保存力と位置エネルギー p62 (一定の場合は W = F・s ) 力や移動方向が一定でない場合の仕事 力や移動方向が一定でない場合も、左の図のように 細かく分割すれば、その微小区間では、力や移動方向は一定。 i 番目の区間で力 Fi がする仕事 ∆Wi は、 Fi+1 Fi Fi+2 ∆Wi = Fi・∆si 物体がAからBまで移動する間に力 F のする仕事 WA θι N ∆si ∆si+1 WA ∆si+2 B = lim Σ Fi・∆si = N ∞ i=1 B B ∫ A F・ds = ∫ A Ft ds Ft はF の B A Bは 移動方向成分 線積分 経路A Bに沿っての積分 Ft = F cos θ (曲線に沿った積分) 質点が任意の点Aを出発して任意の点Bに行く間に、 保存力 : 力の行う仕事が途中の経路によらず一定な力である。 B F 経路1 保存力 B WA ∆s B = ∫ AF・ds は経路によらず一定 経路2 A 問題:左下の図の3つの経路で、質量 4 kg の質点がAからBまで移動するとき、 各経路について重力のする仕事を求めよ。重力加速度は 10 m/s2 とせよ。 上 A 経路1 C 経路2 1m 経路3 D B 下 √3 m 重力は保存力である 質点がAからBに移動するとき、重力のする仕事は経路によらない。(上の経路以外の経路も) 第10回 (6/6) 1 ページ 重力による位置エネルギー(再考) エネルギー:外部に対して行うことができる仕事量 (単位:ジュール[J] ) (仕事をする能力) 滑車 ロープ 壁 左図のように m [kg] の物体にロープをつけると 物体は床まで移動する際に ロープを mg [N]の力で h [m] 引っ張ることができる。 棚 重力 F = mg [N] 棚の高さ h [m] この時物体ができる仕事の量は W = Fs cosθ = mgh [J] cosθ = 1 床から高さ h [m] にある m [kg] の物体は、 床に戻る際 mgh [J] の仕事をすることができる 床 物体がロープを引く力の大きさ=物体に働く重力の大きさ 物体が行った仕事=重力が行った仕事 ↓ 重力による位置エネルギー: 基準点(上の例の場合は床の上)に戻るときに重力の行う仕事 (重力が行う仕事の分、物体は外部に対して仕事ができる。) r0 位置 r にある物体の重力による位置エネルギーU(r) は、 U(r) = ∫ F重力・ds r (Wr r0 = ∫ r0 (基準点はr0) F重力・dsが経路によらず、位置 r だけで決まるから位置エネルギーが定義できる) r 保存力 (どの経路を通ってもできる仕事は同じ) r0 保存力 F保 の位置エネルギー: U(r) = W保r 意味:保存力 F保 の位置エネルギーは、 基準点 r0 = ∫r F保・ds に戻るときに、 保存力 F保 がする仕事 (その分外部に仕事をすることができる。) 保存力であることを 強調するために F保 と 書いたが単に F でよい。 第10回 (6/6) 2ページ 基準点以外のAからBに移動する場合に保存力 F保 がする仕事 保存力だから、どのような経路を通っても値は一定 B B r0 A A W保A B = ∫ F保・ds = ∫ W保A B= 経路1 F保・ds = rA:点Aの位置ベクトル U(rA):点Aにおける 経路2 r0 ∫A F保・ds + ∫ F保・ds -∫ B r0 r0 B F保・ds F保・ds = U(rA) -U(rB) 位置エネルギー W保A A r0 B = U(rA) -U(rB) 保存力のした仕事=位置エネルギーの減少分 (位置エネルギーの減少分だけ外部に仕事ができる) (仕事をした分、位置エネルギーが減った) 問題: 質量 m の物体が高さ hA から 高さ hB に移動するとき、 W保A B = U(rA) -U(rB) が成り立っていることを確かめよ。 W保A hA [m] B = Fs = mg(hA-hB) U(rA) -U(rB) = mghA-mghB = mg(hA-hB) hB [m] 床 閉曲線C 閉曲線に沿って1周したときに保存力がする仕事 ∫C F(r)・ds = WA A ↑ A = U(rA) -U(rA) = 0 閉曲線Cを1周する積分を表す記号 任意の閉曲線に対して上の式が成り立つことは F が保存力である必要十分条件でもある。 第10回 (6/6) 3ページ 1次元問題での位置エネルギー x軸に平行な力 F(r) = [ F(x), 0, 0 ] の力を受け、x軸に沿って運動する質点の場合 (力が位置で決まっている場合) B A x xA xB 質点が A から B まで移動するとき、力 F(r) のする仕事 WAB は WA xB xB A xA B = ∫ x F(r)・ds = ∫ F(x)dx ( F(x), 0 , 0 )・( dx, 0, 0 ) = F(x)dx 経路を x軸上にとると ds = ( dx, 0, 0 ) なので、F(r)・ds = F(x)dx この定積分は始点 xA と終点 xB だけで決まるので、力 F(r) = [ F(x), 0, 0 ] は保存力 (経路は1つしかない、経路によらない) r0 保存力 F保 の位置エネルギー: U(r) = W保r r0 = 0 基準点を原点 x = 0 に選ぶと U(x) = ∫ xF(x)dx ∫ r F保・ds なので x = - ∫ F(x)dx 位置エネルギーと 保存力の関係 (積分形) 0 x で微分すると F(x) F F(x) x で微分すると x で微分 (この面積の変化率) x が 1 増加すると 面積がどれだけ増加するか x ∫ 0F(x)dx dU = -F(x) dx dU F(x) = - dx 位置エネルギーと 保存力の関係 微分形 = -U(x) O x x 保存力 F(x) は位置エネルギー U(x) から導ける 保存力 F(x)は、位置エネルギー U(x) の傾き に-をつけたもの 問題:摩擦力は F(r) = [ F(x), 0, 0 ] のように表せない。理由を説明せよ。 (摩擦力は保存力ではない。 位置エネルギーは定義できない) x 第10回 (6/6) 4ページ x 例1:重力による位置エネルギーの場合 問題①:質量 m の物体の U-x 図と F-x 図を書け。ただし、位置 x は上向きを正とする。 U(x) = mgx F U m F(x) = -mg x O x O 問題②:位置エネルギー U(x) より重力 F(x) を求めよ。 また、重力 F(x) より 位置エネルギー U(x) を求めよ。 ただし、位置エネルギーの基準点は原点Oとする。 保存力 F(x)は、位置エネルギー U(x) の傾きに-をつけたもの 別の言い方をすると 位置エネルギーの 低い ↓ dU 方に向って力が働き、その力の大きさは位置エネルギーの傾き に比例する。 dx 1 m あたりのU の変化量 例2:ばねの弾力による位置エネルギーの場合 問題①:ばねにつながれた物体Aの U-x 図と F-x 図を書け F(x) = -kx x U F x O 問題②:位置エネルギー U(x) より、ばねの弾力 F(x) を求めよ。 また、ばねの弾力 F(x) より 位置エネルギー U(x) を求めよ。 ただし、位置エネルギーの基準点は原点Oとする。 第10回 (6/6) 5ページ x 万有引力の法則(復習) 2物体の間に働く万有引力の大きさ F は、 2物体の質量 m1 と m2 の積 m1m2 に比例し、2物体の距離 r の2乗に反比例する。 m1 F=G F12 r m1m2 r2 G(重力定数)= 6.672×10-11 [m3/kg・s2] m2 F21 F12 と F21 は大きさが同じで互いに逆向きになっており作用・反作用の関係にある 無限遠(基準点) F=0 W は一定の値に 万有引力による位置エネルギー この図は ds が大きすぎ。 実際は ds は r に比べ十分に小さい dr 質量 m2 の質点に作用する万有引力(ベクトル表現) ≒θ r ds F(r) = -G = ds cosθ m1m2 r r2 r - r r (ベクトル表示) :万有引力の向きの 単位ベクトル (大きさが1のベクトル) r・ds = r ds cosθ = r dr r×(ds のうち r の方向の変位 = dr ) 質量 m1 の物体を固定した状態で、質量 m2 の物体をゆっくりと引き離し、距離を無限大にする場合、 万有引力のする仕事は Wr ∞ ∞ r r ∞ = ∫ F・ds = ∫ -G ∞ m m m1m2 r m1m2 1 2 ・ds = - G dr = G ∫ 2 2 r r r r r ∞ |r = -G m1rm2 上記の式は、経路によらず成り立つので、万有引力も保存力である。 万有引力の位置エネルギーの基準点を2物体の距離が無限大の場合とすると 万有引力の位置エネルギーは U万有(r) = Wr ∞= -G m1m2 r r = 0 を基準点にとると発散 Fも∞ また、実際には、 大きさがあるので r = 0 にはできない。 (位置エネルギーとは、基準点に戻るときに、保存力がする仕事) その分、外部に仕事をすることができる 第10回 (6/6) 6ページ 質量 m1 の物体と質量 m2 の物体が x 軸上にあり(1次元問題) 、 質量 m1 の物体は原点に固定されている。質量 m2 の物体の位置を x としたとき、 万有引力による位置エネルギー U(x) は右下の式のようになる。 m1 m2 U(x) = -G x x O m1m2 x 問題:質量 m2 の物体に作用する万有引力の向きと大きさを位置エネルギーより求めよ。 向きは上の図に矢印で書き込めよ。 p64 参考: F(x) = - dU を3次元に拡張 dx ある保存力 F(r) による位置エネルギーが U(r) であるとき Fx = - ∂U ∂x 偏微分 , Fy = - ∂U , ∂y Fz = - ∂U ∂z ∂U : y と z を一定に保って x で微分(その場所でのx 方向の傾き) ∂x ∂U U( x+∆x, y, z )-U( x, y, z ) = lim ∂x ∆x 0 ∆x グラディエントというベクトルの微分演算子 ∇= ( ∂ ∂ ∂ , , ) を使うと ∂x ∂y ∂z F(r) = -∇U(r) = -( ∂U , ∂U , ∂U ) ∂x ∂z ∂y スカラーである位置エネルギー U より ベクトルである保存力 F が求められる 問題:鉛直上向きを z軸のプラスの向きとすると、重力による位置エネルギーは U = mgz である(基準点 は原点)。このとき Fx, Fy, Fz を求めよ。 F(r) = ( , , ) = - ( 0 , 0 , mg ) = ( 0 , 0 , -mg ) 2次元、3次元に拡張しても、保存力 F は、位置エネルギー U の傾きに-をつけたもの 位置エネルギーの低い方に向って力が働き、その力の大きさは位置エネルギーの傾きに比例する。 ∇U は位置エネルギーU の3次元の傾きを表す。gradient というのは、勾配、傾斜、傾きの意 第10回 (6/6) 7ページ ブランコの物理(ブランコの不思議) ブランコを漕げない人はいないと思いますが、 ブランコの漕ぎ方を物理的に説明できますか? ③ ① ② ②の位置で存在する主な力を書き出したが どれも揺れの方向に垂直なものばかり。 後ろから人が押せば、揺れの方向に加速できるが 乗っている人はいったいどうやって自力で漕げるのか? 座り漕ぎは特に難しい・・・ 立ち漕ぎの方がわかりやすい。 (1)ブランコの動画をみて考えてみよう。 (2)おもりとひもを使った振り子の実演を見て考えてみよう。 (3)究極の漕ぎ方とは? 普通、ブランコを漕ぐときは、1往復の振動のうち、半分は何もしない。 行きも帰りも「漕ぐ」にはどうすればよいのか?(人間は前後非対称なので、難しいかも・・・) 答えは、何回か後で説明します。それまで、興味があったら考えてみて下さい。 究極の漕ぎ方に挑戦してもよいかも・・・ 参考・実演:振り子の強制振動 振り子の強制振動の場合は、ひもを持つ手を振動に合わせて左右に動かしている。 ブランコの場合は、支柱が固定されているので、このような振り子の強制振動とは異なる。 復習問題:教科書p69A1,A3 第10回 (6/6) 8ページ 学科 学生番号: 氏名: この講義に関して何か意見や要望、感想等があったら何でも自由に書いて下さい。 面白い物理の情報や、取り上げてほしい話題、不思議に思っていること等あったら書いて下さい。 この紙で今日の出席を確認します。 第10回 6月6日 学科 学生番号: 氏名: この講義に関して何か意見や要望、感想等があったら何でも自由に書いて下さい。 面白い物理の情報や、取り上げてほしい話題、不思議に思っていること等あったら書いて下さい。 この紙で今日の出席を確認します。 第10回 6月6日 偏微分のイメージ 例:重力による位置エネルギーは U = mgh ( g = 10 m/s2 ) m = 0.1 kg とすると U=h つまり、100 g の物体が標高 h [m] にあるとき、 重力による位置エネルギーは、海面を基準点にすると h [J] である。 x軸、y軸を図のようにとると(2次元) 物体が地表にあるときの位置エネルギーU は x と y の関数であり U(x,y)とかける。 標高 h も場所によって変化するので、h(x,y)とかけ、 U(x,y) = h(x,y) である。 y 点P(xp,yp)が 50 m の等高線上 にあるとすると、この点に おける位置エネルギーは U(xp,yp) = 50 である。 P この点線上の地表面の 断面図は下の図のように なっている。 x 点Pにおける-∇U(r)は 点Pにおける斜面の傾きで ボールを置いた時に 転がっていく向きである。 地図の矢印の向き U,h ∂U ∂x とは図の接線の傾きである。 点Pにおける偏微分 50 xp x
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