臨床実習指導者の負担と職業性ストレスについて

第 49 回日本理学療法学術大会
(横浜)
5 月 30 日
(金)14 : 25∼15 : 15 ポスター会場(展示ホール A・B)【ポスター 教育・管理!臨床教育系 4】
0364
臨床実習指導者の負担と職業性ストレスについて
小玉
陽子,増田
府中恵仁会病院
幸泰,渡邊
修司,中野壮一郎,稲井田菜穂子,北村
智之
リハビリテーション部
key words 臨床実習指導者・職業性ストレス・アンケート
【はじめに,目的】
社会の高齢化が進む中で,理学療法士(以下,PT)の需要も専門施設から地域,在宅などに広がっており,理学療法士養成校お
よび資格取得者数は年々増加している。
その中で臨床実習は学生が実際の症例を通して学ぶことのできる機会であり,必修科目となっているが,精神・身体的負担があ
ると多くの先行研究より明らかとなっている。また,臨床実習方法については,クリニカル・クラークシップをはじめとした指
導形態の検討や実習指導者(以下,SV)の待遇や業務負担などに関して多くの議論や研究がなされている。しかし,実際に SV
が感じている負担や職業性ストレスに対する詳細な研究は少ない。
今回,当法人における臨床実習の現状や SV の指導方針,指導の悩みなどについてのアンケートを実施し,同時に職業性ストレ
スを評価することで SV の負担やストレスについての検討を行った。
【方法】
当法人内の 2 病院において SV を担った事のある PT10 名を対象とした。
方法はアンケート質問紙法,職業性ストレス簡易票を実施した。アンケートは無記名とし,内容は臨床実習に対する考えや現状
などの全般的な項目,担当した直近の学生についての悩みや負担感についての項目とした。選択回答や自由記載により得た回答
を集計した。職業性ストレス簡易票は既存のマニュアルに従い,分析を行なった。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき計画し,アンケート対象者に文書にて研究主旨を十分説明し,同意が得られたもののみ実施した。
【結果】
有効な回答は対象とした 10 名
(男:5 名,女 5 名)
全てから得られた。臨床経験年数は 7.2±3.6 年,年齢は 29±3.5 歳であった。
過去に指導した学生の人数は 1∼5 人が 7 名,6∼10 人が 2 名,15 人以上が 1 名であった。
職業性ストレス簡易票により,3 名の SV がストレスを強く感じていると示された。
アンケート結果として,臨床実習生を担当する際の大きな要因は,
「後輩の育成は専門職としての義務だから」
4 名,
「SV やスタッ
フにとって学術的刺激になる」
3 名,
「病院,リハビリテーション部内の役割として仕方なく」
3 名であった。学生のフィードバッ
クに要していた時間は 20 分∼40 分が 2 名,40 分∼1 時間が 5 名,1 時間∼1 時間半が 3 名であった。学生を担当していた時の指
導時間の増大による理学療法業務への影響については,全ての SV があったと回答し,複数回答の内容としては「カルテ記載な
どの間接業務に影響し残業となる」が 9 名,
「精神的・肉体的に負担が増す」が 6 名,
「SV の担当患者の診療時間に影響してい
る」が 5 名,
「他スタッフとの共有時間が取れなくなる」が 3 名,
「その他」として「自分・実習生・患者のタイムスケジュール
の管理が難しくなる」が 1 名という結果であった。指導中に,どのような事で悩むかの自由記載では,
「指導方法について」や
「学生との接し方について」が多くを占めていた。
【考察】
今回,職業性ストレス簡易票の結果では,3 名の SV が実習指導中に強いストレスを感じており,その他 7 名の SV は強いストレ
スを感じていないということが示された。
強いストレスを感じているとされた 3 名のうち 2 名は実習生を担当する要因として,
「病院,リハビリテーション部内の役割と
して仕方なく」と回答していた。このことから,実習生の担当を業務として考えている SV は,仕事上のストレスを評価する職
業性ストレス簡易票で強いストレスを感じているとの結果が出たのではないかと考えられた。一方でその他の SV は,
「後輩の育
成は専門職としての義務」や「SV やスタッフにとって学術的刺激になる」と回答していたことから,実習生を担当することを
仕事の一環と言うより,専門職の役割として捉えていると考えられた。しかし,8 名の SV が実習生へのフィードバックに 40
分以上を費やし,全ての SV が指導時間の増大による理学療法業務への影響を感じていた。また,自由記載でも指導方法や学生
との接し方について悩み抱えている事が伺えたため,何らかのストレスはあったと推測された。
今回の研究では SV の負担と職業性ストレスについての現状把握を行ったが,仕事のストレスを表す職業性ストレス簡易票にお
いてストレスを強く感じている SV は少なかった。今後,SV のストレスや負担について,対人性のストレス尺度や指導方法につ
いてのストレスなどを調べることで,より適切な評価が行えるのではないかと考えた。
【理学療法学研究としての意義】
SV の現状把握をすることは,理学療法教育にとって必要であると考える。SV のストレスの原因を把握しサポートしていく事
で,今後の臨床実習教育に貢献できる意義は大きい。