Cluster Variables on Double Bruhat Cells and Monomial

Cluster Variables on Double Bruhat Cells and
Monomial Realizations of Crystal Bases
上智大学 理工学研究科
金久保 有輝
Yuki Kanakubo
Faculty of Science and Technology,
Sophia University
記号
G : simply connected semi simple algebraic group of rank r, B, B− : opposite Borel subgroups,
N , N− : unipotent radicals, H := B ∩ B− , W : Weyl group of G, ωi : fundamental weight,
g := Lie(G), [1, i] := {1, 2, · · · , i} (For i ∈ Z>0 ), I := [1, r] = {1, · · · , r}.
1 Introduction
1.1 Cluster algebra
1930 年代, totally positivity の研究が行われていた. Totally positivity とは, 全ての小行列式 (minor) が
非負になる, という行列の性質のことである. この初等的な行列の性質の研究は, 1994 年に Lusztig によって
一般化された. 小行列式は, 行列の集合の上の関数と見なすことができる. Lusztig は, この “行列の集合”を一
般の “代数群 G”に, “小行列式”を “generalized minor” に置き換えて研究したのである. この研究の中で,
代数群 G の非交和分解
G=
⨿
Gu,v , Gu,v := BuB ∩ B− vB−
u,v∈W
が用いられた. 各 Gu,v を, Double Bruhat cell と呼ぶ.
2002 年には, Fomin と Zelevinsky により, Gu,v の座標環 C[Gu,v ] と generalized minors ∆(k, i) に関する
予想が立てられた [3]. これは, C[Gu,v ] が generalized minors {∆(k, i)} を生成元の一部に持ち, 他の生成元も
exchange relation と呼ばれる関係式によって, {∆(k, i)} から次々と生成される, という予想である. 他の代数
多様体の座標環でも, このような性質を持つものが多く見つかっており, これらを統一的に扱うために cluster
algebra が導入された. このとき, ∆(k, i) は cluster variables と呼ばれた.
1.2 Main results : Cluster variable and crystal
今回は, G = SLr+1 (C) とし, generalized minors ∆(k, i) ∈ C[Gu,v ] を座標変換することを考える. 座標変
換を施すと,
1. ∆(k, i) は, 係数 1 の Laurent 多項式となることがわかった.
2. 更にその各項を, ある crystal base B(λ) の元として書き表すことができた.
二つ目の項目について, 少し詳しく説明しよう. B(λ) は, 量子群 Uq (g) の既約最高ウエイト表現 V (λ) の
q = 0 における基底と考えることのできるもので, 作用素 e˜i , f˜i と絡んだ, 扱い易い性質を持っている (Sect.
4). B(λ) の各元は, しばしば Young tableau によって表示され, これにより, e˜i , f˜i の作用やウエイトの勘
1
定を組合せ論的に扱うことができるようになる. それ以外にも B(λ) の表示法は多く知られているが, 今回は
monomial 表示という方法を用いる. これは, B(λ) の各元を Laurent 単項式で表示する方法である. ∆(k, i)
を座標変換して得られた Laurent 多項式の各項が, ある crystal base を monomial 表示したものであること
がわかったのである. この結果について紹介する. 本研究は, 上智大学の 中島俊樹 教授との共同研究である.
2 Generalized minors for A type
Generalized minor を定義しよう [4]. G0 = N− HN を, Gaussian decomposition を持つような元 x ∈ G 全
体として定義される開部分集合とする. この分解は一意的であり, この分解に即して x = [x]− [x]0 [x]+ , [x]− ∈
N− , [x]0 ∈ H, [x]+ ∈ N と記すことにする.
定義 2.1. 各 u, v ∈ W = Sr+1 と i ∈ [1, r] に対する generalized minor ∆uωi ,
−1
で, 開部分集合 u
¯G0 v¯
vωi
とは, G 上の正則関数
へのその制限が
∆uωi ,
vωi (x)
= ([¯
u−1 x¯
v ]0 )ωi
で与えられるものである.
G = SLr+1 (C) の場合, ∆uωi ,
vωi (x)
は次のようにして求めることができる:
命題 2.2. [4] ワイル群 W = Sr+1 の元 u, v に対し, ∆uωi ,
vωi
の x ∈ G = SLr+1 (C) での値 ∆uωi ,
vωi (x)
は, 行が, 集合 u([1, i]) の元, 列が, 集合 v([1, i]) の元でラベル付けされる x の小行列式として与えられる.
つまり, G が A 型の代数群の場合, generalized minors は普通の意味での minor(小行列式) に他ならないの
である. 例を見てみよう.
例 2.3. r = 3, u = s1 s2 s3 , v = s1 s2 , x = (xij ) ∈ G = SLr+1 (C) のとき, ∆uω2 ,
vω2 (x)
は次のようにして求
められる:
u[1, i] = s1 s2 s3 {1, 2} = {2, 3}, v[1, i] = s1 s2 {1, 2} = {2, 3}
より,
∆uω2 ,
vω2 (x)
=
x22
x32
x23
= x22 x33 − x23 x32
x33
となる.
定義 2.4.
(1)
u = si1 · · · sin , v = sin+1 · · · = sin+m を, u, v ∈ W の reduced expressions とする. このとき, (u, v)
と, その reduced expressions に対する reduced word を
i = (i¯1 , · · · , i¯n , in+1 , · · · , in+m )
で定める. ここに, ¯
j は形式的な記号である.
(2)
k ∈ [1, l(u) + l(v)] に対し, 次のようにおく.
{
u≤k = u≤k (i) :=
2
si1 · · · sik
u
if k ≤ n,
if k > n.
v>k
{
sin+m sin+m−1 · · · sik+1
= v>k (i) :=
v −1
if k ≥ n
if k < n.
以上の準備のもと, upper cluster algebra C[Gu,v ] の中で, cluster variables の役割をする ∆(k, i) を次のよ
うにして定義する.
定義 2.5.
∆(k; i)(x) := ∆u≤k ω|ik | ,
v>k ω|ik | (x).
3 Double Bruhat cells and coordinate transformations
Introduction でも述べたように, double Bruhat cell は次のように定義される:
定義 3.1. ワイル群の二つの元 u, v ∈ W に対し, Gu,v := BuB ∩ B− vB− を double Bruhat cell,
Lu,v := N uN ∩ B− vB− ⊂ Gu,v を reduced double Bruhat cell という.
Gu,v , Lu,v を座標変換することを考えよう. そのために, 次のように三つの行列を用意する.
1 ≤ i ≤ r に対し

1
0




i 行目 
xi (t) =







0
1
..
.
1 t
0 1
..
.
1
0







,




0

1 0
0 1




i 行目 
x¯i (t) =







..
.
1
t
..
1
1
0




i 行目 
x−i (t) =






0
1
.






, (1)




1 0
0 1

0
1
..
.
t−1
1
0
t
..
.
1
0











0
1
× n+m
と置く. u, v ∈ W , i を定義 2.4 のように取り, 写像 xG
→Gを
i : H × (C )
xG
i (a, t1 , · · · , tn , tn+1 , · · · , tn+m ) := axi¯1 (t1 ) · · · xi¯n (tn )xin+1 (tn+1 ) · · · xin+m (tn+m )
× n+m
で定める. また, xL
→Gを
i : (C )
xL
i (t1 , · · · , tn , tn+1 , · · · , tn+m ) := x−i1 (t1 ) · · · x−in (tn )xin+1 (tn+1 ) · · · xin+m (tn+m )
で定める. このとき, Gu,v , Lu,v に関する次の同型対応が成り立つことが知られている:
3
定理 3.2. [2][3] ある Gu,v (resp. Lu,v ) の Zariski open な部分集合 U (resp. U ′ ) があり, 次の双正則同型が成
り立つ:
∼
× n+m
xG
−→ U
i : H × (C )
∼
× n+m
(resp. xL
−→ U ′ )
i : (C )
となる.
この定理を用いて, Gu,v 上の関数である ∆(k, i) を, H × (C× )n+m , または (C× )n+m 上の関数と見なすこ
とにする:
定義 3.3. a ∈ H と, t, τ ∈ (C× )n+m に対し, H × (C× )n+m (resp. (C× )n+m ) 上の関数 ∆G (k, i)(a, t)
(resp. ∆L (k, i)(τ )) を
∆G (k; i)(a, t) := (∆(k; i) ◦ xG
i )(a, t),
∆L (k; i)(τ ) := (∆(k; i) ◦ xL
i )(τ )
で定める.
4 Crystal
4.1 Crystal と, 量子群の表現論
一般に, crystal は次のように定義される [6]:
定義 4.1. A = (aij )i,j∈I を対称化可能な一般 Cartan 行列, (A, Π, Π∨ , P, P ∨ ) を A の Cartan datum とする.
Cartan datum (A, Π, Π∨ , P, P ∨ ) に付随する crystal とは, 集合 B と, 写像 wt : B → P , e˜i , f˜i : B → B∪{0}
と εi , φi : B → Z ∪ {−∞}, (i ∈ I) との組で, 以下を満たすもののことである:
b ∈ B, i ∈ I に対し,
1. φi (b) − εi (b) =< hi , wt(b) >,
2. wt(e˜i b) = wt(b) + αi , if e˜i b ∈ B,
3. wt(f˜i b) = wt(b) − αi , if f˜i b ∈ B,
4. εi (e˜i b) = εi (b) − 1, φi (e˜i b) = φi (b) + 1 if e˜i b ∈ B,
5. εi (f˜i b) = εi (b) + 1, φi (f˜i b) = φi (b) − 1 if f˜i b ∈ B,
6. f˜i b = b′ ⇔ b = e˜i b′ , if b, b′ ∈ B,
7. φi (b) = −∞, (b ∈ B) ⇒ e˜i b = f˜i b = 0.
この定義は, 量子群 Uq (g) の既約最高ウエイト表現 V (λ) の crystal base B(λ) の性質を一般化したもので
ある. そこで, 量子群の表現論を簡単に復習しておこう. 詳細は [6] を参照して頂きたい.
Uq (g) を Cartan datum (A, Π, Π∨ , P, P ∨ ) に付随し, F を基礎体とする量子群とする. V (λ) (λ は dominant
weight) を Uq (g) の既約最高ウエイト表現, uλ をその最高ウエイトベクトルとする. V (λ) には Kashiwara
operators f˜i , e˜i が作用する. これは, fi , ei ∈ Uq (g) の作用を修正した作用素である (定義は [6]).
V (λ) は F(q) 上のベクトル空間となる. F(q) の元で, q = 0 で正則なもの全体を A とおく. L(λ) を,
˜
fi1 f˜i2 · · · f˜is uλ (s ∈ Z≥0 , ik ∈ I) で張られる V (λ) の自由 A 部分加群とする. 更に集合 B(λ) を,
B(λ) := {f˜i1 f˜i2 · · · f˜is uλ | s ∈ Z≥0 , ik ∈ I}
4
で定める. このとき, 次が成り立つ [6]:
1. e˜i L(λ) ⊂ L(λ), f˜i L(λ) ⊂ L(λ) (i ∈ I),
2. e˜i B(λ) ⊂ B(λ) ∪ {0}, f˜i B(λ) ⊂ B(λ) ∪ {0} (i ∈ I),
3. B(λ) は, L(λ)/qL(λ) の F 基底となる.
L(λ)/qL(λ) は, V (λ) において, q = 0 とした空間である. このように, B(λ) は V (λ) の q = 0 における基底
と考えることができるのである.
また, i ∈ I に対し, 写像 εi , φi : B → Z を
εi (b) = max{k ≥ 0| e˜i k b ∈ B},
k
φi (b) = max{k ≥ 0| f˜i b ∈ B}
で定める. また, wt : B → P を, b ∈ Bµ := B(λ) ∩ V (λ)µ のとき, wt(b) = µ として定める. このとき,
B = B(λ), f˜i , e˜i , εi , φi , wt は, crystal の公理 (定義 4.1, 1∼7) を満たす [6].
組 (L(λ), B(λ)) のことを, V (λ) の crystal base と呼ぶ. このように, crystal は, crystal base を一般化し
た概念なのである.
最低ウエイト表現 V − (λ) に対しても, crystal base (L− (λ), B − (λ)) を構成することができ, これも crystal
となる. ここに,
B − (λ) := {e˜i1 e˜i2 · · · e˜is u′λ | s ∈ Z≥0 , ik ∈ I}
で, u′λ は V − (λ) の最低ウエイトベクトルである. これと区別するために, 以下, V (λ) のことを V + (λ),
(L(λ), B(λ)) のことを (L+ (λ), B + (λ)) と書くことにする.
4.2 Monomial realizations
B ± (λ) を, Uq (g)-既約最高 (最低) ウエイト加群 V ± (λ) に対する crystal bases とする. Young tableau を
始め, crystal base の表示方法は多く知られている. 今回はその表示方法の一つである monomial realization
に着目する. これは, B ± (λ) の各元を Laurent 単項式で表し, Kashiwara operators e˜i , f˜i の作用を Laurent
単項式の積で表すものであり ([1], [5]), 以下のように構成される:
A = (ai,j )i,j∈I を対称化可能な一般 Cartan 行列とする. (A, Π, Π∨ , P, P ∨ ) を A の Cartan datum とする.
整数の集合 p = (pi,j )i,j∈I,
i̸=j
で, pi,j + pj,i = 1 を満たすようなものを一つ取り, 固定する.
Y の定義
変数の集合 {Ym,i |i ∈ I, m ∈ Z} に対し, Laurent 単項式の集合 Y を
Y := {Y =
∏
l
m,i
Ym,i
|lm,i ∈ Z, lm,i は有限個を除いて 0}.
m∈Z, i∈I
で定める.
写像 wt, εi , φi の定義
写像 wt : Y → P と, εi , φi : Y → Z, (i ∈ I) を, 次のように定める:
Y の元 Y =
∏
l
m∈Z, i∈I
wt(Y ) =
∑
i,m
m,i
Ym,i
に対し,
lm,i Λi , φi (Y ) = max

∑

k≤m


lk,i |m ∈ Z , εi (Y ) = φi (Y ) − wt(Y )(hi )

5
で定める.
f˜i , e˜i の定義
Am,i := Ym,i Ym+1,i
∏
a
j,i
Ym+p
j,i ,j
j̸=i
とおく.
Kashiwara operators f˜i , e˜i の Y への作用を, 次のように定める:
{
{
if
φ
(Y
)
>
0
Ane ,i Y if εi (Y ) > 0
i
f˜i Y =
e˜i Y =
0
if εi (Y ) = 0.
if φi (Y ) = 0,








∑
∑
ここに, nf :=min n|φi (Y ) =
lk,i , ne :=max n|φi (Y ) =
lk,i である.




A−1
nf ,i Y
0
k≤n
k≤n
定理 4.2. [1, 5]
(1) 上のように定めた (Y, wt, φi , εi , f˜i , e˜i )i∈I は, crystal となる.
(2)Y ∈ Y が全ての i ∈ I について εi (Y ) = 0 を満たすなら, Y を含む連結成分は B(wt(Y )) に同型である.
例 4.3. i1 , i2 , · · · , in ∈ I とし, 無限列
j = (i1 , i2 , i3 , · · · ),
を ik = il , if k ≡ l mod n で定める. この j から, 整数の集合 (pk,l ) を次のようにして定める:
pk,l
{
1
=
0
if ik < il ,
if il < ik .
λ = βΛd (resp. λ = −βΛd ) , (β ∈ Z>0 , d ∈ I) に対し, Crystal B + (λ) (resp. B − (λ)) を Y に以下のように
して埋め込むことができる:
vλ → Yβ+γ,d Yβ−1+γ,d · · · Y1+γ,d , (resp. vλ →
1
),
Yβ+γ,d Yβ−1+γ,d · · · Y1+γ,d
ここに, vλ は B + (λ) (resp. B − (λ)) の highest (resp. lowest) weight vector で, γ は任意の整数である. こ
の埋め込みを µ+ (β, γ) (resp. µ− (β, γ)) と記すことにする.
4.3 Demazure Crystal
ワイル群 W の元 w に対し, Demazure crystal B + (λ)w が定められる. これは, crystal B + (λ) の部分集
合で, 次のようにして定められる.
定義 4.4. vλ を, B + (λ) の highest weight vector とする. ワイル群 W の単位元 e に対し, B + (λ)e := {vλ }
と定める. w ∈ W に対し, si w < w のとき,
B + (λ)w := {f˜ik b | k ≥ 0, b ∈ B + (λ)si w , e˜i b = 0} \ {0}
と定める.
6
同様にして, B − (λ)w を次のようにして定める.
定義 4.5. vλ を, B − (λ) の lowest weight vector とする. B − (λ)e := {vλ } と定める. w ∈ W に対し,
si w < w のとき,
B − (λ)w := {˜
eki b | k ≥ 0, b ∈ B − (λ)si w , f˜i b = 0} \ {0}
と定める.
5 Main result
以下, G が A 型代数群の場合, つまり G = SLr+1 (C) の場合を考えていく.
5.1 v = e の場合
ワイル群の元 u, v ∈ W を次のようなものとして取ろう:
u = s1 s2 · · · sr s1 · · · sr−1 · · · s1 · · · sr−m+2 s1 · · · sin , v = e.
これに応じて, u, v に対する reduced word i を
¯ 1, · · · , ¯1, · · · , r − m
¯ + 2, ¯1, · · · , i¯n )
1, · · · , r −
i = (¯
1, · · · , r¯, ¯
1 周目
2 周目
m−1 周目
m 周目
で定める. i の中で, 左から k 番目の数を i¯k とする. i¯k が m′ 周目に属するとする.
例 4.3 のように,
j = (1, · · · , r, 1, · · · , (r − 1), · · · , 1, · · · , (r − m + 2), 1, · · · , in )
1 周目
2 周目
(m−1) 周目
m 周目
に対して, B − (λ) (λ = (m′ − m)Λd ) を β = m − m′ , γ = m′ − 1 として, Y へ埋め込む. 更に l0 := 0, l1 :=
r, l2 := r + (r − 1), · · · , lm := r + (r − 1) + · · · + (r − m + 1), · · · , lr := r + (r − 1) + · · · + 2 + 1 とおき,
変数 Ym,j を, τ の変数 τlm +j に変数変換する. これにより, {τlm +j } を Y の元と見なす.
このとき, 次の定理が成り立つ:
定理 5.1. ik = d とする.
∆L (k; i)(τ ) =
∑
µ− (m − m′ , m′ − 1)(x),
λ := (m′ − m)Λd
x∈B − (λ)u≤k
が成り立つ.
このように, generalized minor を座標変換したところ, 各項を, ある Demazure crystal の元で書き表すこ
とができた.
例 5.2. u = s1 s2 s3 s4 s1 s2 s3 s1 , v = e, i = (−1, −2, −3, −4, −1, −2, −3, −1) とする. 定理 3.2, 命題 2.2 を用
いて計算をすると,
∆L (1; i)(τ ) =
τ1
1
τ1 τ5
+
+
,
τ2 τ6
τ2 τ8
τ5 τ8
7
となる.
一方, 今は A 型の場合を考えているので, 一般 Cartan 行列 A = (aij ) は, ai,i+1 = ai,i−1 = −1, aij =
0, (|i − j| > 1) を満たす. これと e˜i の作用の定義から
e˜1
e˜1 e˜1
1
τ1 τ5 1
τ1
=
=
,
τ5 τ8
τ2 τ5 τ8
τ2 τ8
1
τ1
τ5 τ8 τ1
τ1 τ5
= e˜1
=
=
τ5 τ8
τ2 τ8
τ6 τ2 τ8
τ2 τ6
である. よって,
∆L (1; i)(τ ) = e˜1 e˜1
となる. この場合,
1
τ5 τ8
1
1
1
+ e˜1
+
=
τ5 τ8
τ5 τ8
τ5 τ8
∑
µ− (2, 0)(x)
x∈B − (−2Λ1 )s1
が, ウエイト −2Λ1 を持つ最低ウエイトベクトルである.
5.2 v が一般の場合
u は, u = s1 s2 · · · sr s1 · · · sr−1 · · · s1 · · · sr−m+2 s1 · · · sinu ととる. これに対し, v は u と順番を逆にして,
v = si′nv · · · s1 sr−m+2 · · · s1 · · · sr−1 · · · s1 sr · · · s2 s1 ととる.
これに対応して, (u, v) の reduced word i を
i = (¯1, · · · , r¯, ¯
1, · · · , r − 1, · · · , ¯
1, · · · , r − mu + 2, ¯1, · · · , inu ,
1 周目
mu −1 周目
i′nv , · · · , 1, (r
2 周目
mu 周目
− mv + 2), · · · , 1, · · · , (r − 1), · · · , 1, r, · · · , 1 )
mu +mv −1 周目 mu +mv 周目
mu +2 周目
mu +1 周目
(2)
と設定する. k が m′ 周目に属するとする.
ˆ L (k; i)(τ ) を定義する. これは, ∆L (k; i)(τ ) を修正したものであり, 変数変換を施すこと
まず, 新たな関数 ∆
で, ∆L (k; i)(τ ) や ∆G (k; i)(a, t) と一致する.
∆L (k; i)(τ ) を求めるためには, 行列
x−1 (τ1 )x−2 (τ2 ) · · · xinu (τnu )xi′nv (τnu +1 ) · · · x2 (τnu +nv −1 )x1 (τnu +nv )
の, 行 u≤k {1, · · · , d}, 列 v>k {1, · · · , d} で作られる小行列式であった. (定理 3.2, 命題 2.2).
そこで, 新たに行列 x
i
(τj ), (i > 0) を

x
i
1
0




i 行目 

(τj ) :=







0
1
..
.
τj
0
1
τj−1
..
.
1
0
8












0
1
(3)
で定義し, (3) の積の中の xi (τj ), (i > 0, nu + 1 ≤ j ≤ nu + nv ) を全て x
x−1 (τ1 )x−2 (τ2 ) · · · xinu (τnu )xi′ (τnu +1 ) · · · x
nv
2
i
(τj ) で置き換えた
(τnu +nv −1 )x
1
(τnu +nv )
(4)
ˆ L (k; i)(τ ) を次のように定義する:
という行列を考える. 関数 ∆
ˆ L (k; i)(τ ) を, 行列 (4) の, 行 u≤k {1, · · · , d}, 列 v>k {1, · · · , d} で作られる小行列式として定める
定義 5.3. ∆
ことにする.
定義 5.4. Dominant weight λ と, ワイル群の元 u, v ∈ W に対し, Double Demazure crystal Bu,v (λ) を
Bu,v (λ) := B + (λ)u ∩ B − (λ)v
で定める.
Zd 上の半順序 ≤ を, a = (a1 , · · · , ad ), b = (b1 , · · · , bd ) に対し,
a ≤ b ⇔ ai ≤ bi , f or all i
で定める. m0 := min(mv , m′ ), α := (1, 2, · · · , d), β := (m0 + 1, m0 + 2, · · · , m0 + d) とおくとき, 次が成
り立つ.
定理 5.5. ik = d, (1 ≤ k ≤ nu ) とする. 各 ξ ∈ Zd , (α ≤ ξ ≤ β) に対し, ある dominant weights λξ , λ′ξ と,
uξ , vξ ∈ W (uξ ≤ u, vξ ≤ v) と, Zξ ∈ Y, そして埋め込み M : Bv−1 ,vξ (λξ ) → Y, M ′ : Bu≤k ,uξ (λ′ξ ) → Y
が存在し,

∑ 
ˆ L (k; i)(τ ) =
∆
(
α≤ξ≤β

∑
M (x))Zξ (
x∈Bv−1 ,v (λξ )
ξ
∑

M ′ (y))
y∈Bu≤k ,uξ (λ′ξ )
となる.
ˆ L (k; i)(τ ) に適当に変数変換を施すことで, 得ることができる.
定理 5.6. ∆G (k; i)(a, t), ∆L (k; i)(τ ) は, ∆
参考文献
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