米国連邦最高裁判所、「船舶( Vessel)とは何か」について判断

GARD INSIGHT - JUNE 2014
米国連邦最高裁判所、
「船舶(Vessel)とは何か」について判断
恒久的に係留されたハウスボートは、「合理的観察者が、その物理的特徴と活動に
目を向けた場合、人や物の海上運搬を目的として設計されたものであるとは考えな
いであろう」という理由から、船舶(vessel)には該当しない。- 米国連邦最高裁
判所
2013 年 1 月 15 日、米国連邦最高裁判所は、Lozman v. City of Riviera Beach1 において、恒久
的に係留されたハウスボートは「合理的観察者が、その物理的特徴と活動に目を向けた場合、
人や物の海上運搬を目的として設計されたものであるとは考えないであろう」という理由から、
船舶には該当しないと判断しました。2 この判断は、約 3,000 米ドルの港湾設備使用料の未払い
を巡る紛争に関してなされたものでした。Riviera Beach 市は、当該ハウスボートに対して、競
売での売却に加えて、最終的に廃棄処分に付すことができる海事先取特権を主張しました。こ
の事件における法的論点は、当該ハウスボートがそうした手続きの対象となるか否か、つまり、
連 邦 海事 法が 適用 される か 否か とい う点 であり 、 ひい ては 、当 該ハウ ス ボー トが 「船 舶
(vessel)」に該当するか否かの判断にかかっていました。
この判決が出る前、各連邦控訴裁判所では、「船舶とは何か」を判断するに際して、
Watercraft3 所有者の意思を勘案するものから、文字どおり「浮かぶものすべて」を含めるもの
1
133 S. Ct. 735, 2013 AMC 1 (2013)
同上 At 739.
3
船、ボート、ホバークラフト、潜水艦など、水辺で使用される乗物全般のことをいい、ただ浮いているだけのいかたなどと
区別される。
2
1
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まで、様々な基準を適用していました。最高裁判所は、この Lozman 事件において、こうした
基準の統一化を図ろうとしたようです。
Lozman 事件は、一地域の、しかも金額的にも小さな事案であるにもかかわらず、その判決は、
特にオフショア業界にとって、とても大きな影響を及ぼすと思われます。ある事実審裁判所が
指摘したように4、「(Lozman 事件は)船舶の定義において「浮かぶものすべて」という基準
を採用する下級裁判所に警告を発するものである」と言えるでしょう。今後は、はしけ、作業
プラットフォーム、海洋掘削・生産施設、水上カジノ・レストランが関わる紛争や事故は、そ
れらが「船舶」に該当するか否かによって結果が左右されることになります。例えば、海事関
係者を保護するための重要な法的概念の 1 つに、海難発生時の責任制限があります。米国では、
責任制限法によって「船舶の所有者」の責任限度額は定められています。 1990 年米国油濁法
(Oil Pollution Act of 1990 [OPA90])は、汚染事故について、船舶の責任限度額を「1 トン当た
りのドル額」算定式(ただし、2,349 万 6,000 米ドル以上とする)に基づいて定めているのに対
し、船舶以外の場合の責任限度額を 7,500 万米ドルと定めています5。Lozman 事件と同様、海
事先取特権が存在するか否か、そしてこれを特定の構造物に対して実行することができるかど
うかは、その構造物が「船舶」に該当するか否かの判断にかかっています。同様に、浮体構造
物上での負傷に対して損害賠償が求められる場合、その申立人が「ジョーンズ法」の船員と認
められるには、当該の浮体構造物が「船舶」である必要があります。
以下、Joanna Lee 氏(ボストン大学ロースクール 3 年生)の寄稿文を基に、Lozman 事件とそ
のオフショアへのる影響について考察します。
Lozman 事件判決は海洋事案にどのような影響を及ぼすか
2013 年 1 月 15 日に、連邦最高裁判所が Lozman 事件において下した判決は、オフショア事案
に大きな影響を及ぼす可能性があります。 6 同裁判所は、「海上での輸送手段として使用する
ことができる…」という法律の文言上「船舶」に該当すると言えるためには、当該 Watercraft
が、海上輸送の「理論上実行可能な手段」であるだけではなく、「現実的に実行可能な手段」
でなければならないと結論を下しました。 7 これにより各地方裁判所は、オフショア事案が船
舶上で発生したものか、あるいは船舶の近くで発生したものかを判断するための共通の基準を
手に入れることができました。しかしながら、この基準の適用には徹底した事実調査が求めら
れることから、結局のところ、Lozman 事件判決によっても明瞭さと一貫性は確保できず、訴訟
費用の増大を招く可能性があります。
I. Lozman 事件判決の分析
Lozman 事件での争点は、上告人 Lozman 氏の水上家屋が、合衆国解釈規定第 3 条の「船舶」の
定義、つまり、「海上での輸送手段として使用されているか、または使用することができる、
あらゆる種類の Watercraft またはその他の人工設備」に該当するかどうかという点でした。8
最高裁判所は Lozman 事件において、当該水上家屋は、「合理的観察者が、その物理的特徴と
活動に目を向けた場合、人や物の海上運搬を目的として設計されたものであるとは考えないで
あろう」という理由から船舶には該当しないと結論付けました。9 同裁判所は、意見の中で、
「合理的観察者」が当該水上家屋を船舶であると判断し得ない理由を次のように列挙しました。
4
Fireman’s Fund Ins. Co. v. Great Am. Ins. Co. of N.Y. 2013 WL 311084, 2013 AMC 567 (S.D.N.Y. 2013)
1851 年海事責任制限法 合衆国法典第 46 編(46 USC)第 183 条
6
133 S. Ct. 735, 2013 AMC 1 (2013)
7
同上 at 739
8
Lozman, 133 S. Ct. at 735, 2013 AMC at 17 (citing to 1 U.S.C. § 3)
9
同上 at 739
5
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当該水上家屋には、舵などの操船装置がなかった。船首や船尾に斜めに張り出した部分がなく、
水面下 10 インチほどの船底の形状は長方形であった。電気を発生・貯蔵する能力はなく、電気
は専ら陸上側と常時接続されたケーブルを通じて確保されていた。各小部屋は、海上用ではな
く、一般的な居室のように見えるものであった。また、各部屋の内側は、防水の舷窓ではなく、
観音開きのような普通の窓から外部を見る構造になっていた。10
また、「自航能力がないことは、決定的なものではないが、船舶には該当しないことを示す物
理的特徴の一つ」でしょう。11 したがって最高裁判所は、「浮くという事実を別にすれば、
Lozman の家には、それが、人や物の海上運搬を目的として設計されたものであることを示すも
のはない」と結論付けました。12
最高裁判所は、Lozman 事件以前にも、Stewart v. Dutra Construction Company においても、あ
る浚渫船を巡って「船舶とは何か」を検討したことがありました。13 同裁判所は、当該浚渫船
が船舶に該当すると結論付けるに際して、当該浚渫船は、「機械、装置、乗組員を海上運搬す
る 」 た め の 「 水 上 輸 送 機 能 を 提 供 し て い る 」 と 指 摘 し ま し た 。 14 当 該 浚 渫 船 に は 他 の
Watercraft と同じように「船長と乗組員、航海灯、バラストタンク、乗組員用食堂」がありまし
た。15 当該浚渫船は、「錨と錨綱を操作するか、または曳航されることによってのみ航行する
ことが可能である」が、実際に移動し、それも頻繁に移動していた。16 同裁判所は、「第 3 条
は、Watercraft が船舶と認められるには、『海上輸送手段として使用されているか、または使用
することができる』ものであることを要求しているに過ぎず、主にその目的において使用され
ていることを要求していない」と判示しました。17 裁判所は、ウォータークラフトは「それが
恒久的に係留されているか、または現実的に輸送もしくは移動不可能な状態にある場合には、
いかなる意味においても海上輸送に『使用することができる』とまでは言えない」と説明しま
した。18
Stewart 事件後、各下級裁判所において、Stewart 事件で示された判決内容の解釈が分かれ、
「『海上輸送手段として』Watercraft を使用することが、現実的に実行可能な手段であるのか、
理論上実行可能な手段に過ぎないのか」という点で、異なった結論が出されました。19
第 5 巡回区控訴裁判所は、Watercraft の所有者の意思を勘案し、所有者の意思が「海運ではない」
場合には、Watercraft は船舶には該当しないとしました。20 同裁判所は、「物理的に航行可能
ではあるが、そうした使用は理論上の考えに過ぎない」と結論付けました。 21 一方、「使用
することができる」ということばを文言どおりに解釈し、「浮かぶものすべて」を含める基準
を採用した裁判所もありました。22 第 11 巡回区控訴裁判所では、Stewart 事件の判示内容を、
「Watercraft の所有者が意図した用途やその時点での Watercraft の実際の移動能力に注目するの
ではなく、現実的な海上輸送手段として機能し得たか否かに注目する」ようにとの指示を各裁
判所に伝えようとしたものであると解釈しました。23
10
同上 at 741(引用内の引用は省略)
同上
12
同上
13
543 U.S. 481, 2005 AMC 609 (2005)
14
Lozman, 133 S. Ct. at 742, 2013 AMC at 8
15
同上
16
同上(引用内の引用は省略)
17
同上 at 495
18
同上 at 494
19
De La Rosa v. St. Charles Gaming Co., 474 F.3d 185, 187, 2006 AMC 2997, 2998 (5th Cir. 2006)
20
同上
21
同上
22
Lozman, 133 S. Ct. at 743, 2013 AMC at 10
23
Bd. of Comm'rs of Orleans Levee Dist. v. M/V Belle Of Orleans, 535 F.3d 1299, 1310 (11th Cir. 2008) (Lozman v. City of
Riviera Beach, Fla., 133 S. Ct. 735 (2013)によって破棄となったケース)
11
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最高裁判所は、Lozman 事件において、こうした相違を無くすことを決めたのでした。24
II. Lozman 事件は海洋事案に関する訴訟にどのような影響を与えたか
裁判所が海事管轄権を有するためには、Watercraft が船舶であるとの認定が必要であることから、
浮体構造物が「船舶」に該当するか否かということが、しばしば、裁判のはじめに問題となり
ま す 。 25 ジ ョ ー ン ズ 法 、 沿 岸 港 湾 労 働 者 災 害 補 償 法 ( Longshore and Harbor Workers’
Compensation Act [LHWCA])、外縁大陸棚法(Outer Continental Shelf Act [OCSLA])などの
連邦法が適用される基準は、その対象が「船舶」であることです。不堪航性に関する一般海事
法の適用の場合も同様です。
ジョーンズ法では、雇用期間中に負傷した船員に対し、過失を理由とする雇用主に対する請求
権を認めています。申立人がジョーンズ法上の船員であるためには、「船舶の船長または乗組
員」でなければなりません。26 LHWCA の第 905 条(b)は、荷役業者その他港湾労働者に対し、
船主の過失により生じた負傷について船主を提訴する権利を認めています。27 同様に、外縁大
陸棚が関係する事案28 に海事法が適用可能か否かは 3 つの要素によって決定されますが、その
うちの 1 つの要素は、「関係する Craft または構造物の種類(つまり「船舶」と認められるか否
か)」です。29 構造物が船舶と認められる場合には連邦海事法が適用されます。30 いずれの
構造物も船舶に該当しない場合には、隣接州の法律が適用されることになります。
各地方裁判所は、Lozman 事件の原則を尊重しながらも、「合理的観察者」が下すであろう内容
を判断するための広範な事実調査分析を実施し、その結果を Lozman 氏の水上家屋に関する最
高裁判所の分析結果と比較することで、自らの判決の正当化を行っていました。
1. Mooney v. W & T Offshore, Inc.事件31においては、メキシコ湾の張力係留式プラットフ
ォーム MATTERHORN SEASTAR が船舶に該当するか否かを巡って争われました。
MATTERHORN SEASTAR は船舶とは認められず、その結果、地方裁判所は、ジョーン
ズ法、LHWCA、不堪航性に関する一般海事法に基づいて、部分的サマリージャッジメ
ント32の申し立てを認めました。残りの申し立てには OCSLA が適用されたため、その
地方裁判所が、隣接州の法律を適用する事物管轄権を有していました。同地方裁判所は、
クラフトの機能と移動能力に関する施設技術者の証言(「MATTERHORN SEASTAR が
直径 32 インチの中性浮力状態の鋼管で外縁大陸棚の底土と海底に恒久的に繋がれてい
る」)を強調しました。33 ここで重要なのは、MATTERHORN SEASTAR が「通常、
既に掘削された 7 つの坑井上の位置にとどまり、坑井から油・ガスを生産し、その油・
24
Lozman 事件以前の船舶の判断に関する法的背景と、Lozman 事件へと導いた Stewart 事件後の詳細な議論については)
David W. Robertson & Michael F. Sturley「Vessel status in Maritime Law: Does Lozman Set a New Course?」44 J. Mar. L. &
Com.393 (2013)を参照。
25
これが常に当てはまるわけではない。構造物が「船舶」でなくとも海事管轄権が存在する場合もある。(例えば、「船舶に
該当しない」乾ドックに関わる海上保険事案において海事管轄権を認容した Catlin (Syndicate 2003) at Lloyd’s v. San Juan
Towing & Marine Services, 946 F. Supp. 2d 256, 2013 AMC 2740 (D.P.R. 2013)を参照。)
26
Robertson & Sturley, supra note 19 (McDermott Int’l, Inc. v. Wilander, 498 U.S. 337, 347, 1991 AMC 913, 926 (1991) and 46
U.S.C. § 30104
27
合衆国法典 33 編第 901 条(33 U.S.C. § 901)以下。第 905 条(b)の規定は以下のとおりである。「本章が適用される負傷が
船舶の過失により生じた場合、当該者またはそれを理由として損害賠償を受ける権利を有する者は、本編第 933 条の規定に従
い第三者として当該船舶に対して訴訟を提起することができるが、雇用主は、当該損害賠償について直接的にも間接的にも船
舶に対して責任を負わない。これと異なる合意または保証は無効とする。」
28
Rodrigue v. Aetna Cas. & Sur. Co., 395 U.S. 352, 355, 1969 AMC 1082 (1969)を参照。(「土地法の目的は、海底、底土の
ほか、本件で取り上げられたものなどの外縁大陸棚に固定された構造物に適用される法律を定めることである。」)
29
Thomas J. Schoenbaum, Admiralty and Maritime Law, 50-51 (5th ed. 2012)
30
Rodrigue, 395 U.S. at 362, 1969 AMC at 1089
31
CIV.A. 12-969, 2013 WL 828308, 2013 AMC 1480 (E.D. La. Mar. 6, 2013)
32
重要な事実について 争いがなく、法律問題だけで判決できる場合に、申立てによってなされる判決
33
同上
4
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ガスに対して処理・分離作業を行った後、接続されている 2 本の輸送用パイプライン経
由 で ル イ ジ ア ナ 州 に 輸 送 し て い る 」 と い う 点 で す 。 34 ま た 、 MATTERHORN
SEASTAR には、「自航のためのシステムはなく、船首に斜めに張り出した部分はなく、
曳航や移動が意図されておらず(ただし、MC 243 での位置決めおよび貯蔵槽の耐用期
間を終えた時点での最終的な除去を除く)、設置されて以来移動することなく、海底に
固定されて」いました。35
2. ルイジアナ州東部地方裁判所は、Warrior Energy Servs. Corp. v. ATP TITAN 事件36にお
いて、生産現場のルイジアナ州沖約 65 マイルに係留された海上生産設備 ATP TITAN は
船舶には該当しないとの判断を示しました。したがって、ATP TITAN に対して一切の対
物請求が行えませんでした。同裁判所は、「2010 年に設置が完了して以来、場所の移動
が行われておらず、また、それを移動させるには、莫大な費用と労力を要する」という
理由から、「その三階建ての、喫水の深い、海上生産設備は船舶には該当しない」と判
示しました。37 同裁判所は、ATP TITAN の生産プラットフォームとしての機能と、装
備している設備から考えて、移動能力が制約されているため、合理的観察者であれば
ATP TITAN が船舶に該当するという結論を下すことはできないと判示しました。
3. ルイジアナ州東部地方裁判所は、浚渫を支援する水陸両用バックホーのマーシュバギー
掘 削機が 船舶に該 当する か否か を巡って 争われた Dune Energy, Inc. v. FROGCO
Amphibious Equip., LLC 事件38において、その判断を示しました。マーシュバギー掘削
機の所有者が、それが船舶に該当するならば、自らの責任をその価額の上限に制限しよ
うとしたものですが、同裁判所は、「Lozman の基準は、事実に大きく左右されること、
そして、重大な事実が未だに争われているようであること」から、追加情報がない状態
で船舶に該当するかどうかの判断を下すことはできないとして、FROGCO の部分的サ
マリージャッジメントの申し立てを棄却しました。 39 この事件は、Lozman 判決で要
求された事実に基づく審理が、いかに法的手続きの長期化と高額化を招くかを示す一例
です。
4. Armstrong v. Manhattan Yacht Club, Inc.事件40では、水上クラブハウスが船舶に該当す
るか否かが争われました。ニューヨーク州東部地区裁判所は、「合理的観察者が、その
物理的特徴と活動に目を向けた場合、そのクラブハウが、人や物の海上運搬を目的とし
て設計されたものであるとは考えないであろう」と判断した上で、サマリージャッジメ
ントの申し立てを認めました。41 裁判所が、水上クラブハウスは船舶には該当しない
と判断したことから、原告は、ジョーンズ法または一般海事法に基づく訴訟を提起でき
なくなり、請求は却下されました。 42 同裁判所は、結論を下すにあたり、当該水上ク
ラブハウスを Lozman 事件のフローティングハウスと比較し、「物理的特徴と活動が
Lozman 事件のフローティングハウスと多くの点で共通する」と指摘しました。 43 当
該クラブハウスは、多くの側面において、Lozman のフローティングハウスとは異なっ
ていましたが、船舶に該当しないと結論付けるに際して、移動能力が欠如していること
および(貨物の輸送を目的としない)機能面が極めて大きく考慮されました。
34
同上
同上
36
CIV.A. 12-2297, 2013 WL 1739378, 2013 AMC 1960 (E.D. La. Apr. 22, 2013)
37
同上
38
CIV.A. 11-3166, 2013 WL 1856058 (E.D. La. Apr. 30, 2013)
39
同上
40
12-CV-4242 DLI JMA, 2013 WL 1819993, 2013 AMC 1938 (E.D.N.Y. Apr. 30, 2013)
41
同上
42
同上
43
同上
35
5
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5. Fireman's Fund Ins. Co. v. Great Am. Ins. Co. of New York 事件44では、浮き乾ドックが
船舶か否かを巡って争われました。ニューヨーク州南部地区地方裁判所は、合理的観察
者であれば「乾ドックは人や物の海上運搬を目的として設計されたものである、あるい
は、海上運搬を目的として『定期的に』使用されている」とは言えないとして、船舶に
は該当しないと結論付けました。 45 その結果、同裁判所は、乾ドックの保険に関する
紛争の海事管轄権を失いました。この判決でも、Craft の移動能力は判断の重要な決め手
となりました。同裁判所は、乾ドックは曳航可能ではあるが、「自航能力がなく、操舵
装置もなく、航海灯、ライフボート、操舵室、乗客の輸送目的のために使用されるその
他の装置がなく、また、貨物や人の輸送に使用されたことがないほか、乾ドックが Port
Arthur に係留されたときには居室は使用されていなかった」と示し、当該ドックが最近
においてごくわずかしか移動していないという事実に大きな説得力があると説明しまし
た。46
III. まとめ :Lozman 事件の基準の今後の使用
Lozman 事件に対する連邦最高裁判所の判決により、境界線上にある事案は「船舶に該当しない」
として解決される方向に向かう可能性があります。これは、従来の船舶には該当しない「境界
線上にある」海上の浮体構造物に影響を及ぼすでしょう。
この判決によって、「船舶とは何か」について不確実性と予測不可能性が生まれたことから、
この解釈を巡る争いが今後増加することが予想されます。Sotomayor 判事が Lozman 事件の反
対意見で指摘したように47、最高裁判所は、法曹界と海運業界に対して、連邦解釈規則「第 3 条
の基準の客観的な適用、つまり、海上での輸送と使用に関連した Craft の物理的特徴に依拠した
基準を予測可能な形で示していない」ため、今後も「当事者らが、ある船が船舶に該当する否
かを事前に判断することはできないでしょう」。
44
10 CIV. 1653 JPO, 2013 WL 311084, 2013 AMC 567 (S.D.N.Y. Jan. 25, 2013)
同上
46
同上(「さらに、当該乾ドックは、随分以前に少なくとも 2 回は長距離を移動したことがあるが、それ以降破壊されるまで、
ほぼ 1 か所に恒久的に係留されていた。当該乾ドックは、その直下の海底の浚渫を行うために少なくとも 2~3 年ごとに移動
させられていたが、Lozman 事件が、この程度の移動回数では十分ではないことを明確に示した。何よりも、当該乾ドックの
最近の移動は、時間、距離ともに短く、また、停泊所を整備するための浚渫に伴って行われたに過ぎず(Cates Dep. at 114115)、Lozman 事件で最高裁判所が想定したような『輸送』に当たらないことは自明である。実際、この種の移動は、全く
『輸送』には当たらない」)
47
Lozman, 133 S. Ct. at 754, 2013 AMC 25 (Sotomayor 判事の反対意見)
45
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なお、原文の英文記事は「A Shot Across the Bow:The US Supreme Court rules on “What is a Vessel”」からご覧になれます。
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