Page 1 Page 2 Page 3 Page 4 Page 5 論文審査の結果の要旨 算術

きん
じょう
けん
さく
氏 名 ・(本 籍 )
金
城
謙
作
学 位 の 種 類
博
士 (
理
学 位 記 番 号
学位授与 の要件
2644号
平成2
3年 9月 8 日
学位規則第 4条第 1
項該 当
研究科, 専攻
東北大学大学院理学研究科 (
博士課程)数学専攻
学位論文題 目
Canoni
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sanduni
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oot
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学位授与年 月 日
学)
理博第
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一
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(
二進算術幾何平均 による通常楕 円曲線 の標準持 ち上 げと単数根)
論文審査委員
(
主査)
准教授
山
崎
隆
雄
教
授
雪
江
明
彦
教
授
都
築
暢
夫
論
文
目 次
1
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r
a
n
論
文
内 容 要
旨
本博士論文 は,棟数 2の有限体上定義 された楕 円曲線 と超幾何級数の関係 について纏めた ものである.
また応用 として 2進算術幾何平均列を用 いて,楕円曲線の標準的な持ち上 げと超幾何級数の関係を与える.
膚F
l曲鹿 と算術頗何乎埼
,bに対 し,
実数体上の算術幾何平均列 とは,正の実数a
ao
:
-a
,bo
:
-b,am
.
.
:
-(
am+bm
)/
2,bm
.
1
:
-(
ambm
)1
′
2 (
m≧o
)
と帰納的に定義 される数列である(
平方根 は正の ものを選ぶ)
.これ らの数列 は同一極限に収束す る.Ga
us
s
は,算術幾何平均列の同一極限を用 いた,実数体上 の楕 円曲線 の周期の計算方法を発見 した.算術幾何平
均列の類似 は色々考察 されてお り,本博士論文では,算術幾何平均列の p進類似 について考察す る.
pを素数 と し,Kを Q。上 の有限次拡大体,Vを K の正規付値 とす る (
v 也)-1
)
.K の元 a,bで,pが奇素
1
-(
a/
ち)
)≧1
,p-2のときⅤ(
ト(
a/
ち)
)≧3を満たす ものに対 し,数列 (
am
)
,(
bm
)杏
数のとき Ⅴ(
ao
:
-a
,bo
:
-b,am
.
1
:
-(
am+bm
)/
2,bm
.
1
:
-bm(
ambm
)1′2
(
m≧o
)
と帰納的に定義す る.ここで am/
b。の平方根 は 1に近 いほうを選ぶ ものとす る.これ らの数列 は p進算術
幾何平均列 と呼ばれ,He
ia
m
r
tと Me
s
t
r
eによって初 めて定義 された.ここで p進算術幾何平均列 の収束性
について,次の命題が成立す る.
車重ニ
a,bは K の元で,pが奇素数 のとき Ⅴ(
1
-(
a/
ち)
)≧1,p-2の とき Ⅴ(
1
-(
a/
b
)
)≧ 3を満たす とす る.ま
am
)
,(
bm
)を初期値が a,bの p進算術幾何平均列 とす る.もしpが奇素数な ら,〈
am
)と(
bm
)は収
た,数列 (
束す る.p-2の とき,2進算術幾何平均列が収束す るための必要十分条件 は Ⅴ(
1
-(
a/
b)
)>3である.各素
数 p≧2に対 し,p進算術幾何平均列が収束す るな ら,それ らは同一極限を持つ.
i
ma
r
tと
同一極限を持 っ p進算術幾何平均列 は乗法的還元 を持っ楕 円曲線 と対応 している.そ して He
Me
s
t
r
eは,p進算術幾何平均列の極限値を用 いて乗法的還元を持っ楕円曲線の周期を計算 した.
命題 にあるよ うに,p-2の ときに限 り,収束 しない 2進算術幾何平均列を考え ることが出来 る.これは
実数体上の場合 とは異なる現象である.以下収束 しない 2進算術幾何平均列 について考察す る.
a,bは K の元で,Ⅴ(
ト(
a/
也)
)-3を満たす ものとす る.また (
a。
)
,(
bm
)を,初期値が a,bの 2進算術幾
-am/
bmとお く.各 m ≧ Oに対 し,方程式
何平均列 とし,〃m:
Ep
m:
y2
-x(
xl
l
)(
Ⅹ-(
pm
)
2
)
(
1
)
で定義 される曲線 は通常楕円曲線 とな り,Ep
mの j不変量 j
mは
j
m-28[
(
pm1)
2
+F
L
m]
3
/
l
F
L
m
2
(
F
L
m1)
2
]
となる.Sa
t
o
hと Ga
ud
r
yは,j不変量 のなす列 (
j
m
)は収束 しないが部分列 〈
j
m
n
)m≧。は収束す ることに言及
-1
2-
している (nは K の剰余次数)
.但 し,彼 らは暗号理論 に応用す るために K は Q2上不分岐であることを仮
定 している.著者 と宮坂宥憲氏 は共 同で,K は q2上 の任意 の有限次拡大体で,更 に (〟。)自身が収束す る
ことを示 した.よ り正確 には,次 の定理 を得 た.
主定理1.(
K.
Mi
ya
s
a
ka
)
K を Q2上 の有限次拡大体 と し,nを K の剰余次数 とす る.a,bを K の元で V(1(
a/
b
)
)-3を満 たす と
am
)
,(
b。
)を初期値が a,bの 2進算術幾何平均列 とし,〟m:
-am/
bmとお く.各整数 o≦ i≦
す る.また,(
に対 して次が成立す る.
n -1
(
1
)部分列 (F
Lm+
I
)m≧。は Q2上 の n次不分岐拡大体 Fn⊂K のある元 F
L
.
↑に収束す る.
Q2
)の Fr
o
be
ni
us元 c
Tに対 して,F
E.
.1
↑
- (F
E
.
i
)Oが成立す る.
(
2)Gal(Fn/
(
3
)各 m≧Oに対 し,Ep
mは良 い通常還元 を持 ち,E〃
再 まEp
iを還元 して得 られ る曲線 の標準持 ち上 げと
なる.但 し,E州 と E〝
.
Tは,(
1
)のよ うに Le
ge
ndr
e型 の方程式で定義 された楕 円曲線 である.
2澄超幾何叔教
本博士論文では,収束 しない 2進算術幾何平均列 と標数 2の有限体上 の通常楕 円曲線 の単数根 との関係
を与 え る超幾何関数 を構成 している.
a,b,C を有理数 と し, C が 0以下 の整数でないとき,超幾何級数 2
FI
(
a,ち;C;A)は
2
Fl(
a,b;C; A):
-∑。≧o(
a
)
m(
b)mAm/(
(
C
)
。・m !)
で定義 され る.但 し (
a
)mは Poc
hha
mme
r記号である:
(
a
)
o:-1
,(
a
)m:
-a(a+1)・
・
・(a+m1
) (m ≧1
)
.
この超幾何関数 を p進数上 の関数 と見倣す と,収束半径 はパ ラメータと素数 に依存す る.例 えば p≧ 3の
とき,2
Fl(1
/
2,1
/
2;1; A) は pW (戸,
)上で収束 し,W (戸。
)
×上 で は収束 しない (W (戸,
) は wi
t
tベ ク ト
ル)
.しか しDwor
kは,超幾何級数 の比 を とることによ り,定義域が延長 され ることを見 出 した:
星型
(
Dwo
r
k).
pを奇素数 とす る.この とき関数 E(A)が存在 して次を満 たす.
(
1
)pW (戸,)上で,E(A)-(
1)'
p"
/
22
F.(1
/
2,1
/
2;1;A)/2F.(I
/
2,1
/
2;I;Ap) が成立.
)
×;l
A(A-I)H (A)I
- 1)上で正則かつ可逆である.ここで H (A)は井草多
(
2)E(A)は,〈入∈ W (戸p
項式である.
更 に,E (【F
L])E(lF
L
]P
)- E(lp]p
n
I
) は,通常楕 円曲線 E の単数根 となる.但 し F
L∈ 和 まp (〟 -1)H
(F
L
)≠
0を満 た し,n-lF。(FL)‥F,],[FL]∈W (Fpn)は p の Teicl
m ul
l
e
r持 ち上 げである.そ して,E は
y
2
-x
(
x1
)(
x-〟)で定義 され る楕 円曲線であ る.
F
L∈ 戸,が 〟 (FL
1
)H(F
L
)≠0であるか ら,E は通常楕 円曲線 となる.
本博士論文で は Dwor
kの定理 の 2進類似 を考察 した.L
e ge
ndr
e型 の方程式で定義 された曲線 は,棟数 2
の体上で は特異点 を持っ ため,楕 円曲線 の定義方程式 を取 り替 え る必要がある.戸2上 の通常楕 円曲線 の定
義方程式 は y2
+xy-x3+I
L (I
L∈戸,
)で与 え られ ることを用 いて,著者 と宮坂宥意氏 の共 同研究 によ り次
の定理 を得 た.
主定理2.(
K.
Mi
ya
s
a
ka
)
-1
3-
G (A):
-2
Fl
(
5
/
6,7
/
6;2;43
2人) とお き,Bを 人士1で生成 される Z2係数 の収束べ き級数環 とす る.各
B上の Z2代数準同型 ¢ で,¢(
A)≡ ス2(
mod2B)を満たす ものに対 し,W (
F2
)\
〈
0)上の関数 符¢が存在
し,
(
1
)2
W(
戸2
)\
(
0)上で,行中(
A)-C。G(A)/
G(¢ (A)) となる (
C¢はある Z;の元)
.
(
2)W (
戸2
)
×上で かゆは可逆 となる.
(
3
)7
7。(
[p]
¢
)7
7¢(¢ ([
p]
。
)
)- 7
74(¢n
1
(
[
p]
¢
)
) は楕 円曲線 y2+xy-x3+F
Lの単数根 となる.但 し,F
L
は 戸2
×の元で,n-l
F2(〟):
F2
]
であ り,[
F
L]
¢は ¢n(
l
I
L]
¢
)-[
F
L]
¢∈W (
F2
n
)を満 たす F
Lの唯一 の持 ち上 げで
ある.
A)ニス2
のとき,[
F
E
い ま p の Te
i
c
mu
l
ll
e
r持 ち上 げとなり,Dwo
r
kの定理の 2進類似 となる.
特 に ¢(
次 に,¢ として ¢A
G
M(A):
-[
- (1+8人)
+(
(1+8人
)
2+1
6人2(I+8Å)
)1′
2]/
[
8(I+8ス)
]を とる.これ
は 2進算術幾何平均列か ら由来 した Z2代数準同型であ り,主定理 1よ り W (
F2
m
)の元 〟↑で,¢n
A
。
M(〃↑
)
-〟†を満 たす ものが存在す る.以上 をまとめることで,次の系を得 る.これは p-2の ときのみ起 こりう
る現象である.
丞
任意 の F
L∈ 戸2
×に対 し,F
L†を F
Lの持 ち上 げで,¢n
A
G
M(F
L†
)-F
L†
を満 たす もの とす る (n-l
F2(P):
y
2
-x(
x-I)(x-(p↑)2)は Epの標準持 ち上 げを与え る.このとき,W (
宇2
)\
(
0)上の
F2
]
)
.主定理 1によ り,
関数 7
7(A)
:
-符¢
A
G
M(A)が存在 して,
(
I
)2
W(
戸2
)\
(
0)上で,1
7
(A)-C
・G(A)/G (¢A
G
M(
A)
)となる (Cはある Z2
×の元)
.
(
2)W (
戸2
)
×上で 1
7(A)は可逆 となる.
(
3
)か(F
L↑
)刀(F
LY
)
q・
・
・乃(F
L↑
)
q
n
1は楕円曲線 E〟の単数根 となる.但 し U は Ga
l(Fn
/Q2)の Fr
o
be
ni
us
元である (Fn は Q2
上の n次不分岐拡大体)
.
-1
4-
論文審査の結果の要 旨
算術幾何平均 はごく素朴な数の遊びのような概念だが、Ga
us
sが楕円積分 との関係を発見 した ことによ
り真剣な数学の研究対象 となった。 この関係 は、正確には実数体上定義 された楕円曲線の周期が算術幾何
平均を用いて表せ るということになる。 ここでいう算術幾何平均 は、 (
正の)実数の組に対 して (
実数の
位相を用 いて)定義 されるものを指 しているが、 その p-進類似を考えるのはごく自然である。 この類似
は Ta
t
e 曲線 と呼ばれる楕円曲線 (
すなわち、分裂乗法的還元を持っ場合)では並行的に議論を進めるこ
n
ia
m
r
tと Me
s
t
r
eにより示 されている。 (
本博士論文の附録 A には、 ほぼ同等な内容
とができることが He
a
i
ne の p-進周期の環を用いた現代的な取 り扱 いで解説 されている。
)
が Font
楕円曲線が良 い還元を持つ場合 は同様な理論を展開す ることはで きない。 しか しなが ら、p-2の場合
r
r
e と Ta
t
e により導入 された 「
標準持ち上 げ」 と算術幾何平均を関係づけることができる。 こ
だけは Se
ud
r
yや佐藤孝和 により基礎体が不分岐 という条件の もとで考察 されていたが、金城
のような理論 は、Ga
謙作 は宮坂宥憲 と共同で分岐 した場合を許す一般的な理論を構築 した。本博士論文の 2章ではこの結果が
解説 されている。
Dwo
r
k は楕円曲線の族か ら派生する p
-進微分方程式を考察することで、楕円曲線の単数根を p
-進超幾
何関数 によ り表示す るという素晴 らしい結果を得たが、p-2の場合 はさまざまな技術的な理由により除
外 されていた。金城 は宮坂 と共同で、Dwo
r
k理論の類似を p-2の場合に展開 した。ただ し、 ここで現れ
る超幾何級数 は Dwo
r
k の扱 った ものとは違 うパ ラメーターを持 ってお り、Dwo
r
k の理論の単純な移植
とは言えない内容を含んでいる。また、 この結果 と 2章で導入 された算術幾何平均を結びつけることがで
きる。すなわち、 フロベニウス写像の持ち上げとして算術幾何平均か ら導出される幕級数を採用すること
で、算術幾何平均 ・標準持ち上げ ・超幾何級数 ・単数根がすべて結びつ くのである。 このような現象が起
きうるのは p-2の場合だけであり、真に新 しい現象を捕 まえている。 これ らが本博士論文 3章の内容で
ある。
以上の通 り、本博士論文 は独創的な研究成果を豊富に含んでお り、筆者が将来 に渡 り自立 して研究活動
を行 うに必要な高度の研究能力 と学識を有することを示 している。 したが って、金城謙作提出の博士論文
は、博士 (
理学)の学位論文 として合格 と認める。
-1
5-