氏名 学位授与の根拠法規 研究科,専攻の名称 学位規則第5条第1項

たかはしみのる
氏名
高橋実
授一与学位
医学博士
学位授与年月日
昭和37年3月23日
学位授与の根拠法規
学位規則第5条第1項
研究科,専攻の名称
東北大学大学院医学研究科
内科学系
学位論文題目
本態性高血圧症の心電図およびベクトル心電図
に関する砺究
指導教官
東北大学教授
鳥飼龍生
論文審査委員
東北大学教授
鳥飼龍生
東北大学教授
鈴木泰三
東北大学教授
中村隆
一52一
高橋実'提出論文内容要旨
心電図にかいて,左室肥大の判定基準iはこれまで種々発表されているが,ベクトル心電図(V
eG)やベクトル解析法の成果をとり寒れたものは少い。著者は正常入55例及び本態性高血圧症
書
60例を対象として,Grisbmau法(G法)及びHUPka-We且ger法(H-W法)によるVO
αについて空欄ベクトルの定量的解析を行い'叉常用心電図(EσG)に'ついて竜,ベクトル解
析法の立場からその臨床臨意義を検討した。更に最近EOGに蠢いて問題となっている性別の測
定値の差異の意義についても検討を加えた・得た結果は次の通りである。
建ず正常VOGでは・G法の最大QRsベクトルの空間的大きさ(QRS-Mag.)は10.1
土5.09那V(平均値土標準偏差),最大丁ベクトルの空間的大きさ(T-M姻.)は3,・3士
t2ゴπ▽1空聞QRS-丁角(∠9)けマ0士5.マ。でこれに対し,H-W法のQRS-Mag,
は2D・6±ZO口鴛v7T-Mag.は5、6±2・10ηV,・理は44士21.ヂてあったoEC
GではLamb法による理は40士".ooであp.準。
高血圧症のveGにかける測定値てけ,正常値に比し7G法及びH-W法に上る∠9にのみ有
意の差(P〈0,01)が認められた(G法では58土46,5。,H-W法では95土58.2。)。
VOGと臨床所見との関係については,眼底所見の進展にともない,H-W法では著明な,G
法でけ軽度の乙μの増大傾向が認められた。収縮期血圧は,G法のT-Mag・及び同法の四と
正の相関(いずれもP<aO5)を示し,拡張期餉1圧はG法のT-Mag.と負の1揮と正の帽
関(いずれもPく0,05)を,斐たH-W法のq・RS-Mag.(P<ロ.05)及び想(P<0.餌)
の両者と正の相関を示した。心胸郭係数は,G法び)μと正の,且一w法のQ・Rs-Mag、と負の
(いずれもP<α餌),蓬たH-W法の・乙gと正の(Pくα05)相関を示した。上記の成績
のうち,超についてはZakOV,Rau七aharjuら及びDohrmanロらのEeGによる成績・
及びLibrettiらのFrallk法スカラー心電図による成績とほぼ一致した。しかし上記臨床所
見との相関は著者及びLlbretUらのVOGに上る成績がECGによる成績に比しより'密接て
あり,veGがEOGに比し有利なことが明かに認められた。血清脂質及び血清電解質と,空間
ベクトル及び雄との間には著明な関係は認められなかった。
両法によるveGの測定値のうち,qRS-Mag、及びT-Mag.は正常例では両法の間に著
明な相関を示したが,高血圧症てはその相関がやや低下した。雄は高血圧症では両法闘に高度
の相関を示したが,正常例では全ぐ示さなかった。
一
鷲
一 一
EeGによる測定値のうち・乙μは高血圧症(40土観0。)でけ正常例に比し有意の差を
示'さ勧ρた。'胸部誘導による各測定値はH-W法r`よる値と上(相関し,とぐにTv1+Tv6と
H-W法の磐とけ商物圧症にお・いて高1聾の相関(r罪一a849)を示したoE〔〕Gによる四
と'veGによる乙堅とについては,G法における正常例の場合を除き,いずれも良好な相関を示
した。
性別に上るyeG及びEOGの測定値の差としてけ,正常VσGにかいてG法及びH-W法の
T-Mng.(いずれもP<aoD及びH-W法の否(P<aO・5)に,茂たEσG・にむ'いて
助(P<ao5)賄憲の性差が認められ,.いずれも男性値が女性値よ鰍であった・高血圧
症にむける測定値の性差についてけ未だ報告がないが,著者の成績ではveGにかいては,G法
(P<ロ・05)及びH-W法(p<0・01)のT-Mag・,及びH-W法の∠μ(P〈D・0コ)
の各々に有意の性差が訥められ,男性循は女性値よりも1大であったoEeGではTV1に有意'.(P
<口、O可)の性差が認められ,女性値が男性値より竜大であ'つた。
以上り成績から次の結論を得た。
(可)VCGにかける、罫は左室の負荷及び肥大の程度をよぐ表現し,その定量的判定基準とし
ての価値が大きい。とぐに∠」αの増大は左室肥1大の早期所見としての診断甑慮義が大きい。(2)G
法はH-W法に比し前後成分(Z軸)の襲現が弱ぐ,これが∠μの小さ左場合の診断率を阪下さ
せる原因と煮る。⑥高血圧症の心電図にむいては,sv1,s▽1+Pv5及びT▽ノ+Tv6に著型
な変化が認められるが,左αに賃有意の変化が認められない。建CGは空筒ベクトルの定量的解
析には欠点が多いのて,心電図に上ってより正確に空聞ベクトルを測定するには,新しい誘導法
の出現が期待されZ)。(4)veGにおいては浬及びT-Mag.に有意の性差が認められるが丁1
これはH-W法て一層著るしい。EOGでの性差は,正常例の場合にはsv1に、また高血圧症
の場合には丁防に著明である。心室肥大の診断にむいては,性差を考慮することが必要と考えら
7
れるo
結果
。)
要
旨
審査
本態性高血圧症の心電図に寿いでは,左室肥大の診断が問題となる。心電図における左室肥大の
判定基準はこれまで種々発表されているが,近年著しい進歩を示しているベクトル心電図及びベ
クトル解析酸の成果をとり入れた'ものはまだ少い。またベクトル心電図に関しても,その定性的
解析については多'ぐの報告があるが,その空間ベクトルの定量的研究はほとんどなされていない。
また測定値の性差についても検討されていない。
著者は正常例冷よび本態性高血圧症例を対象として,次の諸点に関する研究を行い,ベクトル
心電図の臨床的価値を認めた。即ち,左室肥大の早期診断においては,空間QRST角の増大が最
も特徴的であり,この点にむいては,現行の常用心電図はなお誘導法を改良することが必要と
考えられた。左室肥大の判定基準に関しては,ベクトル心電図にかいても常用心電図にかいても,
性差を考慮する必要が認められ.た。またベクトル心電図の誘導法についても比較を行い、現在普
及しているGrishman誘導法についての狂騰1を行った。
碧者は以上左室肥大の早.期診断について,ペグトル心電図および常用心電図を比較検討した。
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