タール合材の動的応答

タール合材の動的応答
藤 居 宏 一
K01ch1FUJII
Dynam1c Response of Tar Mixture
非破壊試験の特徴はいうまでもなく測定対象を破損す
いまハムマーの衝撃(単発)による起振であることを考
ることなく材料試験ができるという点にある.この試験
慮すると,∫(τ)は単位衝撃関数
方法を適用すれば,そのままの状態で材料の諸性質,特
〃)…δ(ブ)i.e.δ(亡)=0,カキ0
にカ学的性質・性状の把握が可能になる.したがってこ
十◎◎
∫
δ(た)∂広=1
の方法によって各種の材料の性質を明らかにし,構造物
−C◎
の設計上はもとより施工上の問題点を解明する資料を求
で表わされると考えられる.
めることができる.さらに現場試験にも応用できる利点
したがって単位衝撃によって起される振動の応答は,
を持っている.
f>0で!(左)=0であることから自由振動と考え
それら構造物のうち道路,堤防の法面などにおいて今
62” 6エ
後ますます利用されると思われる渥青材料を最初にとり
フ玄2’十2ε万十〃2π=0 (1・2)
あげ,タール合材を申心に若干の実験を試みた.
材料の動的応答を求め,その結果を解析して材料の諸
なる線形微分方程式で表わされる.
性質を判定する方法はレオロジー測定法の一つとして近
初期粂件
年よく行なわれている.これは材料に単位衝撃を与えた
”1 =0
云=0
ときその応答が減衰振動をなすと考え,その減衰波形を
舟云=。一ム
解析することによって材料の性質の指標化を試みるもの
である.
を考慮して(1.2)を解くと
1.基 礎 理 論
士。一ε1
五=一θ SinγZ
γ
一般に振動の方程式は次式で表わされる。
62” 6工
ηザイ万一尾”十F(1)
γ二〉〃Lε2
(1.1)
なる解がえられる.〃>ε>0とすると(1.2)は線形減
刎:質量,c:粘性摩擦係数
衰振動を表わす.
尾:ばね定数,F(亡):強制力.
2.材 料
ここでパラメーター
6 尾 F(む)
一=2ε,一=〃2, :!(玄)
〃z 〃z 〃2
実験ではタール合材をとりあげ弾性波試験を行なっ
た.他の物理試験や力学的試験によって求められる結果
と対比するため,合材の安定度試験(Marsha11試験法)
ε:粘性抵抗,〃:固有振動数
を用いて(1.1)を書きなおすと
621 6工
万十2ετ十〃21=!(τ)
に用いるのと同種の供試体を利用した.
タール合材の配合はTable1に示すようにタールの
混合率を基準に設計した.
なお,供試体の寸法はφ10.16×5.08∼10,166刎であ
となる.
※ 農業施設工学研究室
る.その数は各4∼14個である.
これは今まで行なわれた静力学試験の結果より,ター
一162一
J
)vl
)
f ))
) ;
:
{
, E
;
}C
C
*
eC J
1)
;
- -
;
- )VI
)e
) l 8 l
-
.
: c*
163
20-21'C}c j
9 'Ce
. Cec} 7' ,f
・t,_-. A. B. Cv*
tL
3 B i f
AUO 7)
:
i
Table I Percentage content of the mixture
Tar
;
7
:
45
45
43
43
10
42
42
14
41
41
10
39
39
="--'
c )
J C ; xf --=・"---* : >
f
;
v t
r*-
C
5
(1. 2)
v - U
Frg I )J
c* e
f
f
:7 ; i
l7TC ;
:
tLt..-fi
Fig 2
)J
5 t
:
a
;
ecJ( . , f fec l ;
;
)c
; . c ) !
.
/ )
)
:t
4
3
fJ
4.
4
5 7 8 9
5 7 8 9
11
l 1
l Gravel I number
Sand
Filler
C :
i :
.
f
)C
c=ai);
* i a ;
i' E
) .
; t 5J C
I
!:T : )
:
l ;
,
s+ *h**=**p*
t r I gger i nput
response
Xk
l nput
t
transducer
s w e e p
l nput
Xk+1
ll)vk I = I Xk I + IXk+1 l
, .
t,
Flg. 2 Damping oscillogram
*t**i*l
Fig. I Schematic dragram of the test
}
'
7 -
C ; C
c J
T
}c J; .
Fig 2 eC
f fe
:
f
f
・
,
/J¥f
) l
( I :.
T') Ci eC
: )tL
) t
expL8T"
-J =expL7T;l
xkwk+1
f 1wk
v_- Ifxk+1
= 2
}c Ut,_-.
) ; lV*r_.-.
A = Ioglov = M7r
f f l
)
{
;
(7jc z7
J)
IB i ,c-
f f
) jJ ( :I :7Sin D
r
flc;
tL;
)tL .
)ey c a
t
!j
O
;
t-.-
r*-.
.
f
(O 10'C ) ".
: U )7
: .
*. i
(M = Iog*o e = 0.4343)
!
)1
: ecJ:
-
)tL; .
T
2r
27
T'= _.
I =ln2-52
tL
)
r4 I ec V
;
t ;
*
.
f :;
*IcJc ;
l :
) I "
(A) 30'C. (B) 20'C.
:e Aecl) * e 'l l .
B. Ce(:-1) * e
I
)
: 1j; f f
e
;
.
ec
: U 7c
i
(j
;
,
f )J :j e
'rr t : )tL .
> < t :; , E I
;
c=
y hQ) t
;='--.--'=-"E
f
J
;
I
,) J
/ ? ( D8 )7jc 114'C) ec) tLt,_-. Blce
'
C, e
5-J C
n
7'
: A
i
)
2 A A
-
2 M7t (4. 1)
n =2rT'/ (VA )1+
r,_-.
6 . 283
'* - tu
}7j
F I
8 = M ' T' = 4 605
5
r._・'.
E? .
'
:
= T' ¥/ I +0.5372/i2
b
島根大学農学部研究報告
一164一
第/号
する.んの分布は耐g4に示されている.
となる.
これらεと〃との比
無次元数であるんは図からもみられるとおりタール
ε
ん_
〃
小になっており,減衰性が最も弱いことを示している.
を減衰常数という.
従来の静カ学試験でもタールの混合率7∼8%のところ
解析するあたり,波形の周期と振幅を測ることによっ
で弾性的性質が最も強く粘性的性質が最も弱いことが知
の混合率に依存している.混合率7∼8%のところで極
てT!およびη(したがってノ)を知ることができる.
られている.このように試験結果が同じ傾向を示すこと
続いて(41)よりT1と■からεと〃が算出でき
から考えてもこの動的材料試験はかなり有用な方法と思
われる.すなわち減衰常数んが粘性的要素εと弾性的
る.
要素〃との比であることからも,タール合材を粘弾体
[薮璽トTr
とみなす場合,このんがかなり重要な指標と考えられ
減 衰 比Ψ
周 螂丁1
る.
参考までにタール混合率別の各んについて平均値
τ
■「 対数減衰率■
(および標準偏差)を計算してみると次のようにな
る
γ
0.5372水
≒1+0.2686A2
㌔一吋1.1竺が1
タール混合率
平均値(標準偏差)
5%
O.ユ20
(O.029)
7
8
9
0.090
(O.022)
0.078
(0,022)
0.100
(O.024)
11
0.104
(0,020)
固有振動数ηは周期に依存する要素である.したが
って複雑な波形の解析に際してその解読が重要な問題と
Eな3
B1ock d1agram of mterpretat1on
of osc111ogram
5.結果。考察
材料の性質を代表する要素は前述のように,波形の解
析から直接的に算定される減衰比ηと対数減衰率!が
あり,方程式(1・2)の係数である.また係数の比とし
ての減衰常数んおよびノと間に
1一吋1.1壬んゴ]
なる.たとえば記録波形が何種類かの波の合成によって
いるものとすれば,いずれの波が材料固有の周期を表わ
すものかその判別が大切である.ノイズなどと考えられ
るものを除いてみると大略1500∼1600%前後に分布して
いる.
温度規制をした供試体の実験でも同様の傾向がみられ
た.材料の(表面)温度9∼30oCについてん,〃の値
を調べたが相関はみいだせなかった.この温度範囲では
材料の性質について顕著な差異は存在しないように思わ
れる.したがってこの種の実験はより高温(50.C以上)
ん 1z
ノー=”π 一 =1 364 一
〉1一ん2 ’ へ/1一ん2
について行なってみることが望まれる.
今後,タールに限らず他の土木材料についてレオロジ
なる関係が存在する.これらより材料の応答をんにつ
ー的究明と材質の指標化を試みたいと考えている.
いてみればηおよびノの様子も知ることができる,さ
本実験は京都大学農学部農業工学教室の構造実験室で
らに〃を知ればεの値もわかることになる.
以下・資料をんについて整理し,これを申心に考察
行なったものであり,同教室の沢田敏男先生,長谷川高
士先生にご指導を賜った,ここに謝意を表します.
藤居宏一:タール合材の動的応答
165
◎O
O
◎◎OO
O.10
、着ε窒8b幻目五昌昌
9◎8◎O◎ OO◎ 8 80 0 8 00 ③ 0 8 0 0⑥OO ◎ O◎ O ◎◎◎O0 8o
ぐ
O ㌣O◎ O§.8 0。◎08o◎Oo8⑤o.8 ⑨③ ⑤
O.15
O.05
◎
◎
5
7.89
Content of tar
Fig. 4
Dampmg
11
(olo)
constant h for the tar content In the mlxture
166
Summary
Non-destructive methods of testing structures have a good point which we may
measure object as it is. We can understand mechanical properties of materials by the
method. It is known as a general measurement method in rheology, which is the method
to determine these properties by analysing the dynamic response of these oscillations
On properties of materials, there are various problems in designing, constructing and
others, so it is expected that they are made clear by applying method to materials
The excitation to a testpiece is a unit impulse by knocking with the hammer. The
response is received with the transducer, observed with the sychroscope and recorded
with the camera
The dynamic response is expressed in the equation of vibratory motion
dt2 + 2dx
8 dt + n2x O
d2x
where,
: viscous resistanse, n : property frequency.
This motion is a damping oscillation, when n>E>0
The interpretation is as follows.
l. The period T/ and the (double) amplitude vk are measured from the oscillogram
2. The damping ratio v and the logarithmic decrement A are determined
3. The coefficients of the eqaution, E and n, are derived from these factors
4.. The damping constant h is indicated by and n, i, e. h = fln
The coefficient n2 depends on the dynamical elastic modulus and the index h is the
factor concerning the ratio of viscosity to elasticity. The quality of the tar mixture
depends on the ratio of the tar content in the mixture by weight
To determine the mechanical properties of material, two factors are noticed. They are
property frequency n and damping constant h. The relation between the constant h
and percentage contents of tar in the mixture (by weight) is shown in Fig 4. This
result agrees with those from other tests. The method of testing will be much useful
and practical.