ヒトiPS細胞の培養は大変(T-T)

ヒトiPS細胞の培養は大変(T-T)
・培養液の交換は毎日 半量ずつ交換
年末年始やお盆の休み無し・・・
・7-10日毎に植え継ぎ
・植え継ぎはコロニーをひとつずつ
一つずつ顕微鏡下で拾って行う
・凍結保存すると元気がなくなる
・培養液に加える試薬が高価
ちょっと手を抜くとすぐすねる。→分化する
拡大図
こんなや、
iPS細胞
こんな
分化しちゃった
iPS細胞
iPS細胞樹立前後での研究の流れ
iPS細胞樹立前
(主にES細胞を用いた研究)
再生医療への応用
分化誘導法の確立
基礎生物学
未分化機構の解明
iPS細胞樹立後
再生医療への応用
樹立法の改良
分化誘導法の確立
基礎生物学
未分化機構の解明
体性幹細胞、ES細胞、iPS細胞の臨床応用に際しての利点と問題点
A) 体性幹細胞(骨髄間葉系幹細胞、脂肪間葉系幹細胞、皮膚幹細胞等)
<利点>
・成人の組織中に存在する。
・採取に侵襲を伴うが、自己細胞を利用できるので、免疫拒絶を回避できる。
・腫瘍化したとされる報告は非常にまれ。
<問題点>
・増殖能力に限界がある。
・分化させられる細胞の種類が数種類と限られる。
B) ES細胞
<利点>
・理論上身体の全ての種類の細胞に分化する能力がある。
・無限に増殖することが可能。(大量製造や細胞のバンク化が可能)
<問題点>
・受精卵を破壊する。(倫理的な問題が生じる)
・基本的に他家移植なので、免疫拒絶への対応が必要。
・移植した再生組織に少しでも未分化細胞が混在すると腫瘍化する危険性がある。
・目的の組織に完全に分化誘導する方法が確立していない。
C) iPS細胞
<利点> ES細胞の利点の利点に加え、
・受精卵を破壊せずに成人の細胞からES細胞と同等の細胞を作成できる。
・自己由来のiPS細胞を使えば、免疫拒絶を回避できる。
・疾患患者由来のiPS細胞を使えば、培養皿で病態を再現できる。
<問題点> 受精卵破壊、免疫問題を除いたES細胞の問題点に加え、
・作成効率が低い。àどんどん改良されている。
・初期化の分子メカニズムが明らかにされていない。à未知のリスク
体性幹細胞を用いた再生医療が実用に一番近い
臨床研究
骨髄由来間葉系幹細胞
・線維性骨異形成
体性幹細胞
・外傷性骨軟骨障害
・腰椎椎間板ヘルニア
・虚血性心疾患
心筋細胞
・重症慢性虚血性心不全
末梢血単核球細胞
・末梢動脈疾患
体外で増殖
治験・薬事承認
培養表皮
・重症熱傷
軟骨細胞
・関節軟骨損傷
骨格筋芽細胞
・虚血性心疾患
現在までに承認された
ヒト幹細胞臨床研究の例
・大阪大学
「虚血性心疾患に対する自己骨髄由来 CD133陽性細胞移植に関する臨床研究」
・国立循環器病センター
「急性期心原性脳塞栓症患者に対する自己骨
髄単核球静脈内投与の臨床応用に関
する第I-II相臨床試験」
・京都大学
「大腿骨頭無腐性壊死患者に対する骨髄間葉系
幹細胞を用いた骨再生治療の検討」
「月状骨無腐性壊死患者に対する骨髄間葉系幹
細胞を用いた骨再生治療の検討」
・東海大学
「自家骨髄間葉系幹細胞により活性化された椎
間板髄核細胞を用いた椎間板再生研究」
iPS細胞を用いた医療応用の現状
・創薬や病態解明への応用
細胞を採取
iPS細胞の作成
病気の特徴がある
細胞へ分化
病気の再現
難病の患者
・発症メカニズムの解明
・薬の開発
・治療法の開発
正常に近い
細胞への修復
病態が再現できた主な病気
・筋萎縮性側索硬化症(ALS)
・進行性骨化性線維異形成症
(FOP)
・筋ジストロフィー
・パーキンソン病
・先天性無巨核球性血小板減少症
・ドラベ症候群(てんかん)
・アルツハイマー
など
iPS細胞を用いた医療応用の現状
・創薬や病態解明への応用
筋萎縮性側索硬化症(ALS)やアルツハイマーなど病態に未解明な点が多い。
なぜ?
ALSやアルツハイマー患者さんから神経細胞を取り出すことができない。
故に患者さんの病態をそのまま反映するモデルを作ることが難しく、
有効な治療薬や治療法の開発が進まなかった。
マウスでは病態を再現することが難しいことも一因。
実はマウスで病態を再現できない病気は多い。
iPS細胞を患者さんの細胞からつくり病態を再現できれば、
これまで知られていなかった病態や原因、発症のメカニズムを解明する
最良のモデルとなり、有効な治療薬や治療法の開発に役立つ。
例)
<京都大学iPS細胞研究所の井上治久先生らのグループ>
ALS(TDP-43遺伝子変異型)患者さんのiPS細胞を作成し、病態の再現に成功。
アナカルジン酸という物質が神経の異常を回復させることを発見。
↓
ALSの治療薬を開発、探索する病態モデル系として有効
iPS細胞を用いた再生医療
〜加齢黄斑変性症〜
世界初のiPS細胞の臨床研究
行程表
理化学研究所HPより
iPS細胞を用いた再生医療
〜血小板〜
ヒトiPS細胞から血小板を
大量作成することに成功
京都大学iPS細胞研究所 江藤浩之先生
江藤ラボHPより
Takayama et al.,J Exp Med 207: 2817-2830, 2010
Nakamura et al., Cell Stem Cell 14: 1-14, 2014
iPS細胞を用いた再生医療
〜心筋細胞〜
iPS細胞
ヒトiPS細胞から純度の高い心筋細胞を
大量作成することに成功
心筋細胞
心筋に分化誘導は可能。
しかし、分化効率が低く、純度も低い
重症心不全に対する
自己細胞シート移植
医学部循環器内科 福田恵一先生Cell Stem Cell. 12:127-37. 2013
慶応義塾大学プレスリリースより
iPS細胞での応用へ
澤芳樹先生の再生医療研究
大阪大学医学部心臓血管外科HPより