2005年度中間発表予稿 Te クラスターの光学的研究 浅井 旭 【序論】Te は周期律表6B族に属するカルコゲン元素で(原子番号 52 番、同族に硫黄やセレン)、常温常圧下 では半導体である。Te 原子同士は 2 配位共有結合により互いに結びついて、3 回対称の螺旋鎖状分子を形成 する。螺旋鎖を結晶構造の基本単位として、分子間が比較的弱い結合で結ばれる分子性固体(trigonal 相) を形成する。t-Te の分子鎖間相互作用は Te の物性に強く関係しており、加圧による鎖間距離の減少により半導体か ら金属へ転移することが報告されている。 また液体 Te の研究が盛んに行われており、Te は融解後金属的性質を示し、 液体 Te 中には短い分子鎖が残存(金属化しているのに共有結合が残存)していることがわかっている。 本研究では、Te をクラスター化することによって固体状態で液体状態中に見られる短い分子鎖を実現し、 そのクラスターサイズを変化させることにより物性に変化がないかを光吸収測定などの光学的手法によっ て調べていくことを目的としている。 【実験】Te を KBr中に島状蒸着する事によって Te クラスターを作成した。 膜厚 0.5nm、 5nm、 10nm、 20nm、 75nm、100nm、200nm、300nm、600nm、1200nm の Te 試料を作成し、分子科学研究所 UV_SOR BL-6B にて赤外光領域での光吸収測定を行った。また、0.5nm の Te クラスター試料を総合棟にて光吸収測定を行 った。 【結果】 :図に Te 薄膜 0.5nm、5nm、1200nm の吸収係数と、t-Te とアモルファス Te(a-Te)の吸収係数の文献値を示す。 結晶であると考えられる Te:1200nm の吸収係数は t-Te の文献値に近い値を示している。膜厚の減少にともなって吸収 係数は減少していき、0.5nm の試料の吸収係数は a-Te の文献値とほぼ一致している。このことから、サイズが小さい Te クラスターはアモルファスであると考えられる。 【今後】 ・ 試料の反射を考慮した解析 ・ 高エネルギー側の測定 図:吸収係数の測定値−文献値比較
© Copyright 2024 ExpyDoc