通行機能を重視した道路空間の工夫~緩速車線の適用

通行機能を重視した道路空間の工夫~緩速車線の適用
教授 下川 澄雄
M2 土屋 克貴
助手 吉岡 慶祐
B4 茂木 翔平
1.研究の背景 ~都市部の道路が有する課題~
<信号交差点の多い多車線道路の例>
(環状七号線 東京都杉並区内)
<信号交差点密度と旅行速度の関係>
課題① 都市部の幹線道路では、信号交差点や沿道出入り
車両により旅行速度が低下。
課題② これにより、通過交通の抜け道利用も発生し、生活
道路での安全性の低下も招いている。
信号交差点密度が高い
ほど速度が低い
80
60
旅
行 40
速
度 20
道路は本来、それぞれの役割に応じた機能を発揮すべき。
とくに幹線道路では高い速度水準が求められるが、
連続立体などの抜本的な対策はコスト面から現実的ではない。
0
0
2
4
6
8
信号交差点密度
10
12
※H22道路交通センサス
(全国の多車線・DIDにおける昼間12h平均旅行速度)
2.通行機能が重視される道路での新たな道路空間の提案 ~緩速車線の適用~
<多車線道路における現状>
<都市部における片側3車線道路の例>
主要な交差点では立体化されている。
ただし、その間の信号交差点や沿道出
入り車両により旅行速度が低下
⇒本来の通行機能が発揮されていない
沿道出入り車両により、
本線の交通流に影響
信号の停止により
旅行速度が低下
◆右折方向へのアクセス方法
<緩速車線を用いた交通運用>
・右折によるアクセスを不可とし、信号
を撤去する。
・右折車両は先の立体交差部をUターン
して反対車線に回る
・第1車線は、交差点や沿道施設への
出入り・分合流専用の車線とする
緩速車線
⇒交差点や沿道
への出入りに利用
通過交通の車線として利用
本線から従道路に
右折したい場合、
先の立体交差で
Uターンし反対車線
から左折
<緩速車線を用いた道路空間の提案>
交差点や沿道へ出入りする
車両は緩速車線を利用
従道路から本線に
右折したい場合、
左折した後、先の
立体交差でUターン
し反対車線へ
緩速車線
信号交差点も撤去し、
本線の旅行速度を向上
緩速車線
⇒交差点や沿道
への出入りに利用
3.シミュレーションによる導入効果ケーススタディ ~環七通りを対象として~
<対象区間概要>
至 板橋
<シミュレーションによる検証>
<本線旅行速度の変化>
高円寺陸橋
対象路線:都道318号
(通称環状7号線)
日交通量:60,283台/日
ピーク時間交通量:
(上り)1,740台/h
(下り)2,267台/h
12h平均旅行速度:
(上り)30.1㎞/h
(下り)25.1㎞/h
第1車線利用率:15~27%
上下線とも、
50km/h以上に
500m
38%増加
名称なし交差点
70m
妙法寺入口
70m
妙法寺東
350m
区間長
約1.6km
44%増加
<総走行台時間の変化>
佼成病院前
※H22道路交通センサス・現地調査より
150m
通過交通が多数を占め,
第1車線の利用率が低い
方南陸橋
38%減少
41%減少
58%増加
450m
約1.6kmの対象区間内に
5箇所の信号交差点が存在
方南陸橋
至 世田谷
▲ 現状
▲ 緩速車線導入後
全体で、
27%減少
道路空間の活用に関するその他の事例
■ 緊急時における道路空間の効率的な利用の例(宮城県)
<平常時>
車道幅員は8.0m以上
歩道幅員は3.5m以上 を確保
■ オープンカフェを備えた魅力ある道路空間の例(東京都環状2号線(新虎通り))
<緊急時>
緊急車両や乗捨て車両が停車していても、
すれ違い可能な幅員を確保
出典:日本道路協会「地域のニーズに応じた道路構造基準の取組事例集」
出典:東京都ホームページ