ofPropagatedSensations alongthe

明治錨灸医学創刊号:
9
9-16 (
19
8
5
)
〈原著〉
循経感伝現象 CPhenomenon
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eMeridians) についての臨床的検討
*明治誠灸大学東洋医学教室
料大阪医科大学麻酔科学教室
北出利勝*
兵頭正義**
要旨:われわれは数年前より 11 1 国と同じ方法を用いて,健常者と患者を対象 lζ 循経感伝現象 (P
SM)
について調査研究してきた.
われわれはつぎの 3 点について検討した.
1
) いわゆる健康青年 (340例)を対象にした P SI\'1 の出現率は中国のそれより低いものであった.
(不顕著者はわが国で 96%
中国で8296 であった.
)
2
) 通院患者 (270 例を対象にした PSM の出現率は健常者より高率であった. P SM は外傷性頚部症
候群などのような外傷性の患者において著明であった.反対に糖尿病患者には出現しなかった.
3
) 経絡敏感者というべき 57歳の主婦において調査した.
①
古典的経絡と PSM が「ほとんど一致した経絡」は 4 条であった.
11 条で,
r 部分的に一致した経絡 J は
r 一致しなかった経絡」は 5 条であった.
②
PSM は主訴の部位 lζ 響いた.
③
PSM は上肢では線状 l 乙,下肢では帯状によく出現した.
④
耳錨穴に刺激して P SM が出現したのは 210穴のうち 62 穴 (29.5%) であった.
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ToshikatsuKITADE* andMasayoshi HYODO料
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Key words: 循経感伝現象 PSM , PSC.
Earacupuncturep
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耳錨穴
経絡現象
Meridian phenomenon ,
1
0
循経感{云現象についての臨床的検討
はじめに
管を介し筋肉系を介し.また,内臓の方は r~J 律
筆者らは, 1981 年 6 月に訪中し,上海にて中国
神経を介するものである .4Jfj が悪いときに 11 の
の循経感伝現象 (Phenomenon o
f Propagated
川りに発疹ができる. ./:):乳を与えていれば肖の調
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Meridians ,以下乙れを
子がよくなる.冷たい物を日 iとすると,コメカミ
PSM と略す)の誘発法ならびに探索法について
にツンと轡く乙とがある (icecream h
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)
.
I
乙うした食べる乙とと関係のある現象などは,経
直接指導を受ける機会を得た.
そ乙で,健常青年,通院 j主者,経絡敏感者につ
いて,低周波鑓鋪刺激または鑓鍛~!I1 激で P
S1\'1 を
絡の走行が胃維を通っている乙ともあり,経絡現
象のひとつであると考えられる.
誘発し,それぞれの群での P SMIH 現率を調査し
中国では経絡現象を解明する一手段として,循
PSMI 乙関する考察を述
経感伝現象をとりあげ,乙れに関する多くの論文
た.その結果を報告し,
を報告した・ 13) 全同鍛灸鋪麻酔学術立論会の第
べる.
l 回 (1979年)と第 21nJ (1984 年)において,経
H
循経感伝現象とは
1949 年(昭和 24 年) ,長浜善夫・丸山昌朗は,
刺織に対し極めて鋭敏に響きを訴える患者を得て,
絡の研究が学会の大きな住となり,多くの研究が
報告された 2)
循経感伝現象は,中国では phenomenon o
fp
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経絡の存在を錨響の而から捕えた.さらに感覚闘
pagateds
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e meridians
に一定の幅と強弱の段階のあることを明らかにし,
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echannels と英訳され, P SM または PSC
この研究の端緒を闘いた・ III
と省略して呼称されている.その定義については,
または
1953年(昭和28年) ,藤|日六朗・岸勤は.皮膚
経絡十講によると幻「ある積の刺激を用いて関
上の異常感覚を指頭によって触診し,乙の系統が
係のある経穴を刺激する際に,若干の人々に現わ
経絡的に現れることを述べた 3)
1968 年(昭和43 年) ,天野黄陽"は 6 名の患者
れる経絡路線に沿って分布する特殊な感覚伝達現
象のこと j とされている.
について,経絡に類似した線状または帯状の異常
E
感覚が現われることを追試した 7)
1980 年(昭和55年) ,丸山源司・富田明義は,
ヘルベス後遺症患者 lζ 経絡現象を追認し,乙れを
報告した
健常青年の PSM
いわゆる健常青年,りj -9: 340 名を対象にして中
国と同じ調査方法を踏襲する乙とにより,
10 )
問中喜雄は,乙れらの現象を、経絡現象'
meridianphenomenon
凹 -1
調査の方法と結果
と命名した 8)
PS M
の出現傾向, tH 現率について z洞査を行った( I苅
1) .
経絡現象の存在・本態については,山下九三夫
は「古人のいう気血営衛によって体内諸器官が生
1
) 対象:明治錨灸柔道整復専門学校,明治誠
命現象を営む基本となる現象」と述べ 14) 問中は
灸大学,大阪鋪灸専門学校,関西鋪灸柔整専門学
r(経)
=
(同相|具|係)はまた経上のよ乙すじ
(経) = (同位関係)と関係があり,この機能的
な構造が,中枢神経の投影あるいは体の電磁場の
バターンにおいて生じる」と述べている.
兵頭はつぎのように解釈している.すなわち.
経絡現象とは経穴あるいは病巣部と効果器との間
校に在学中のいわゆる健常な学生 340 名(男子
262 名,女子 78 名)
2
)
年齢: 19 歳から 39歳まで,内訳は 20歳代が
280名でほとんどを占め, 30歳代が36 名, 10歳代
が24 名である.
3) 刺激部位: 12経絡の井穴を基本とした.腎
の関連生体現象である.それが起乙るメカニズム
絡については湧泉 H
と以内至陰 M の 2 カ所と
として,ある場合は体性神経そのものを介し,血
し,全部で26 カ所に刺激を行った.
1
1
創刊号: 9 ー 16 (
19
8
5
)
明治誠灸医学
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図
PSM の調査方法
被検者の井穴 l 乙低周波鋭誠刺激を与える。被検者は鋪響を
口頑または示指でしめす。
重量薯言者
地較的顕著者
やや顕著者
不顕著者
6 条以上出現
3 から 5 条出現
2 条出現
1 粂まは無出現
図 2
PSM 出現の 4 区分
(中国の p SM~r:IJ 定基準と同じようにした)
1
2
循経感伝現象についての臨床的検討
4
) 刺激電極:直径約 1 mm の耳鋪探索導子,ま
たは-ノイ.ロメータnJ探索導子を川い,先端には,
考慮した.不関導子は握り iZl子とした.
刺激装置:
N
i
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n Medix
0
1
0
) PSM の↑ H 現率
ベース卜を塗布し,皮!荷の~lIJi敢 fll: を統一するよう
5
)
カ月間,室副は平均 24 C に保った.
井穴(左右 24 カ所に内至|怠を加えて 26 部位)へ
の刺激によって引きお乙された感覚の響きを調査
製ラウスまた
した結果, 26 条中 (Hl 現した感覚の数的単位とし
はイトー超短波製イトーレーターを旧いた.周波
て用いる) ,顕著者は1. 5 箔.比較的顕著者 0.9
数は 1 -30Hzの間で,鋪響の得やすいと乙ろと
%,やや顕著者2.0% ,不顕著者は 95.6% であっ
した.よく使用されたのは 7 Hzで・ある.
た.
6
)
出力および時間:鋪感,誠響の得やすい出
力とした.
1 カ所につき約30秒間刺激を与えた.
顕著者 5 f71Jの出羽状況をみると,上肢に PSM
が出現している症例と,下肢に PSM が出現して
7
) 観察方法:被検者に口頭もしくは, m で示
いる症例および上ド肢とも PSM が出現している
してもらい検者が調査川紙 i乙記入した.必要に応
症例とがあった.
じて写真撮影を行った.
皿 -2
8
) 判定:中国と同じ 4 段階に分けて判定した
(図 2)
顕
.
著
通院患者の PSM
錨灸治療を受療している 5 胞設の通院患者 161
例を対象に 26 カ所に低周波鋸誠刺激を与えて PS
者: 6 条以上の感覚が出現した者
M の出現を調査した.
比較的顕著者 :3-5 条に感覚の山現したもの
やや顕著者
2 条に感覚の I. Ll現したもの
患者の年齢は 14-82歳で,平均年齢56 成であっ
た.
不顕著者:上記以外のもの
調査期間は 1983 年から 1984 年の Wd であった.
9
)
通院患者 161 例のうち,制持者は 2.5~ぢ,比較
期間: 198] 年 11 月から ]982 年 2 月までの 4
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20
1
0
40
30
ニ悼
臼
密室習やや顕著者
図 3
~比較的顕著者
仁コ不
顕
著者
PSM の出現率
PS1vl の出現率(顕著者+比較的顕著者+やや顕著
者)を基準に、健康青年と通院患者とを比較すると、通
院患者の方が PSM が有意に出現した。
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腰痛
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90 , 6 %
M川
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肩凝り i::;1121
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顕著者防勿初比較的顕著音
医亙23 やや顕著者不顕著者
図4
症候別 PSM の出現率
症候別に PSM の出現率を検討した結果、広汎外傷後
遺症患者が35.3% と最も高く、次レで膝関節痛患者、高
血圧症患者の順であったロ
的顕著者は 2.5% ,やや刷著者は 5.6% ,不顕著
者は89.4% であった(図 3)
.
その内訳をみると,広汎外傷後遺症患者は 35.3
9ぢ,膝関節痛は 23.1% ,高血圧症は 14.6% という
高率な PSM の出現であった.
その他,腰痛患者は 11.8% ,肩凝り忠者は 9 .4
%と一般患者 lζ 比べて高かった.糖尿病患者は出
現率が 0% であった.
(区14
)
1Il・ 3
経絡敏感者の PSM
被検者は 57歳の主婦で,きわめて神経質で誠治
療に対して敏感に反応し,治療効果も高かった.
病名:外傷性頚部1iE候群
主訴:頭痛,肩凝り
現病歴: 1965 年,tj:で頭頂部を打撲.不定愁訴
を訴え現在にいたる.
既往歴: 1979 年胃潰場の摘出手術.
心理的テストにおいて
CM 1 (
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ュ
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a
l index) 検査法では,典型的な神経症群で
あった.身体的自覚痕の易疲労,既往肢におい
1
4
循経感伝現象;乙っしもての臨床的検討
て多くの症状を有していた.精神耐においては社
会的に不適応であった.
矢田部ギ、ルフォード性格検査では,もの静かで
消極的,内向的で活動性に欠けるという左寄型を
仮面うつ病テストでは,異常域 l こ属した.
また M AS C
m
a
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n
x
i
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yscale) テスト
では信頼性があり,凶容の妥協性も否定されなかっ
た.ただし,不安尺度は [-v のうち 1 class で,
高度不安が示唆された.
国で・は経絡敏感人と呼んでいる)を対象に,つぎ
の 4 つの項目について調査を実施した.
1
) PSM と古典的経絡の符合率
刺激方法
その後,写真撮彫を行った.
下肢で胃経の井穴である
\\Iþ 商 ρ
舗により NI 圧刺激をした.
日支で肺経,
と、、属,~" f乙銀
P SM を LB 現させ,水
性ベンで身体にペイン卜した.
⑤
PSM 出現中 i乙内:び良導点探索を同様に行
④
そこで.
PS Ivl出現前の良導点分布と PS
M 出現時の良導点の出現分布を比較検討した.
4) 経絡敏感者における PSM の特性
a)
PSM の感伝速度と機械的圧迫による遮断
効果
鑓誠によって,刺激部位を 10--20 秒間押圧刺激
(誠刺激は痛くて不適合であった. )また
鑓舗に低周波を通電しなかった(低周波通電した
と乙ろ,術後倦怠を訴えた) .
②
.
80μAI こは白色をそれぞれ用いた)
い,色紙を貼付し,再度写真保影を行った.
このような明瞭に経絡現象の呈する被検者(中
した.
5
0--59μA には赤色を,
②続いて,色紙を除去したあと,
示した.
①
良導点 lζ 色のついた円い紙を貼付した(色分け
は 40-49aA には青色を,
刺激経穴
12 正経の井穴 i こ鑓舗にて事11ft 刺激を加えた. P
S1'v1 の速度はそれぞれの PSM の出現した距離と
その時間を測定した.
PSM の機械的圧迫による遮断は,全体圧迫と
部分圧迫を行った.全体圧迫はマンシェットを上
12 正経については,井穴刺激を行った.
奇経については,長浜・丸山, rt' 国の PSM の
調査研究と同じ刺激経穴を ~~J いた.
奇経の経穴はつぎの通りである.
督脈:命門,
任Ilf長
l :関元
i場橋脈:鮒|場,
陰橋脈:照海
陽椎脈: [場交,
陰維脈:築賓
衝脈:幽門,
帯脈:帯 l脈
腕および大腿 lζ 巻きつけ,
PS I\l を出現させなが
ら 10mmHgずつ加圧した.部分圧迫は PSM の線
上を木下式圧痛 3十を改良(
05
0
0g )したもの
で,皮膚に垂直に押圧を加えた.
b) 刺激方法の違いによる PSM への影響
経絡敏感者を対象 iζ ,井穴(または原穴)につ
ぎの刺激方法を用いた.
①毛織②鑓錨①皮内錨④金属圧粒子日占付⑤金属
2
) PSM と耳誠穴の符合率
圧粒子と指圧⑤指圧⑦温灸⑥レーザー(半導体,
①
低出力lO m\V)
耳鍛穴
r 鋪灸学 J 5) の耳穴参考図,およ
び「頭舗と耳鋪 J 121 の耳介穴の分布 l文|を参考にし
調査の結果を各項目について述べる.
た.
②
耳穴の探索と刺激:耳鍛穴は上海医療器械
店製作の耳電鋪器 DJ-3 で探索し,同器で刺激
した.
1 部位の耳鋪穴につき 10 秒C1 8V 以下)と
1
) PSM と古典的経絡の符合率
正経,奇経 (20経絡)の走行のうち,
r ほとん
ど一致した経絡J は 20箔であった(小腸経,官脈,
i弱脈,帯脈) .
し fこ.
③調査期間: 1982年 7 月より 1983年 5 月の間.
「部分的に一致した経絡」は 55% であった(肺
3
)
PSM と皮膚通電抵抗減弱部位(良導点)
経,大腸経,胃経,勝脱経,腎経,三焦経.胆経,
①
ノイロメータ(l 2V , 200μA) により,被
陰踊脈.陽踊脈,陰維脈. I場維脈).
検者の左半身において,良導点の探索を行った.
かった経絡 J は 25 労であった.
r 一致しな
明治鋪灸医学創刊号:
2
)
PSM と耳鋪穴の符合率
①
耳介前面(1 60 穴)および耳背 (50 穴)を
現率をみると,健常おより高い出現率であった
調査したと乙ろ,わず.かでも PSM 出現がみられ
上[誠穴名称の部位へ PSM 出現があった穴
なかでも広汎外傷後遺症患者は 10 人の内約 4 人
の異常をもっ患者に P SMI=H 現が著明で、ある乙と
がわかった.その他には
数は 9/210 穴 (4.3% )であった.
③
(P く 0.0 1) •
が PSM が出現した乙とになる.このように頚部
たのは62/210 穴 (29.5%) であった.
②
1
5
9-16 (
19
8
5
)
耳鋪穴名称および主治作用となんら関係の
ない部位に PSM があった穴数は53/210 穴 (25.2
j漆痛患者や高血圧患者
があげられる.一方,糖尿病患者は PSM が出現
しなかった.
経絡敏感者の PSM 調査で得た結果と中国の研
%)であった.
3
) PSM と皮膚通電抵抗減弱部位(良導点)
究とを比較してみると
①
肺経の少尚(井穴)に鑓鋪刺激を与えたと
の「一致した経絡.部分的に一致した経絡J の一
乙ろ,
PSM は肺経の一部と一致した.しかし,
致率は 80.7% (正経のみ)であった.われわれの
PSM の線上 l 乙は良導点、は認められなかった.
②
胃経の属兇(井穴)刺激において I
は胃経と一部は一致
PSM
一部は一致しないルートを
前胸部においては
4
)
場合は 75% (正経と奇経)で,ほぼ同じ結果であっ
た.
同じ患者を対象として,耳鍛穴刺激したと乙ろ,
躯幹および四肢に PSM が tl-:l現したのは耳錨穴の
とった.
出現し,
中国の多数例による成績
良導点が広範囲に面として
PSM はそこを線状に貫いた.
3096であった.また出現しないのは 10%であった.
一般人では乙のような鋪響はみられない.
経絡敏感者の PSM 特性
経絡敏感者は 100 人にひとり位の存在なので,
①
PS1',,1 の速度は毎秒 1 .
.
.3cm であった.
同患者 PSM と良導点との出現分布を比較してみ
②
PSM は 50--60mmHgの全体的圧迫によっ
た.刷i経と胃経の井穴を刺激したが一昔日は重なり,
てその走行が遮断された.
③
一部は日 Ij の J レートをとった.つまり結論を出す乙
PS1
v
1は 400g/cIfiの部分的圧迫によって,
PS1\'1 の特性について感伝速度を測ってみた
その走行が中断した.
④
井穴 l乙重鋪刺激を与えたと乙ろ,
P SM が
出現しなかった.しかし,原穴刺激では出現した.
⑤
低周波鑓鋪刺激と金属圧粒子{乙指圧を加え
ることにより,
⑥
PSM が線状に出現した.
温灸と指圧刺激により,借状{乙出現した.
ことに温灸では温熱感を伴った.
⑦
とに至らなかった.
皮内舗とレーザー刺激 lとより PSM は出現
が,神経の伝達速度より遅いものであった.あら
かじめ皮膚を加温しておくと I
PSM の HJ 現が仲
びる.反対に加冷(窒素ガス局所噴霧)すると P
SM 出現は煩縮した.また,機械的圧迫を加える
と PSM は中断した.
健常者には明瞭に山ないものでも経絡敏感者で
は反応が分かりやすい.刺激の }j法を色々変えて
みたが,宅誠刺激は PSM が線状に出現し,温灸
しなかっ 7こ.
や指圧は帯状 iζ 出現した.
町考
察
PSM 出現率において,健常青年と中国( 1 施
設)とを比較すると,
、顕著者グは|司程度である
乙れらの結果を治肢と結び、つけると興味深い.
古典的経絡を全面的に否定する乙とはできない
し,また全てを鵜呑みにすることもできない.腕
のに対して,青年の、比較的顕著者。は中国の%
脱経の背部は古典経絡では 2 列になっているが.
と低い出現であった.また,
PSM では,
、やや顕著者グは%
で中国よりはるかに少なかった.
しかし,その後実施した通院患者の PSM の出
1 列の帯状になって出る乙ともある.
古典経絡凶では線状で示されているが,
P SM調
査では,帯状もある.新しい昭和の経絡図を創り
1
6
循経感伝現象についての臨床的検討
出すべきであろう.
共同研究者と施設は下記の通りである.深く感
P5M を誘発させる乙とにより,誠灸の治療効
謝の意を表する.
果を上げる乙とも考えてよいことが分かる.中国
では乙の治療方法を誘発 Cexcitation)
と呼んで
神野英明,佐子幸リJ ,王 111・似し ILIF茂,前旧
いる.
泉, 111 元茂 111 ,市川 1 1:純,盟 UI 住江,河内明
2)明治鎖灸大学
ここ数年来,中国の研究者たちは PSM につい
て,
(順不同)
1)大阪医科大学l隊酢科
r 中枢現禽拡散 (dispersion
of c
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a
l
津中俊典,太田信太I'!I~ ,寺沢宗典,芳野副,
e
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n
) J と末梢動因激発 (exci tat
i
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n of
西牧紀子,問手m宗徳,川 LI 彰貞,篠原昭二.
a
c
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i
o
n factors i
n the periphery)J の 2 つの観
田中淳子,池内降治,小川原良誠,松本勅.
点より解釈した.
森和,神川喜代児.
さらに,経絡の実体について,
3 教授はつぎの
3)明治誠灸柔道整復専門学校
ように仮説を立てた.
左海隆生,松岡憲二,同本高明
張錫鈎は,経絡とは一部神経系統と関連してい
4)関西鍛灸柔整専門学校
る特殊の系統である.季錨朴は,経絡とは体表と
内臓間の自律的む相互関連系であるという.孟昭
森川和宥
5)大阪鋪灸専門学校
威は,伝達の速度と作用から考えて経絡とは、第
河内明
3 平衡系統 N であり,その作 m は体表内臓の平衡
であろうとした.
文
経絡現象について兵 9J1 は
乙れは It l 枢と末梢
の両方に関与した複雑な生体現象でありそのすべ
てを総括したものであろう,と考えている.
V
おわりに
健常青年を対象 i 乙調査をしているときは , 10 人
にひとりの割合で P5M の出現がみられたので:興
味がわかなかった.しかし,通院患者を対象とし
たときには,
P SM の tll 現度が 10 人にふたり認め
られたので・積極的になっていった.
乙とに外傷性の疾患では約 4 割 l乙 PSM 出現が
みられたことで唄味がそそられた.
疾患の違いにより PSM の山現が左右される結
果をえた.そして P5M 誘発と誠灸治療効果に関
連性のある乙とを見 1 1\した.
わずか 1 例の経絡敏感者を対象に種々の調査を
したが,古典的経絡,経穴および~11:蹴穴 iζ 関して,
肯定的な成績を得る結果になった.
PSM の特性を知るに及んで,鋪灸治療の効果
を上げる方法が分ってきた乙とは,乙の研究の成
果の一つでもあった.
献
I)天野黄陽:良導絡治療(第 3 報)ー経絡の確認
1
9
1
3
l
:33-44 、 1970.
Abstracts , NationalSymposia
f
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nandAcupuncュ
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fAcupunctureand¥
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g:1
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7
9
.
t
u
r
eAnesthesia , B
藤田六朗:経絡学入門.創元利大阪: 1
9
8
0
.
日本舗灸治療学会主il~.
2) 中国鋪灸学会:
3)
4) 兵頭正義:経絡現象をどう考えるか.東医とペイ
ン.
1
0
(
3
)
:104-108. 1
9
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0
.
5) 井垣清明ほか訳:鋪灸学.刊々堂:
1
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.
6) 人民衛生出版社編:経絡敏感人一経絡感伝現象研
究資料集一.北京.
7) 木下晴都:誠灸学原論.医道の日本社.神奈川.
1
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8) 問中喜雄:鋪灸の理論と考え方.倉 1] 元社.大阪:
34-35 , 1
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9) 丸山貝朗:錨灸医学と古典の研究.自 1] 元社.大阪.
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.
10) 丸山師、司,宮田明義:経絡敏感者の 1 例報告.医
道の日本.
4
4
3
: 8-2
9, J9
81
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1 1)長浜善夫,丸山昌 WJ: 制枠について.経絡研究の
意義.経絡の研究.杏林 tlj 院.東京 :81-101 ,
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12) 杉充胤編訳:頭舗と耳鋪.自然社:
1
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13) 杉充胤編訳:経絡十講.医道の日本社.神奈川:
1-261 , 1
9
8
0
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14) 山下九三夫.竹之内診佐夫:入門東洋医学の基礎
と臨床.マグブロス出版.東京:
1
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