腎不全合併RA患者に対する至適治療法の確立

研究プロトコール
研究題目
腎不全を合併した関節リウマチに対する有効性と安全性についての至適治療法
を探索する後ろ向き・多施設共同・観察研究
申請者
国立熊本再春荘病院 臨床研究部 免疫アレルギー室長 森 俊輔
申請日 平成 26 年 5 月 26 日
研究題目
腎不全を合併した関節リウマチに対する有効性と安全性についての至適治療法
を探索する後ろ向き・多施設共同・観察研究
1.研究の背景と目的
関節リウマチ(RA)は、主に関節を標的とする進行性難治性の持続性炎症性疾患で、
治療が積極的になされない限りにおいては ADL、QOL の低下を招き最終的には生命予
後不良となる。近年、RA に対する治療戦略の進化に伴い、RA に対する薬物治療ゴー
ルは、care (見守り)から cure (治療)を目指すパラダイムシフトが起こっている。
すなわち、発症早期 RA 患者に対しメトトレキサート(MTX)を第一選択薬として治
療開始し、疾患活動性を細目に評価し、不十分であれば薬物治療を再考するという tight
control という概念と、免疫システムに重要な役割を果たす分子を利用した生物学的製
剤治療薬の登場は、リウマチ薬物治療を大きく進化させることとなった。
一方、合併症を有する場合、RA に対する薬物治療に制限があり問題となっている。
特に、腎不全を合併する RA 患者において MTX 治療の制限により腎不全合併 RA 患者
に対する薬物治療指針は確立していない状況にある。腎不全合併 RA 患者に対する TNF
阻害薬治療の有効性を示す治療を提案する報告もあるが、MTX を併用できない理由に
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研究プロトコール
より、その恩恵は一部の患者に限定される。今回、RA 治療有効性に必ずしも MTX の
併用を必要としない抗 IL-6 受容体抗体、トシリズマブ(TCZ)の腎不全合併する RA
患者への治療有効性と忍容性を検証することを目的とする。
2.研究の意義
腎不全合併 RA 患者に対する至適薬物治療法の確立は、リウマチ専門医にとって重要
な課題である。
3.研究の仮説
腎不全合併 RA 患者に対する TCZ 治療は、RA 疾患活動性改善効果、腎性貧血改善効
果において有効性が高く、かつ忍容性の高い治療法である。
4.研究の方法と期間
多施設後ろ向き観察研究、目標症例は100例、実施期間は、平成26年6月 1 日よ
り2ヶ月とする。
5.1
研究機関と代表責任者
代表責任者
NHO 熊本再春荘病院 臨床研究部 免疫アレルギー室長 森 俊輔
研究分担者
佐世保中央病院 常務理事
植木 幸孝
市民の森病院 リウマチ膠原病センター 所長 日高利彦
その他、参加を希望する施設
2
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5.2
研究1に関する研究方法
5,2,1
対象患者とデータ収集及びスケジュール
対象患者は、RA と診断された患者で研究参加施設において新たに TCZ 治療が導入
された RA 患者。
目標症例数は100症例
スケジュールについては2ヶ月を計画している.データ収集は、参加施設研究者もし
くは、参加施設の責任者が許可する Dr クラーク、秘書により指定された Exel ファイ
ルに登録する。なお製薬企業社員が参加することは禁止する.
5.2,2
研究に登録する際の評価項目
主要評価項目

腎不全を合併した関節リウマチ患者に対する TCZ 治療の有効性と安全性
腎不全の定義:TCZ 導入時におけるクレアチニンクリアランス「GFR
(Cockcroft-Gault)」が 60 ml/min 以下
副次評価項目
1.
貧血改善効果
2.
腎機能改善効果
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5.2.3
評価のために必要な調査項目とその手順、
1.
ID、性、生年月日、RA 診断日、ステージ、クラス、抗 CCP 抗体、リウマチ因子
2.
TCZ 治療導入前の RA 治療生物学的製剤と、TCZ への変更理由
3.
TCZ 導入後、TCZ を中止した症例について、TCZ 中止の理由
4.
疾患活動性(CDAI)
(導入時、導入24週後、導入48週後、エンドポイント、エンドポイント時)
5.
血清クレアチニン、クレアチニンクリアランス「GFR (Cockcroft-Gault)」
(導入時、導入24週後、導入48週後、エンドポイント、エンドポイント時)
6.
血清ヘモグロビン
(導入時、導入24週後、導入48週後、エンドポイント、エンドポイント時)
7.
合併症
高血圧、2型糖尿病、アミロイド腎、間質性肺炎の有無
8.
併用治療薬
MTX、タクロリムス、プレドニゾンの有無
9.
入院を要する有害事象、有害事象月(TCZ 導入後)
以上を臨床カルテより情報を入手する。
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5.2.4
腎不全合併患者と腎不全非合併患者間における TCZ の有効性および安全
性比較と、発症を予測する因子の解析
TCZ 治療を12週以上受けた患者を対象に TCZ 治療前と TCZ 治療24週後の CDAI
の変化を、腎不全合併群と腎不全非合併群で有効性を比較する。
同様にエンドポイントにおける CDAI 変化を、腎不全合併群と腎不全非合併群で有効
性を比較する。
血清クレアチニン、GFR、血清ヘモグロビン値、有害事象発生についても同様の解
析を行う。
有害事象については、それぞれの群で発生した入院を要した有害事象を記載する。
解析に用いる統計解析は、対応のある2群間の比較を行う。解析に先立ち、データの
分布を調べ、正規分布に従っていれば t 検定を行う。従っていない場合は、
Man-Whitney 検定を行う。
有害時用発症を予測する因子の解析
Cox ハザード解析により発症予測因子を解析する.従属因子は、各従属因子のうち p
値が0.1以下のものを原則投入する.
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倫理事項
今回の調査は、腎不全合併 RA 患者に対し、有効な生物学的製剤治療が確立していな
い状況下での TCZ の有効性を後ろ向きに調査するものである。臨床カルテからの情報
収集で、個人情報データに十分な配慮を行えば問題はない。
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7.
インフォームドコンセント・情報公開
前述のように、今回は後ろ向き研究であり患者の試料を用いず、過去に得られた情報
についての調査のみなので文部科学省・厚生労働省の示す疫学調査観察研究に示す指針
により患者同意を必要とはしないが、研究実施の情報公開を必要とするため調査に関す
る情報を院内掲示を求めている.
得られたデータについては学術誌および学会で発表するとともに、今後、生物学的製
剤治療導入時、安全性のエビデンスとしてインフィームドコンセントの際に活用する.
COI(利益相反)については、発表する学会および投稿するジャーナルの規定に沿っ
て情報を公開する.
8.研究資金
各施設における抗 CCP 抗体調査については、熊本再春荘病院研究費より支出される.
研究資金は、治験費、企業からの奨学寄付金(中外製薬株式会社、三菱田辺製薬株式会
社、ブリストルマイヤー株式会社、ファイザー製薬、アステラス製薬株式会社)による.
研究打ち合わせの旅費(森
俊輔医師)は、熊本再春荘病院研究費より支出される.ま
た、研究経過のなかで、必要な場合は、参加者が集まる会議を設定する.会議開催費用、
参加施設研究者の旅費については、基本的に研究者参加施設により支払われるが、製薬
企業との共催会議を設定する場合、会議の役割により共催製薬会社より支給されること
がある.
論文作成にあたり英文校正は、熊本再春荘病院研究費より支出される.論文掲載費用、
オープンアクセス掲載費用、別冊費用は、熊本再春荘病院より支給される.
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Exel ファイルへの入力の手引き
シート RA
ここでは TCZ 治療を開始した時点のデータを記入
Name:データセンターに登録の際は匿名化
年齢:歳
性:男1;女0
ACPA(抗 CCP 抗体):陽性1;陰性0
RF(リウマチ因子):陽性1;陰性0
RA duration(年):発症1年未満は、0、0.5、1に最も近い数字;それ以降は四捨五
入した数字
Class:Steinblocker 分類による
Stage: Steinblocker 分類による
シート CDAI
CDAI=28 関節中の腫脹関節数+28 関節中の圧痛関節数+患者全般評価 VAS mm/10+
医師全般評価 VAS mm/10
CDAI 0W:TCZ 治療開始前の CDAI
CDAI 24W:TCZ 治療開始 24 週後の CDAI
CDAI 48W:TCZ 治療開始 48 週後の CDAI
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endpoint:TCZ 治療最終観察時
endpoint CDAI: endpoint 直近の CDAI
シート有害事象
有害事象名
TCZ 治療開始から有害事象発生までの期間
2 回目以降は追加記載
死亡:あり1;なし0
死亡理由
TCZ 治療開始から死亡発生までの期間
シート治療
TCZ duration:治療期間
MTX use:治療期間中の併用治療あり1;なし0
TAC use:治療期間中の併用治療あり1;なし0
PSL use:治療期間中の併用治療あり1;なし0
Other DMARD use:期間中の併用治療あり1;なし0
Previous Bio 1:TCZ 治療前に使われていた生物学的製剤名
Reason of Discont:TCZ 治療前に使われていた生物学的製剤中止の理由
TCZ discont:TCZ を中止した場合1;ない場合0
Reason of Discont:TCZ 中止の理由
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シート腎機能
Cockcroft-Gault GFR は、年齢と体重を記載していただければ埋める必要はありませ
ん。
Cr 0W:TCZ 治療開始前の血清クレアチニン値
GC-GFR 0W:TCZ 治療開始前の血清クレアチニン値
Cr 24W:TCZ 治療開始 24 週後の血清クレアチニン値
GC-GFR Cr 24W:TCZ 治療開始 24 週後の GFR
Cr 48W:TCZ 治療開始 48 週後の血清クレアチニン値
endpoint:TCZ 治療最終観察時
endpoint Cr:endpoint 直近の血清クレアチニン値
endpoint GC-Cr:endpoint 直近の GFR
高血圧:高血圧合併症あり1;なし0
NIDDM:2型糖尿病合併症あり1;なし0
Amyloid:: 腎アミロイド合併症あり1;なし0
透析:あり1;なし0
シート Hb
Hb 0W:TCZ 治療開始前のヘモグロビン値
Epo 0W:TCZ 治療開始前のエリスロポイエチン治療あり1;なし0
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Hb 24W:TCZ 治療開始 24 週後のヘモグロビン値
Epo 24W:TCZ 治療開始 24 週後のエリスロポイエチン治療あり1;なし0
Cr 48W:TCZ 治療開始 48 週後の血清クレアチニン値
endpoint:TCZ 治療最終観察時
endpoint Cr:endpoint 直近のヘモグロビン値
endpoint GC-Cr:endpoint 直近のエリスロポイエチン治療あり1;なし0
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