An ーmage Rec。rding SyStem f。r Digitaー Stiーー Camera

〔山梨大学工学部研究報告第40号1989年12月〕
論
文
ディジタルスチルカメラ用
DPCM画像記録システムの試作
橋口住久 三枝正人
木下祐三 中澤透
荒崎真一
(平成元年8月31日受理)
An Image Recording System for Digital Still Camera
SumihisaHASHIGUCHI YuzoKINOSHITA ShinichiARAZAKI
MasahitoSAIGUSA TohruNAKAZAWA
Abstract
An apparatus for recording of still images was manufactured for experiment. This appara−
tus consists of an analog−to−digital converter, a data compressor, and an image memory. The
image data of 8 bits/pel are reduced to 4 bits/pel by applying DPCM with the previous
−sample feed back. The reproduced pictures were with good quality and no degrations were
visible by most of the observers.
2.2画像のDPCM符号化
1.はじめに DPCM符号化方式は,画像情報の高能率符号化の
代表的な方法である.この方式では,先行するデータ
から現在のデー一一一タを予測し,予測値と実際の値との差
撮像素子で捕らえた画像信号を固体メモリに記録す
(予測誤差信号)を符号化する.ハードウェアの構成
るディジタルスチルカメラを実現するために,DPC
M(Differential Pulse Code Modulation)符号化方
は直前のデータのみを予測に用いる前値予測DPCM
式を用いて画像情報を1/2に圧縮して記録するシス
方式が最も簡単である.
テムのハードウェアを試作した,
ここでは,画素数256×256画素,1画素RG
B各8ビットの画像情報を圧縮する.
いま一っの色のみについて考える.符号化しようと
2. データ圧縮の方法
する画素の輝度をXn,この画素の左隣の画素の輝度
2.1 画像情報の特徴
をXn−1(前値)とするとき, Xn−1から予測できる
画像情報は,隣接する画素の相関が高いという性質
A
Xnの値を予測値Xnとすると,差信号enは次式の
を持っている.画像の輝度の空間分布が急激に変化す
ようになる.
るのはまれであるので隣接する2っの画素のデータが
A
en=Xn−Xn (1)
似かよった値になる確率が高い.データの値の変化が
図一1は,画像情報の差信号分布の一一例である.画像
小さいということは冗長性があるということであり,
情報は,次のような共通の性質を持つことが知られて
いる1).
この冗長性を取り除くことにより情報量を圧縮するこ
(1)差信号は小さい値が多く,平均値をOと考えて
とができる,
よい.
(2)差信号の分散は元の画像情報の分散の1/10
*電子情報工学科,Department of Electronics
程度になる.
**機山工業高校,Kizan Technical High Schoo1
一78一
ディジタルスチルカメラ用DPCM画像記録システムの試作
A
に予測値Xnを加えて復号し,これを次の時刻の予測
したかって,差信号を取ることによって情報量の圧
縮かできる. ’
値とするための回路である.このとき得られる予測値
2.3 DPCMシステムの動作
図一2は,前値予測DPCMを用いた画像記録再生シ
は量子化誤差qnを含んでいる.したがって,予測値
A
Xn+1は次式のようになる,
A
Xn+1=Xn十qn (2)
ステムのフロック図である,
記録セクションでは,アナロク入力信号を8ヒット
qnは, en+1を求めるときに逆符号となり復号器で
のディシタル信号に変換して記録再生する,画像信号
発生したqnとXn+1を復号するときに打ち消し合う
は256本の水平走査線からなり,一走査線あたり2
ので累積しない.
56回サンプリングして256×256個のデータを
再生セクションでは,メモリ内のデータは順次読み
得る.一走査時間は63.5μsであるので,このと
きのサンプリングレートは5MHzである.第nサン
A
プル点のデータXnとその予測値Xnとの差enを作
出して非線形逆変換し8ビットのデータを得る.この
ハ
値に予測値Xnを加えて復号し,アナログ信号に変換
り,これを非線形変換器(コンプレッサ)によって4
2.4 非線形変換器の特性
ヒットのデータdに符号化してメモリに記録する.図
中で破線で囲まれた局部復号器は,メモリに記録する
画像信号Xnが8ビット(0∼255)のとき,差
信号enは一255から+255までの9ピットとな
のと同じデータを非線形逆変換器(エキスパンダ〉に
る.差信号enは511個の全ての値にわたって一様
に分布するのではなく,図1のように差信号enが小
して出力する,
よってもとの8ビットレベルのデータにもどし,これ
さいところに集中して分布するので,小さい差信号を
0.30
を細かく量子化し,大きい差信号を粗く量子化すれば,
●
0.25
効率的に符号化できる.ここでは,この差信号の分布
を考慮して,8ビヅトの差信号を非線形変換して4ビ
ン
eO.20
三
・●
ットに量子化する.非線形変換の特性は平均量子化雑
乏O.15
音電力が最小となるように,すなわちS/N比が最大
となるように選ぶ.この条件を満たす非線形変換特性
8臣
0.10
はマックスの手法により次式で与えられる2).
・ ・
・−EXP←等xl
0.05
● ●
V (3)
F(x)=
● ●
・●●・
0
●
1−EXP(−K)
K= 326 V
一32 −16 0 16 32
e
図一1 予測誤差信号分布の一例
V:画像信号の最大振幅(255)
Fig.1 A typical distribution of the prediCtion
error of a image slgna】L
RECORDING SECTION
σ:差信号の標準偏差
REPRODUCING SEOTION
「一一一j’i〈iTδ∂6厄亘一一一「
IN
A/D
lXn en d l
十
COM
「一’ S言一ごδ三皿一一「
MEMORY
EXP
+卍
十
D/A
1 へ
E芸[!
1
1
十+
1
1
十
L−一__一_一一一_.._.._一_一」
1
1 t
1
Xn
DELAY
A
Xn
DELAY
DECODER
1
L_.二:二二:二:二二:二二二二nl’ ⊂)oM:・cOMPREssOR
EXP:EXPANDER
図一2 前値予測DPCMのブロック図
Fig・2 Block diagram of a previous−sample feedback DPCM
一79一
OUT
第40号
山梨大学工学部研究報告
平成元年12月
ここでは,ミッドトレッド型1)を用いて量子化を行
こと
(3)フ’リントする場合にもRGB信号か必要である
った.ミッドトレ・ゾド型は,0付近の代表値が0であ
るので,0付近での符号化特性がよい.−255から
+255までの差信号を図一3の非線形変換によって1
こと
5段階の値に変換して,これを4ビットて表現する,
ができること
(4)RGB各色に同一のハードウェアを用いること
なお,図一4はエキスパンダの非線形逆変換特性である.
などの理由による.
σの値は,複数のサンプル画像の標準偏差の平均値
3.2 システムの構成
からσ=17とした,
図一5は,画像記録再生システムのブロック図である.
入力信号を遮断周波数2MHzのアンチエーリアスフ
ィルタを経て15dB増幅してからAD変換する.
サンプリング周波数が5MHzであるため1画素の
演算は200ns以内に終了することが必要であるの
で,動作速度の速いTTLでロジック回路を構成して
3. DPCM画像記録システムの試作
3.1 システムの概要
ここで試作したシステムは,RGB各色の信号をデ
ィシタル変換した画像情報をi/2に圧縮し,メモリ
に記録するものである,RGB信号を用いるのは,
いる.非線形変換器と非線形逆変換器には,高速動作
のバイポーラ型PROMを用いた.
出力側にも高域遮断周波数2MHzの低域フィルタ
(1)NTSCコンポジット信号に比べ処理しやすい
を挿入した.
こと
(2)撮像素子の出力信号はRGB信号が基本である
最大出力振幅はO.7Vとしてある.
250
7
6
200
5
150
4
℃
ω
3
100
2
50
1
0
50 100 150 200 250
0
1 2 3 4 5 6 7
e
図一3 非線形変換
d
図一4 非線形逆変換
Fig.3 Nonlinear transformation of the compressor
Fig.4 Nonlinear inverse transformation
of the expander
IN
RGB
LPF AMP
15db
A/D
8
ENCODER
8
8 MEMORY 8
DECODER
D/A
64kbyte
AMP
LPF −15db
O.7VPP
OUT
RGB
O.7VPP
HSYNC
MEMORY
CONTROL VSYNC
HSYNC
MEMORY
VSYNC CONTROL
図一5 画像記録システムのブロック図
Fig.5 Block diagram of the recording system
一80一
ディジタルスチルカメラ用DPCM画像記録システムの試作
3.3 ノイズ対策
は256×256ては十分ではなく,少なくとも51
ディジタル回路では,ICが発生するノイズや外部
2×512の分解能か必要である.画素数を増加する
には1画素当りの演算時間を短縮することが必要であ
からのノイズが誤動作の原因となる.
チング動作を行うときに消費電流が大きく変化するの
る,512×512画素にするには1画素あたりの演
算は100ns以下となる.
で,電源のインピーダンスが十分低くないと電源電圧
復号画像の画質を向上させるには,エラーの発生を
が変動し,誤動作を生じる.ここでは,個々のICか
発生するノイズが他のICに影響するのを防ぐため,
方法が考えられる.
ディジタルICでは,内部てトラン1スタかスイッ
減少させなけれはならない.そのためには次のような
(1)二次元の予測を行う.この場合にはラインメモ
すべてのICの正負の電源ピンの間に1∼2nFのバ
リが必要となる.
イパス用セラミックコンデンサを挿入した,
(2)画面の性質に適応した符号化を行う,
製作したシステムは4枚の基板で構成されている.
電源から侵入するノイズを少なくするため,基板毎に
定格5V5Aの三端子レキュレータを使用し,220
ここでは,予測誤差信号分布の標準偏差を17に固
定して非線形変換特性を決定しているが,標準偏差が
μFのコンデンサを並列に挿入した.
17でない画像にっいては,最適な符号化が行なわれ
4枚の基板のGND(接地)電位を等しくするため
ないことになる.画像毎に標準偏差を求めて非線形変
に,4枚の基板を1枚の大きいアース板の上に乗せ,
換特性を決定するようにすれば,その画像に最適な符
基板の電源端子のGNDと電源のGNDをアース板に
号化を行うことかできエラーを減らすことができる,
最短距離で接続した.
画像毎に非線形変換特性を決定するには,あらかじ
4.結果と検討
め複数の非線形変換器を用意しておき,1画面分のデ
ータをフレームメモリに記録してから差信号の標準偏
差を求め,適当な非線形変換器を選択して符号化を行
製作したシステムを用いて,ディジタル画像情報を
うという方法が考えられる.
1/2に圧縮してメモリに記録した.これを復号して
ノイズ対策としては,
(1)システム全体のシールトを完全にする
得られた復号画像と原画像を比べると,視覚的にはほ
(2)電源ラインのインピーダンスを下げる
とんど劣化のない画像が得られた.
原画像と復号画像の差の画像(図一6)を見ると,輝
ことが必要である.
度変化が大きいエッジ部分ではエラーが発生している
5. おわりに
が,このエラーは復号画像を肉眼でみる限りほとんど
検知できない,
電子スチルカメラに搭載する場合を考えると画素数
ディジタルスチルカメラを実現するために,DPC
M画像記録システムを試作した.試作システムを用い
て,画像デー−yを1/2に圧縮して半導体メモリに記
録再生した.その結果,元の画像に比べて視覚的には
劣化が検出できない再生画像が得られた.
ディジタルスチルカメラに搭載するには画素数を4
倍以上に増やす必要があることがわかった.
高画質化をはかるためには,二次元予測を用いる方
法や画面の性質に応じた符号化を行う方法をさらに検
討することが必要である.
参考文献
1)伊東晋:画像情報処理の基礎,東京理科大学出版会
図一6 エラー画像
(1986)
Fig.6 errors on a Pictu「e
2) J.Max:”Quantti2ing for Minimum Distrtion”,IRE
Trans.Inf.Theory,IT−6,11pp,7−128 (March 1960)
一81一