電気・電子の基礎知識

電気・電子の基礎知識
第167回 直流増幅回路1
<直流増幅回路1-1>
vo
vi
回路167-1(1)は差動増幅
回路(Q1+Q2)の出力信号を
エミッタ接地増幅回路(Q3)で
増幅する回路です。
この回路では信号が流れる経路に
コンデンサを用いていない為、交
流信号と直流信号の両方を扱う事
が出来ます。
R5とR6の定数は出力voの直
流電位が0[V]に調整出来る値に
設定します。
この回路ではR6の値を調整する
事によってvoの直流電位を0
[V]にします。
この回路は、波形167-1(1)
に示すように、電圧利得Av=
3195の反転増幅回路となって
います。
回路167-1(1)
波形167-1(1) :
(測定モード:DC)
e1=10[kHz] 20[μs/div]
ch1(緑色(e1)) :1[mV/div]
ch2(ピンク(vo)) :2[V/div]
vi
e1p-p=2[mV]
vop-p=6.39 [V]
vo
Av=vop-p/e1p-p =3195
この回路は増幅度が非常に大きく扱いにくい為、実際には負帰還をかけて(増幅度を落として)使用します。
負帰還の掛け方は以下に示す通りです。
回路167-2(1)ではRf1と帰還抵抗Rf2を追加しています。
回路167-2(1)
B
vo
A
vi
回路の動作は波形167-2のようになっています。
波形167-2(1) :
(測定モード:DC)
vi
vo
e1=10[kHz] 20[μs/div]
ch1(緑色(e1)) :50[mV/div]
ch2(ピンク(vo)) :1[V/div]
e1p-p=200[mV]
vop-p=1.89 [V]
Av=vop-p/e1p-p =9.45
この回路の増幅度はAv=9.45となっています。この値は、
Rf2/(Rf1+R3)=10k/(1k+51)=9.51
とほぼ一致しています。よって
Av=-Rf2/(R3+Rf1) (式167-1)
の関係が成り立ちます。マイナスの記号は反転増幅器である事を表しています。
ところで、回路167-2(1)を見ると、以下のようになっています。
GND-点A間の電圧=0[V]
点A-点B間の電圧=0[V] (点Aと点Bは仮想的に短絡されています(イマジナリーショート)
)
従って、Rf1とRf2の接続点(点B)は仮想的に接地されていると言えます。
よって、回路167-2(1)に於いて、信号が流れる経路はおよそ以下のように表す事が出来ます。
i1
B
i2
i1 ≒ i2
図167-2(1)
vo = -vo’
vi
vo’
GND’
図167-2(1)に於いて、以下の関係が成り立っています。
入力信号電圧e1=GND’ を基準とした電圧vi
出力信号電圧vo= -(GND’ を基準とした電圧vo’ ) (voとvo’の矢印の方向が逆になっています。
)
ここで、回路167-2(1)において、点BはQ1のベースに接続されていますが、Q1のベースに流れ込む電流は微少で
ある為、入力信号e1によってR3、Rf1に流れた電流i1は、その殆どがi2としてRf2に流れ込みます。
電圧の比は抵抗値の比で表す事が出来る為以下の関係が成り立ちます。
Av=vo/vi=-vo’/vi=-Rf2/(R3+Rf1) (式167-1)
<直流増幅回路1-2>
回路167-1(2)
電源+12[V]
Q1,2
Q3
出力
入力
電源-12[V]
回路167-1(2)
、回路167-2(2)
はそれぞれ、回路167-1(1)
、回路16
7-2(1)を実際に製作したものです。
この回路では、各電源とGNDとの間にデカッ
プリングコンデンサ
(10[μF]+0.
1[μF])
を追加しています。
Q1+Q2:
HN4C06J GR hFE=200~400
パッケージに2素子を内蔵。
Q3:
2SA1162 Y hFE=120~240
電源 Gnd
回路167-2(2)
Rf2
電源+12[V]
Rf1
オシロ ch1
(vi)
信号発生器+
信号発生器 Gnd
オシロ Gnd
オシロ ch2
(vo)
電源-12[V]
電源 Gnd
オシロ Gnd
回路167-2(2)では、信号の入力部分が
図167-2(2)の様になっています。
Rs=50[Ω]は信号発生器の出力インピーダ
ンスです。
よって、この回路の電圧増幅度の測定値は
Av=Rf2/Rf1
で表されます。
vi
信号発生器
図167-2(2)
回路167-2(2)の動作は波形167-2(2)の様になっています。
vi
vi
vo
vo
波形167-2(2)1:
Rf1=1[kΩ] Rf2=10[kΩ]
vi=10[kHz] 20[μs/div]
ch1(黄色(vi)) :0.2[V/div]
ch2(水色(vo)) :2[V/div]
測定値:
vip-p=400[mV]
vop-p=4.08[V]
Av=10.2=Rf2/Rf1=10
波形167-2(2)2:
Rf1=1[kΩ] Rf2=51[kΩ]
vi=10[kHz] 20[μs/div]
ch1(黄色(vi)) :0.2[V/div]
ch2(水色(vo)) :5[V/div]
測定値:
vip-p=400[mV]
vop-p=20[V]
Av=50=Rf2/Rf1=51
得られた波形を見ると、電圧増幅度の測定値が計算値と一致している事が分かります。
この回路では以下の様になっている事を確認しました。
*(Rf1=1[kΩ]、Rf2=51[kΩ]の時)
Q1のベース電位=29.5[mV]
Q1のベース-Q2のベース間の電圧=30.3[mV]
*出力端子に無視できない位の直流電位が現れる場合は、R5とR6の定数を再検討します。
*回路167-1(2)の電圧利得は、およそ1800である事を確認しました。
回路図の作成には Circuit Viewer を使用しました。
(C)2014 年 10 月
OKA 工学院
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