―7 歳でヴァイオリンを始めたとの い個性的な音楽性につながっているの するのではなく、音楽自体が自然と語 な影響を与えています。ライヴでのイ こと。 だと思います。 るように演奏したいと思っています。 ンタープレイ、即応性、新鮮さが大好 トビアス・プライシク(以下 TP) :ヴァ Interview 2 ―『In Transit』 (2012)でピアニス 僕が一つの方向に進めて、バンドが演 きです。新作のパッケージに記した トがステファン・エビに交代しました。 奏中に全く違うところに持って行くの 「ゼロ」の意味は、僕らはライヴの前 TP:エビとは『Flowing Mood』の録 ですが、それが自分の期待していた はいつも白紙の状態から始めると言う 音直後に出会って、しばらくは前任者 通りの角にたどり着いているのです。 事。観客、音響、コンサート前の食事 ステファン・ルスコーニが自分のバン いろいろな音楽に興味がありますが、 が毎回異なる状況で、雰囲気は様々だ ドで忙しい時の代役をお願いしていま ジャズはあまり聴かなくなりました。 し、目的地は予想がつきません。音 した。エビがバンドの音楽言語を完全 仏教の詠唱、日本のノイズ系や、ブル 楽に導かれるままに進むのです。 なものにしてくれたので、すぐに固定 ガリアのフォーク音楽、エキスペリメ ―新作を通じてリスナーに伝えたい メンバーになってもらったのです。彼 ンタル・ロックなど、僕にとって重要 ことは? の個性とともにバンドの音楽は前進で なのは音楽のジャンルではなく、その TP:感覚をオープンにして音楽に浸っ きました。エビの味わいある繊細さと 演奏者のアティチュード即ち音楽に対 てください。普段ジャズを聴かない多 創造的なハーモニー・センスはバンド 峙する姿勢なのです。これらの逃避行 くの人々から感激の言葉をいただいて を豊かにし、新しい方向性をもたらし が『In Transit』に発展しました。 います。そしてライヴに来場された ブラウン、デクスター・ゴードンが好 TOBIAS PREISIG きでした。自分にとってジャズを演奏 着々と個性を育む ました。 『In Transit』 がその成果です。 ―最新作『Drifting』はどのような 人々を勇気づけたいと考えています。 するのは自然なことで、できるだけ多 ジャズ・ヴァイオリニスト ―カルテットの音楽は前作と『In アルバムですか? 毎回のコンサートで新しく即興的な音 Transit』で変化したと思いますか? TP:前作は強烈な内面の模索だった 楽を創っているので、ユニークな体験 TP:より革新的で緊迫感が増し、ロッ けれど、新作はもっと懐疑的に生まれ になることは間違いありません。 クでプログレッシブな空気感のある音 ました。バンドはさらに強い音楽用語 楽になりました。テーマ~ソロ~テー を見つけて、それを一つの声にする事 マのような伝統的ジャズ・スタイルの ができました。僕たちはソリストでは イオリンを選んだ正確な理由は憶えて いないんです。突然思い立って両親に 話をしたら、先生をつけてくれて、楽 器を買いに行きました。 ―17 歳の時、ジャズ・ヴァイオリ ン奏者になるために、スイス・ジャズ・ スクールに入学したそうですね。 TP:当時すでにふたつのジャズ・バ ンドでスタンダード・ナンバーを演奏 していました。ブルーノート時代の アート・ブレイキー、クリフォード・ くのレコードを聴いてコピーしまし た。ジャズのエネルギーと予測できな いところが大好きなのです。 ―ニューヨークのニュースクール在 トビアス・プライシク インタヴュー [インタヴュー・文] 杉田宏樹 Text by Hiroki Sugita Photos Coutesy of Kohei Yamaguchi 学中に何を学びましたか? TP:最も影響を受けた指導者はリッ に共演する間柄でした。コンサートの 曲もありますが、多くの人々がより深 なくなったのです。即興演奏は数多い チー・バイラーク。ハーモニーの豊か 後によくレコードはないのかと求めら く個性的な音楽になったと言ってくれ ですが、所謂ジャズ的なソロは存在し さを探究することと、即興演奏をコン れたので、2 年後にそれまでやってき ます。2 作品の間にツアーも多数こな ないのです。5 年間を経て、バンドは ポジションのように響かせることを学 た音楽の録音を計画。たまたま同じ地 し、人々が『In Transit』でのバンド 素晴らしく融合した状態になりまし びました。 「モチーフはどこにあるん 区のデイヴ・リーブマンに参加を呼び の共通認識を感じてくれて、うれしく た。我々の音楽は葉っぱが川を下るよ だ」が口癖でしたね。 かけました。デイヴは長年ジョルジュ 思いました。 うに流れ、今や自然に我々を導いてく ― 2003 年にヨーロピアン・ユース・ のビッグバンドのメンバーで、ぼくは ― 作曲方法について教えてください。 れます。 ジャズ・オーケストラのメンバーに選 リッチー・バイラークを通じてニュー TP:たちは、いつも新しく面白い音 ―ウェイン・ショーターについて Tobias Preisig(トビアス・プライシク) ばれます。 ヨークで何度も会っていた関係です。 楽へアプローチする方法を探してい 一言。 音楽の境界線を破壊し、超越するトビアス・プライシ TP:多くのメンバーがその後、成長 ―『Flowing Mood』(2010) 以 降、 て、無理に何か面白いことをしようと TP:ウェインのバンドは我々に多大 ズの若く新しいムーブメントの中心的存在である。 してそれぞれの道を歩んでいます。例 ピアノ+ベース+ドラムスとのカル えばフランスのアコーディオン奏者 テット作が続きます。 ヴァンサン・ペイラニは、ヨーロッパ TP:楽器編成にこだわったのではな で大活躍中です。そんな彼らと各国の く、ミュージシャンと個性が重要なの フェスティヴァルで時々会うのはうれ です。ぼくのグループは 5 年間の活動 しいですね。初めての大きなツアーは で関係を深めてきました。レコーディ 誰にとっても忘れられない経験になる ングのために有名なミュージシャンを ものなので。 起用したり、ツアーのためにその時々 ―ジョルジュ・グルンツとの共演作 で都合のつく人と共演するようなアメ 『Little Horse-Ho!』 (2009) に つ い て リカ式のやり方が好きではありませ 教えてください。 ん。我々はゆっくりと成長しながら関 TP:ジョルジュとはデュオで定期的 係を育んできたので、代わりのきかな 080 JAZZ PERSPECTIVE TOBIAS PREISIG Drifting (Traumton / 4605) グ、叙情的かつ情熱的な弦の音色、ヨーロピアンジャ
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