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二重目的語構文の構造
小倉, 敏博
一橋論叢, 93(5): 553-572
1985-05-01
Departmental Bulletin Paper
Text Version publisher
URL
http://hdl.handle.net/10086/12893
Right
Hitotsubashi University Repository
(1) 二重目的語構文の構造
初期の生成変形文法は、これらのaとbの対応関係を変
二重目的語構文の構造
英語はその歴史の過程において名詞の屈折語尾をほと
形規則でとらえようとした。一般的にはbの型の文を基
小 倉 敏
んど失い、それが表わしていた文法関係を語順および前
底形として、倒のような与格移動規則がたてられる。
− N い 阜 ︸ α
一い一×1,1老勺⊥竺−乞勺1く
置詞句による迂言形により表わすことになった。その際、
語順と前置詞句のどちらによづてもほぽ同じ関係が表わ
せるという事態が生じたために、同じ文法関係を示す表
考察を困難にしている。そのような表現の一例として、
その一般性が疑問視されはじめた。次のω、.㈲のように、
この規則は魅カのあるものであるが、その後の研究で、
←−1M1ω1ω1息−息1α
次のω、ωのように、それぞれaとbとの間に対応関係
どちらか一つの型しか持たない動詞が存在する。
現が併存する複雑な体系を現代英語に与え、その共時的
を持つ文が挙げられる。
︵企︶ド.︸o豊察窃“&冨閏篶妻旦印目.
︵N︶p﹄oプ目σo毒巨峯胃く串o〇一一.
すこoまo阜婁o寅a一;o宝弩︸.
σ一.H︸oω巨ユoo黒冨目oo=串冨8昌Φ1
︵︸︶p↓訂ω巨ユ8黒昌oけ彗庄o=胃mI
σ−曽①豊o目oqo黒&閏篶ミ旦閏昌a冨.
^1︺
︵H︶閏1﹄o巨目oq軍くo峯胃く串︷o=1
σ・﹄o=自σ昌o口巨里oo=申g呂胃<.
553
博
第5号(2)
第93巻
一橘論叢
さらに、同じ動詞でも㈹のように、ふつうは一つの型で
いと言われる。
^3︺
県9ミぎ昌o﹄oす目o司∼o;oσoo斤8∼
︵N︶p.婁ぎ︵目︶o巨盲旨。・ぎ艘oぎoζ
︵ひ︶芭1;①?o巨彗庁。司∼一冒。・言;串す$註go・
.o.まきo昌邑α﹄o;屯く①け一さσooζ
しか使われない場合がある。
σ一。胃ぎ?o⊆o目ポo目三冒。目臼一−雷3争o8
そ牝に対して二番目の名詞句、いわゆる直接目的語は㈹
のように取り出すことができるとされる。
︵。。︶⋮尋g︷旨葦。・ぎ里=一 1
このような現象を考慮に入れ、㈹のような変形規則は存
−o妻.
^2︶
在せず、ω、②のaとbのどちらも基底部に存在する型
階を指摘している。
しかし、例乱の文法性の判断には間題がないではない。
その立場をとるが、その事柄自体には立ち入らず、ω、
︵o︶ρ.∼讐≦ぎ旦δミξ冨閉昌q里匡ooq曇目∼
として生成し、その意味上の対応関係は語彙余剰規則で
倒の乱のように動詞が二つの名詞句を従える、いわゆる
σ.∼、≦巨9oq三2qU争巨①o司一く①芭篶8己∼
ストウエル︵望o姜=し湯H︶は次のような非文法性の段
二重目的語構文の統語構造はいかなるものであるかにつ
︵−o︶讐帯ミブomo昌oβ5﹃o−︷ O﹃o明σ里汗o曽σ守巨一μ閏<
とらえるという立場が現われ優勢である。本稿でも一応
いての最近の諸説を検討し、その不確定さを指摘するこ
o︸斥o∼
σ’葦妻巨o﹃旨曽目oδけプ︷ω蜆巨ユoo黒8目ρo=讐冨∼
︵二︶p、、オぎφo葦<昌σ晶;晶o巨閉奏①巴け毫
σ−。峯巨昌oq三q巨勺豊一〇qg顯■①ミ号鶉巴
ととする。
二重目的語構文の統語構造を考える際に考慮に入れる
6ooドやHミ︶はωをはっきり文法的とする記述をして
いるのである。ブヲウンとミラー︵︸;ミ目閏■ρ峯=一9一
動詞がo目オ①や竃邑などの場合は容認可能とする者も
二つの名詞句のうち、動詞の直後に置かれるいわゆる
べき統語現象を見て み よ う 。
間接目的語は、≦ブ句移動変形で取り出すことがで■きな
554
(3) 二璽目的語構文の構造
いる。
︵嵩︶ ≦巨o2ρ旨﹃目眈gρ艘①一︺8斥∼
しかし㈹は不可であるとする。
︵5琴・考豊y茎冒8岩①雪♂き鶉臣く①。・一く昌
陣邑go串昌o目o口片鼻昌oo巨ω色鶉=:
^5︶
次の㈹を例文として挙げている文法書もある。
冒oけフo﹃o.
一、。。一、、Φ・・、・、奏∼粍節㍗毒紅肝簑蜆顯・、。丁
を使った型の方が好まれるという記述をしている。
次のような変形で間接目的語を取り出せないことに対
ナイダ︵;3し漂ひ︶は次のωを可能であるが、前置詞
︵ご︶ 讐ミヴo婁富艘①σoo斥閉昌叶σ<﹄o−旨∼
︵貢︶≦ぎ昌2ρ艘2。・ぎけ=。毒叶〇三
する判断のゆれは少ないよヶである。
︵岩︶ 、“o轟︸.移動変形
名チ句移動による間接目的語の取り出しを可能とする
者も、より複雑な構造からの取り出しは認めないをいう
。↓ぎoq巨げブ胃o8箒=串段o︷.
︵8︶ 分裂文変形
こ。とのようである。ストウエルは次のような例を挙げる。
^4︶
︵H伽︶ 苧。峯げo∼山O O串﹃o− ω臼く 一︸顯け ミ芭<■o 閉o昌け 凹
.。岸尿亭庁g邑昌叶亭算︸ooq彗血庄oσ8汗
︵昌︶串・、H冨官潟けoo=ωo巨言;昌o≦霊;蜆ぐ.
^6︺
る者もいて事は複雑である。
先に㈹で見たような直接目的語の取り出しを不可とす
叶〇一晶量昌∼
9。考巨g腎一3畠﹄o巨茎一睾o艘算bg事
oq婁o艘耐篶8﹃竃
関係節変形でも間接目的語の取り出しはおこなわれな
いと さ れ る 。
ただし、ここにおいても可能であるとする記述もある。
二重目的語構文の分析を更に困難にする現象は受動態
これらの事実になんらかの説明がされなくてはならない。
o■ ヰ︸① 庁印σ−①■
σ・、掌①すo鼻薫巨昌−葦ωε邑︷蟹ω易昌ポ
力ーム︵O胃昌9乞ヒニ︶■Hま︶は㈹のように言うことに
である。ここでも話者により方言により文法性の判断が
︵旨︶ 帯↓まα﹁三三旨Hσqpき艘oσoo斤ポぎ量
は問題がないとしている。
555
︵§︶p↓冨σoo汗竃ω牡く昌円o旨害く・
微妙にくいちがうのである。関連する文を以下に挙げる。
7 曽 胃 く ξ 竃 o 司 − く o 目 旨 ① σ o o 斤 ・
してもなんらかの説明が与えられなくてはならない。
︵s︶閏.↓まσoo斥 考 竃 σ 昌 的 プ “ h o ﹃ 峯 胃 予
外に、意味論上、語用論上のさまざまな制約が入り込ん
来するものであろうか。文の容認可能性には統語構造以
さて以上に見たような現象のどこまでが統語構造に由
σ1旨胃<ミ竃σo目o貝巨まoσoo斤・
でくるが、まずは言語に内在する形式的側面をしっかり
おさえておく必要がある。
二重目的語構文の句構造はどのように分析されるであ
・員ξ①﹄9目寧σ8斥の直接構成素は何かということであ
ろうか。アメリカ構造言語学流の言い方をするならぱ、
可であり㈱bについては疑わしいとするもの、㈱bは可
る。一番、素朴であり、また多くの文法家が考えていた
構造は㈱のように三つの構成素が平板に並んでいるもの
だと思われる。
一節で見たような統語現象は説明されないと言えよう。
しかし、このように分析すると、句構造自体からは、第
V NP NP
㈱Cを不可とするものも、次の㈱のように代名詞が過去
だが閉C、㈱Cともに不可と判断するものなどがいる。
㈱b,cは不可とするもの、㈲cは可であるが㈲cは不
である。㈱cと㈱b,cについては、㈲cは可であるが
幽a,bと㈱aを文法的とすることにはゆれはないよう
ol↓フoσoo斤妻豊σo冒oq巨呂胃<・
01↓プOσOO斥峯里蜆O目∼O目冒害く・
二
/1\
VP
分詞の後に来ると認めることがある。
︵睾︶掌①σO鼻童眈。員一く彗ぎ・・
^ 7 ︺
また鯛Cはふつう不可とされているが、㈲を認めている
者もいる。
^8︶
︵豊︶ ↓−津σo匡oo︷g雪o﹃葭鼻老葛σo泰巨昌oσく
旨ぎ−
これらの判断の違いが、何に起因するものであるかに対
㈱
第5号(4)
第93巻
一橋論叢
556
(5) 二重目的語構文の構適
先に見たような分布の説明がつかない。そこでカリカバ
しく移動することが予測されてしまい、いずれにしても
うるという最近のわく組をとると、どちらの名詞句も等
されなくなるし、名詞句はどこにあっても自由に移動し
来のわく組をとると、直接目的語が移動することが説明
形で移動するものは動詞の直後の名詞句であるとする旧
たげる要因はなさそうである。受動変形に関しては、変
どちらの名詞句も考︸句移動変形で移動することをさま
^㎜︺
ことができないことが説明されないのである。
文の間接目的語も㈱のように峯︸句移動変形で取り出す
構造がなく、変形で派生したとは考えにくい㈱のような
次のような弱点が指摘される。対応する前置詞句付きの
まずこの説が与格移動変形の存在に依存しているために、
いとする。しかしこの考え方にはさまざまな反論がある。
明される。一度動かされた間接目的語は二度と移動しな
節で見たような間接目的語の移動が阻止されることが説
︵孕8﹄轟軍一昌亘①︶を立てるひその二とにより・第一
︵轟︶H烹一豊“ぎ邑898目8冨嘗津①芽亀⋮撃
ーとウェクスラー︵〇一;8く實印目︷考o邑胃一Hoミ︶によ
って次のような階層構造が考えられた。
︵s︶ 。峯ゴo昌o艘o5黒サ凹目ρ8g顯ω“$片亀箏目彗︸
彼らは、与格移動変形は存在するものとして論を進めて
に移動して、⑫①のようないわゆる間接受動態ができるこ
り大きな問題点は、凍結されているはずの名詞句が自由
を認める人がいることの説明もなされない。さらに、よ
また第一節で見たように間接目的をたずねる疑問文など
いるので、吻はその変形が適用された後の派生構造とい
との説明がつかないことである。
^9︶
形に依存せずに基底都から帥のような構造を考え、似た
<オ勺のような基底部では生成されない構造は、凍結さ
れて、その節点︵冒o宗︶自体、およびその節点に支配さ
ような説明をする。彼は基底部で動詞へ間接目的語が編
第一の点に関してストウエル︵望o姜=しoo。一︶は、変
うことになる。前置詞句のうしろにあった名詞句が動詞
〈
〈
V NP
︵さ︶旨巨書ω。目ぎ目閏σ8汗串σ09尼ぎ﹃.
V NP
にチョムスキー付加されると考えている。そして<←
VP
れている要素は、再ぴ移動することはないという仮説
557
帥
第5号 (6)
第93巻
一橘論叢
されるとみるのは不自然に恩われるが、ストウエルがこ
れた不変化詞の場合と違って、文法範曙の名詞句が編入
上の動詞を構成するのと同じようにみるのである。限ら
亀のような︵形態論上の︶動詞と不変化詞が、統語論
︵ま︶ −oqρき閏σ8斥︵8︶﹄oプ目1
︵婁︶ −oq閏くo言サ昌閏σoo汗
る。
ら導かれるのではなく、㈲から派生されるのだと説明す
頻繁に使われることである。ストウエルはeΦなどは㈱か
ない間接目的語を主語の位置に移動する臼①のような文が
である。第一は、動詞の一都に編入して移動するはずの
のような構造を考えるのは、語の一.都が変形によって取
入︵オ勺−ぎ8﹃一︺o﹃暮昌︶されると考える。ちょうど勺鼻
り出されることはないという前提に立って、編入されて
︵さ︶ 、﹄o︸目峯富σo泰軍閏σooπ
のは︷o﹃がダミーマー力ーになれないからだと説明する。
しかしこのダミーマー力1の性格付けははっきりしない。
㈱の8をダミーマー力ーだとし、㈱などが許されない
鯛の非文法性は説明がつく。帥のような疑問文を容認す
先に見たωのように前置詞句を使う型しか用いないもの
語の一部になっている間接目的語が考了句移動変形など
るものについては、㈱との類推現象として説明しようと
は、帥のようには言えないのである。
で移動することはないとしたいがためである。とにかく
する。
︵讐︶ 、老oξo冨豊o目o司①gap篶妻i一ρ目−
豊o貝o・①gに使われる8はダミーになれないことが説明
︵竃︶老ぎ昌φ︸、o・。目ぎ艘①σo鼻8∼
そして闘のような︷g句を要求するものは、︷o﹃の持つ
されなくてはならないだろう。
︵旨︶∼オぎgoく昌。目ぎ艘oσooζ
意味からしてεの場合のような類推を受けづらいとす
︵3︶ 、≦巨o2o<o目σ自く艘①σ8斥∼
であることを予想させる。
目的語を移動して㈱のような受動文をつくることは自然
次に、閉のような構造を基底から与えておくと、直接
≦ず句移動については一応説明がつくが、ストウエル
︵墨︶>g鼻裏m屯くg﹄o;・
る。
説も受動変形の説明が苦しくなる。二重に問趨があるの
558
(7) 二重目的語構文の構造
ルは、名詞句編入はふつう動詞幹に対してなされるので
いることは先に見たとおりである。このことをストウェ
ところが事実は、むしろこちらの受動形の方が限られて
えられる。
しかし分布の点からするならぱ次の㈹のような構造も考
そのことがうまくとらえられることだけは確かである。
の直後の名詞句を移動するというように考える時にのみ、
、々
あり、過去分詞には編入をおこしにくいとし、そのおこ
る程度は語により、方言によりゆれがあると説明する。
たしかに㈱のような受動文の容認可能性にはゆれがあり、
としては不十分なものである。そもそもストウエルは・
そこにもある程度の規則性が存在するはずであり、説明
る分析の一つであるが、この構造自体からは、峯−句移
この構造はチ目ムスキー︵o5昌蜆身一εo.H︶がとってい
V
形態論上の動詞と統語論上の動詞を混同しているように
な構造からすると、直接目的語は動詞に対して付加部
動の制約などは説明されないであろう。さらにωのよう
個々の語によってもそれが変動することは事実であるが、
思われる。餉のような構造を考えるとしても、間接目的
8テストによる如と幽の違いがしぱしぱ指摘される。
︵邑一昌g︶の位置にあることをふつうは意味する。補部
のだ。
︵舎︶ 。旨胃くoq顯<o串σoo斥ε旨ケ目凹目oω易竃go
語を支配する動詞は統語論上の動詞であるはずであり、
︵亀︶きく彗冨。・o毒眈冨ぎ目o︷﹄oま.
蜆O庁O炭−︼一 . . ..
︵8昌旦①昌雪叶︶と付加部の違いを説明するものとしてま
間接目的語にまつわるさまざまな不規則性を語彙部門
︵S︶峯胃くσ昌。q巨PσOO斤ミ旨鼻彗OuO冨凹目き戸
統語論上の動詞の一部は㈱のように移動することがある
の問題としようとすることには一理あるとは思うが、帥
ωの8句は動詞の姉妹︵ω軍雪︶、つまり補部であるが、
・ ωo︷o﹃田−=一
いものではないように思われる。o竈一く⑭﹄oす=がαq迂oと
ωの−實句は最少の動詞句一Vには支配されない付加部
のような構造を考えなけれぱならない根拠はそれほど強
ほぽ同じ分布を示すということ、およぴ受動変形は動詞
559
第93巻 第5号(8)
一橋論叢
与樒移動規則にかかわる二つの型が並置されているとこ
暮ξ岩閏o胃︷o﹃巨冒器F
ろがおもしろいが、ともかくσo冒oq巨竃胃くを一単位だ
だとされるのである。ところが㈲のような文は不可であ
るから、少なくともa8テストからは直接目的語が
動詞句中に階層構造を認めようとすることにも難点があ
とすると、記述がむずかしくなるであろう。このように、
i昌g−
ると言えるo
︵ま︶ 。峯彗㌣唱き−争目閏σo2葭目oω目竃目ρ巨豊葭
動詞十間接目的が一単位を成すことを証明しようとし
ちなみに、イェスペルセン︵旨ω鶉易彗し8ω︶は意味
付加都の位置にあることは証明されない。
て幽のような文も考 え ら れ て い る 。
㈹の=彗く︷の後にo口署o蟹ξが消去されているとは
︵む︶峯婁。員閏きω良ξ円目算①ご竃o麦∼︷印2⋮・
素を成しているとしない方が記述しやすい現象がある。
統語論上の根拠はあまりなさそうである。むしろ一構成
要するに動詞十間接目的が一単位と考えられる直接的な
しかしこの文の判断もあまりはっきりしないようである。
ξ巨oヴ;o帯害フ冒σρ旦﹃8o昌∋o自ρoφ8堅冒]
︵宝︶﹄o巨[σo品巨]彗o[。・ρき峯胃己[毫艘oσo鼻
また㈹では四冨婁害qはミ富o茅﹃&の主語だが、㈹
亭oσ暮一實はo穿H&顯冨冬害oの目的語であると言う。
幽においては芭冨老胃ρはo饒g&の目的語であるが
︵8︶ H冨一旨巨實妻豊o豪﹃&里冨≦凹邑・
︵お︶ >﹃①ξ胃ρ婁鶉o饒害&旨①σ鼻一串・
︵阜o。︶ ↓ぎくo串彗&蟹oσ鼻一零凹篶≦胃o・
まり省略することが不可能かという観点から分析する。
は、動詞とどちらの目的語の縞ぴつきがより強いか、つ
の観点から別の直接構成素を考えていたと言えよう。彼
^11︶
とれず、竃φの後に峯買o目彗oが消去されているとし
であって、ξ鶉o饒雪&だけの主語ではないと言ってい
では艘og匡昌は名易o穿﹃&凹﹃姜胃o全.体の主語
^13︶ ^ど
^12︶
か解釈できない。これは㈹と同じような等位構造である。
^帖︶
てよいだろう。
る。すなわち、制のような基底構造を考えていると言っ
︵ま︶ =o8o斤言プ目プo昌Φ葭目α呂弩︸8艘o叩冨巨op
^旭︺
さらに次のような等位構造もある。
︵ミ︶冒く巨σo奏票旨胃㌣ρω“昌&彗ぎ巴彗︷里
560
(9)二重目的語構文の構造
︵2︶ [毫[くo黒﹃顯8ミ胃凸夢①巨己宵]
これはo夢﹃艘oσ算一昌顯篶ミ胃qの直接構成素は不連
は間接目的語がふつう婁ゴ句移動で取り出せないこと、
およぴ㈱のような関係節に注目する。
qogo﹃=算oo轟巨くφ嘗壱ー
︵竃︶ ↓ブ① i嘗9o算妻−o昌葦Φ目胃竃耳o冒岬巨艘Φ
いう操作を用いて、その不連続性を克服しようとしたこ
この文では、看護婦が医者の所へ連れて行った患者とい
続であることを意味し、まさに初期の変形文法が変形と
と と結びついていく 。
う解釈の方がふつうであり、看護婦が医者を連れて行っ
与えると、第一節で見た統語現象はどのように説明され
さて二重目的構造に<乞勺乞勺という平板な構造を
見出そうとするという知覚の方式があることが指摘され
その構成素と動詞を結びつけてしまい、その後に空所を
を予測しても、そこにそれを充たしうる構成素があると、
者はopざoやσユ轟の後に空所︵o司岩︶がありうること
た患者という解釈はほとんどされないという。解釈する
るであろうか。
る。そのような知覚の方式にもとづいてフォーダーは次
の㈱のような制約が変形規則に課されるようになったと
6き︶は次のような制約を立てた。
㈲ 変項を含む変形が×−老♪−く−乞♪という連鎖
説明する。
色一句移動に対する制約として、アーリー︵02二9
の2︸を移動させる時は、×−zざ−くまでを
同じ型の構成素が連続し、そのどちらもある変形
㈲ XX取り出し制約︵↓ま××■鼻量9昌O昌−
この制約が適用されないと一応説明される。しかし胸の
で移動ないし消去されうるような場合には、変形
変項とみなしz“のみを動かす。
ような制約はどのような意味を持つものであろうか。こ
は最初の構成素には適用されない。
蜆旨巴鼻︶。文の派生のある段階で、そこに形式上
の制約はフ才ーダー︵句oa3;轟︶の﹁知覚の方式﹂
同じ形式の構成素の連続といっても、実際には名詞句の
受動変形は構造記述に変項を含まない変形であるので、
に由来する制約と関連するものと思われる。フォーダー
561
三
一橘論叢 第93巻 第5号 (10)
連鎖か前置詞句の連鎖しか英語ではこの制約の対象にな
いであって、空所を過去分詞の後にも間接目的語の後に
峯ブ句移動変形で移動しうるという点が指摘される。し
8富巨彗などの動詞の後にくる二つの名詞句はどちらも
σ1≦す津昌o言す自8易昌①﹃匡胃︷∼
︵3︶嘗−ミ巨oφ昌﹄o=目8畠一︷彗串コ巨︸g∼
鎖の場合を説明する制約になるであろう。ただし名詞句
^〃︶
の連鎖についても次のような反例が幽されている。
した例がないようであるから、結局、これは名詞句の連
間接目的語をξチ句移動で移動しうる人たちがいるこ
るようだ。
このようにXX制約として一般化することには問題があ
が移動したと解釈することの方がより自然なのである。
しかもXX制約の予想に反し、内部の老勺︵間接目的︶
b、我々が彼らのガイド役をおおせつかった。
a、我々には彼らがガイドとしてつけられた。
︵象︶毫o奏・Φ。・ぎ目;竃彗。・目匡撃
もとりうるのである。
^19︺
かし、これは二つ目の名詞句は軍&に支配されている
らない。しかし前置詞句の連鎖の方は、あまりはっきり
と考えれぱ、同じ範蟻の連鎖ではなくなる・から間題には
づくがゆえに、人によって知覚のし方の程度が違い、そ
とはどのように説明されるであろうか。知覚の方式に基
ているが、直接目的語も移動することに触れていないの
おこなわれるから、あいまいさが生ぜず間題がないとし
いては、過去分詞のすぐ後に空所をつくるように移動が
てはすぐれた説明であると恩う。しかし受動態の方につ
フォーダーの説は、ξヴ句移動などに対する制約とし
ると考えられる。
牲き乞勺一z“型の統語構造の違いを証明するものであ
しかし文法的だが容認されにくいと一般に言われている
づらく、容認度が落ちるという説明をしている人もいる。
どは、実際は文法的であるが、言語運用の面から知覚し
知覚の方式で説明する人の中には、間接目的の凝問文な
ように、より厳しい制約を課す人々もいるようである一
第一節の剛で見たように、直接目的語まで移動しえない
には至っていないということになるのであろうか。また
れらの人々にとってXX制約なる文法制約をつくるまで
^蝸︶
ならない。㈲aのような例も8竃巳g老♪z“型と
で説明たなっていない。実際㈱のようなものは、あいま
562
(11) 二重目的語構文の構造
^20︶
意味構造とかかわってくる︸o目∼oの方は、与える人と、
ことしを言えないであろう。そして、そのことは動詞の
移動する物と、受け手の三項が必要な動詞であるが、σξ
れぱなんでも受動文の主語にする人がいるというような
み認めているような場合には、実際は非文法的であるが、
の方は、買う人と買われる物だけが要求される項である
文とは、はっきり性格を異にしていると思われる。容認
言語運用の面で容認可能性が出てくる場合として位置づ
と恩われる。意味構造の点から、間接受動態の分布を分
するといっても、非常に隈られた単純な構造の場合にの
けた方がよいのではないかと思われる。これは先に触れ
析していくと、結局、ジャヅヶンドフ︵盲oぎ邑o貝遣s︶
の主題楕関係の階層構造︵↓訂H5昌註oヨ胃胃o身︶
たストウエルの見解だと思われるし、ホーンスタインと
のような説明をしている。
のようなものに行きあたるであろう。当面必要な主題格
ワイン,ルーグ︵葭o昌99目因自ρミoぎσ彗oq一SooH︶もそ
<z勺老勺という平板な構造を考えても、ξブ句移動
そしてこの順で間接受動態の主語になりやすいと言え、
として次の帥が考えられる。
つてフィルモア︵ヨ=旨o員sa︶は8与楕移動規則
方言によって2の受益樒を受動文の主語に受け入れるも
などに対する制約に関しては、統語構造から説明ができ
とぎ﹃与楕移動規則を別の規則としセ分け、一規則の順序
のと、受け入れないものがあるというような説明になる
㈲ 1 目標格︵Ωo巴︶
づけで説明した。その説明が今や無理であると判断され、
ものと思われる。直接目的語が受動文の主語になる場合
ることを見たが、受動文の説明は簡単にはいかない。
両者に基底から同じ構造を与えておく以上、句構造の違
も、保留される間接目的語が目標格である方が受け入れ
2 受益格︵団雪⑦厨9<Φ︶
いで受動文の分布の違いを説明することは困難となる。
られやすいということになろう。
阻き型とσξ型の受動文の文法性の違いについて、か
せいぜい、σξ型の間接目的語は厳密下位範酵化にかか
わる要素ではなく、そのようなものを受動文の主語にす
ることをおかしいと判断する人と、形式的に名詞句であ
563
一橋論叢 第93巻 第5号 (12)
㈲のような格フィルターを設ける。
する。
㈱ 椿を持たない音形を持つ名詞句を含む文は非文と
よる説明が考えられる。その理論の要講からしても[毫
られるという仮定がある。これは㈹bのようなものを排
格理論には、樒北統率要素に隣接するもののみに与え
除することを目的とする。
これは従来の句構造規則で生成しないように規則を作っ
解が分かれている。
の一部にくみ入れている。格の消失ということと大いに
ておけば問題のないものだが、楕理論は、なぜそのよう
︵σo︶里.﹄oす目勺鼻;①σoo斥o自艘o冨巨o.
関係がある二重目的構造が、その理論の中でどのように
な連鎖がないのかに説明原理を与えようと考えられたも
チ冒ムスキー︵Oぎ冒算さ岩o。一︶は現代英語ではほと
扱われるかは興味のあるところである。彼は一般文法理
.ように付与させるであろうか。oqξΦ﹄o巨印σo鼻の﹄o巨
のである。さて、間題の連鎖にはどのような格が、どの
σ1、﹄oブ目、暮bコ艘o憂竺o艘oσooπ
論に お い て 樒 付 与 に 次 の 五 つ を 認 め て い る 。
二重目的構造の分析とも関連するところである。そして
いる格を認めるべきかは意見の分かれるところであり、
このうち現代英語に斜格︵oσ互畠︶や固有に与えられて
e、統率要素によって固有に与えられている格
d、[竃1×]において属楕
C、前置詞に統率されると斜楮
b、他動詞に統率されると目的楮
いる。こうすると﹄o巨にはo目一毒が格を与え、σoo片
ら、代案として、先に見たωのような階層構造も考えて
キー自身、すべて樒を構造から決定したいという考えか
この場合だけであり不自然であると言えよう。チ目ムス
られる。しかし英語で固有に樒を与える必要があるのは、
接していないので、固有に樒を与えられているとも考え
には構造上の椿が与えられるが、pσo鼻はoqζ①に隣
^皿︺
㈱a、>Ω宛に統率されると主格
んど失われている名詞句の格に基づいた理論を彼の理論
く老勺2凸とするか[毫?<オ勺]ズ凸とするかで見
第一節で見た統語現象の説明として、最近の格理論に
四
564
(13)二重目的語構文の構造
接性は保たれるが、一Vも格を与えるというように理論を
には一Vであるoqξo旨巨が樒を与えることになる。隣
えられて㈱のような適格な文が生まれる。
て峯胃<が主語の位置に移動すると、そこで主椅が与
分詞は樒を付与しないからである。名詞句移動がおこウ
も与えないと恩われる。受動文については一応の説明が
に移動したため、構造上、主楕が与えられて楕の衝突が
固有に目的格を与えられていた9oσ8斤が主語の位置
一蔓ぎ喜﹂
一3﹁捧撃く﹂喜−ξ
造になる。
先の㈱のオ“が移動するとどうなるか。㈱のような構
一5冨蓑く﹂ 一亘書一
一、、一一5衰ギ星葦﹂姜−・、⋮一葦一一
修正せざるを得なくなる。チ目ムスキーがそのような構
造分析をするのは、フランス語の与椿構造の分析などを
参考にしているのであるが、英語では一Vという構成素を
認める強い根拠はないようであることは兜に指摘したこ
とである。となると、あとはすべて仮定に基づく空論と
なる恐れがある。
チョムスキーの格理論が第一節の統語現象にどのよう
な説明を与えるか、簡単に見てみよう。ξゴ句移動につ
いては、後で見るように間接目的語に特別の格を付与す
与えられる。ラドフォード︵射凹亀冒♀H畠−︶に従って
おこる。そして峯嘗︷には楮が与えられないから楕フ
るなり、特殊な構造として分析しない隈り、なんの説明
㈹のような基底構造を考えてみよう。
ィルターに抵触する。さらに、Z“のトレースには目的
^四︺
格が与えられていて亥勺トレース条件にも違反して、
︵β︶[毫﹀U姜蜆。目一く雪[ξ雪胃己□;艘oσ8芭
馴の乞“にはこの段階で㈱のように固有に目的格が与
結局、㈱は非文となると説明されるのである。
しかしラドフォードも指摘するように、Z♪が移動しな
︵a︶、旨oσ8斥姜蜆。・∼雪竃賢く.
えられるとしてみる。
一ひ、一一竜と嚢・−、§一葦ξ一一重富薬く﹂
このままの構造では室胃㌣には格が付与されない。過去
565
第5号(14)
第93巻
一橘論叢
いのは、固有に格を与えられているからであることに依
存するこの説明は疑わしいと言える。実際いくつかの条
われている斜格を認めることで、体系が明らかになると
の後の第一の名詞句には斜楕が、第二の名詞句には目的
する。彼らは、構造は平板な構造を考え、oq一<oやσユ素
く別の樒付与を考えて第一節の現象を説明しようと
先に触れたホーンスタインとワインバーグは、まった
る話者がいることの説明もつかなくなる。
ることになる。ストウエルのいう類推作用とほぼ同じこ
る。方言の差は、文法の差ではなく知覚の方式の差であ
ないと解釈してしまうという知覚の方式をもち出してい
してしまうと、妻フ句と結びつくものは間接目的語しか
だと説明する。動詞の直後の名詞句を直接目的語と解釈
者は、単純な文に限り、非文を容認してしまっているの
先にも触れたように、間接目的の≦﹃句移動を認める話
ィルターで非文法性を直接的に説明してしまうのである。
言いたいのである。問題の三一句移動については㈱のフ
楕が固有に与えられるとする。そして8冨昌gなどの
とであろう。
件に違反してかなり悪い文であるはずの㈱を文法的とす
と定めるのである。そして㈱のようなフィルターを設け
後に続く二つの名詞句には両方とも目的椿が与えられる
さて、現代英語の記述に目的楮と区別された斜椿を持
た間接目的語は、直接目的語の前という隈られた場所に
ち込んでよいであろうか。歴史的には与格で示されてい
る。
一5、一毫ギ。ξ﹂
そして、前置詞の目的語に与えられる楮を間接目的語に
︵ミ︶、≦3:巨①α巨−o葦弩ユく①斗□毫①]∼
目的で設けられた。
を使うことで記述しようとしていると言える。しかし、
らは、間接目的語に斜格を与えることと、楕フィルター
くてはならないという説明が可能であろうが、それを彼
ようになったため、疑問文にする場合も前置詞を使わな
だけ現れ、それ以外の位置ではすべて前置詞句で表わす
も与えることにより、同じフィルターで間接目的語の移
斜格付与には問題がある主言わざるをえないであろう。
このフィルターはもともとは、㈱のような文を排除する
︵響
動を排除しようとするものである。現在では表面上、失
566
(15) 二重目的語構文の構造
㈱の昌oに彼らは何樒を与えるであろうか。
㈱などは再分析がおこなわれ、意味上のまとまりがある
詞の直後のものが移動するのであり、一見、直後でない
一つの述語を形成しているとみている。
︵αoo︶ 向o8巨昌o.
斜椿を与えるとすると㈱が可能だから彼らの理論はくず
︵s︶ミぎ︵目︶g︷冨至■
そして㈱ではoqξ昌曽費︷が一つの述語と分析されな
σ.﹄oブ目ξ蕩冨寿①q與σo暮−
︵ご︶葭・﹄o;ミ竃冨斤竃邑く與目冨oq①g
次の㈹のaとbの差がうまく説明されなくてはならない
いから非文になるとする。
れることになるo
の である。
︵No︶曽・、∼婁−oα巨訂冨=艘①卑oq∼
直接目的語と間接目的語が並んで存在する時の間接目的
と記述しているだけで真の説明ではない。oq一く彗葭胃q
受動化がおこなわれなけれぱ述語としての再分析がない
この説明も、受動化がおこなわれていれぱ再分析があり、
︵ミ︶ 岩>﹃o茅妻鶴□くo司∼昌︸胃︷︺[毫o]
語だけに斜格が与えられるとするのはアドホノクである
で葭胃qが過去分詞と合体するかどうかが亥言によっ
す.考ゴOO巨ま3二旨箒旨閏Hく婁O目58冒も1
と言わ.ざるを得ないと思う。このことは次の㈹と㈲に構
て異なるという説明はストウエルがしている説明であっ
間接目的語に斜楕を与えることはしないが、間接目的
造の差を認めるかということに関わってくる。
︵s︶ 甘ξ﹃go芭一〇慧﹃1
語の構造そのものを特殊なものとみなし、.それを格理論
た。
巨目と工g甘撃の主題格は違うが︵巨昌はΩo巴、曽一〇g實
︵ご︶ −婁﹃go巨昌.
は↓5昌①︵昌098巨くo︶︶句構造その他は同じとみる
前置詞句などと、ほぼ同じ機能を果たすことから、間接
ていると考えている。間接目的語が8前置詞句やh昌
^別︶
と結びつけて説明する見解が最近出されている。O・︷−
から
一g巨︵H湯N︶は、間接目的語は空の前置詞に統率され
べきではないだろうか。 。
彼らは直接目的語が主語になる受動形は非文として説
明している。受動変形は、伝統的な考え方に従って、動
567
第5号(16)
第93巻
一橋論叢
目的語も前置詞句とみてはどうかという考え方である。
られるという原則が守られ、㈲のような順序づけが自動
しておくと、格は統率要素に隣接している時にのみ与え
を与えられ、隣りの直接目的語に楕が伝達されると規定
主要部が空である前置詞句は動詞に隣接した時にのみ楮
厳密下位範蟻化に関与していない前置詞句はダ、、、1前置
︵鶉︶ .昌胃く婁塞[[くσo冒的幕9oσoo斤][雪o]]
と考える。
いて、過去分詞に統率されないので向O勺で非文となる
に一Vの中に入っていないために、㈱のような構造をして
と同じと言えよう。雪前置詞句の方は、先に見たよう
的に決定されるという。
詞として機能しないとし、それを許す方言は結局σξも
から
︵ヨ︶閏.。・ぎ2勺ワoz凸
兜きと同じように二つのオ勺を要求して同じ構造にな
っているのだと説明する。つまり、o司∼o型とσξ型の
σ.、牡き□δz凸2勺
詞句に合まれているか否かということしかないために、一
違いは、統語論上は、それがとる前置詞句が、最少の動
o.。。司ぎ2勺τ2凸
poqξo[oオ巾]z勺
その非文法性が説明される。受動態については、過去分
^鴉︶
尋︸句移動が適周されたものは、向O勺と格フィルターで
魅カ的であっても、実際の説明は言語事笑に都合がよく
にわかにその評価はできないが、その意図するところは
みえるけれども、あまりに多くの仮定に基づいていて、
る。この理論は一見おもしろい説明を与えてくれそうに
それを受動態の派生にも結びつけようとしているのであ
要するに、与格移動変形が記述していたことを樒理論を
詞も格を与えるという椿理論の修正のもとに、㈹は㈲か
なるように無理に理論を組み立てているだけという感じ
使って記述しなおしていると言えよう。間接目的語に
ら導かれると考えるようである。
が、格理論自体がまだはっきりしないものであり、それ
以上、楕理論と結びついた考え方をいくつか見てきた
がする。 1
︵豪︶ 旨胃くポo司∼雪;oσoo斥・
︵ミ︶ ﹀デ[くo有ζ彗艘⑮σoo斥□峯胃己]
十〇互
これは先に触れたストウエルのざをダミーとみる説明
568
(17)二重目的言吾構文の構造
はないように思う。
を現代英語にあてはめることは、 あまり生産的なことで
︵O.O︶曽.くεOq曽き艘①O胃顯ミ豊一−1
似た様相を呈する圭言えるだろう。
σ.。くo自。・ミ①葭葦穿8艘oo碧.
σ.。くo目一昌斤閏す竃o8旨ブ戸−
︵s︶纈.くo目一昌け﹄oケ目固−閏目庄.
く時にはaを補うということがあるようだ。
に基底形では8がない場合にも、疑問文ではっきり聞
明でよいだろう。おもしろいことに、㈲に見られるよう
ものは、特に8がなくても理解する者もいるという説
たというだけのことであろう。簡単な文で処理しやすい
たために、前置詞句を使うという規則が英文法内にでき
を使えばはっきりさせることができるという手段があっ
空所が認知しずらくなる。しかし、この場合は前置詞句
動すると、フォーダーが指摘するように知覚の方式上、
語の前に存在する間接目的語をミ︸句移動変形などで移
そもそもは英語に与楕形がなくなったために、直接目的
以上、検討したことを整理して方向づけをしてみよう。
こされている間接目的語に8をつけることであろう。
す手段は、直接目的語が主語になった時、動詞の後に残
あいまいさが生じざるをえない。唯一あいまいさをなく
語位置では前置詞句を使えないことにある。そのために
方が有益であると思う。奉−句移動などとの違いは、主
かに違いがあるようであり、その方向からの分析をした
て受益格をになう名詞句を主語としてたてられるかどう
と言ってよいだろう。間接受動態については方言によっ
については、統語構造上からは説明がほとんどできない
二重目的語構文にかかわる受動態のさまざまな許容度
には、基底形とは別に前置詞を補うことがあるようだ。
の話者にとって、与格形をはっきり表わす必要がある時
いう生成文法の考え方では扱えない事柄であろう。英語
これらは基底形を設定し、そこから派生形を生成すると
p>ξ蕩ブ≦豊阻く昌8;oo嘗.
o.,>き争毒㎝牡く昌艘oo胃.
ρミヴog旦くo自一雲己pす嘗目戸8∼
ざなしの形を使わない方言はそのような理由によって
^26︺
クワーク他︵氾邑︸ミミ勺二童︶が指摘する次の例も
569
‘
一橋論叢第93巻第5号(18)
いる の だ ろ う 。
椿を失ったことによる統語現象を抽象的な楕を設定し
て処理することは、そのことにより共時的にはっきりし
た体系が見えてくる場合以外、差し控えなけれぱならな
いことだろう。
二璽目的語構文の句構造分析において、動詞句内に階
層構造をみとめることには、あまり強い根拠もないよう
であり、平板な構造と考えておいてよいのではなかろう
か。
︵1︶ 以下*は非文を表わす。
︵2︶ 両方の型を使う場合でもa型とb型で意味の差がある
ことも重要な点である。その点に関してはo冨彗︵sミ︶一
.O筈﹃一〇︵Sき︶参照。
︵3︶ 次のωのように移動のないエコー疑問文ならぱ認めら
れる。 内一旨o︷與︵Hoαoo︶−﹄ρo庁①目Oo饒與自PO自旨ooくoH︵HoNH︶
参照。
︵一︶ 言げ目o日睾o毛︸o冒旨oσ8庁∼
︵4︶ 複雑さとは別の理由で、次のωを不可とするようであ
る。言8茅o目︵H湯o︶参照。
︵一︶ 。妻−5oδ﹄o崖目oqぞ〇一け∼
︵6︶ ︸嘗ζ目亀︵筍ご︶の判断。
︵5︶ε8き膏3彗ρ5・叩實白曇昌彗︵一畠ω︶勺・寄N・
︵7︶ C邑鼻ミ巳卜︵6S︶o・室N参照。
︵9︶ Aという節点にBという要素を付加する時に、Aの上
︵8︶胃o書昌ρ竃昌胃︵岩。。o︶マ室9
にそれと同じAという節点を作り、それにBを支配させる
︵10︶ 例文はO価耳−o︵筍富︶より。 ,
操作をいう。
︵12︶ 畏谷川欣佑、、O竃o昌5&>10く胃1>吊﹃まoゼo,,︵﹃英
︵11︶ 例文は旨㌻冨︵5o。ω︶より。
餉o巨が﹄o−旨と里昌の両方を指せることを説明するため
語音年﹄一九七四年三月号︶では次のωの文において巨冒−
にこの構造が考えられたが、後に﹁再帰形のシンタクス﹂
︵﹃英語青年﹄一九七八年十月号︶などで規則の修正がおこ
︵一︶ ﹄〇一≡餉昌叶里昌閏豆g目冨艮巨昌器声
なわれており、この構造を支持する必要はなくなうている。
︵14︶ 例文はΩo岸昌串自︵εa︶より。
︵13︶ =彗ぎ昌9︵5ご︶参照。
︵15︶ 小西友七編﹃英藷基本動詞辞典﹄︵研究社出版︶一九
︵16︶ Uo薫㌣︵5轟︶はこのような構造を考えている。
二頁。
︵η︶ 匡o;蜆置目彗ρ考巴ま雪oq︵−oo。一︶参照。
︵18︶ この点に関しては拙稿﹁英語の叙述語句の位置づけを
十二月号︶参照。
めぐって﹂﹃一橘論叢﹄第九十二巻 第四号︵一九八四年
︵19︶ 例文はく︷覇宵︵岩ご︶や冒ちより。
570
︵一︶掌o5 曇 冨 8 ︷ 君 g け 5 g 冨 彗 .
︵20︶ 次のωようなもの。
冒呂婁雪餉艮里掌彗︸2■彗。口量。口。5凹昌邑巨︸一、、ぎ
○邑8≦■︸奉昌∼界峯婁一9︵§“︶.、ω旨oω毛冨ま
勺・一く・O自目ooく耐■ ↓‘ミ顯蜆o考 纈自O >−>斥昌旦−豊口 ︵o︷眈一︶−
繧§ミ身ミ§ぎ邑①邑o吊﹃鶉咀.
︵21︶ >Ω■山人称、数、性の索性の束。統率の定義について
︵22︶ 名詞句移動の後に残る痕跡︵トレース︶には格が与え
は前掲の拙稿の注︵20︶参照。
ON0勺巨oF︸・︵−oo0N︶ 、,O麸o ↓,oo﹃︸寧目O け巨w U串片−くo OO■−
○自H目90.Ol︵S曽︶身ミ富¥㌔昌轟艘㌔峯印目轟目
卑昌o匡昌一,.§耐皇秦募ミき§§<〇一.“乞o.十
られないとする条件。
U婁ぎP甲︵宅轟︶、、OO≦冒&⇒竃阻O昌き昌蜆富■異−
︵幻︶ 前置詞が残っていて文法的な文は、前置詞が述語の中
に組み込まれる再分析がおこっているとみる。
一邑射邑窃ぎ顯黒o巨晶焉Ω轟目目3.、皇ミミ︸導§−
旨鼻昌ま貝戸ω.︵ss︶吻§§ミぎ詩意ミき§き9き雫
老o.H.
埠︷畠三昌ω冒冒亀泰、.5秦ミ助ぎミミミ一<〇一−員
葭o∋箒貝老;邑>1考〇一目σ胃o日︵H湯一︶.,o豊⑭↓巨8︷嘗q
ぎHミミ§<〇一.卓乞01H.
葭彗置昌p−︵岩ご︶、.旨竃8冥邑o>目σ耐皇︸一.、卜§喝§明−
冒2陣目串o目才.勺冨婁
○篶昌一Ω・声︵5ミ︶吻§筥ミ§帖§良ξミ§ミ昂祭ミミミー
旨貴..卜s素s嚢一<〇一−芦2oード
Ω−o岸−自印自1■・射一︵Ho①㎞︶、、OoO﹃O−目饅庄目oqOO自−﹄目o庄O目m−目︸目oq・
○目箏彗ま昌き昌9、、5奏募導㌧ミミ§く〇一.P201ω.
︸O﹃︷o’﹄一b一︵HoN0o︶ 、、市印易5o目ω胃與8oq川Φ蜆 ρ目OOo自9﹃巴昌“叩
§匙§◎ミぎ素県箏§巷§き§卸旨og昌.
︸二−自−o︸ρO・︵Ho①︸︶−註∼寺雨ミOミ雨ミOoS︸ミミoミoS︸ミ向ミ恥ミ︸“
︷ミ§<〇一10一署O1ω.
︵24︶ 内嵩冨︵H湯ω︶も似た考え方をしている。ただし彼は
文的要繋を認めるのは無理であろう。
く[眈勺巾乞凸という分析をする。英語の二重目的構造に
︵25︶ 向昌官︸o黒ooqo︷、ユ昌号−o。空節点は語彙範蟻に統率
され指票を与えられていなけれぱいけないとする。
︵26︶ 9豊︵這ミ︶の指摘。
引用文献
ミトミ§きミ§§繧ミ“§§吻ミ§§§鉋旦g一冨昌−
卑o⋮一向・界彗α﹄.戸旨一一睾︵−漫o︶身ミ§1.﹄トぎ寒宇
1︵H湯N︶ξミ§1.o§ミミぎo§§§§串自片o;島g’
09oo−峯自﹃9P 呂・ 顯自O −︺. ■顯H蜆o■−弓﹃oo目匡目 ︵−oooω︶ ﹃昏雨
§§§ミき峯﹂註向旨肩、卜H§ミ、・o§蔓−黒暮膏︸
雪o自器.
9・妻ξ2・︵嚢−︶トミ畠§§3§姜ミ§、望ミ札泰
句Oユ閉一
571
二重目的語構文の構造
(19)
橋論叢第93巻第5号(20)
ミざ“o;§§ミ一峯H↓弔冨蜆蜆.
與自O︸.O冒−oOくo﹃︵−oN一︶ ..> 勾ooO自色Oo﹃嘗庄o自 oh
○註毒峯Oき嘗竃亘、、き§きぎ婁県卜昌秦S素“<OFN一
オo.︸1
閏自ρ ◎.−︵.勺目;仁目− ︵o與唖■︶1 H“軸−くs、ミ、雨 o、身宝“so“札o亀︸、・
盲8訂昌一巾.︵H湯N︶..穿竃竃8︷冒o岩μ..ぎや盲8g昌
−$勺串器P O. ︵Hoωω︶ 向蜆臼軸ミミミ︸ 呉向暮曳㌢“ O、昌§§ミ■
、雨餉雨ミ、昌““os■ −︺. 勾o−oo− 勺自σ−尿ブ舳旨oq oo−自勺饅目く.
o8おo>=冒彗旦c自至■.
句o﹃尿一
婁毛9射1ω1︵H凄ω︶O§§§き婁§軋望彗ミ専§妻豪
警註一向−>1︵5a︶\ξ§、餉︸呉bミ思急専ミ§竃o鼻昌・
、︸︸“ H︶s、︸︵耐 ﹄ミ雨、ざs““oミ■ 冒﹃■o自=蜆ま血口 勺チ. −︶. o−㎜蜆o﹃け里はo目−
Oo−二P宛1H一︵一〇Nα︶﹃ぎO、富§§ミーoミ吻§ミ︸呉§雨向ま咋
峯HH−
○け㎜自. く. ︵HoNN︶ .、−︺閏己くo c冒o蜆匡o目蜆 芭■o 弔o﹃oo勺け自顯− ω庁﹃葭叶−
遇葦.、9邑雲ぎ向逼嚢ζ秦ミ芝茅−髪・舳・
肉素募ぎ5轟昌彗−
曾葦一声ミミ︵&蜆.︶︵一〇s︶\尋§§ミ県9ミ§心o§ミ
C邑く一勺昌留一
渕顯08﹃01>一 ︵HoooH︶ ﹃、s畠菩、§sミoS昌、 ︷S§べ−O卑目旨ユqo司o
ω片O筆而昌− 一リ. ︵HOOOH︶ O、酎軋ミ助 ρ、 、善、邑︸雨 吻、、SO“ミ、“ O目勺一﹄σ1
<甘m叩o■ 司.一﹁巨 ︵HoNω︶ ﹄s 串︸餉、o、︸os、 専ミ︸富、o、、¥雨、s恥、︸吻、
旨会&∼巨−冒亀鶉彗訂斤一〇貝峯胃.
卜§昧§$、ミこき吻§註、きs向こ・曽⋮
宍胃o詳一ω.くー︵sg︶零三窒o︸雲一目o篶︵5a︶一ト§・
竃−︸凹H印’ω■ ︵HO00ω︶ 、、宛伺OHρ耐﹃︸目餉蜆 −目 向■Oq旨㎝巨一.、 ト・︸素ミ軋帖、︸O
︵一橋大学講師︶
軸ミs恕、くo−一阜十易o・N・
﹄§書茸<o−・員zo﹂・
572