中学生におけるスクール・コネクテッドネスの研究(2) ―妥当性と信頼性の検討― ○津川秀夫1・高本 渉2 (1吉備国際大学心理学部・2吉備国際大学臨床心理相談研究所) キーワード: 中学生,スクール・コネクテッドネス,不登校 School connectedness of junior high school students (2):A study of the validity and the reliability. Hideo TSUGAWA 1 and Ayumi TAKAMOTO2 (1School of Psychology, Kibi International Univ. 2Research Institute of Clinical Psychology, Kibi International Univ.) Key words: junior high school students, school connectedness, non-attendance at school スクール・コネクテッドネス(School Connectedness:SC) とは,児童生徒と学校を結びつける価値や活動を指す概念で ある。SC の維持・向上は,問題行動を低減させ学校適応を促 進させることが知られている(Libbey, 2004) 。 津川・高本(2013)は,中学生を対象にして SC を測定す る尺度(むすびスケール)を作成した。中学生の SC は, “部 活動” “所属” “友人” “教師” “規範”の 5 因子からなり,そ の内的整合性の高いことが確認された。また,登校状況のよ い生徒の SC の得点は,不登校傾向や学校に嫌悪感をもつ生 徒よりも全ての因子において高くなることが明らかにされた。 今回の検討では,妥当性と信頼性の検討をさらに進めた。 研究Ⅰにおいて他の学校適応度を測定する尺度との基準関連 妥当性を検討し,研究Ⅱにおいて再検査による信頼性の検討 をおこなった。 方 法 研究Ⅰ 対象者 A 県の公立中学校に通う 1 年生から 3 年生 の生徒 490 名(男子 247 名,女子 243 名)を対象とした。 調査時期 2013 年 5 月に集団にて実施した。 質問紙 むすびスケール 津川他(2013)で作成された 35 項目からなり,SC を“部活動” “所属” “友人” “教師” “規範” の 5 分野から測定する尺度である。回答形式は「よくあては まる (4)-全くあてはまらない(1)」の 4 件法であった。 Questionnaire Utilities(Q-U) Q-U は学校での満足感と 意欲,学級集団の状態を測定する尺度であり,学校生活意欲 尺度と学級満足度尺度の 2 つの尺度から構成されている(河 村,1999) 。学校生活意欲尺度は, “友人との関係” “学習意 欲” “教師との関係” “学級との関係” “進路意識”の 5 因子 20 項目からなる。学級満足度尺度は, “承認” “被侵害”の 2 因子 20 項目からなる。両尺度の回答形式は「とてもそう思う (5)-全くそう思わない(1) 」の 5 件法であった。 研究Ⅱ 対象者 A 県の公立中学校に通う 1 年生から 3 年生 の生徒 498 名(男子 252 名,女子 246 名)を対象とした。 調査時期 第 1 回調査を 2013 年 5 月,第 2 回調査を 4 か月 後の 9 月に実施した。 質問紙 むすびスケール(津川他,2013)を用いた。 結 果 研究Ⅰ 基準関連妥当性の検討のため,むすびスケールの得 点と Q-U の学校生活意欲尺度および学級満足度尺度得点を 用いて相関係数を求めた(Table 1) 。 その結果,むすびスケールの“所属”においては,Q-U の “学級との関係” “友人” “教師” “承認”に中程度の正の相関, “非侵害”に中程度の負の相関が認められた。 同様に,むすびスケールの“規範”においては, “学習意欲” “教師”に中程度の正の相関, “友人”においては, “友人” “教師” “学級との関係” “承認”に中程度の正の相関, “教師” においては“教師” “承認”に中程度の正の相関,合計得点に おいては“友人” “学習意欲” “教師” “学級との関係” “承認” および学校生活意欲総合得点に中程度の正の相関, “非侵害” に中程度の負の相関が認められた。 なお, “部活動”については全ての因子で弱い相関が認めら れた。 Table 1 むすびスケールとQ-Uの相関係数 学 校 生 活 意 欲 所属 規範 友人 教師 部活動 合計得点 友人 .46** .29** .59** .34** .31** .55** 学習意欲 .33** .52** .29** .37** .25** .48** 教師 .46** .40** .40** .60** .25** .57** 学級との関係 .59** .38** .45** .40** .30** .58** 進路 .15** .29** .28** .27** .12** .31** 総合 .54** .52** .54** .55** .33** .67** 承認 .46** .36** .55** .47** .34** .60** 非侵害 -.40** -.27** -.39** -.25** -.21** -.41** 学 級 満 足 度 **p <.01 研究Ⅱ 再検査信頼性の検討のため,1 回目(5 月)と 2 回 目(9 月)の調査で得られたむすびスケールの得点を用いて 相関係数を求めた。 その結果,全ての因子および合計得点において,有意な中程 度の正の相関が認められた(Table 2) 。 Table 2 むすびスケールの5月データと9月データの相関係数 9月所属 9月規範 9月友人 9月教師 9月部活 9月合計 5月所属 5月規範 5月友人 5月教師 5月部活動 5月合計 .66** .42** .39** .45** .28** .59** .64** .26** .43** .24** .53** .56** .38** .26** .53** .63** .19** .54** .60** .45** .70** **p <.01 考 察 基準関連妥当性を検討した結果,SC の“所属” “友人” “教 師” “規範”の各因子に関して,Q-U の関連する因子におい てそれぞれ中程度以上の有意な正の相関が認められた。 “部活 動”に関しては弱い相関であったが,これは Q-U に該当する 内容の因子が無かったためと考えられる。これらから,本尺 度は十分な妥当性を有していると考えられる。 再検査による信頼性を検討した結果,有意な中程度以上の 相関が認められ,十分な信頼性を有していることが明らかに なった。 以上の結果から,中学生の学校適応度を SC の観点から測 定する尺度として,むすびスケールが十分な妥当性と信頼性 を備えていることが示唆された。
© Copyright 2024 ExpyDoc