COS OC - 兵庫教育大学

兵庫教育大学教職大学院
授業実践リーダーコース 授業実践アイディア集 2014
中学校における効果的なイメージ化を図る理科授業の開発
‐目に見えない現象をモデルで可視化する‐
定道 渉・松本伸示
校種・学年: 中学校
2 年生
教科: 理科
単元名: 「化学変化と原子・分子」「電流の性質とその利用」
新興出版平成 23 年度教科書準拠
あらまし
原子・分子,電流・電圧などの目に見えず抽象的な現象を原子モデルや電流モデルに置き換えて可視
化し,操作活動を通してイメージ化を図り,概念を形成させるなど,理解を深めさせます。
手立てと活動
各単元において,現象を可視化したモデルを活用し,現象についての理解を深めます。
○単元「化学変化と原子・分子」
原子モデルを製作,操作し,さまざまな分子についてその構造を考えます。
【原子モデル】
・原子はそれぞれ何本かの「結合の手」を
持っている,と考える。
・原子は手を残さず他の原子と結び付いて
物質をつくる。
手の数
1本
2本
原子
原子の結合の手
=(モデルで
は)切れ込み
H 水素原子
Cl
塩素原子
O 酸素原子
S 硫黄原子
3本
N
4本
C 炭素原子
O
N
O C
C S Cl
H
窒素原子
原子記号
○単元「電流の性質とその利用」
原子の「結合の
手」というもの
を考えてつなぎ
合わせること
で,分子をつく
る物質がどんな
種類の原子がい
くつ集まってで
きているのかな
どを考えること
ができます。
電流モデル,水流モデルを操作し,電流・電圧の概念や回路における規則性などについてイメージします。
【電流モデル1】直列回路(負荷装置2つ)
導線
=その他の
通り道
回路をイメー
ジできるよう
に輪の形にし
ている
負荷装置2
(豆電球)
=木片が付い
た木の板2
負荷装置1
(豆電球)
=木片が付い
た木の板1
ビー玉が流れる
のを邪魔する
ビー玉が流れる
のを邪魔する
電流=ビー玉
台の上から回路
を流れ循環する
電源装置(乾電池)
=高さをつける台
乾電池は電圧をもつの
で、台の上の高い位置
からビー玉が流れる
電圧=高さ
ビー玉が流れ
るのに使う
電圧=高さ
電圧=高さ
高さ(=電圧)をつけた台(=
電源装置、乾電池)からビー
玉(=電流)を転がせ,木片
がついた木の板(=負荷装
置)を通過するために高さ
(=電圧)が下がっていくイ
メージをさせます。また,電
流・電圧の概念や直列回路に
おける規則性などについて
考えさせます。
【電流モデル2】並列回路(負荷装置2つ)
負荷装置(豆電球)
=木片が付いた木
の板1
導線=その他の通
り道
電流=ビー玉
台の上から回路を
流れ循環していく
ビー玉が流れるのを邪
魔する
回路をイメージしや
すいように輪の形に
なっている
電源装置(乾電池)
=高さをつける台
並列回路における電流・電圧
の規則性などについて考え
させます。
乾電池は電圧を持って
いるので、台の上の高
い位置からビー玉が流
れていく
高さ=電圧
負荷装置(豆電球)
=木片が付いた木の板2
ビー玉が流れ
るのに使う
ビー玉が流れるのを邪魔 する
【水流モデル】直列回路(負荷装置2つ)
電動ポンプ(=電源装置、乾
電池)で装置内に水(=電流)
を循環させ,細いチューブ
(=負荷装置)前後での水位
差(=電圧)を確認させます。
ここでは特に電圧をイメー
ジさせます。
電圧= 水圧(負荷
装置前後での水位)
負荷装置前後で水位に
差ができる
導線=太
いホース
電圧= 水圧
(負荷装置前後で
の水位)
この中を水
が流れる
負荷装置2(豆電球)
=細いチューブ2
負荷装置1(豆電球)
=細いチューブ1
水が流れるのを邪魔する
電源装置
(乾電池)
=電動ポンプ
水を循環させる
期待される効果
○原子モデルについての感想
内容
回答数
%
分かりやすさ
41
57.7
興味・関心
37
52.1
その他
6
8.4
分かりにくさ
8
11.3
その他
1
1.4
肯
定
的
否
定
的
○電流モデル・水流モデルについての感想
合計(人)
66
※複数回答あり
9
%
92.9
12.6
肯
定
的
否
定
的
内容
回答数
%
分かりやすさ
60
82.2
興味・関心
15
20.5
分かりにくさ
(分からない)
15
21.1
イメージしにくい
2
2.7
合計(人)
%
66
91.7
17
22.2
※複数回答あり
特に,分かりやすさや興味関心(楽しい,おもしろい,びっくりしたなど)の面での効果が出ており,
現象をイメージした上での十分な理解ができる,といえそうです。
補
足
原子モデル,電流モデル,水流モデルは,安価な材料を用いて比較的簡単に製作でき,生徒が学習す
る上で非常に効果的です。しかし,モデルでの現象と実際に起こっている現象との間にギャップがある
生徒もおり,生徒の実態や理解の段階に応じて十分に考慮しながらモデルと実際の現象を行き来し,有
効的に活用していく必要があります。
出典)定道渉(2014)「中学校における効果的なイメージ化を図る理科授業の開発‐目に見えない現象
をモデルで可視化する‐」授業実践リーダーコース実践研究報告書(指導教員松本伸示)