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研究背景,目的
初期値の条件
系列の周期長と双曲線構造
.
.
有限体上のロジスティック写像による生成系列
に対する長周期を保証するための条件
†
土屋和由
†
‡
野上保之
株式会社光電製作所
‡
岡山大学工学部
2014 年 09 月 04 日 政策研究大学院大学
日本応用数理学会 2014 年度年会
研究部会 OS:数論アルゴリズムとその応用 (2)
土屋和由, 野上保之
有限体上のロジスティック写像による生成系列
研究背景,目的
初期値の条件
系列の周期長と双曲線構造
. 背景 1:有限体上の写像から生成される系列
. p を奇素数,f (x) ∈ Fp [x] とする.F : Fp → Fp を多項式写
像 F (x) = f (x) とする.再帰式 Xi+1 = F (Xi ) によって定ま
る系列 {Xi } に対して,長周期を保証するための条件は?
.2 deg f (x) ≦ 2 の場合,
1
{Xi } が最大周期長 p を持つ ⇔ f (x) = x + c (c ̸= 0)
. f (x) = ax + b (線形)の場合,
{Xi } が周期長 p − 1 を持つ
(1)(パラメータ条件) :a は F×
p における原始根
⇔
(2)(初期値条件)
:X0 は不動点ではない
3
.
問題
.
deg f (x) = 2 の場合に,長周期が保証されるパラメータ及び初期
値の条件を与えよ.
.
土屋和由, 野上保之
有限体上のロジスティック写像による生成系列
研究背景,目的
初期値の条件
系列の周期長と双曲線構造
. 背景 2:カオス性に基づく系列
. カオス的な振る舞いを乱数性の根拠とする二値系列に関する
研究が行われている.
1
テント写像を利用する系列
ロジスティック写像を利用する系列 ← 研究対象
. ロジスティック写像は 2 次関数であるため,状態遷移の度に
2 倍の演算精度を必要とする.
2
浮動小数点演算による実装
整数上のロジスティック写像を利用する系列
. 素数を法とする演算を採用することにより,演算精度を一定
に保つ.
3
有限体上のロジスティック写像から生成される系列
.
本講演の目的
.
有限体上のロジスティック写像から生成される系列に対して,長
周期が保証されるパラメータ及び初期値の条件を与えること.
.
土屋和由, 野上保之
有限体上のロジスティック写像による生成系列
研究背景,目的
初期値の条件
系列の周期長と双曲線構造
. 有限体上のロジスティック写像から生成される系列
.
Definition (有限体上のロジスティック写像)
.
p を奇素数とする.µp ∈ Fp に対して,写像 LMFp を,
LMFp : Fp
a
→ Fp
7→ µp a(a + 1)
と定義する.写像 LMFp を µp に関する Fp 上のロジスティック写像と
.呼び,µp をコントロールパラメータと呼ぶ.
.
本講演における研究対象
.
初期値 X0 ∈ Fp に対して,再帰式
Xi+1 = LMFp (Xi )
によって定まる系列 {Xi }i≧0 を研究対象とする.
.
土屋和由, 野上保之
有限体上のロジスティック写像による生成系列
研究背景,目的
初期値の条件
系列の周期長と双曲線構造
. 先行研究と研究目標
. SCIS 2013:宮崎 - 荒木 - 上原 - 野上
1
有限体上のロジスティック写像から生成される系列を提案
した.
パラメータの選択に依存して,平均周期長の変動が大きいこ
とを数値実験により示した.
. JSIAM 2013:宮崎 - 荒木 - 上原 - 野上
2
safe prime を適用した場合に,平均周期長の変動が小さくな
ることを数値実験により示した.
. SCIS 2014:宮崎 - 荒木 - 上原 - 野上
3
doubly safe prime p を適用した場合に,周期長が (p − 3)/4
となる系列が存在することを数値実験から得られた予想から
示した.
.
研究目標
.
周期長が (p − 3)/4 となる系列が存在するためのパラメータ及び
.初期値の条件の解明(µp = 4 の場合).
土屋和由, 野上保之
有限体上のロジスティック写像による生成系列
研究背景,目的
初期値の条件
系列の周期長と双曲線構造
. 系列の状態遷移例
.
Example (p = 23, µp = 4)
.
丸で囲まれている値:平方剰余 ̸= 0 ∈ Fp .
四角で囲まれている値:平方非剰余.
.
三角で囲まれている値:= 0 ∈ Fp .
土屋和由, 野上保之
有限体上のロジスティック写像による生成系列
研究背景,目的
初期値の条件
系列の周期長と双曲線構造
. 初期値集合
初期値集合
QHyp
{
( )
(
)
}
LMFp (a)
a
a ∈ Fp |
= 1,
=1
p
p
{
( )
}
a
−1
=
a ∈ Fp |
= 1, #LMFp (a) = 2
p
(
)
}
{
( )
a+1
a
= 1,
=1
=
a ∈ Fp |
p
p
=
.
研究項目
.
1. #QHyp = ? ← 最大周期長に直結
2. LM
Fp |QHyp の簡潔な記述 ? ← 周期長の解析に直結
.
土屋和由, 野上保之
有限体上のロジスティック写像による生成系列
研究背景,目的
初期値の条件
系列の周期長と双曲線構造
. 初期値集合と双曲線構造
a ∈ QHyp に対して,∃b, c ∈ Fp s.t. a = b 2 , a + 1 = c 2 .
よって,C : x 2 − y 2 = 1 を Fp 上の双曲線とすると,(c, b) ∈ C (Fp ).
一方,C (Fp ) の任意の元は,t ∈ Fp − {0} に対して,
)
(
))
( (
1
1
1
1
t+
,
t−
2
t
2
t
と表される.特に,#C (Fp ) = p − 1.
したがって,全射写像
Φ : Fp − {0, 1, p − 1}
→
t
7→
QHyp
{ (
)}2
1
1
t−
2
t
が定義出来る.
土屋和由, 野上保之
有限体上のロジスティック写像による生成系列
研究背景,目的
初期値の条件
系列の周期長と双曲線構造
. 初期値集合の元の個数
.
Theorem (初期値集合 QHyp の元の個数)
.
p ≧ 5 を p ≡ 3 mod 4 を満たす素数とする.
このとき,写像 Φ は 4 : 1 の写像となり,
#QHyp =
p−3
4
が成立する.
.
.
注意(4 : 1 対応)
.
t ∈ Fp − {0, 1, p − 1} に対して,
Φ(t) = Φ(−t) = Φ(t −1 ) = Φ(−t −1 )
が成立する.
.
土屋和由, 野上保之
有限体上のロジスティック写像による生成系列
研究背景,目的
初期値の条件
系列の周期長と双曲線構造
. ロジスティック写像の簡易表現
.
Lemma (ロジスティック写像のパラメータ空間における対応)
.
a ∈ QHyp とする.t ∈ Fp − {0, 1, p − 1} を Φ(t) = a を満たす元とす
る.このとき,Φ(t 2 ) = LMFp (a) が成立する.すなわち,
パラメータ空間ではロジスティ
ック写像は 2 乗写像に対応する.
.
証明
{ (
)}2
{ (
)}2
1
1
1
1
t−
, a+1=
t+
より,
2
t
2
t
{ (
)}2 { (
)}2
1
1
1
1
LMFp (a) = 4a(a + 1) = 4 ×
t−
×
t+
2
t
2
t
{
(
(
)
)}2
1
1
1
1
=
2×
t−
×
t+
2
t
2
t
{ (
)}2
1
1
=
t2 − 2
= Φ(t 2 ).
2
t
a = Φ(t) =
土屋和由, 野上保之
有限体上のロジスティック写像による生成系列
研究背景,目的
初期値の条件
系列の周期長と双曲線構造
. 長周期を保証するための条件
.
Theorem (系列の周期長)
.
p = 2q + 1(q は奇素数)を safe prime,LMFp を µp = 4 に関する Fp
上のロジスティック写像,{Xi } を LMFp によって生成される系列とす
る.X0 ∈ QHyp と仮定する.このとき,系列 {Xi } の周期長は
(1) ordq (2) が偶数ならば ordq (2)/2
(2) ordq (2) が奇数ならば ordq (2)
となる.ただし,
ordq (2) は 2 の F×
q における位数を表す.
.
.
Corollary (系列の周期保証)
.
定理の条件の下で,以下の条件 (1) または (2) を満たすとする.
(1) ordq (2) = q − 1.
(2) ordq (2) = (q − 1)/2 かつ (q − 1)/2 が奇数.
このとき,系列 {Xi } の周期長は (p − 3)/4 (= (q − 1)/2) となる.
.特に,p が doubly safe prime のとき,条件 (1) または (2) を満たす.
土屋和由, 野上保之
有限体上のロジスティック写像による生成系列
研究背景,目的
初期値の条件
系列の周期長と双曲線構造
. まとめと課題
. 有限体上のロジスティック写像から生成される系列に対して,
長周期を保証するためのパラメータ及び初期値の条件を提示
し,理論的保証を与えた.
.2 主結果は,宮崎 - 荒木 - 上原 - 野上(SCIS 2014)の実験的
1
結果を系として含む.
. 初期値集合を双曲線と関連付けることが鍵となる.特に,ロ
ジスティック写像の初期値集合への制限は,双曲線のパラ
メータ空間において 2 乗写像で表現される.
.4 より一般のパラメータに対して,本結果を一般化することが
課題である.
3
「ロジスティック写像」の枠組みでは一般化は困難?
「双曲線」との関連に注目すれば一般化は可能?
土屋和由, 野上保之
有限体上のロジスティック写像による生成系列
研究背景,目的
初期値の条件
系列の周期長と双曲線構造
. 謝辞
.
謝辞
.
.ご清聴ありがとうございました.
土屋和由, 野上保之
有限体上のロジスティック写像による生成系列