茨城県におけるSU抵抗性雑草の発生実態と対応

[雑草と作物の制御]vol.9
2013 p22~24
茨城県におけるSU抵抗性雑草の発生実態と対応
茨城県農業総合センター 専門技術指導員室
田中研一
1.水稲
ホタルイ」に効果の高いブロモブチド、
クロメプ
(1)過去の発生実態
ロップ、ベンゾビシクロンが配合された対策剤
SU抵抗性雑草は、平成 11 年に日本植物調節剤
を使用する。特に「イヌホタルイ」に対してはブ
研究協会研究所、旧農業研究センターにより県南
ロモブチドを推奨。ただし、登録の範囲内でな
地域で初めて報告され、その発生草種は「コナギ」、
るべく早めの処理を行う。
「ミゾハコベ」であった。また、平成 12 年頃より県
②抵抗性雑草の多発状態を繰り返した圃場では初
西地域で「イヌホタルイ」の多発生が報告されるよ
期剤と中期剤による体系防除を行う。
うになり、平成 13 年には県農業研究所が県西地域
③抵抗性雑草種子は、農業機械を介して移動する
の境町において抵抗性「コナギ」の多発圃場および
ので作業手順に注意し、耕作している別の圃場
地域内での面的な広がりを確認した。さらに、平
でも抵抗性雑草に有効な薬剤を用いる。
成 18 年には、
県南部の稲敷地域農業改良普及セン
④一発剤を用いる場合、2~3 年おきのローテーシ
ターで普及指導員が発根法による「コナギ」の抵抗
ョンとし、同じような成分を含む薬剤の連用を
性検定を管内全域で行った。SU抵抗性の個体は、
避ける。
50 圃場のうち 18 圃場(36%)で確認され、その分布
には偏りがなく、牛久市、龍ヶ崎市、稲敷市、阿
見町、美浦村とほぼ全域で見つかった(図1)。
平成 18 年までに報告のあったSU抵抗性雑草
の発生状況は表1のとおりである。それ以降、現
地での実態調査は行われていないが、境町や稲敷
地域の例からみて県南および県西地域を中心に
「イヌホタルイ」、「コナギ」などの抵抗性雑草が広
く分布していると推察される。
(2)防除対策
県西地域で発生したSU抵抗性「イヌホタルイ」、
「コナギ」に対しては、関係機関、メーカーが協力
し、現地で防除対策試験を行い、防除対策が作成
された。これを基に本県では以下の防除指導を進
めてきた。
①抵抗性雑草発生状況や薬剤の使用状況から抵抗
性が疑われる場合、翌年度から「コナギ」や「イヌ
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さらに、SU抵抗性雑草の現地指導に資するた
め、当初は上記 3 成分を含む対策剤を、最近では
ピラクロニルと対策成分の組み合わせや新規SU
剤、テフリルトリオン、ピリミスルファンなど新
たな主成分で構成された薬剤を普及適応性試験で
確認し、県病害虫・雑草防除指針への掲載を進めて
きた(図2)
。
(3)生産現場における対応状況
平成 16 年以降、一発剤ではブロモブチド、クロ
メプロップ、ベンゾビシクロンが配合された対策
剤の普及が急速に進んだ。現在ではそれらに替わ
り、より効果的な薬剤としてピラクロニルと対策
1キロ粒剤より散布し慣れた剤型として選択して
成分を組み合わせた薬剤や新規主成分で構成され
いると思われるが、薬剤の種類が少ないため、同
た薬剤の使用が増えつつある。平成 24 年度におい
一または類似成分を繰り返し使用している可能性
ては、一発剤の推定使用面積のうち、89%がSU抵
が高い。これは抵抗性雑草を発生させる原因とな
抗性雑草に効果的な薬剤で占められている(図3、
るため、新規成分のフロアブル剤やジャンボ剤な
図4)。
ど散布しやすい剤型によるローテーション使用を
このため、ここ 1~2 年は普及現場においてSU
促していきたい。
抵抗性雑草に関して問題となる事例は報告されて
いない。ただし、約1割を占める対策剤以外(図
2.麦類
4左の項目:その他)の内訳をみると、大半が3
現在、本県の生産現場において、スズメノテッ
キロ粒剤となっている。3キロ粒剤の使用者は、
ポウなどのSU抵抗性雑草は報告されていない。
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麦生育期における雑草茎葉散布剤の使用が少ない
ためと考えられる。
新規主成分剤
20%
1キロ粒剤
6%
その他
11%
ジャンボ・
顆粒
2%
フロアブル
10%
合計推定面積
84,488ha
その他薬剤
剤型別の内訳
対策剤
43%
ピラクロニル
+対策剤
26%
3キロ粒剤
82%
図4 茨城県における一発処理剤の使用状況(H24年度)
コラム
花と果樹の違いについて
これまで花き関係の研究、普及等の仕事に携わ
のも、交配して得られた種子を播種してから果
ってきましたが、最近になってカンキツ等果樹
実を着けるまでに時間がかかり、草本類に比べ
の仕事に替わりました。同じ園芸作物とはいえ、
て長い期間を要する作業となります。反面1回
やはり違いは大きく戸惑うことがたくさんあり
導入された品種は数十年栽培され続け、息の長
ます。
いものになることが多いようです。
一番大きな違いは、今までは草本類を主に扱
植調剤に関しても、花きではわい化剤、発根
っていたので、ほ場に作付けした株は1年以内
剤、開花促進剤としての利用が多いのに対し、
に改植することがほとんどでした。これに対し
果樹類では果実の肥大促進や無種子化、落果防
木本類の果樹では、多くの場合苗を植え付けて
止、摘果、浮皮軽減等に利用され、用途は異な
から数十年間、剪定等管理作業を加えながら同
ります。
じ株を用いて果実を生産します。
なかなか頭を切り換えるのが難しいのですが、
したがって果樹栽培では、生産者は自分が植
ずっとそれに係わってきた人とは少々異なる発
えた木を改植する経験は営農期間中1、2回で、
想が生まれる可能性もあるのでは、と考えて仕
栽植方法の技術や新品種の導入などは一般に
事に励もうと思います。
スピーディには進みません。品種の育成そのも
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山元恭介(神奈川県)
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