大学生は教員からどのような社会的影響を受けるのか

PB021
教心第 56 回総会(2014)
大学生は教員からどのような社会的影響を受けるのか
-成人愛着スタイルにもとづく検討-
加藤知佳子(豊橋創造大学)
問題
加藤(2012)は,学生の特性の中から成人愛着
スタイルをとりあげ,学生が教員も含めた重要な
他者から受ける社会的影響力について検討した。
そこでは,学生の成人愛着スタイルによって,学
生が教員から受ける社会的影響力が異なることは
明らかになったが,具体的にどのような種類の影
響力かについては不明であった。
そこで本研究では,教員が学生に与える社会的
影響力の内容に関する検討を行うことを目的とす
る。
方法
被験者は四年制大学および短期大学の学生 304
名である。回答に欠損が多い者を除いた 214 名(平
均年齢 18.6 歳,SD=1.04,男性 52 名,女性 161 名,
その他 1 名)を分析の対象とした。
被験者には,回答を拒否しても何ら不利益は生
じないことを含めたインフォームド・コンセント
を実施して,倫理的配慮を行った。
質問紙としては,1) Bartholomew ら(1991)
の 4 分 類 愛 着 ス タ イ ル 尺 度 ( Relationship
Questionnaire; RQ)
( 加藤, 1998/9),2) Imai(1993)
の社会的影響力尺度(Perceived Social Power Scale;
PSPS),3)藤井(1998)の大学生活不安尺度の
3尺度を用いた。大学教員についての社会的影響
力は2)によって評定された。
結果
RQ によって評定された愛着スタイルの割合は,
安定型が 28%,拒絶型が 7%,とらわれ型が 41%,
恐れ型が 24%であった。
大学生活不安尺度(以下,不安尺度)のα係数
は .84 であり,内的整合性が認められた。愛着ス
タイルを独立変数,大学生活不安尺度の得点(以
下,不安得点)を従属変数とする一元配置分散分
析を行ったところ,有意差が認められた(F(3, 210)
=5.064, p<.005)。post hoc 検定(Tamhane 法)に
よって,とらわれ型は安定型よりも有意に高い不
安を感じていることが示された。
大学教員の社会的影響力に関しては,天井効果
の見られた2項目(EXP3,EXP4:今井(1993)
参照)を削除し,因子分析を行った結果3因子が
抽出されたことから,それぞれ「魅力と支援」,
「専
門性と正当性」,「強制と従属」と命名し,愛着ス
タイルを独立変数,各因子(項目の合計得点)を
従属変数とする一元配置の分散分析を行ったとこ
ろ,
「強制と従属」因子について,有意差が認めら
れた(F(2, 210)=6.040, p<.001)。post hoc 検
定(Tamhane 法)によって,拒絶型およびとらわ
れ型は安定型よりも有意に「強制と従属」などの
ネガティブな影響を受けることが示された。
前の研究(加藤, 2012)でも,とらわれ型は安
定型よりも有意に教員の社会的影響力を受けるこ
とが示されていたが,本研究によって,その影響
力の内容は,
「強制と従属」のようなネガティブな
影響力であることが示された。
考察
とらわれ型の学生も,
「魅力と支援」といったポ
ジティブな影響力については安定型の学生と有意
差が認められないことから,
「強制と従属」などの
ネガティブな影響力を選択的に受容しているとい
うよりは,自己観に合致しているネガティブな影
響力を増幅して感じているのだろうと推測される。
一方,大学生活に関する不安については安定型と
有意差のない拒絶型の学生において,教員からの
ネガティブな社会的影響については安定型と有意
差が認められた理由は定かではないが,一見不安
そうでもなく,他者から距離をおいている拒絶型
の学生が,実は教員からネガティブな影響を受け
ていると評定している点は,指導上はより注意を
要すると思われる。
ハラスメント予防においても,強い立場にある
側は弱い側の特性に応じた指導を行う責任を有す
るとされるが,学生の特性に応じて調整する必要
があるのは,罰や強制などのネガティブな影響力
の方であるということを本研究は明らかにしたと
いえる。
引用文献
Bartholomew, K. & Horowitz, L. M. 1991 Attachment
styles among young adults: A test of four-category model.
Journal of Personality and Social Psychology, 61,
226-244.
藤井義久 1998 大学生活不安尺度の作成および信
頼性・妥当性の検討 心理学研究, 68, 441-448.
Imai, Y. 1993 Perceived social power and power motive
in interpersonal relationships. Journal of Social Behavior
and Personality, 8, 687-702.
加藤知佳子 2012 大学教員が学生に与える社会的
影響力−学生の成人愛着スタイルによる違い−,日本
教育心理学会第 54 回総会発表論文集,p. 771.
加藤和生 1998/9 Bartholomew らの4分類愛着スタ
イル尺度(RQ)の日本語版の作成 認知・体験過程
研究, 7, 41-50.
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