11 - 日本義肢協会

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2009268_日本義肢協会Vol.74/P11→4校(小林)
■特集
平成19年度日本義肢協会研修セミナー
講演
「医師からみた義肢装具士に
期待すること」を聞いて
陳 先生
義肢装具士の役割の重要性について、義肢
POが一定の現場の修練を積んだ後に、上肢
と切断に特化して問題点を中心に話をしてい
装具や義手、義足などの自分の得意な専門技
きたいと思います。切断者のために義足を作
能認定制度があれば、患者も安心するかと考
ってそれを使ってくれない理由として、医学
えます。そこで重要なのは、地域ごとの専門
的な理由以外では、義足の適合不良、不快感
領域の隔たりをなくすことです。
とトラブル、義足の性能不足などがあり、そ
私は「義肢難民」という言葉を使います。
れらはPOや医師など医療サイドのヒューマ
ンエラーでありますが表には出てきません。
義肢製作は手間がかかり、一生必要なもので
それを避けるため、患者さんを満足させるた
すから、当然ユーザからのクレームが多かっ
めに、ドクターとPOがきちんとタッグを組
たり、再三の修理が必要です。そのことに対
んでいるのはまれです。満足度が低くなって
する当然の対価としての採算が取れないとい
いる場合の理由は、コミュニケーション不足
うことになると、製作会社が手間のかかる義
であったり、適合に時間を要したりしている
肢製作を敬遠しはじめ、一部の限られたメー
ことであります。一度義足をもらったきり断
カーに注文が集中していく可能性がありま
端を見てもくれないという患者も少なからず
す。一部の限られたメーカーでも頑張ってく
いらっしゃいます。患者が期待する医師像は、
れている間はまだよいですが、そこさえも負
1.話がしやすい。2.病気や治療に十分な
担に耐えかねて断念することになれば大変で
説明をする。3.患者の症状の話をよく聞く。
す。次に「切断・義肢の医療崩壊」という言
4.患者の気持ちを大切にしてくれる。など
葉を使います。これは義肢の適応の判断や処
であり、医師を義肢装具士に置き換えても良
方、チェックアウトに医師が積極的に加わら
いと思われます。しかしこれはPOが最低限
ないことに原因があります。義肢処方がPO
の仕事、義足作りをした上での話です。
主導であり医師不在となってしまうことが最
大の問題です。やはり最高責任者は医師であ
るべきであり、トラブル時のブレークスルー
専門職ということでPOを調べてみると、
国家資格以外に質を保証する仕組みがありま
を含め、また個々の切断者のニーズと健康状
せん。切断者は義足製作を特殊分野と思って
態、費用対効果などを考慮した処方は、PO
いませんから、担当のPOを信頼せざるを得
など専門職とよく相談の上医師がなすべきも
ないのです。義足に精通している医師の数よ
のです。義足の費用は税金でありますから、
り義足の得意なPOの方が圧倒的に多いこと
費用対効果の検討は重要です。しかし現実的
からも、POが現場で果たす役割は重要です。
には義肢に興味がある医師ばかりとは限りま
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2009268_日本義肢協会Vol.74/P12→3校(小林)
■特集
平成19年度日本義肢協会研修セミナー
せん。そのためにPOは1.無関心な医師と
質問
辛抱強く付き合う。2.パーツを医師に説明
1.義足の処方箋を主治医の医師が書いてく
して、丸投げ処方に応じない。3.ドクター
れるようにするためにはどうすればよい
と一緒に処方し、チェックアウトに立ち会っ
ですか。
てもらう。などの辛抱強い行動が必要であり
答え:医師としても知らないことは書けない
期待しています。
ことからも、当事者である医師が相談で
私の臨床体験として、他のところでPOだ
きる指導的な役割をもつ第3者機関があ
けで何十回も義足を作り直している患者さん
ればよいのですが、現実的には難しいと
が私のところへ来たので、十分に時間をかけ
思います。現実的には義肢の情報につい
て説明することで安心してうまくいった例。
て義肢装具士が医師に積極的に話をし
体力のある壮年の方に油圧膝とエネルギー蓄
て、理解を得るようにすることが大事だ
積足部が処方されていたが、両松葉杖を使っ
と思います。
ていた例。視力障害をもつ方にシールインラ
イナーを使っている例などがあります。この
質問
ような方々も専門病院に行けば良いのです
2.補装具の適正給付としてPOができるこ
が、全国に専門病院といわれるところは極め
と、先生の取り組み、成功例など教えて
て少ないのが現状です。私はやはり地元の医
ください。
療施設で治療やメインテナンスを行うことが
出来る体制が本来の姿であると思います。し
答え:私は9年間かけて筋電義手の処方を軌
かし残念ながら地域の中心的指導的役割を持
道に乗せましたが、医師に対する義肢の
つ更生相談所は十分に機能していません。ま
啓蒙活動や研修が不十分と考えていま
たそこの判定医師は必ずしも全員が義肢の専
す。そのためにはPOの皆さんの協力は
門家ではありません。従って義肢の適正処方
不可欠です。何らかの全国組織を立ち上
やリハビリのアドバイス、さらに医療従事者
げるなど、皆さんと協力して頑張ってい
の教育、地域での医療の質の向上を担う、何
きたいと考えています。
(広報副委員 二宮 誠)
らかの全国組織機関を設立する必要があると
考えます。そこでは専門的アドバイスのほか、
前述したPO専門分化の設定、義肢処方基準
の作成、費用対効果の調査などを行います。
義肢装具のなかで、義肢を例に話をいたしま
したが、装具も車いすも一緒だと思います。
後世のために補装具の質を落とさないように
一緒に何かやっていければと思っています。
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