湿度管理について ■湿度管理の必要性 〈図1〉 気象庁発刊「日本気候表」より算出 統計期間 1971∼2000 年 各地の月別絶対湿度 20.0 18.0 熊本 16.0 東京 新潟 絶対湿度︵ 日本には豊かな季節変化があり、季節により湿度環境は大きく変化します (図 1)。日本の産業はこの季節変化を活かし、また影響を受けながら生産活動、研 究活動を展開しています。クリーンで安定した環境を求められる生産工程や研 究施設では、適切な設備により湿度の変化をある一定範囲に安定させる必要 があり、湿度管理の質は直接その生産品質、研究品質に影響を及ぼします。 14.0 盛岡 12.0 札幌 /㎏︶ g 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 0.0 1 2 3 4 5 6 月 7 8 9 10 11 12 ■静電気と湿度 ■インフルエンザウィルスと湿度 空気が乾燥して相対湿度が低くなると、物の乾燥が進み、表面が電気を通しに くい状態となり静電気が起きやすくなります。逆に、空気中の湿度が高くなる と、物が吸湿をしたり表面に水膜を形成したりして帯電した電気が空気中など に逃げやすくなるため、静電気が発生しにくくなります。加湿が静電気防止に 。 効果的なのはこのためです (図2) 乾燥はインフルエンザウィルスの生存に大きく影響します。相対湿度 50%RH 以上の環境ではインフルエンザウィルスは長く生存できないことが明らかにさ れており、インフルエンザ予防の観点からすると、室内の相対湿度は50%RH 以上を保つことが望ましいと言えます (図3) 。 〈図2〉 〈図3〉湿度とインフルエンザウィルスの生存率の時間変化 危険 人体に害がある 電圧(kV) 20%RH 10 8 普通のナイロンカーペットの場合 6 やや危険 4 人間が感知する限界 安全 Harper(1961) 100 12 かなり危険 境界領域 (株) デルファイ研究所「OAオフィスの設計」 より 生存率(%) 湿度と静電気 10 35%RH 1 50-65-80 %RH 2 0 10 静電気防止のナイロンカーペットの場合 20 30 0.1 40 50 相対湿度(%RH) 0 4 23 時間 ■蒸気式加湿の優位性 加湿方式には大きく分けて3種類あり、それぞれ特徴と適正があります。水を沸騰させ発生させた蒸気で加湿する 「蒸気式加湿」 、水を細かい霧にして噴霧する 「細霧式加湿」 、布状の加湿材に水を滴下し自然気化させる 「気化式加湿」 の3つです。 ストーブの上に置いたヤカンのように、水を沸騰させた蒸気で加湿する蒸気式加湿は、ある意味原始的な加湿方式ですが、今でも多くの用途で採用される優れ た加湿方式と言えます。衛生面の安全性、 クリーンな環境、制御性、 どれをとっても他の方式よりも優れています。これらの特徴から、 クリーンルームや高精度な 環境が求められる用途、健康のための加湿では蒸気式加湿が最適です。 ■気化式加湿 水と空気を接触させ、水を常温で気化させる方式です。 原理図 特 徴 ■細霧式加湿 ■蒸気式加湿 水を微細な水滴にして、空気中で全て蒸発させる方式です。 水を加熱して、蒸気を吹き出し空気中に拡散させる方式です。 原理図 吹き出した空気が過飽和にならない。 断熱変化をする。 加湿空気に不純物が含まれない。 気化熱が必要なので、高温低湿部の加湿に 適する。 加湿吸収距離はない。 加湿材の洗浄・乾燥をする。 純水を使用すると清掃の手間を軽減できる。 空気清浄気化式加湿器 PH 主な加湿器 ユニット型気化式加湿器 NPS 滴下気化式加湿器 KJD、KJL メンテナンス 特 徴 原理図 冷却効果があり空気温度を下げる。 断熱変化をする。 消費電力が小さい。 加湿吸収距離は長い。 給水中の不純物も一緒に放出する。 霧化部の清掃をする。 純水を使用すると粉塵の放出はない。 遠心式加湿器 D、ABS 主な加湿器 モノフォグ MF・ナノフォグ NF-E バイオセーフ BS・ジェットスプレー JS メンテナンス ■加湿計画 相手が自然であるため湿度をコントロールすることは簡単ではありません。加 湿計画においては、外気条件の確認、既存空調方法/換気方法とその稼働状 況の確認、建築仕様の特徴把握、室内の空気の流れの把握、機械発熱の有無、 メンテナンス等様々な条件をもとに立案する必要があるため専門性が求めら れます。それらの諸条件をしっかり検討して立案された加湿計画では、仕様や 能力に無駄がないため、安定した環境を無駄のない消費エネルギーで実現す ることができます。 ■メンテナンス 特 徴 メンテナンス 無菌・クリーンな加湿ができる。 高精度な制御が可能。 空気温度の変化がほとんどない。 加湿吸収距離が短い。 水槽内に堆積したスケール(給水中の不純 物が析出したもの)を排出する。 電熱式蒸気加湿器 SU、Mk 電極式蒸気加湿器 CP 主な加湿器 ガス式蒸気加湿器 GS クローズパン型加湿器 KP 二重管グリッド式加湿器 SIB(蒸気ボイラー併用) 湿度管理は生産性や研究の精度などに直結するため、加湿システムには稼働 の安定性がもとめられます。加湿は水を用いるため、 メンテナンスが不可欠で す。十分なメンテンスがされなければ加湿システムのトラブルに繋がります。 そのため、加湿の導入時にしっかりメンテナンスについても検討し、必要に応じ てメーカー等とメンテナンス契約を結ぶことは生産/研究の品質安定と専門 業務への集中に繋がります。 【監修:ピーエス工業株式会社】
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