Guide to Scientific Writing Top 10 Tips for

Guide to Scientific Writing
Top 10 Tips for Responding to Reviewer and Editor Comments
Thomas M. Annesley*
University of Michigan Health System, Ann Arbor, MI.
* Address correspondence to the author at:University of Michigan Health System, Room UH2G332, 1500 East
Medical Center Dr., Ann Arbor, MI 48109-5054. E-mail [email protected].
科学論文作成の手引き
査読結果の通知や査読者の提案に対応する際のコツ、ベスト 10
私たちはみな、否が応でも人生の様々な局面において審査・評価・校閲に晒される。読者の方々が学生だった
頃は、論文や研究を提出すれば教授の採点や評価を受けたことだろう。家を買いたい人が銀行に行って融資を
申し込めば、鑑定士や会計士の審査を受けることになる。議員が新しい法案を起草すれば、評論家の論評を受
けることになる。法人団体が特許を申請すれば、無数の弁護士が申請を却下できないものかと申請書を注意深
く調べることだろう。
当然、研究者が論文を発表する過程にも審査はつきものだ。ジャーナルに論文を投稿すると、必ずといってい
いほど編集者および複数の査読者の批評・提案が寄せられる。論文を発表したければ、大抵このプロセスは避
けられない。寄せられる論評の内容はどうにもできないが、どう対応するかは自分次第だ。寄せられる論評に
しっかりと対応できるよう、私なりの「対応のコツ」ベスト 10 を紹介したい。
1. まず腹を立て、次に吹っ切れろ
修正の提案が一つもなく、受理される論文は珍しい。査読を通過した論文であろうと、大抵いくつかの修正が
要求される。ジャーナルの編集者や査読に参加した専門家には、論文を発表する前にその論文が科学的に裏づ
けられたものであり、正確で、曖昧さを含まない、明快な、独創的なものであることを確かめる義務がある。
そのため、投稿されてきた論文のあら探しをする必要がある。だが論文の執筆者にとって、このプロセスとそ
れに付随する論評には堪えなければならないだろう。
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論文に寄せられた論評を読んだら、まず腹を立てればいい。同僚に愚痴を言って不満を発散するのもいいだろ
う。そして、先に怒りを発散して吹っ切れてから、論文の推敲に入ったほうがいい。ここで不満を溜めたまま
推敲や論評への対応に入ると、最終的に望ましくない展開になるだろう。論評に対応する際に、喧嘩腰であっ
たり屁理屈を用いたりしても、編集者や査読者と対立するだけで終わってしまう可能性が高い。
2. 査読結果の通知をしっかりと理解しよう
論文が受理されなかった場合、編集者はその論文をもう一度投稿して欲しいかどうかを通知に含むことが多い
(通知例を参照)。例 1 のように掲載却下された場合は結果を受け入れて、別のジャーナルへの投稿を考えた
ほうがいいだろう。
例 2 のように、再投稿の機会が伺えることもある。まだ掲載への道は残っているが、論文を査読者が満足する
ように改訂できるかどうか、現実的に考えるべきだ。査読者も、最初の査読ですべての疑問点を指摘してくる
わけではない。疑問点が多ければ、改訂の大まかな方向性をハッキリさせた時点で、疑問点を指摘するのをや
めるケースもある。再投稿した場合、査読者が論文に対して前回の投稿による先入観を抱いたまま論評に入る
可能性や、査読者が前回はさほど詳しく論評しなかった部分を見て、更に論評を寄せる可能性があることを考
えないといけない。
例 3 は同じく再投稿を促す通知だが、例 2 と違い、疑問点が正しく修正されれば掲載できるであろうというも
のである。このような査読結果であった場合は、早急に指摘された疑問点を直し再投稿したほうがよい。
3. まず時間をおいて考えよう
編集者からの通知と査読者の論評に一通り目を通したら、論文の添削に入る前に 1 日ほど時間をおいて、編集
者や査読者の論評について色々と考えを巡らせよう。査読者の提案を、以下のうちどれを要求しているかで分
類して添削に入るとやりやすいだろう。
(1)
更なる説明や追加文章および詳細な実験の更なる追加
(2)
データの再解釈、再表現、および再解析
(3)
追加実験や更なる概念の実証
この他に、到底応えられない要求をされることもある。
あなたが添削において、どういったことをしなくてはいけないのか最初にわかっておくと、その後の作業に優
先順位をつけて効率的に作業することができる。更なるデータ解析や統計分析が求められている場合は、統計
の専門家に助力を求めることが可能かどうかまず考えるべきである。また追加実験が要求されている場合は、
実験プロトコルを書き上げ早急に実験を開始しよう。応えられない要求をされた場合も、いろいろと考えるべ
きことがある。応えられない要求は謝絶しなくてはならないが、査読者も納得がいくように、何故要求された
事項を含まなくとも論文の有効性は保たれるかを説明できるようにしたい。
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通知例
例 1.掲載拒否、再投稿認めず
本論文は、2 人の専門家によって査読されました。残念ながら、本論分は不採録とさせていただきます。不採
録の理由は、査読者の論評をご参照ください。
例 2.不採録、大幅な修正の必要あり
本論文は、2 人の専門家によって査読されました。残念ながら、本論分を Clinical Chemistry 誌に掲載すること
はできません。査読者の論評を参考に、訂正を加えた改訂版の再投稿は受け付けますが、再投稿が論文の受理
につながるとは保障できません。
例 3.採用、若干の修正の必要あり
本論文は、2 人の専門家によって査読されました。査読者は本論分に価値を見出しましたが、同時にいくつか
の建設的な提案をしています。提案を慎重に検討し、改訂を加えた原稿を再投稿してください。
4. 査読者が間違っていても、あなたが正しいとは限らない
査読者が論文の何かを見落とし、論評に疑問点として加えることがある。また、査読者が常に論文の関連分野
すべてにおいての専門家であるとは限らない故、論文に欠かせない部分を不必要と判断し、取り除くべきだと
言ってくることもある。査読者が実験結果を誤って解釈することもある。査読者が論文の主題を理解しきれず
に、主題の正当性を疑うこともあるだろう。査読者も毎回正しいとは限らない。
しかし、査読者が間違っていても、執筆者のあなたが正しいとは限らない。執筆者として、自分の文章の非の
せいで査読者が誤った解釈をしたのではないかと考えるべきだ。執筆の面で曖昧な表現が含まれている場合、
説明が完全でなかった場合、および重要な部分が充分に強調されていなかった場合、執筆者のほうにも非があ
るといえるだろう。故に、まずは査読者を訂正しようとするより、自分の文章を推敲すべきである。
5. 納得がいかないたびに、いちいち異論を唱えるのは無駄である
大抵、査読を経た論文には、修正の提案がいくつもついている。納得のいく提案もあれば、あまり関係ないの
ではないかと思えるものもあり、中にはまったく賛成できない提案もあるだろう。たとえ自分の納得のいかな
い点がいくつかあっても、いちいち異論を唱えるのは推奨できない。要求された修正が文章の元の意味を変え
ないのであれば、出来るだけ要求どおりの修正を行ったほうがいい。ただ、要求された修正が元の意味を変え
てしまうと思えば、執筆者として丁重に異論を唱えても構わない。この論文の著者はあなたなのだ。しかし、
出来る限り査読者の顔を立てつつ自分の見解を述べよう。査読者が自分で残したい文章を誤解した可能性があ
るのならば、その説明もした上で、文章を元のまま残したいと述べるべきだ。ただ、文章を元のまま残したい
と述べたものの、読者の似たような誤解を防ぐためにも、この返答に含んだ文章をいくらか原稿に付け足すの
も一つの手だろう。
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6. 査読者同士を拮抗させても意味はない
査読者 1 はこの部分に改善点を見出さなかったが、査読者 2 は改善点があると主張している……などというこ
とを査読者の提案への返答を含むのは絶対にやめておきたい。査読者は大抵、2 つの違う分野を専門としてい
る場合が多く、2 つの異なる視点から査読を行っているのである。編集者はその 2 つの異なる専門家の意見を
尊重し、論文を総合的に評価するのだ。提案の欠如は暗黙の同意とは違う。査読者の提案に対する返答に、他
の査読者の意見を含むのはやめよう。
時には、2 人の査読者が真逆の要求をしてくることがある。例えば、1 人はある図をもっと詳しいものにして
くれと言ってきたが、もう 1 人はその図は不要だから取り除いてくれといってきたとしよう。こういった場合、
どちらの提案が論文の質をより向上させてくれるか考えるべきだが、採用しなかったほうの提案を却下する際
に、査読者同士の提案の不一致を理由にしてはいけない。双方の査読者に、何故片方の提案を採用したのか筋
が通った説明ができるようにしよう。
7. 編集者や査読者に謝辞を
査読者は大概、論文の査読を無償で行う。査読者の提案の中には厳しいものもあるが、査読者自身も論文の執
筆者であることが多く、純粋に論文をどうしたら改善できるか考えてくれているのだ。査読者や編集者に返答
するときは、そのことも考えて感謝の気持ちを述べるといいだろう。
査読者の提案に対する返答は、礼儀正しく、思いやりのあるものであったほうがいい。査読者が論文のある面
に関して賛辞の言葉を述べた場合は、査読者にお礼を述べたほうがいい。また、査読者が自分が考慮していな
かった見解を述べた場合は、たとえその見解が論文に関係なくとも査読者に感謝の言葉を述べるべきだ。
8. 訂正を行う際には、編集者・査読者の提案を引用したほうがいい
編集者や査読者が、あなたの行った訂正の一つ一つを理解するためにも、あなたは訂正の理由を毎回ハッキリ
させる必要がある。編集者・査読者は提案の順番や詳しい内容をすべて覚えているわけではないので、訂正を
行う際には訂正の動機となった提案を引用して、編集者や査読者の仕事をしやすくするといいだろう。訂正前
と訂正後では文章のページ数なども違う可能性があるので、再投稿する際には訂正を行った箇所、文章を付け
足した箇所、および文章を削った箇所を明記しておくべきだ。また返答に、訂正版の訂正した箇所を引用する
のも望ましいだろう。また訂正版に(変更履歴や取り消し線などを用いて)、変更前の文章を含むことはお勧
めできない。
査読者が提案に番号を振っていたとしても、しっかりと査読者の提案を述べた上で返答に入るのが望ましい。
査読者同士の提案が似ていたとしても、「査読者 2 への返答を参照」や「提案 1: 査読者1の提案 4 に対す
る返答を参照」などと書いてはいけない。たとえ内容が少々かぶるものであっても、査読者の提案に対しては
一つ一つ丁寧に返答したいものだ。返答の長さは気にするべきではない。返答の目的は編集者や査読者に論文
への訂正箇所をしっかりと説明することなのだから。
9. 論文の文章を削ってくれといわれても、驚かないように
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ジャーナルをまとめるのも簡単な作業ではなく、結果、掲載スペースも決して安いものではない。編集者はコ
ンテンツとコストのバランスを考えなくてはならないため、編集者に論文の文章を削ったり、図や表を割愛し
てくれと頼まれる可能性も考えておくべきだ。こういった要求には真面目に応え、編集者を困らせないように
したい。序論と考察のはじめのほうに、重複部分がないかどうか確かめよう。また、挿絵の説明文は実験方法
の説明と被ることが多い。表の欄を統合あるいは除外して、脚注と交換できないものかも考えてみるとよいだ
ろう。今は電子出版の時代であるため、有益だが不必要な図、表、および説明文は、オンラインでアクセスで
きるようにすればいい。長い専門用語は短いものと交換しよう。また、なるべく直接的な表現を用いたほうが
よい(「血圧はリシノプリルによって下げられた」より、「リシノプリルで血圧を下げた」等)。
10. 同じ草稿を別のジャーナルに投稿するべきではない
論文が掲載拒否された場合、あるいは再投稿しないことを決めた場合、別のジャーナルに投稿する前に、まず
査読者が残した改善点をしっかりと吟味しておくべきだ。査読者の提案は、大抵、論文の質を向上させてくれ
るものばかりだ。別のジャーナルに投稿する前に査読者の提案を活用して、論文の質を向上させない手はない
だろう。今回指摘された欠点は、次のジャーナルでも指摘される可能性が高い。下手な賭けに出るよりは、時
間をかけてしっかりと論文を推敲したほうがいいだろう。
古い格言に「Less is more(少ない方がベター)」とあるが、編集者や査読者の提案に対して返答をする際に
は、何事もなるべく増やしたほうがいい。自分の考えをまとめるのにはなるべく時間をかけよう。編集者や査
読者の提案はなるべく真剣に吟味しよう。なるべく最終的な目標(論文の受理)のことを考え、時間と労力を
効率的に配分しよう。返答はなるべく詳しく細かく書こう。そして最後に、歯に衣着せず本音で対応するより
は、なるべく謙虚に、穏やかに感謝の意を示したほうが、全体的にスムーズに進むということも覚えておきた
い。
(訳者:小野
富大)
謝辞
Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have
met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or
analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of
the published article.
Authors' Disclosures or Potential Conflicts of Interest: Upon manuscript submission, all authors completed the
Disclosures of Potential Conflict of Interest form. Potential conflicts of interest:
Employment or Leadership: T.A. Annesley, Clinical Chemistry, AACC.
Consultant or Advisory Role: None declared.
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Stock Ownership: None declared.
Honoraria: None declared.
Research Funding: None declared.
Expert Testimony: None declared.
Role of Sponsor: The funding organizations played no role in the design of study, choice of enrolled patients, review and
interpretation of data, or preparation or approval of manuscript.
Received for publication January 15, 2011. Accepted for publication January 20, 2011.
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