主 論 文 要 旨 - R-Cube

[様式-学 5]
主
論
文
要
旨
加工誘起マルテンサイト変態を有する調和組織材料の組織形成と力
学的特性
さわんぐらっと ちょんちゃろえん
SAWANGRAT CHONCHAROEN
調和組織制御法を金属材料に適用することで、高強度と高延性の両立を達成できる。
本研究では、調和組織の形成機構ならびに調和組織が機械的特性に及ぼす影響について
明らかにするため、単相組織を有する純 Cu 材、複相組織を有する Co-Cr-Mo 合金の調和
組織材料の組織制御について検討をおこなった。Co-Cr-Mo 合金は医療用材料としても
有用な材料である。
調和組織構造を有する純 Cu と Co-Cr-Mo 合金の焼結体を、粉末超強加工(SPD-PM)法
であるメカニカルミリング(MM)と放電プラズマ焼結(SPS)法の条件を制御すること
で作製することに成功した。MM 粉末は粉末中心部に比較的粗大な結晶粒(CG)を有し、
一方、粉末表層部に微細な結晶粒(UFG)を有する2層構造を持つ。この CG 領域を Core
部、UFG 領域を Shell 部と呼ぶ。調和組織を有する純 Cu と Co-Cr-Mo 合金の焼結材料を
作製し、それらの強度と延性について評価した結果、均一組織材料と比較しいずれも優
れていることが確認された。さらに、Shell、Core 割合の効果が調和組織材の機械的特
性にどう影響しているのか詳しく分かるために、微細組織の特徴と機械的挙動を評価し
た。調和組織を有する純 Cu、Co-Cr-Mo 合金の組織形成機構について、種々の組織形成
因子から検討した。これらの焼結材料は均一粗大結晶粒材料と比べて、優れた強度と延
性を示した。組織学的観点ならびに力学的観点から調和組織材料の変形挙動を詳細に検
討し、結晶粒径や Shell/Core 割合等の様々な組織因子により優れた機械的特性が発現
していることが明らかとなった。特に、純 Cu と Co-Cr-Mo 合金の調和組織材料は、均一
変形により優れた機械的特性を示す。この特異な変形挙動は、調和組織の3次元構造に
起因するものである。さらに、Co-Cr-Mo 合金では、調和組織形成においてひずみ誘起
マルテンサイト変態(SIMT)が重要な役割を担っていることが明らかとなった。ひずみ誘
起マルテンサイト変態でγ-FCC 相から生成する ɛ -HCP 相は Shell 領域において生成し
やすく、強度だけでなく延性にも影響を及ぼしていることが明らかとなった。これらの
ことから、最適な Shell / Core 割合が調和組織を有する Co-Cr-Mo 合金焼結材料の延性
を支配する重要な要因であることが明らかとなった。純 Cu、Co-Cr-Mo 合金の調和組織
材料の Shell / Core 割合は機械的特性に影響を及ぼす重要な要素であることが確認さ
れた。