113 抗癌薬 TS-1Ⓡによる眼瞼結膜杯細胞の経時的変化 ◎松代 光代 1)、金川 邦夫 1)、神田 由佳 1)、坂井 譲 2) 市立加西病院中央検査科病理 1)、市立加西病院眼科 2) 【目的】 抗癌薬 TS-1Ⓡ(以下 【結果】 TS-1)による角膜障害や涙道障害は、 TS-1 投与後、眼科愁訴の有無に関わらず眼瞼結膜の杯細胞 投与患者の約 15%に発症するとされる。涙道障害は涙点か は減少傾向であった。しかし、投与からの日数、TS-1 投与 ら涙小管に多く見られ、今回我々は、TS-1 投与後の涙点付 総量には直線的な相関は認められなかった。投与総量を 近における眼瞼結膜杯細胞の経時的変化をインプレッショ 0㎎、2000㎎まで、4000㎎まで、6000㎎まで、8000㎎まで ンサイトロジーを用い検討した。 10000㎎まで、15000㎎まで、それ以上に分類したところ、 【対象および方法】 0㎎時点と 2000㎎までの Nelson スコア比較は p<0.01 TS-1 投与患者からインフォームド・コンセントを得た。眼 (t 検定)で有意に減少していた。しかし、それ以上総量が 科細隙灯顕微鏡検査、涙道通水検査を行い、0.4%オキシブ 増加しても有意差を認めなっかた。 プロカイン塩酸塩点眼にて麻酔後、ニトロセルロースフィ 【考察】 ルターにて涙点付近の眼瞼結膜に対してインプレッション 個々の症例では、時期によって Nelson 分類スコアが変動し サイトロジーを施行した。採取したフィルターをホルマリ ているが、杯細胞の減少度は,TS-1 開始からの日数や投与 ン固定し、PAS 染色を行った。顕微鏡下にて数視野の杯細 総量と単純に相関しているのではない。しかし、投与開始 胞の状態を Nelson 分類でスコア化し、視野数で除し、小数 早期から眼瞼結膜の杯細胞が有意に減少していることがわ 点第1位で表した。3回以上試料を得られ、重篤な眼科的 かった。今回の対象は全て重篤な眼副作用が出現しておら 障害の発生しなかった 12 名 24 眼を対象とした。杯細胞の ず、杯細胞減少は角膜障害や涙道障害の潜在変化を示して 状態と TS-1 開始からの日数、投与総量との相関を統計学的 いる可能性があると思われる。 に検討した。 連絡先:0790-42-2200(内線 2285)
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