中長距離選手のトレーニング前後における脱水と尿の関係

中長距離選手のトレーニング前後における脱水と尿の関係
~中距離選手と長距離選手の比較~
橋元
拓也
(競技スポーツ学科 トレーニング・健康コース)
指導教員 藤松 典子
キーワード:尿中成分,尿量,運動強度
1.
緒言
れた.ほとんどの練習で長距離の尿中カリウ
多くのスポーツ団体は,秋以降の大会に好
ムが増加していたことから,細胞内液にある
成績を望むため夏季に強化合宿を取り入れる
カリウムが練習により過剰に細胞外液へ移動
ことが多い.陸上競技でも夏季に強化合宿を
し,多くのカリウムが尿から排泄されたと考
行うチームがほとんどである.先行研究では,
えられる.また,長距離の脱水率と口渇感では
夏季合宿の中長距離選手および長距離選手の
長距離に有意な関係(P<0.01)がみられ,脱
尿中成分や尿量など多く研究されているが,
水率が上昇すれば口渇感が上がることを示し
中距離選手のみを対象とした研究は少ない.
た.
中距離はスピードを,長距離は持久力を求め
る必要があるため練習量や強度が異なる.そ
れにより,尿中成分や尿量などが宿泊を伴う
合宿を通して異なる結果が得られると考えら
れる.本研究では,大学陸上競技男子学生の夏
季合宿を通し,中距離選手(以下中距離)と長
距離選手(以下長距離)の脱水と尿の関係を
比較して検討することを目的とした.
2.
方法
対象は,本大学陸上競技部に所属する男子
図1 尿中カリウムの練習前後差の比較
4.
結論
中長距離選手 18 名であった.身体的特徴は年
尿中カリウムの練習前後差は長距離の方が
齢 19.9±1.1 歳,身長 171.0±6.9cm,体重 58.0
高値を示す傾向がみられた.また,長距離の脱
±5.4kg,BMI19.8±1.1kg/㎡,体脂肪率 11.6±
水率と口渇感には有意な関係がみられ,脱水
1.9%,安静時心拍数 60.8±8.9 拍/分であっ
率が上昇すれば口渇感が上がることを示唆さ
た.測定期間は平成 27 年 8 月 16~20 日で広
れた.
島県庄原市にある道後山クロスカントリーパ
ークでの合宿期間中に実施した.測定項目は
参考文献
練習前後の体重,尿量,尿中成分,口渇感と練習
1)
中の心拍数,WBGT であった.
び尿中ナトリウム,カリウム排泄量の一過性
3.
の変動に及ぼす運動強度の影響,日本栄養・
結果および考察
図1で示した通り,合宿を通した尿中カリ
ウムの練習前後差は,中距離に比べ長距離が
練習後に増加し,有意な差(P<0.01)がみら
山田
哲雄他(1993)運動時の汗およ
食糧学会誌,46,39-46