脚車輪ジャンプロボット Airhopper の開発

脚車輪ジャンプロボット Airhopper の開発
○田中崇裕 菊池文孝 米田完 広瀬茂男
Development of Wheeled type jumping quadruped
*T.TANAKA , F.KIKUCHI , K.YONEDA , S.HIROSE
Abstract—In this paper we explain the design of light-weight leg-wheel mechanism. First, we developed
piston-wire mechanism to drive a leg module. Second, we examined 2 types of power transmission mechanism.
Last, we confirmed the possibility of stepping over terrain variations in high speed.
Key Words: AirHopper, Pnematic Actuator, Leg-Wheel hybrid Jumping Robot
1.
構の2つの機構を開発した. 以下の章ではこの2つの機
構について説明する.
はじめに
不整地を高速に移動する手段があれば, 山岳救助や被
災地・僻地への物資輸送に広く使用できる. 移動手段と
してはクローラ型・脚型・車輪型・跳躍型などがあるが,
いずれも利点・欠点がある. そのため近年は上記の移動
手段を組み合わせたロボットの開発が盛んである.著者
らは脚・車輪・跳躍を組み合わせた, 軽量で高出力な空
圧シリンダ駆動の脚車輪ジャンプロボットを開発する.
コンセプトとしては, 平地は車輪により効率的に移動
し, 障害物は大きな可動範囲をもつ脚機構をアクティブ
サスペンションとして用いて“跨ぐ”ことで踏破する.
さらに脚のストロークを超える大きな障害物は, 車輪と
空気圧シリンダを併用した跳躍で乗り越え, 空圧シリン
ダの内圧を制御することで着地時の衝撃を緩和する. 本
報では軽量脚車輪構造の設計について報告する.
Fig.2 Base Robot ”AirHopper”
Table 1 Parameters
D × W × H [mm]
1290 × 1200 × 525
Weight [kg]
29.2
Cylinder Bore Size [mm]
30
Cylinder Stroke [mm]
260
Vertical leg Stroke [mm]
446
,WORKPI
#EVKXGUWURGPUKQP
5QHVNCPFKPI
3.
Fig.1 Concept of AirHopper
2.
ロボットの構成
AirHopper は高い跳躍と大きな可動範囲を実現する
ために, 脚を4節リンクと2本の単動型エアシリンダで
構成している. 単動型シリンダを用いることにより, 軽
量で下方向に力と速度がでる構造になっている (Fig.2).
8本のシリンダは 90[Hz] で動作可能な有効断面積
25[mm2 ] のサーボ弁で駆動されており, 脚の各関節搭載
のポテンショメータ, 圧力センサの情報をもとにマイコ
ンで制御される.
軽量脚車輪構造の実現のために, ピストンワイヤ機構・
ユニバーサルジョイント (以下 UJ) を用いた動力伝達機
軽量な脚車輪構造
AirHopper は全く同じ構造の脚4本で構成されてい
る. そのうち1脚の構造を Fig.3 に示す. 2本のシリン
ダ出力を干渉させることで, 鉛直下方向に大きな力を得
るとともに広い可動範囲を実現している. また脚を構成
する4節リンクの対角にワイヤを配置し, これを駆動す
ることで鉛直上方向に力を出すことが出来る. ワイヤの
駆動には以下で解説するピストンワイヤ機構を用いてお
り, 単動式シリンダ2つと合わせて合計3つの単動式ア
クチュエータで2自由度の脚機構を駆動している. これ
は複動式の空圧シリンダを2本使用するよりも軽量で
ある.
3·1
ピストンワイヤ機構
ピストンワイヤ機構はフレーム内蔵型の単動式ケーブ
ルシリンダである. ロッド型のシリンダよりも機構的な
干渉が少なく, 脚部の可動範囲を狭めない. また, 4節
リンクを構成するフレームをシリンダとして使用するた
第6回システムインテグレーション部門学術講演会(SI2005)(2005年12月16日~18日・熊本)
-1019-
SY0015/05/0000-1019 © 2005 SICE
AirCylinder
Body
AirCylinder
る.この場合角度が最大のとき,1回転中の速度差は約
51% となり, 定速回転を維持するためにはモータを速度
制御する必要がある.これをモデル1とする.
motor
A
Universal
Joint
Body
㧹
B
C
Timing
belt
Movable Range
D
Fig.3 Movable Range of Leg
Wheel
め, 軽量かつ大きなボア径をとることが出来る. Fig.4 は
ピストンワイヤ機構の詳細図である. AirHopper のフ
レームは外径 49, 内径 45 の CFRP パイプである. 片方
の端部を閉じ, ワイヤとの摺動部は X リングによって密
閉する. ワイヤは軸受け部に取り付けられたプーリを介
して CFRP 内部に引き込まれていく.
Pully
C
Wire
Fig.6 Power Transmission Mechanism Model1
それに対して,UJ を2つ使用する事で,いかなる姿
勢でも等速性を維持する機構 Fig.7 を考える.このとき
等速性が成り立つためには,β = γ となる事が必要であ
β
る.フレームの角度 α と β の関係が α
= 0.529 となる
時, 等速性が保たれる. そのために減速機構を追加する.
これをモデル2とする.
motor
A
D
Universal
Joint
Piston
Pressure
㧹
A
Body
Body
Universal
Joint
䕛
B
C
B
C
䕚
CFRP Pipe
Timing
belt
D
D
Fig.4 Wire Piston Mechanism
ピストンワイヤ機構の実装により, 単動式シリンダに
スプリングを付けただけでは困難な中間位置での静止が
可能となった (Fig.5). 今後は任意方向への蹴り出しを行
うため速度制御を行っていく.
Wheel
Fig.7 Power Transmission Mechanism Model2
実用性の観点からモデル1とモデル2を比較・検討
し,AirHopper に搭載する.
4.
おわりに
本報では, 軽量な脚車輪構造を実現するための2つの
機構,“ピストンワイヤ機構”, “UJ を用いた動力伝達
機構“を提案・検討した.
今後は,AirHopper を実用的な脚車輪ジャンプロボッ
トとするために, 段差の跨ぎ越えをするための脚の高
速な位置制御, および不整地での高速走行実験を行って
いく.
謝辞
Leg Track
本研究は文部科学省科学研究費 (21世紀COEプロ
グラム) を使用して行われました.
Movable Range
5.
Fig.5 Tracks and Movable Range of leg
3·2
参考文献
参考文献
動力伝達機構
跳躍高度を高めるためにも, 脚先を高速で駆動するた
めにも脚部先端の重量は出来る限り小さいことが望まし
い [1]. また,脚部のフレームは-39 度から 26 度の大きな
可動範囲を持つ. そこでモータを胴体に近い脚部フレー
ムに内蔵し, UJ とタイミングベルトを用いて動力を脚
先の車輪に伝達する構造とした.
まず最も簡便な構成としては Fig.6 の構造が考えられ
-1020-
[1] 塚越秀行, 佐々木正志,北川能,田中崇裕: “瓦礫跳
躍高度の向上を目指した空圧ジャンピングの特性解
析”, 計測自動制御学会論文集, 40 巻, 8 号, 859-866 ,
2004
[2] 菊池文孝, 米田完, 広瀬茂男: “空圧4足歩行ロボッ
トの跳躍制御”, (社) 計測自動制御学会システムイン
テグレーション部門 講演会論文集, 1B2-3 , 2004.