平成 26 年度 経済統計分析入門 . 第 11 回 「母平均・母分散の点推定」 原 尚幸 . 新潟大・経済 http://www.econ.niigata-u.ac.jp/˜hara/G-stat/ [email protected] H. Hara (Niigata U.) 母平均・母分散の点推定 Dec 10, 2014 1 / 23 母集団分布の推定 母集団:調査対象の全体 X1 , X2 , . . . , Xn , . . . , XP 無作為標本:母集団から無作為抽出した部分集合 X1 , X2 , . . . , Xn n < P : Xn+1 , . . . , XP の情報がない 統計的推定 母集団 X1 , X2 , . . . , Xn , . . . , XP の分布を無作為標本 X1 , X2 , . . . , Xn の情報を用いて推定すること H. Hara (Niigata U.) 母平均・母分散の点推定 Dec 10, 2014 2 / 23 正規母集団の平均・分散の推定 母集団の分布が正規分布 N (µ, σ 2 ) であると仮定 多くのデータではこの仮定は妥当であると考えられて いる 正規分布 N (µ, σ 2 ) は平均 µ と分散 σ 2 が定まれば ひとつ定まる その平均 µ, 分散 σ 2 の値がわからない 標本から平均 µ と分散 σ 2 に関する情報を抽出し たい H. Hara (Niigata U.) 母平均・母分散の点推定 Dec 10, 2014 3 / 23 正規母集団の推定 母平均 µ, 母分散 σ 2 はそれぞれ P 1∑ µ= Xi , P i=1 P 1∑ σ = (Xi − µ)2 P i=1 2 無作為標本 X1 , X2 , . . . , Xn , n < P Xn+1 , . . . , XP の情報がないので , 正確な µ, σ 2 は わからない 母平均 µ, 母分散 σ 2 を「真の平均」, 「真の分散」 ともいう H. Hara (Niigata U.) 母平均・母分散の点推定 Dec 10, 2014 4 / 23 正規母集団の点推定 点推定 無作為標本 X1 , X2 , . . . , Xn の情報を用いて, µ, . σ 2 の値 を点で推定することを点推定という X1 , X2 , . . . , Xn の情報 ⇒ X1 , X2 , . . . , Xn の関数 ⇒ 統計量 µ ˆ(X1 , . . . , Xn ), . σ ˆ 2 (X1 , . . . , Xn ) 推定に用いる統計量を推定量という 推定量は ˆを付けて µ ˆ, σ ˆ 2 などとあらわす H. Hara (Niigata U.) 母平均・母分散の点推定 Dec 10, 2014 5 / 23 推定量と推定値 無作為標本 X1 , X2 , . . . , Xn は確率変数 実際に観測されたデータはこれらの確率変数の 実現値 確率変数は大文字 X1 , X2 , . . . , Xn で , 実現値は小文字 x1 , . . . , xn で書く習慣がある 観測されたデータ x1 , . . . , xn から計算した推定量 の値 µ ˆ(x1 , . . . , xn ), σˆ2 (x1 , . . . , xn ) を推定値と言う H. Hara (Niigata U.) 母平均・母分散の点推定 Dec 10, 2014 6 / 23 正規母集団の点推定 点推定の目的 無作為標本 X1 , X2 , . . . , Xn の情報だけを用いて µ, σ 2 を できるだけ精度よく推定したい . 精度のよい点推定とは 真の µ, σ 2 にできるだけ近い値で推定すること ⇒ 高い確率で µ, σ 2 と近い値をとるような推定 . どのような推定が精度よい推定なのか? H. Hara (Niigata U.) 母平均・母分散の点推定 Dec 10, 2014 7 / 23 母平均の推定 X1 , X2 , . . . , Xn の関数で P 1∑ µ= Xi , P i=1 を推定することを考える 第一感としては ∑ ¯= 1 µ ˆ=X Xi n i=1 n で推定してはどうか? H. Hara (Niigata U.) 母平均・母分散の点推定 Dec 10, 2014 8 / 23 標本平均 標本平均 標本 X1 , X2 , . . . , Xn の平均 ∑ ¯= 1 µ ˆ=X Xi n i=1 n . を標本平均と言う 標本平均は直感的には母平均のよい推定量に なっていそうだ その良さを客観的に評価できないか? H. Hara (Niigata U.) 母平均・母分散の点推定 Dec 10, 2014 9 / 23 標本平均の性質 問題 (復習) 標本 X1 , X2 , . . . , Xn は無作為なので iid X1 , X2 , . . . , Xn ∼ N (µ, σ 2 ) . ¯ の分布は? そのとき標本平均 X 答え ( ¯ ∼N X σ2 µ, n ) . H. Hara (Niigata U.) 母平均・母分散の点推定 Dec 10, 2014 10 / 23 標本平均の性質 問題 (復習) 標本 X1 , X2 , . . . , Xn は無作為なので iid X1 , X2 , . . . , Xn ∼ N (µ, σ 2 ) . ¯ の分布は? そのとき標本平均 X 答え ( ¯ ∼N X σ2 µ, n ) . H. Hara (Niigata U.) 母平均・母分散の点推定 Dec 10, 2014 10 / 23 標本平均の性質 ¯ の分布 X ( ¯ ∼N X σ2 µ, n ) ¯ =µ E[X] ¯ の期待値は真の母平均 µ X ¯ は平均的には µ をとる X ¯ の分布は正規分布 X 真の母平均 µ の周りに高い確率 で分布 H. Hara (Niigata U.) 母平均・母分散の点推定 µ Dec 10, 2014 11 / 23 不偏推定量 不偏推定量 母平均の推定量に限らず , 一般に推定量の期待値 が真の値になる性質を推定量の不偏性と言う 不偏性を有する推定量を不偏推定量という . 推定量の好ましい性質のひとつ 不偏推定量は一意的には定まらず一般には 複数存在する . H. Hara (Niigata U.) 母平均・母分散の点推定 Dec 10, 2014 12 / 23 推定量の不偏性 推定量の不偏性は好ましい性質と考えられる しかし 不偏推定量は無数に存在する そこで無数にある不偏推定量の中から精度のよい 推定量を選ぶことを考える 精度のよい推定量とは ⇒ 高い確率で真の µ と近い値をとる推定量 H. Hara (Niigata U.) 母平均・母分散の点推定 Dec 10, 2014 13 / 23 推定量の分散 不偏推定量:期待値が真の µ 分散が大きい推定量: 真の µ から離れた値を取る確率も大きい 分散が小さい推定量: 真の µ に近い値を高い確率で取る 同じ不偏推定量なら分散が小さい方が好ましい 推定量と言える µ H. Hara (Niigata U.) µ 母平均・母分散の点推定 µ Dec 10, 2014 14 / 23 最小分散不偏推定量 定理 ¯ はすべての µ の不偏推定量の中で 標本平均 X 分散が最小である . ¯ は最小分散不偏推定量と呼ばれる X ¯ は無数にある不偏推定量 この定理は標本平均 X の中で分散最小という意味で最適な推定量である . ことを示している この事実は非常に重要なので覚えておくこと ¯ を用いて推定すればよい 要するに母平均 µ は X H. Hara (Niigata U.) 母平均・母分散の点推定 Dec 10, 2014 15 / 23 母分散の推定 次に X1 , X2 , . . . , Xn の関数で母分散 P 1∑ σ = (Xi − µ)2 P i=1 2 を推定することを考える 第一感としては標本分散 1∑ ¯ 2 S = (Xi − X) n i=1 n 2 で推定してはどうか? H. Hara (Niigata U.) 母平均・母分散の点推定 Dec 10, 2014 16 / 23 標本分散の性質 標本分散 S 2 の平均は [ n ] ∑ 1 ¯ 2 = n − 1 σ2 E[S 2 ] = E (Xi − X) n n i=1 であることが知られている したがって標本分散 S 2 は不偏推定量ではない H. Hara (Niigata U.) 母平均・母分散の点推定 Dec 10, 2014 17 / 23 問題 問題 母分散 σ 2 の不偏推定量をひとつ求めよ ヒント [ E[S 2 ] = E H. Hara (Niigata U.) 1 n n ∑ ] ¯ 2 (Xi − X) i=1 母平均・母分散の点推定 . . n−1 2 = σ n Dec 10, 2014 18 / 23 解答例 ヒント より [ E [ ] n 1 · S2 = E n−1 n−1 n ∑ ] ¯ 2 = σ2 (Xi − X) i=1 したがって 1 ∑ ¯ 2 := (Xi − X) n − 1 i=1 n S02 は σ 2 の不偏推定量 H. Hara (Niigata U.) 母平均・母分散の点推定 Dec 10, 2014 19 / 23 不偏分散 不偏分散 σ 2 の不偏推定量 1 ∑ ¯ 2 := (Xi − X) n − 1 i=1 n S02 . を 不偏分散 という 母分散・標本分散・不偏分散の違いは整理して おくこと H. Hara (Niigata U.) 母平均・母分散の点推定 Dec 10, 2014 20 / 23 最小分散不偏推定量 定理 不偏分散 S02 はすべての σ 2 の不偏推定量の中で 分散が最小 . つまり S02 も最小分散不偏推定量 母分散 σ 2 の不偏推定量も無数に存在する この定理は不偏分散 S02 が無数にある不偏推定量 . の中で分散最小という意味で最適な推定量である ことを示している 証明は省略 この事実も非常に重要なので覚えておくこと H. Hara (Niigata U.) 母平均・母分散の点推定 Dec 10, 2014 21 / 23 不偏以外の推定量 不偏分散 S02 は最小分散不偏推定量 母分散 σ 2 は S02 で推定すればよい では標本分散 1∑ ¯ 2 (Xi − X) S = n i=1 n 2 は不偏分散 S02 より劣るのか? S 2 は不偏性は持たないが , 最尤推定量 と言う性質 のよい推定量であることが知られている σ 2 は S 2 で推定しても構わない H. Hara (Niigata U.) 母平均・母分散の点推定 Dec 10, 2014 22 / 23 不偏推定量の性質 S02 は母分散 σ 2 の不偏推定量ではあるが , v u n √ u 1 ∑ 2 t ¯ 2 S0 := S0 = (Xi − X) n − 1 i=1 は母標準偏差 σ の不偏推定量とはならない ¯ に対し X ¯ 2 も µ2 の不偏推定量では 標本平均 X ない H. Hara (Niigata U.) 母平均・母分散の点推定 Dec 10, 2014 23 / 23
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