「現代の日本語の使い方」 福井県鯖江市東陽中学校3年 薮下 小春 ある時、テレビに出演していたタレントさんが、 「全然OK」という言葉を口にしました。 すると家族が、 「こんな言葉の使い方はおかしいのではないか。 」 と、肯定の意味を持つ全然に異議を唱えてきました。しかし私は、その言葉にあまり違和感を感じませんでした。 そして「全然」という言葉の使い方が日本語としてダメなのか、それとも時代によって変化しているのか不思議 に思ったのです。 そこで、インターネットを使って調べてみることにしました。すると「全然」という言葉が広がり始めた明治 時代から昭和初期までは、その頃絶大な指示を受けていた夏目漱石の坊ちゃんや、芥川龍之介の作品に代表され るように、全然のあとに肯定の意味を持つ言葉が使われることは、ごく一般的だったとされています。 しかしその後、全然のあとに否定的な言葉を使うことが増えてきました。始まりはギャグマンガだったとされ ていますが、国民に人気の高いものだったぶん、広まりも早く、遂には1960年、つまり約50年前の国が定 めた教育指導要領に「全然」は否定語を伴って使用すると明記されてしまったのです。 2000年代に入っても、肯定的な文章で使われることは少なく、今でも受験や採用試験などで肯定表現を用 いることは「好ましくない」 「避けるべき」だとされています。 その結果「全然」という言葉は、否定表現でしか用いられないようになってしまったのです。 しかし「全然」という言葉を辞書でひいてみると否定語を伴って使用すると書いてある次に「ひじょうに」と いう意味として肯定形で用いられる、とも書かれています。 辞書では今でも肯定形の全然は良いと明記されているのです。 つまり近年使われる様になった「全然OK」という言葉は「全然OK」な言葉の使い方なのです。 「全然OK」と同じような意味で使われている言葉に「全然大丈夫」がありますが、この「大丈夫」も時代と 共に変化を遂げています。 本屋で本を買った時「ブックカバーをお付けしましょうか。」という返事に「いえ、大丈夫です。」と返したこ とはないでしょうか。大丈夫というのはしっかりしている様子を表すので、誘いを断る意味としては、本来使わ れることはないはずです。しかしこの新しい大丈夫という言葉の使い方に違和感を覚える人は少ないと思います。 「お手伝いしましょうか。 」 「大丈夫です。 」と断る意味の他に「準備はいいですか。」 「大丈夫です。 」というO Kの意味。 「元気ですか。 」 「おかげ様で大丈夫です。 」というfineの意味の大丈夫も近年変化を遂げたものに なります。 元々大丈夫は「立派な男子」という意味を持ちますが、いつしか「非常に強い」と解釈されるようになりまし た。それが今では過大解釈をして「問題ない」という意味での使い方になってしまったようです。 しかしなぜ、このような過大解釈をするようになってしまったのでしょうか。調べていくと、そこには日本人 ならではの気質が関係してきます。 日本人は、断ると言うことをあまりしたがりません。そのために、曖昧な「大丈夫」という言葉を使うように なったのです。 このように日本語は、今この瞬間にも少しずつ変化を遂げています。 しかし「全然」と「大丈夫」この二つには大きな違いがあるのです。それは日本語の使い方として認められる かどうか、という点です。 「全然」は今まで正しい使い方であるのにも関わらず、あまり用いられていませんでした。 一方「大丈夫」は、正しい使い方ではないのにも関わらず、日本人の気質により、さも正しい表現のような扱 いを受けるようになってしまったのです。 しかし、新しい「大丈夫」の表現を用いてはいけない、というのも私は違うのではないか、と考えます。時、 場所、相手に応じた言葉を選んで自分の気持ちを上手く表現できたらと思うのです。 これからも日本語は時代と共に変化を遂げていくでしょう。私はその変化に合わせた言葉を用いて、表現の幅 を広げていけるようになりたいと思います。
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