2014/10/9 食料需要 食料需要に影響を与える要因は? 所得 食料の価格 代替的な食料の価格 農業経済論 講義スライド その16 消費理論 小松菜とほうれん草 スイカとメロン 好み(選好) 青山学院大学 経済学部 松本茂 食料需要 何をどれ位食べているのか? 消費者の効用最大化問題 消費者は決められた所得の下で、最も効用水準が高く なるように複数の財の購入量を決定する。 客観的制約 主観的な価値感 出典: 農林水産省 平成20年5月 予算制約線: 購入できる財の取り合わせは、所得と財の価 格によって客観的に決定される。購入できる財の取り合わせ を予算制約線として描くことがある。財の価格は市場で外生 的に決定されるので同じ所得をもつ人の予算制約線は同じ 形状になる。 無差別曲線: 効用水準は財の消費量と選好によって決定 される。同じ満足度を与える財の取り合わせを無差別曲線と して描くことがある。選好は個人個人で異なるので、無差別 曲線の形状も個人個人で異なる。 消費者の効用最大化問題(2財のケース) 財の需要分析 2種類目の 財の消費量 q2 所得、価格(当該財の価格、他財の価格)、選好が変化 すると、それに応じて財の需要も変化する。 所得、価格、選好から、財の需要に関して説明をする試 みを需要分析という。 今学期はしばらくの間、需要分析に関して講義をする。 所得と価格を数値化することはできるが、選好を直接数 値化することはできない。そのため、選好については、 性別や年齢といった人口属性などを利用して補足しよう とする。 1種類目の財の消費量 q1 1 2014/10/9 変数の定義 知りたいことの例 = 第i財 所得が1万円増えたら、どれくらい牛肉の消費量が増え るのか? 牛肉の価格がkgあたり100円上昇したら、牛肉の消費 量はどれ位減るのか? 豚肉の価格がkgあたり100円上昇したら、牛肉の消費 量はどれ位増えるのか? 若者と年寄りでは、牛肉の消費量がどれ位違うのか? 例: は牛肉を示す。 = 財の需要 例: は牛肉の消費量(kg)を示す。 = i財の価格 例: は牛肉の価格(円/kg)を示す。 = 所得 例: は年収(万円)を示す。 弾力性を用いた分析 価格の弾力性は 例.所得が1%上昇したら、牛肉 の消費量は %増加する。 例.豚肉 の価格が1%上昇したら、牛肉iの消費量は 増加する。 2式を組み合わせると x = Σk=1 pk gk(x, p) 困った….. パラメータが多すぎてやってられん。 log qi = αi + ei log x + eii log pi + eij log pj log qj = αj + ej log x + eji log pi + ejj log pj 赤字で示した推計すべきパラメータの数は8個となる。 仮に3種類の財について同じことを考えると、 x = p1q1 + - - - + pkqk + - - - + pnqn = Σk=1 pkqk % 3 + 3 + 3×3 = 15個 のパラメータを推計しなければいけなくなる。 n種類の財の関係を調べるとなると、推計すべきパラ メータの数は全部で2n + n2 個となる 10種類だと120個のパラメータを推計することになる! Stone (1954) データ 食品 48種類 対象年 1920年から1938年の19年分 また、先に示した式で需要関数を推計する場合、j財に ついても同じような式をたてる。 予算制約式 また、先に示した式で需要関数を推計する場合、 選好の問題 需要関数を以下の式の様に定義できる。 %低 パラメータの推計 交差価格の弾力性は eij として、 pjと の関係は? qi = gi (x, pi, pj) = gi (x, p1, p2, - - -, pi, - - -, pn) = gi (x, p) qk = gk (x, p) として、 例.牛肉 の価格が1%上昇したら、牛肉の消費量は 下する。 の関係は? 上式では、所得の弾力性は として、 と の関係は? 需要関数の一般化 前期に説明をした様に、弾力性を用いると分析が容易 になるため、弾力性を用いた推計がしばしば利用され てきた。 と 何とかパラメータの数を減らせないものか? 例えば、関連性の薄そうな財やサービスの間の関係は無視 するというのも一つの手かもしれない。 例えば、ウイスキーと塩辛の消費の間には関係はないと仮定 できれば、ウイスキーの価格の変化は鰹節の消費量には影 響を及ぼさないと仮定することができる。 日本酒と塩辛、ワインとチーズの間には関係はあるかもしれ ないが。 2 2014/10/9 HOMOGENEITY RESTRICTION 同次性条件 需要関数が満たすべき性質 消費者が合理的に行動をするならば、需要関数は一定 の性質を満たすはずである。 経済理論の条件を用いて、推計するパラメータの数を 減らそうという工夫がされてきた。 以下、紹介をすることとしよう。 農作物 k について,以下の需要関数を考える。 その他の条件は一定と仮定した場合、所得x の1単位 (1円)の増加に応じて、 財の需要 がどれだけ変化す るか。 , ,⋯, ,⋯, その他の条件は一定と仮定した場合、価格 の1単位 (1円)の変化に応じて、 財の需要 がどれだけ変化 するか。 , ,⋯, 支出額: だけ変化する。 財の価格は なので、所得xの1単位(1円)の増加に応じて 財 に対する支出は、 だけ変化するはずである。 所得の増加に応じて、支出が増える財もあれば、支出が減る財もあ る。しかし、全ての財への支出の変化額を合計した場合、その変化 量は1円となる。 その他の条件は一定のもとで、豚肉の価格 が1円増加した時に牛 肉の消費量qk がどれだけ変化するか。 , 所得は一定のままなので、ある財への支出を増やせ ば、別の財への支出を減らさないといけない。従って、 全ての財への支出の変化額を合計した値は、0になる 必要がある。 この事は、予算制約式を について微分することでも確 認できる。 , は、 , , 1 ∑ 第 財の価格 の1単位(1円)の増加に応じて、 財の需要 は だけ変化する。 一方、 財に対する支出 ∑ この事は、予算制約式をxについて微分することでも確認できる。 ADDING UP RESTRICTION 集計条件式 その2 例: 価格 10 (円/個), 消費量 100(個) 支出額 1000円 だけ変化する。 この変化に応じて 財に対する支出 は ,⋯, ADDING UP RESTRICTION 集計条件式 その2 所得x の1単位(1円)の増加に応じて、 財の需要 その他の条件は一定のもとで、所得xが1円増加した時に、牛肉の 消費量qk がどれだけ変化するか。 qk = gk (x, p) = gk (θx, θp) ADDING UP RESTRICTION 集計条件式 その1 式の定義(偏微分記号) トマトの価格もキュウリの価格も2倍になるが、所得も同様に2 倍になる。 この場合、単にスケールが変わっただけなので、需要は 変化しないはずである。従って、以下の関係が成り立つ はずである。 qk = gk (x, p) 所得と全ての財の価格が一律θ倍になるケースを考え てみよう。 ∑ 0 ∑ , は、 だけ変化する。 3 2014/10/9 HOMOGENEITY RESTRICTION 同次性条件 上述の表記を用いて、同時性条件から以下の関係式を 導くことができる。 ∑ 0 1, ⋯ , 支出シェアを用いた標記 需要分析では、しばしば分析をしようとする財がどれ位 の支出シェアをもつかを気にかける。 例えば、第 財に対する支出シェアは以下の様に定義 できる。 証明は割愛します。自分でやってみよう。 また、先に定義しよう様に、 財の需要の所得弾力性を以下の様に定義する。 , 財に対する 財の価格 の交差価格弾力性を以下の 様に定義する。 , 支出シェアを用いた標記 支出シェアと弾力性を用いた式 支出シェアと弾力性を用いると、集計条件式は以下の 通りとなる。 所得の変化に関する集計条件式 ∑ 価格の変化に関する集計条件式 一方、同次性条件式は以下の通りとなる。 これらの条件式を先述の式に応用できる。 ∑ ∑ αi + ei αj + ej 0 0 log qi = αi + ei log x + eii log pi + eij log pj αi + ei eii ejj 1 1 1 eii 1 + eij log pj クロスセクション分析 世帯間比較 1 1 + eij log pj + eji log pi 全ての世帯は同一の価格に面しているので、世帯間の 比較を行う場合は、世帯の所得の違いが税の消費に及 ぼす影響だけをみることとなる。その結果、需要関数は 以下の式に簡素化できる。 ∗ エンゲル曲線 所得 と支出 ∗ 集計条件式(所得) ∗ の関係を調べた曲線 1 贅沢品(上級財) < 1 必需品 < 0 劣等財(下級財) 1 集計条件式(価格) すると、以下の推計式が導かれる。 log qi = αi + ei log x + eii log pi + eij log pj 0 このままだと求めるパラメータの数は8個となる。 同次性条件式 ⇒ 3個のパラメータの内、2つが分かれば3つ目 は自動的に分かる。 これに先の関係式を適応する。 経済理論から導かれる条件式を推計式に適用することで、求める パラメータの数を減らすことができる。 2種類の財を推計する場合について考察していみよう。 0 パラメータの数を減らす方法 1 支出シェアに関する式の対数値をとると以下の関係が 導かれる。 0 0 4 2014/10/9 所得水準と消費支出(2013年度) シェアを用いた分析 世帯間比較でシェアを用いた式は以下の様になる。 集計条件式 所得階層 財の種類 0 贅沢品 < 0 劣等財 エンゲル係数 68,604 23.6% 198,856 54,251 27.3% Ⅱ 337--447 241,599 61,668 25.5% Ⅲ 447--596 272,135 65,595 24.1% --337万円 Ⅰ ∑ 1 ∑ 0 これらは自動的に満たされる。 食料 290,454 全平均 消費支出 Ⅳ 596--822 319,136 73,279 23.0% Ⅴ 822-- 420,547 88,227 21.0% 出典: 総務省統計局(家計調査) 所得階層別 穀類支出 (2013年度) 所得階層別 食料支出 所得階層 年収822万以上 年収337万円以下 外食, 10.3% 穀類, 10.2% 外食 22.5% 酒類, 4.8% 穀類 8.1% 魚介類 7.9% 米 35.9% 全平均 36.8% めん類 21.1% 他の穀類 6.2% 39.7% 33.2% 21.1% 6.0% 肉類 9.5% Ⅱ 337--447 39.1% 34.0% 20.6% 6.3% 乳卵類 4.6% Ⅲ 447--596 35.7% 36.4% 21.9% 6.0% 野菜・海藻 10.8% Ⅳ 596--822 33.9% 38.2% 21.5% 6.3% Ⅴ 822-- 32.0% 40.8% 20.6% 6.5% Ⅰ --337万円 パン 魚介類, 10.9% 飲料, 5.9% 肉類, 9.0% 調理食品, 13.0% 酒類 4.5% 飲料 5.7% 乳卵類, 5.1% 菓子類, 7.1% 油脂・調味料, 果物, 4.7% 5.1% 野菜・海藻, 13.9% 調理食品 11.6% 菓子類 油脂・調味料 果物 3.3% 7.3% 4.3% 出典; 総務省統計局(家計調査) 5
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