, y) = ∞ である. 従って (x, y) = 1/3 1/3 1/3 (V0 , V0 ) は F の最小点である. xyz = V0 より x = y = V0 のとき 1/3 1/3 1/3 1/3 z = V0 であるから, E の最小値は (x, y, z) = (V0 , V0 , V0 ) のときの −2/3 値 (3k 2 )V0 /8m である. 解. g(x, y) = xyz −V0 とおく. 関数 E(x, y, z) の g = 0 における定義域は D = {(x, y, z) | x > 0, y > 0, z > 0} である. ∂D = ∅, ∂(Dc ) = {(x, y, z) | x = 0 y ≥ 0, z ≥ 0} ∪ {(x, y, z) | y = 0 x ≥ 0, z ≥ 0} ∪ {(x, y, z) | z = 0 x ≥ 0, y ≥ 0} ∪ {∞} である. k2 F (x, y, z, λ) := 8m µ 1 1 1 + 2+ 2 x2 y z ¶ + λ(xyz − V0 ) とおく. k2 ∂F k2 ∂F k2 ∂F =− + λyz, = − + λxz, = − + λxy, ∂x 4mx3 ∂y 4my 3 ∂z 4mz 3 ∂g ∂g ∂g ∂F = xyz − V0 , = yz, = xz, = xy ∂λ ∂x ∂y ∂z である. 従って, dF = 0 であることと, 1/3 (x, y, z, λ) = (V0 1/3 , V0 1/3 , V0 −5/3 , (k 2 /4m)V0 ) であることは同値である. 一方, ∂g ∂g ∂g = = =0 ∂x ∂y ∂z 1/3 をみたす (x, y, z) は D には存在しない. したがって, (x, y, z) = (V0 1/3 , V0 1/3 , V0 が E の g = 0 における極点の候補である. G(x, y) = E(x, y, V0 /xy) とおく. G の定義域は, R = {(x, y) | x > 0, y > 0} である. ∂R = ∅, ∂(Rc ) = {(x, y) | x = 0, y ≥ 0} ∪ {(x, y) | y = 0, x ≥ 0} ∪ {∞} である(以下略). ) 問題 1.2. 四種の対立形質 A, B, O は四種の血液型 A, B, O, AB を決める. Hardy-Weinberg の法則によると二種の異なった形質をもつ個人の人口にお ける割合 P は, P = 2pq + 2qr + 2rp をみたす. ここで, p, q, r は人口に対する血液型が A, B, O である人の割合 である. p + q + r = 1 のとき, P の最大値を求めよ. 解. r = 1−p−q を 2pq+2qr+2rp に代入して得られる定義域 D := {(p, q) | 0 ≤ p + q ≤ 1} の関数 Q(p, q) := 2pq + 2q(1 − p − q) + 2(1 − p − q)p を考える. ∂D = {(p, q) | p = 0, 0 ≤ q ≤ 1} ∪ {(p, q) | q = 0, 0 ≤ p ≤ 1} ∪ {(p, q) | 0 ≤ p ≤ 1 p + q = 1}, ∂(Dc ) = ∅ である. 整理すると Q(p, q) = 2p + 2q − 2pq − 2p2 − 2q 2 となる. Qp (p, q) = 2 − 2q − 4p = 0, Qq (p, q) = 2 − 2p − 4q = 0 を解くと, (p, q) = (1/3, 1/3) を得る. Qpp (p, q, r) = −4, Qpq (p, q, r) = −2, Qqq (p, q, r) = −4, であるから, ヘッセ行列 H は à ! −4 −2 H= −2 −4 となり, det H = 12 > 0, tr H = −4 となる. したがって (p, q) = (1/3, 1/3) は極大点となり, Q(1/3, 1/3) = 2/3 は極大値となる. Q(0, q) = 2q − 2q 2 = −2(q − 1/2)2 + 1/2, (0 ≤ q ≤ 1) は q = 1/2 で最 大値 1/2 をとる. 同様に Q(p, 0), (0 ≤ p ≤ 1) は p = 1/2 で最大値 1/2 をと る. p + q = 1 上では Q(p, 1 − p) = 2p − 2p2 (0 ≤ p ≤ 1) となり p = 1/2 で最大値 1/2 をとる. 従って Q(p, q), {(p, q) | 0 ≤ p + q ≤ 1} の最大値は (p, q) = (1/3, 1/3) のときの値 2/3 である. 問題 1.3. 三点 (2, y1 ), (4, y2 ), (1, y3 ) が与えられたとき, 各点との y 軸方向 の距離の二乗の和が最小になる直線の方程式を求めよ. 解. 求める直線の方程式を y = ax + b, (a, b ∈ R) とおくことができる. 与え られた点との y 軸方向の距離の二乗の和は L(a, b) = (2a + b − y1 )2 + (4a + b − y2 )2 + (a + b − y3 )2 となる. 定義域は R2 である. ∂R2 = ∅, ∂((R2 )c ) = {∞} である. 整理すると, L(a, b) = 21a2 +14ab+3b2 −2(2y1 +4y2 +y3 )a−2(y1 +y2 +y3 )b+(y12 +y22 +y32 ) となる. La (a, b) = 42a + 14b − 2(2y1 + 4y2 + y3 ) = 0, Lb (a, b) = 14a + 6b − 2(y1 + y2 + y3 ) = 0 の解 (α, β) は 1 (−y1 + 5y2 − 4y3 ), 14 1 β = (y1 − y2 + 2y3 ) 2 となる. ヘッセ行列 H は à ! 42 14 14 6 α= であるので, det H > 0, tr H > 0 である. 従って, (α, β) は極小点である. a = r cos t, b = r sin t とおいたとき, L(a, b) =r2 (21 cos2 t + 14 cos t sin t + 3 sin2 t) − 2r(2y1 + 4y2 + y3 ) cos t − 2r(y1 + y2 + y3 ) sin t + (y12 + y22 + y32 ) である. 21 cos2 t + 14 cos t sin t + 3 sin2 t = 21(cos t + (sin t)/3)2 + (2/3) sin2 t > 0 であるから, limr→∞ L(a, b) = ∞ である. 従って (α, β) は最小点である. よっ て求める方程式は y= 1 1 (−y1 + 5y2 − 4y3 )x + (y1 − y2 + 2y3 ) 14 2 となる. 一般の場合のラグランジュ未定乗数法 U ⊂ Rn とする . f : U → R, gi : U → R (i = 1, . . . p, p < n) が一回連続偏 微分可能であるとする. F (x1 , . . . , xn , λ1 , . . . , λp ) := f (x1 , . . . , xn ) + p X λi gi (x1 , . . . , xn ) i=1 とおく. (y1 , . . . , yn ) ∈ U が gi (x1 , . . . , xn ) = 0 (i = 1, . . . , p) のもとでの f の 極点であるならば, dF (y1 , . . . , yn ) = 0 であるかまたは x1 , . . . , xn から p 個取 り出してできる任意の xi1 , . . . , xip について g = (g1 , . . . , gp ) のヤコビ行列式 ¯ ¯ ¯∂g /∂x · · · ∂g1 /∂xip ¯¯ i1 ¯ 1 ¯ ¯ .. .. ¯ ¯ . . ¯ ¯ ¯ ¯ ¯∂gp /∂xi1 · · · ∂gp /∂xip ¯ の (y1 , . . . , yn ) における値が 0 になる. 二変数関数の最小値の求め方 以下の議論は一般の多変数関数の場合も同様である. D ⊂ R2 ∪ {∞} かつ ∞ 6∈ D とする. D の R2 ∪ {∞} における補集合を Dc とかく. D 内の点は次の二種類に分類される. • D の内部 Di にある点, • D の境界 ∂D にある点, 注. {(x, y) | x2 + y 2 < a2 x ≥ 0} の内部は {(x, y) | x2 + y 2 < a2 x > 0}, 境界 は {(x, y) | − a < y < a x = 0} である. Rc の境界は {∞} である. F (x, y) を D ⊂ R2 上で定義された二回連続微分可能な関数とする. F の最 小値は存在する場合もあれば存在しない場合もある. F の最小値が存在しないことと, Dc の境界の点 p で, 任意の q ∈ D にたい して lim F (x, y) < F (q) (x,y)→p, (x,y)∈D となるようなものが存在することは同値である. 逆に言うと F の最小値が存在することと, Dc の境界の任意の点 p にたいし て, q ∈ D で lim (x,y)→p, (x,y)∈D F (x, y) ≥ F (q) となるようなものが存在することは同値である. 最小値をとる場合, 最小点となりうるのは次の点である. • 極小点 (∈ Di ), • ヘッセ行列の行列式が 0 になる点 (∈ Di ), • D の境界上の点. 従ってそれぞれの点における F の値を計算して, それらのうち最小なものが F の最小値である. 注. D = {(x, y) | x2 + y 2 ≤ 1, 0 < x ≤ 1} のとき, D の境界は y 軸を含まない. 注. 最小値が存在するとし, 停留点 (∈ Di ) がただ一つであるとする. このと き最小点は D の境界上の点であるかまたは停留点である. D に境界がなけれ ば停留点が最小点である. Lemma 1. 定義域が R2 の関数 F (x, y) が lim(x,y)→∞ F (x, y) = ∞ を満た すとする. F が停留点をただ一つ持ち, それが極小点であれば, 停留点は最小 点となる. Proof. ∂R2 = ∅, ∂((R2 )c ) = {∞} である. 仮定より任意の q ∈ R2 にたいし て lim(x,y)→∞ F (x, y) > F (q) であるから, F には最小値が存在する. 仮定よ り F が停留点をただ一つ持ち, それが極小点であり, ∂R2 = ∅ であるから, 停 留点が最小点になる.
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