分子生物学Ⅰ ~イントロダクション

2010. 10.04: イントロダクション
分子生物学の起源~メンデルの法則~
白い花(劣性)
赤い花(優性)
(親)
Keyword
w
w
R
表現型(phenotype)
遺伝子型(genotype)
R
(子)
優性のRを含むので、すべて赤い花
w
R
(孫)
w
R
R
R
w
w
w
R
遺伝子はRR、Rw、wwの三通り
RR:Rw:ww = 1:2:1
赤:白の割合は 3:1
R
RR
Rw
親の形質を決めているのは何らかの
物質(遺伝子)であることを予言
w
Rw
ww
1
分子生物学の歴史
10年 人工ゲノムによる細菌の創製
07年 ヒトiPS細胞 の樹立
2010年
03年 ヒトゲノム解読 終了
98年 RNAi干渉
98年 ヒトES細胞の樹立
97年 クローン技術(ドリーの誕生)
2000年
1995年
90年 遺伝子治療法
1990年
85年 PCR法
82年 ヒト組み換えインスリンの認可
1985年
1980年
75年 DNAシークエンシング
73年 遺伝子組み換え技術
1975年
1970年
1960年
53年 DNA二重らせん構造
33年 遺伝子がDNAである
1950年
1940年
1930年
1865年 メンデルの法則
2
ノーベル賞からみた分子生物学(1)



ノーベル賞
スウェーデンの化学者アルフレッド・ノーベルの遺言に基づき、遺
産をノーベル財団が運用
1901年~
 物理学賞
 化学賞
 生理学・医学賞
 文学賞
 平和賞
 経済学賞(1968年~)
3
各賞の賞金は1千万スウェーデン・クローナ
2007年度のノーベル賞(医学生理学賞)
マリオ・カペッキ米ユタ大教授(70)
マーティン・エバンス英カーディフ大教授(66)
オリバー・スミシーズ米ノースカロライナ大教授(82)
受賞理由は
「胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を使って特定の遺伝子
を改変する原理の発見」
ES細胞
特定の遺伝子の機能を失わせた
「ノックアウトマウス( knockout mice )」
4
ヒトの病気を複製した実験用マウスを作製
http://www.linguamedica.jp/mita/20030618/knockout/knockout_files/image003.gif
胚性幹細胞(ES細胞)
高増殖能
分化多能性
分化
増殖
神経細胞
心筋細胞
ヒトES細胞
1998年樹立 再生医療への応用が期待された
肝細胞
・・
・
ES細胞の問題点
免疫拒絶反応
(受精卵:患者由来ではない)
作製
受精卵
ES細胞
生命倫理の問題
(ヒトES細胞はヒトの生命か?)5
人工多能性幹細胞(iPS細胞)
Dr. Shinya Yamanaka
遺伝子導入
線維芽細胞
(体細胞)
ES細胞
iPS細胞
分化多能性マーカーを発現
24種の候補遺伝子
ecat1,dppa5 ,fbxo15,nanog,eras,dnmt31,ecat8,gdf3
sox15,dppa4,dppa2,fthl17,sall4,oct4 ,sox2,rex1
utf1,tcl1,dppa3,klf4,β-catenin,c-myc,stat3,grb2
Oct4,klf4,sox2,c-myc遺伝子の導入によりiPS細胞が作製
6
Keisuke O. et al. Nature(2007)
人工多能性幹細胞(iPS細胞)
ES細胞
細胞数
iPS細胞
iPS細胞
胚盤胞
キメラマウス
線維芽細胞
胚由来
iPS細胞由来
培養時間[days]
高増殖能
ES細胞に対する優位性
患者由来
体細胞
Fig. キメラマウスのSSLP解析
分化多能性
倫理的問題が少ない
作製
iPS細胞
免疫拒絶反応無し
7
分子生物学と生命工学
分子生物学
DNA二重らせ 制限酵素の発見
んの発見
1953
1970
ヒトゲノム
計画開始
遺伝子工学
の基礎研究
1980
好熱性細菌から
のDNAポリメラ
ーゼの単離
1990
クローン羊ド
リー誕生
1996
ヒトゲノム
完全解読
2003
生命工学
1972
DNAの組み換え
技術の開発
1975
DNAシークエンサーの
発展
PCR法の確立
シークエンス解読
手法の確立
1986 1988
1991
高分子のイオン化
法の確立
質量分析計の発展
DNAチップの開発
8
分子生物学と生命工学(1)
分子生物学
DNA二重らせん
1953
制限酵素発見
1970
1972
生命工学
DNAの組み換え技
術の開発
DNA二重らせん
遺伝子組み換え技術の確立
生物を用いた物質生産時代の到来
(ヒト組み換えインシュリン等)
制限酵素の発見
9
http://www.sanger.ac.uk/Teams/Team17/gfx/mass-spec_600.gif より
分子生物学と生命工学(2)
DNAポリメラーゼ
分子生物学
遺伝子工学
の基礎研究 耐熱DNAポリメラー
1980 ゼの単離
1986
http://www.shiyakudaiichi.jp/support/apps/finn_n
eb/img/p11middle.jpg
PCR法の確立
生命工学
PCRの開発
好熱性細菌からDNAポリメ
ラーゼの単離
高温でも失活しないDNAポリメ
ラーゼの獲得
PCR法:遺伝子増幅技術
任意の遺伝子断片を230倍
に増幅可能
10
http://www.vu-wien.ac.at/i123/pictures/PCR-Schema1.gif
分子生物学と生命工学(3)
分子生物学
DNAシークエンスの高速化
1977年
1975
1990
2003
シークエンス
解読手法の確立
ヒトゲノム
計画開始
ヒトゲノム
完全解読
処理能力:1000塩基対/年
生命工学
1982年
自動DNAシークエンサシステムの提唱
1993年
キャピラリー方式(シースフロー)の採用
自動DNAシークエンサの開発
1986年
処理能力:500,000塩基対/日以上
処理能力:12,000塩基対/日
平板ゲル方式
http://www.oitda.or.jp/main/hw/hw0121-j.html
Optoelectronic Industry and Technology Development Association HPより
蛍光検出器
走査型レーザ
2007年
処理能力:3,840,000塩基対/日
2007年
新規DNAシークエンス技術
処理能力:6,500,000塩基対/H
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分子生物学の基礎:なぜ原核生物か?
真核生物より単純である
大腸菌ゲノム長
6メガ塩基対 = 600万塩基対
ヒトゲノム長
3ギガ塩基対 = 30億塩基対
原核生物と真核生物の細胞の比較:東京薬科大学山岸氏のページ
http://www.ls.toyaku.ac.jp/~lcb-7/yamagishi/eukaryotes.html
生育が早く、培養が容易である
大腸菌:20分間に1回細胞分裂  1019/20時間
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分子生物学で用いられているモデル生物
1. www1.plala.or.jp/yossie/ikimono/ik03.htm
2. coffeeblackandcigarettes.wordpress.com/2007/04/
3. www.hyakka-saen.com/birukoubo/birukoubo.htm
4. www.ucl.ac.uk/~ucbtdag/C339Talk2.html
5. flickr.com/photos/max_westby/54275159/
6. http://www.astrosurf.com/luxorion/Bio/souris.jpg
1.バクテリオファージ
2.大腸菌
3.出芽酵母
4.線虫


5. ショウジョウバエ
6. マウス
生物の遺伝的な操作や研究が可能なこと
研究者の数が多い
モデル生物の選択
生命現象の基本原理→ファージ、大腸菌
真核細胞のモデル→酵母
発生や行動→線虫、ショウジョウバエ
ヒトの生理や病気→マウス(哺乳動物)
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