鉄道利用の推進 神戸大学経営学部 薩 佳史 通学する際に「電車が遅れた」または「電車が混んでいて大変だった」などといった言葉 をよく耳にするため、交通の面から考えようと思う。日頃利用する交通経路としては道路、 鉄道が多いためここではこの二つの経路で考えてみる。 まず神戸市のように鉄道の利用者が多い場合ではそこに費用の逓増状態が発生している と考えられる。混雑している鉄道の状況で、さらに鉄道の利用者が増えれば車内はより混雑 し、列車に遅れもでるだろう。このとき運行本数の増加による待ち時間の減少を上回る費用 の増加が起こるため、鉄道の社会的費用は逓増するというものである。これを考える基とし てはワードロップの原理を必要としている。 ある目的地に向かう際複数のルートがあるとして、ルート選択においてわれわれの最大の 関心事はいかに早く目的地に到着するか、ということだろう。たとえばある地点 S から目的 地 G に向かおうとする道路利用者が、渋滞情報でルート a が混雑していることを知ったと する。そのときその人は別のルート b を利用することでより早く目的地 G に到着しようと するであろう。しかし、他の人も同じように考えるであろうから、逆にルート b が混雑する ことになって、かえってルート a が混雑しなくなる。こういうことを繰り返すことによって、 最終的にはどちらのルートを利用しても目的地 G までの所要時間が変わらないような均衡 状態に落ち着く。 これを定式化したのが J.G.ワードロップで正式には次のように表現される。「起終点間に 存在する可能な経路のうち、利用される経路については所要時間が皆等しく、利用されない どの経路のそれよりも小さい。」このワードロップの原理を基に、鉄道の費用逓増状態を図 にすると下図のようになる。 鉄道の費用曲線 XC は右下がりになっており逓増している。ワードロップの原理にしたが って均衡点は A であり、鉄道、道路の利用量はそれぞれ OxQ、OyQ となって、所要時間は C である。これをよりよい状況にするには鉄道への補助によるサービスの改善である。鉄道 に補助を与えることで費用曲線が XC から XC’に低下したとすると、均衡点は A’になり鉄道、 道路の利用量はそれぞれ OxQ’、OyQ’になって、所要時間は C’に短縮される。これは具体的 には、鉄道への補助によって複線化がすすんだり、車両の増結やホームの拡張が行われるこ とを意味し、これによって時間費用が低下することになる。 このように神戸市のような大きな都市では利用量の多い鉄道などの公共交通機関に対し て補助をむけることで交通面全体の利便性が高まり、よりよい市になりうる可能性がうまれ ると考えられる。 1 C:時間費用 Q:利用量 XC:鉄道の費用曲線 YC:道路の費用曲線 XC A YC C XC’ A’ C’ Oy Q’ Q Ox 2
© Copyright 2024 ExpyDoc