練習問題 No. 2

画像処理とフーリエ変換 練習問題 No.2
桂田 祐史
katurada AT meiji.ac.jp
http://nalab.mind.meiji.ac.jp/~mk/fourier/
2014 年 10 月 24 日, 訂正 2015 年 1 月 14 日
問 10. (宿題 1) (h については、デルタ関数を知っている人だけ解答せよ。) 次の 3 つの関数の Fourier
級数を求め、コンピューターを用いて部分和のグラフを描け (何項取るかは、いくつか試してから自分
で決めて)。f , g, h の関係について気づいたことがあれば説明せよ。
f (x) = |x| (x ∈ [−π, π]), (f は周期 2π),


(x ∈ (0, π)),
 1
g(x) =
(g は周期 2π),
0
(x = 0, ±π),

 −1 (x ∈ (−π, 0))
∑
h(x) = 2
(−1)n δ(x − nπ) (δ は Dirac のデルタ関数).
n∈Z
直交性 (内積)
過去の経験によると、関数の内積を使う場面で、何でもかんでも、一々積分に直して計算する人が多
いですが、しばしば内積の記号のまま計算出来ます。
内積に慣れて欲しいので、なるべく自分の手で以下の問題を解いてみて下さい。見かけはものもの
しいですが、やってみると、大したことのない問題が多いです。(問 15 だけ考える必要がある。)
問 11. R で連続で、周期 2π の、複素数値の周期関数全体の集合を X とする。関数の和や複素数
倍を自然に定義して、X は C 上のベクトル空間 (線型空間) になる (これは既知として良い)。さらに
f, g ∈ X に対して
∫
π
(f, g) :=
f (x)g(x)dx
−π
と定めると、次の (i), (ii), (iii) が成り立つことを示せ。
(i) 任意の f ∈ X に対して (f, f ) ≥ 0. 等号が成立するためには f = 0 が必要十分である。
(ii) 任意の f, g ∈ X に対して、(g, f ) = (f, g).
(iii) 任意の f1 , f2 , g ∈ X, λ1 , λ2 ∈ C に対して
(λ1 f1 + λ2 f2 , g) = λ1 (f1 , g) + λ2 (f2 , g) .
• (i), (ii), (iii) が成り立つ C 上のベクトル空間を、C 上の内積空間と呼ぶ。
• 実数値関数だけを考える場合にも同様のことが成り立つ。その場合は R 上の内積空間という。
次の 2 問は C 上の内積に慣れてもらうためのものです (どちらも内積の条件 (ii), (iii) を使います。)。
1
問 12. C 上の内積空間 X では、任意の f, g1 , g2 ∈ X, λ1 , λ2 ∈ C に対して、次式が成り立つことを
示せ。
(f, λ1 g1 + λ2 g2 ) = λ1 (f, g1 ) + λ2 (f, g2 ) .
問 13.
C 上の内積空間 X では、任意の f, g ∈ X に対して
(f + g, f + g) = (f, f ) + 2 Re(f, g) + (g, g)
が成り立つことを示せ。(Re(f, g) は、複素数 (f, g) の実部という意味である。)
(注: R 上の内積空間の場合は、(f + g, f + g) = (f, f ) + 2(f, g) + (g, g) という見慣れた式が得ら
れる。)
問 14.
(♯)
任意の内積空間 X について、
(∀f, g ∈ X)
|(f, g)|2 ≤ (f, f ) (g, g)
(等号 ⇔ f , g が 1 次従属)
シュワ ル ツ
が成り立つ (この不等式を Schwarz の不等式と呼ぶ)。10/10 の授業で証明をしたが、それとは違う次
の方針で証明をしてみよう。簡単のため、まず R 上の内積空間数を考えることにする。任意の実数 t
に対して、(i) より
(tf + g, tf + g) ≥ 0.
これを (ii), (iii) を使って変形すると
t2 (f, f ) + 2t(f, g) + (g, g) ≥ 0.
これを t についての 2 次式とみて、(♯) を導け。(注意: 2 次の係数が 0 かもしれないので慎重に。)
問 15.
前問を C 上の内積空間の場合に解け。 (工夫が必要で、少し難しい。)
問 16.
内積空間の条件 (i) のかわりに
(i′ ) 任意の f ∈ X に対して (f, f ) ≥ 0.
が成り立つが、(f, f ) = 0 であっても f = 0 とは限らない場合がときどき現れる (例えば連続をやめて
「区分的に滑らか」な関数を考えるとき等)。そのとき Schwarz の不等式は成り立つか。
問 17.
X が C 上の内積空間であるとき、
∥f ∥ :=
√
(f, f )
(f ∈ X)
とおくと、以下の (a), (b), (c) が成り立つことを確かめよ。
(a) 任意の f ∈ X に対して ∥f ∥ ≥ 0. 等号が成立するためには f = 0 が必要十分である。
(b) 任意の f ∈ X, λ ∈ C に対して ∥λf ∥ = |λ| ∥f ∥.
(c) 任意の f, g ∈ X に対して ∥f + g∥ ≤ ∥f ∥ + ∥g∥.
問 18. 内積空間の Bessel の不等式を用いて、次の不等式を示せ (ただし an , bn は実 Fourier 係数と
する)。
∞
) 1∫ π
|a0 |2 ∑ (
2
2
+
|f (x)|2 dx.
|an | + |bn | ≤
2
π −π
n=1
1
1
1
(ヒント: √ , √ cos nx, √ sin nx (n = 1, 2, · · · ) が正規直交系であることを用いる。実は不等式で
π
π
2π
なく、等式が成り立つが (Parseval の等式)、その証明はしない。)
2
収束、微分との関係
「数学とメディア」で似たような問題が出たみたいなので、一つくらい。
宿題 1 の関数 f (x) = |x| (|x| ≤ π) の Fourier 級数は
(
)
π
4 cos x cos 3x cos 5x
−
+
+
+ ···
2 π
12
32
52
問 19.
であった。
(1) x = 0 での値を考察して、S奇 =
(2) Parseval の等式
1
π
∫
π
−π
1
1
1
+ 2 + 2 + · · · の値を求めよ。
2
1
3
5
)
|a0 |2 ∑ (
+
|an |2 + |bn |2
2
∞
|f (x)|2 dx =
n=1
1
1
1
+ 4 + 4 + · · · の値を求めよ。
4
1
3
5
π2
π4
(結果だけ書いておくと S奇 =
, Q奇 =
. g(x) でも同様のことが出来るが、あまり面白く
8
96
ない。)
を用いて、Q奇 =
余談
∞
∞
∑
∑
3
S
1
1
S=
,S =
とおくと、S偶 = , S = S奇 + S偶 であるから、S奇 = S.
n2 偶
(2n)2
4
4
n=1
n=1
問 20.
(宿題 2) 任意の自然数 n に対して、R を定義域とする関数 fn , gn


2


(0 ≤ x ≤ n1 )
 n x
 nx
1
2
2
fn (x) =
g
(x)
=
−n x + 2n ( n < x ≤ n )
−nx + 2
n


 0
 0
(それ以外),
を
(0 ≤ x ≤ n1 )
( n1 < x ≤ n2 )
(それ以外),
で定めるとき、以下の問に答えよ (自分でグラフを描いて考えること)。
(1) 各 x ∈ R に対して、 lim fn (x), lim gn (x) を計算せよ。それぞれ f (x), g(x) とおく。
n→∞
∫
(2) lim
n→∞ 0
1
n→∞
∫
|fn (x) − f (x)| dx, lim
n→∞ 0
1
|gn (x) − g(x)| dx を求めよ。
(3) lim sup |fn (x) − f (x)|, lim sup |gn (x) − g(x)| を求めよ。
n→∞ x∈[0,1]
n→∞ x∈[0,1]
(これらの関数の場合、sup は最大値 max に等しい。暇があったら、山の高さを
もやってみよう。)
√
n にした関数 hn で


(x ∈ (0, π)),
 1
問 21. 宿題の問 1 の関数 g (g(x) =
0
(x = 0, ±π), (g は周期 2π) について、(1) 不連続点

 −1 (x ∈ (−π, 0))
を求めよ。(2) 不連続点 x に対して g(x − 0), g(x + 0) を求めよ。(3) 任意の x ∈ R に対して、g の
Fourier 級数は、 g(x) に収束することを示せ。
(g(x + 0), g(x − 0) という記号の意味は分かっているでしょうね、という念押しです。)
3
問 22.
f : R → C が C 1 級, 周期 2π の関数のとき、
∫
∫
1 π ′
1 π ′
An =
f (x) cos nx dx, Bn =
f (x) sin nx dx
π −π
π −π
とおくと (要するに f ′ の Fourier 係数)
A0 = 0,
1
a n = − Bn ,
n
bn =
1
An
n
(n ∈ N)
であることを示せ。ただし an , bn は f の Fourier 係数とする。
(A0 = 0 以外は授業中にやりました。自分で出来るようにしておきましょう、ということです。)
問 23.
数列 {xn }n∈N , {yn }n∈N に対して、
∞
∑
2
|xn | ,
∞
∑
|yn |2 が収束するならば
n=1
n=1
v
v
u∞
∞
∞
∑
u
∑
u∑
u
2t
t
|xn |
|yn |2
xn yn ≤
n=1
n=1
n=1
が成り立つことを示せ。
(N 項までの和についてはどこか (線形代数?) で習ったはず。後は極限を取る議論をきちんとするだ
け。後半は「数学の方法」、「数学解析」、「複素関数」のいずれかを履修した人向け。)
問 24.
複素数列 {xn }n∈N のうち、絶対値の二乗和が収束するもの全体を ℓ2 とおく:
{
}
∞
∑
ℓ2 := {xn }n∈N xn ∈ C (n ∈ N),
|xn |2 < ∞ .
n=1
ℓ2 の要素同士の和、複素数 λ 倍、要素同士の内積を
{xn }n∈N + {yn }n∈N = {xn + yn }n∈N ,
(
λ {xn }n∈N = {λxn }n∈N ,
∞
) ∑
xn yn
{xn }n∈N , {yn }n∈N =
n=1
で定めるとき、ℓ2 は C 上の内積空間であることを示せ。(問 23 の結果を使えば難しくない。)
問 25.
(複素関数論履修者向け) 複素数列 {an }n≥0 , {bn }n∈N に対して、
∞
∑
(|an | + |bn |) が収束する
n=1
ならば、
∞
a0 ∑
+
(an cos nx + bn sin nx)
2
f (x) :=
(x ∈ R)
n=1
とおくとき、以下のことが成り立つことを示せ。
(1) f は連続関数である。
(2) 任意の連続関数 φ に対して、
∞
(f, φ) =
∑
a0
(1, φ) +
{an (cos nx, φ) + bn (sin nx, φ)}
2
(いわゆる項別積分).
n=1
(4 つの ( , ) はいずれも関数の内積 (問 11 で調べたもの) です。Weierstrass の M-test というのを
使うので、習っていない人はこの問題を無視して構いません。)
4