iPS細胞の作り方と医学への応用

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2016年(H28年 秋学期 、月3限・4限)
第6回:
第一回:生命誕生『遺伝子とその働き』
クローズアップ現代2013年
iPS細胞、夢の医療は実現するか?
iPS細胞は人工的転写因子の導入で作られた。
iPS細胞、転写因子、発ガン、再生医療
 未分化の発生初期細胞は、発生途中で出来る特別なタンパク質が細胞
で働いているためだろうと多くの科学者は考えていた。
 そのたんぱく質を細胞に作らせれることに成功すれば、分化細胞を未
分化細胞に戻せるので再生医療に利用できると考えた。
 2000年代に入り、転写調節因子がこのタンパクに相当すると考え、
転写因子DNAを入れてみようと考えたのが山中だった。
 まず、マウスで成功し、ヒト細胞へ応用し成功した(ノーベル賞)。
 ところが転写因子はガンの発生にも関与してるので、発ガンの心配が
指摘され確認された。そのためiPS細胞の希望は消えるかと思われた。
 山中は、研究を重ね、直線状のDNAを環状化して導入したところ、
DNAは染色体に組込まれず、細胞のガン化を防止することができた。
 この結果、医療応用への道が開けた。
幹細胞は分裂するが、分化して機能
を持つと分裂は停止
1回
2回
3回
受精
= 幹細胞(増殖可能)
= 分化細胞(機能を発揮し分裂しない)
iPS細胞は分化細胞が転写因子の働
きで発生初期の細胞に若返った
分化細胞
幹細胞
受精卵
iPS細胞
樹立
発生初期の細胞と
同じ性質だった
皮膚細胞
分化細胞に4つの転写因子遺伝子DNAを
加えたところ、発生初期の細胞に戻った
大人の皮膚細胞を
転写因子の働きで未分化
転写因子
細胞に若返らせる
初期化
増殖
分化
どうやったらiPS細胞が分化
を始めるかが重要な研究課題。
iPS細胞を処理して特定
の細胞に分化させ、医療
応用する
5
iPS細胞はガン化しやすい・・・何故か?
iPS細胞は、外部から転写遺伝子DNAを無理に導入して作成した。この場合、
外部から導入したDNAは細胞の核に侵入し、染色体DNAと組換えを起こし細胞
に定住する。結果、細胞内には必要以上の転写因子が存在することになる。結
果転写が乱されることになる。これがガンを起こす原因と推定された。
そこで、山中研究室では、転写因子DNAが染色体に組込まれないよう工夫した。
それが転写因子DNAを環状にすることだった。直線状DNAの端は特殊で、他の
DNAと組換えを起こしやすい(頻度は低い)。
そこで、環状にして端を無くしてみたところ、ガン化を防ぐことに成功した。
この結果、黄斑変性症治療のためのiPS細胞治療の開始が可能になった。
線状転写因子DNAは細胞核DNAに組み込まれ、iPS細胞完成後も転写因子タ
ンパクを作り続け、徐々にガン化する。
山中4因子が染色体に組み込まれると分裂を促してがん化する
山中4因子DNAを環状にした
環状にしたDNAは細胞
核DNAに組み込まれな
いので、iPS細胞完成後
消滅して残らない。
iPS化