Homeobox Gene Expression and Mutation in Cervical Carcinoma

(様式 乙8)
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
論 文 提 出 者 氏 名
洪
耀 欽
論 文 審 査 担 当 者
主 査
教 授
植
木
副 査
教 授
大
副 査
教 授
森
副 査
副 査
教 授
谷
川
允
彦
教 授
勝
岡
洋
治
槻
實
勝
浩
紀
志
主論文題名
Homeobox Gene Expression and Mutation in Cervical Carcinoma Cells
(子宮頚癌細胞におけるホメオボックス遺伝子発現と変異)
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
≪研究目的≫
ホメオボックス (HOX)遺伝子は種を超えて保存されている転写因子で、形態形成の制御や細胞の位
置情報の伝達に重要な役割を果たしている。この発現異常や遺伝子変異は癌の発生・進展にも密接に
関与するとされているが、婦人科癌をはじめとする固形腫瘍での報告は少ない。ヒトにおける HOX 遺伝
子は 39 種類が同定されており、A〜D の 4 群に分類され、それぞれ第 7、17、12 および 2 染色体上に
存在している。子宮頚癌に関する最近の報告では、HOX C5、C8、D9 等の遺伝子発現がその発生に
重要とされているが、未だ不明な点が多く、遺伝子変異については全く検討されていない。今回申請者
は、種々の頚癌培養細胞および正常頚部組織における HOX 遺伝子発現を解析し両者を比較検討し
た。また、泌尿生殖器系統の発生や先天異常に密接に関連する HOX A10 および A13 遺伝子に着目
し、頚癌細胞におけるこれらの遺伝子変異を解析した。
≪対象と方法≫
(1)
頚部扁平上皮癌 7 株 (SKG-I, SKG-II, SKG-IIIa, SKG-IIIb, OMC-1, YUMOTO, QG-U)
と腺癌 4 株 (HOKUG, NUZ, OMC-4, CAC-1)の計 11 株および本研究に用いることの同意
を得て採取した正常頚部組織 14 例を対象とした。
(2)
上記検体より total RNA を抽出し、random primer 法にて cDNA を合成した後、HOX 遺伝
子群 (A〜D、39 遺伝子)の発現を各々に対する特異的プライマーを用いて RT-PCR にて解
析した。各検体における HOX 遺伝子発現の有無をデンシトグラフにて判定し、癌細胞と正常
組織間での発現プロフィールを比較した。
(3)
頚癌 11 株より DNA を抽出した後、HOXA10 および A13 遺伝子の exon 1、intron 1、exon 2
をカバーする特異的プライマーを用いて PCR-SSCP を行った。得られた変異バンドから DNA
を抽出、再増幅後、direct sequence により遺伝子変異の有無を検討した。
- 1 -
≪結 果≫
(1)
HOX A9, A11, A13, B5, C4, D3, D9 遺伝子は頚癌培養細胞と正常頚部組織の両群で全例
発現、A2, A3, A5, A6, A7, B1, C6, C8, C9, C12, C13, D1, D12 遺伝子は両群で全例陰性
であった。一方、HOX A1, B2, B4, C5, C10, D13 遺伝子発現は、頚癌 11 株中、それぞれ 8,
7, 9, 9, 9, 11 株に認められたのに対し、正常頚部組織では全例陰性であった。HOX B4、
B13 遺伝子発現は扁平上皮癌 7 株中、それぞれ2、4 例で陰性であったのに対して腺癌 4 株
では全例に認められた。また HOX B8 遺伝子発現は腺癌 4 株中 2 例にのみ認められた。他
の HOX 遺伝子では、由来組織別での明らかな発現の相違はみられなかった。
(2)
頚癌 11 株における HOX A10、A13 遺伝子変異の PCR-SSCP による解析では、YUMOTO、
QG-U、HOKUG、NUZ の 4 株で、HOX A13 遺伝子の 958〜1258 塩基領域に変異バンド
が検出された。direct sequence の結果、4 株において 1042 塩基に C の挿入、QG-U と
HOKUG において 1113 塩基に G からCへの置換が認められた。これらは intron 1 における
変異であった。全 11 株において、HOX A10、A13 遺伝子の exon 1 および exon 2 領域には
遺伝子変異は認められなかった。
≪結 論≫
本研究より、HOX A1, B2, B4, C5, C10, D13 遺伝子発現が頚癌の発生に密接に関与することが示
唆された。また、頚癌細胞における HOX A13 遺伝子変異が非翻訳領域(intron 1)に検出されたが、
転写活性を制御する HOX A10、A13 遺伝子の翻訳領域(exon 1 および 2)に変異はないことが判明し
た。
- 2 -
(様式 乙 9)
審 査 結 果 の 要 旨 お よ び 担 当 者
報 告 番 号
乙
第
号
論 文 審 査 担 当 者
氏
名
洪
耀 欽
主 査
教 授
植
木
副 査
教 授
大
副 査
教 授
森
副 査
副 査
教 授
谷
川
允
彦
教 授
勝
岡
洋
治
槻
實
勝
浩
紀
志
主論文題名
Homeobox Gene Expression and Mutation in Cervical Carcinoma Cells
(子宮頚癌細胞におけるホメオボックス遺伝子発現と変異)
論 文 審 査 結 果 の 要 旨
ホメオボックス (HOX)遺伝子は種を超えて保存されている転写因子で、形態形成の制御や細胞の位
置情報の伝達に重要な役割を果たしている。この発現異常や遺伝子変異は癌の発生・進展にも密接に
関与するとされているが、婦人科癌をはじめとする固形腫瘍での報告は少ない。申請者らは、種々の頚
癌培養細胞および正常頚部組織における HOX 遺伝子発現と遺伝子変異を解析し、以下の知見を得
ている。
方法は頚部扁平上皮癌 7 株と腺癌 4 株の計 11 株および正常頚部組織 14 例における HOX 遺伝子
群 (A〜D、39 遺伝子)の発現を RT-PCR にて解析した。その結果、7 遺伝子は両群で全例発現、13
遺伝子は両群で全例陰性であった。HOX A1, B2, B4, C5, C10, D13 遺伝子発現は、頚癌 11 株中、
それぞれ 8, 7, 9, 9, 9, 11 株に認められたのに対し、正常頚部組織では全例陰性であった。一方、頚癌
11 株中 4 株で、PCR-SSCP によって HOX A13 遺伝子の 958〜1258 塩基領域に変異バンドが検出
された。direct sequence の結果、4 株において 1042 塩基に C の挿入、QG-U 株と HOKUG 株にお
いて 1113 塩基に G からCへの置換が認められた。これらは非翻訳領域(intron 1)における変異であっ
た。全 11 株において、HOXA10、A13 遺伝子の翻訳領域(exon 1 および 2)に遺伝子変異は認められ
なかった。
申請者らは、本研究において、数多くの HOX 遺伝子群から頚癌の発生に密接に関与すると思われる
候補遺伝子を見い出した。また、頚癌における HOX A13 遺伝子変異の有無を初めて明らかにした。こ
れは頚癌発生の分子機序を追求する上で重要な示唆を与えるものであり、腫瘍医学に貢献するところ
が大であると考えられる。
以上により、本論文は本学学位規程第3条第2項に定めるところの博士(医学)の学位を授与するに値
するものと認める。
(主論文公表誌)
Cancer Science
94(5):
437-441, 2003
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